膝の裏を曲げると痛い時の対処法!痛みのメカニズムと適切なアプローチ

膝の裏を曲げると痛い時の対処法!痛みのメカニズムと適切なアプローチ

膝の裏を曲げると痛いと感じたら、まずは膝を安静にし、無理な屈伸を避けることが大切です。この痛みは変形性膝関節症をはじめ、ベーカー嚢腫(のうしゅ)や半月板の損傷など複数の原因が重なって起きている場合が少なくありません。

膝裏の痛みは放置すると歩行や階段の上り下りがつらくなり、日常生活に大きな支障をきたします。ストレッチやアイシングなどのセルフケアで痛みを和らげつつ、症状が長引く場合は整形外科を受診して原因を特定することが回復への近道です。

この記事では、膝の裏を曲げると痛い症状の原因から治し方、受診の目安まで幅広くお伝えします。ご自身の膝裏の痛みに合った対処法を見つけるヒントにしてください。

目次

膝の裏を曲げると痛い原因は関節だけにとどまらない

膝裏の痛みは、関節の内部で起きている変化だけでなく、関節周囲の組織にも原因があります。変形性膝関節症による軟骨の摩耗、ベーカー嚢腫の形成、半月板や靭帯の損傷など、膝の裏を曲げると痛い症状には複数の要因が関与しています。

変形性膝関節症と膝裏の痛みがつながる理由

変形性膝関節症は、関節の軟骨がすり減ることで骨同士が近づき、炎症や痛みが生じる疾患です。膝を深く曲げた際に膝裏が痛む場合、関節内の軟骨の損傷が進んでいる可能性があります。

とくに中高年の方は、長年にわたる膝への荷重が蓄積して軟骨の変性が進みやすい傾向にあります。初期段階では動き始めの痛みが中心ですが、進行すると膝の裏側にまで痛みが広がるケースも珍しくありません。

軟骨のすり減りに伴って関節液が過剰に分泌されると、膝裏にある滑液包に液体がたまり、膝を曲げたときの圧迫感や鈍い痛みの原因となります。

ベーカー嚢腫が膝裏の曲げ伸ばしに影響する

ベーカー嚢腫(膝窩嚢腫)は、膝の裏側にできる液体のたまった袋状のふくらみです。変形性膝関節症や半月板損傷に伴う関節液の増加が原因で形成されることが多く、膝痛のある方の約25%に認められたとする超音波検査の研究報告もあります。

嚢腫が大きくなると膝裏を圧迫し、曲げた時に「つっぱる」ような痛みやつまり感を覚えます。膝を完全に伸ばした際にも違和感が生じるケースがあり、歩行や正座の妨げになりかねません。

まれに嚢腫が破裂してふくらはぎに液体が広がり、急な腫れや痛みを起こすことがあります。この場合は深部静脈血栓症との鑑別が必要になるため、速やかに医療機関を受診してください。

半月板や靭帯のトラブルが隠れていることもある

膝の裏を曲げると痛い場合、半月板の後方部分の損傷が隠れているケースがあります。後角と呼ばれる半月板の後ろ側が傷つくと、膝を深く曲げた際にロッキング(引っかかり)やクリック音とともに痛みが走ります。

後十字靭帯の損傷も膝裏の痛みを引き起こす要因の一つです。スポーツ中の外傷だけでなく、加齢に伴う靭帯の弱体化が背景にあることもあるため、痛みの原因が一つとは限りません。

膝裏の痛みを引き起こす主な原因の比較

原因特徴好発年齢
変形性膝関節症動き始めに痛み、進行すると常時痛む50代以降
ベーカー嚢腫膝裏のふくらみ、つっぱり感40代以降
半月板損傷引っかかり感、膝がロックする全年代
後十字靭帯損傷膝が不安定、膝裏が腫れる20〜50代

膝裏に痛みが出る仕組みは軟骨・炎症・筋肉が絡み合っている

膝の裏を曲げると痛い症状は、一つの原因だけでなく複数の要素が同時に作用して生じます。軟骨の摩耗・関節内の炎症・膝裏の筋肉や腱の緊張が互いに影響し合い、痛みを複雑にしています。

要素膝裏の痛みとの関わり
軟骨の摩耗骨同士のクッションが減り、屈曲時に圧力が直接かかる
関節内の炎症滑膜が腫れて関節液が増加し、膝裏を内側から圧迫する
筋肉・腱の緊張ハムストリングスや腓腹筋が硬くなり、曲げる動作で痛みを感じる

軟骨がすり減ると膝の動きに直接響く

膝関節の表面を覆う軟骨は、いわばクッションの役割を果たしています。加齢や過度な負荷で軟骨がすり減ると、骨と骨がぶつかりやすくなり、膝を曲げるたびに痛みを感じるようになります。

軟骨にはいったん傷がつくと自然には修復されにくいという特性があります。そのため痛みを我慢して使い続けると摩耗が加速し、膝裏を含む関節全体に痛みが波及しやすくなるでしょう。

さらに、軟骨の表面が荒れると関節内での摩擦が増え、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨のとげが形成されることもあります。骨棘が膝裏側に生じると、屈曲時に周囲の組織を刺激して鋭い痛みを引き起こす場合があります。

関節内の炎症と滑膜の腫れが痛みを増幅させる

軟骨の破片が関節内に散らばると、それを異物とみなした滑膜(かつまく)が炎症を起こします。滑膜は関節液を分泌する薄い膜ですが、炎症が起きると腫れて厚くなり、必要以上に関節液を産生します。

増えた関節液が膝裏の方向に流れ込み、ベーカー嚢腫を形成したり膝の裏側に圧力をかけたりすることで、屈曲時の痛みがさらに強まります。安静にしていてもズキズキとした痛みが続くようになると、炎症がかなり進んでいるサインかもしれません。

膝裏の筋肉や腱の緊張が屈曲時の痛みに直結する

太ももの裏側にあるハムストリングスや、ふくらはぎの上部にある腓腹筋(ひふくきん)は、膝裏を通過して膝の曲げ伸ばしに関わっています。

これらの筋肉が疲労や運動不足で硬くなると、膝を曲げた時に過度な張力がかかり、痛みやこわばりを生じさせます。

とくに長時間のデスクワークや立ち仕事の後は筋肉が固まりやすく、膝の裏を曲げると痛いと訴える方が多い傾向です。筋肉の柔軟性を保つ取り組みが、屈曲時の痛みを和らげる鍵となります。

膝の裏が曲げると痛いときに自宅でできるセルフケア

軽度の膝裏の痛みであれば、ストレッチや冷却などのセルフケアで症状を緩和できる場合があります。痛みが出始めた早い段階でケアを始めることが、症状の悪化を防ぐうえで大切です。

膝裏のストレッチで筋肉の緊張をやわらげる

ハムストリングスのストレッチは、膝裏の痛みに対するセルフケアとして有効です。椅子に浅く座り、片脚をまっすぐ前に伸ばしてかかとを床につけたまま上体をゆっくり前に倒すと、太もも裏が心地よく伸びます。

この動作を1回あたり20〜30秒かけてゆっくり行い、左右それぞれ2〜3回ずつ繰り返してください。痛みが強い時には無理に伸ばさず、「気持ちよいと感じる範囲」にとどめることが大切です。

ストレッチ系の運動が膝の痛みを有意に軽減させるという研究結果も報告されています。

アイシングと安静で炎症を落ち着かせる

膝裏に熱感や腫れがある場合は、氷嚢やアイスパックを薄いタオルで包み、15〜20分ほど患部を冷やしましょう。冷やすと血管が収縮し、炎症物質の産生が抑えられます。

1日に2〜3回のアイシングを目安にし、冷やしすぎによる凍傷を防ぐため必ず布を一枚はさんでください。急性期には安静も重要で、痛みのある動作をできるだけ避けて膝を休ませましょう。

日常動作を見直して膝への負担を減らす

セルフケアとあわせて、日常の動作や環境を見直すことも膝裏の痛みの軽減につながります。何気ない習慣の積み重ねが膝への負荷を大きく左右するため、小さな工夫を続けてみてください。

  • 和式トイレを避け、洋式トイレや補高便座を使う
  • 正座よりも椅子に座る生活様式に切り替える
  • 階段ではなくエレベーターやエスカレーターを優先する
  • 長時間同じ姿勢を続けず、30分に1回は膝を軽く伸ばす

こうした負担の軽減策は、薬やストレッチと組み合わせるとより効果を発揮します。自分に合った工夫を少しずつ取り入れてみてください。

膝裏の痛みに効果的な治し方と医療機関で受けられる治療

セルフケアだけでは改善しない膝裏の痛みには、医療機関での治療が必要です。薬物療法から注射、リハビリテーションまで、痛みの程度や原因に応じた治し方を選択できます。

消炎鎮痛薬や外用薬で痛みと炎症を抑える

膝裏の痛みに対する薬物療法は、まず外用薬(湿布やゲル)から始めるのが一般的です。直接膝裏に塗布できるため全身への影響が少なく、手軽に使えるという利点があります。

痛みが強い場合には、医師が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服を処方することがあります。ただし胃腸障害などの副作用リスクがあるため、漫然と長期間飲み続けず、医師の指示のもとで期間と量を調整してください。

膝裏の痛みに使われる主な薬剤の比較

種類特徴注意点
外用薬(湿布・ゲル)膝裏に直接塗布でき副作用が少ない皮膚かぶれに注意
内服NSAIDs痛みと炎症を全身的に抑える胃腸障害・腎機能への影響
アセトアミノフェン消化管への負担が比較的軽い抗炎症作用は弱い

ヒアルロン酸注射やステロイド注射はどんな時に使う?

ヒアルロン酸注射は、関節液の潤滑機能を補い、膝の動きを滑らかにする目的で行います。変形性膝関節症の初期〜中期に用いられることが多く、週1回を数週間にわたって注射するのが標準的です。

一方、ステロイド注射は強力な抗炎症作用を持ち、痛みがとくに激しい急性増悪時に医師が選択します。

即効性がある反面、頻回に打つと軟骨へのダメージが懸念されるため、回数を限定して行うのが一般的です。どちらの注射も医師が膝の状態を診たうえで判断します。

リハビリテーションで膝の動きと筋力を取り戻す

リハビリテーションは、膝裏の痛みの改善と再発予防の両面で重要な治し方です。理学療法士の指導のもと、膝周囲の筋力強化や関節可動域の拡大を目的としたプログラムが組まれます。

運動療法は変形性膝関節症に対して痛みの軽減と機能の向上をもたらすことが多くの研究で示されています。病院だけでなく自宅でも継続できる運動メニューを処方してもらい、日々取り組むことが回復を早めるポイントとなるでしょう。

温熱療法や電気刺激療法を併用すると、筋肉の緊張を緩和しながら痛みを和らげる効果が得られる場合もあります。リハビリテーションは1回で完結するものではなく、数か月にわたって段階的に進めていく治療です。

膝を曲げると痛い症状を悪化させないための運動と体重管理

適度な運動と体重の管理は、膝裏の痛みを悪化させないために欠かせない取り組みです。「痛いから動かない」ではなく、痛みの範囲内で体を動かし続けることが膝を長持ちさせます。

太ももの筋力トレーニングが膝を守る

大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛えると、膝関節への負荷を筋肉で支えられるようになり、膝裏の痛みを軽減する効果が期待できます。特別な器具がなくても、椅子に座って片脚をゆっくり伸ばすレッグエクステンションから始められます。

  • レッグエクステンション:椅子に座り、片脚を5秒かけて伸ばし、5秒かけて下ろす。左右各10回
  • 壁スクワット:背中を壁につけて膝を軽く曲げ、10秒キープ。5〜10回繰り返す
  • 膝伸ばしキープ:仰向けで片脚を30度ほど上げ、5秒静止。左右各10回

いずれの運動も痛みが出ない範囲で行い、回数よりも正しいフォームと継続を優先してください。

水中ウォーキングなど膝にやさしい有酸素運動

プールでの水中ウォーキングは、浮力によって膝への荷重を大幅に減らしながら全身を動かせる運動です。水の抵抗で筋力トレーニングの効果も同時に得られるため、膝裏の痛みがある方に向いています。

プールが利用しにくい場合は、平坦な場所でのウォーキングや自転車こぎ(エアロバイク)も選択肢になります。膝に衝撃を与えるジョギングやジャンプは避け、関節に優しい運動を週に3〜5回、1回あたり20〜30分を目安に取り組みましょう。

運動を始めたばかりの時期は、翌日に膝裏の痛みが増していないかを確認しながら強度を調整してください。「運動中は痛くないが翌日に腫れる」という場合は運動量が多すぎるサインです。

体重を減らすと膝裏の痛みはどれくらい楽になる?

体重が1kg増えると、歩行時に膝にかかる負荷は約3〜4kg増加するとされています。つまり、5kg体重を落とせば膝への負担は15〜20kgも軽くなる計算です。

無理な食事制限は筋力低下を招くため、運動と食事のバランスを見直しながら月に0.5〜1kgのペースで減量を目指すのが理想的です。肥満は変形性膝関節症の発症と進行の両方に関わるリスク因子であり、体重管理は治療効果を高める土台になります。

膝裏の痛みで受診すべきタイミングと整形外科での検査内容

2週間以上セルフケアを続けても膝裏の痛みが改善しない場合や、痛みが強くなっていく場合は、早めに整形外科を受診してください。原因の特定が遅れるほど治療の選択肢が狭くなる恐れがあります。

すぐに受診したほうがよい症状のサイン

「痛くても我慢できるから大丈夫」と放置すると、症状が進行して治療が長期化するおそれがあります。以下のような症状がある場合は、自己判断で済ませずに受診を検討しましょう。

早めの受診を推奨する症状

症状疑われる疾患
膝裏が目に見えて腫れているベーカー嚢腫、関節内出血
膝がロックして動かせなくなる半月板損傷
安静時にもズキズキと痛む関節内の強い炎症
膝が不安定でガクッと崩れる靭帯損傷
ふくらはぎまで痛みが広がった嚢腫の破裂、深部静脈血栓症

MRIやエコー検査で膝裏の痛みの原因を特定する

整形外科ではまずX線(レントゲン)撮影を行い、骨の変形や関節裂隙(すきま)の狭小化がないかを確認します。しかしX線では軟骨や半月板、靭帯の状態は詳しく映りません。

膝裏の痛みの原因を詳細に調べるには、MRIが有用です。MRIは軟骨・半月板・靭帯・嚢腫などの軟部組織を画像化でき、痛みの発生源を特定しやすい検査といえます。

ベーカー嚢腫の有無は超音波(エコー)検査でも簡便に確認できます。エコー検査は痛みや被ばくがなく、その場で嚢腫の大きさや液体の溜まり具合をリアルタイムに確認できるのが利点です。

治療が遅れると膝の変形が進行する恐れ

変形性膝関節症を長期間放置すると、軟骨の摩耗がさらに進み、膝のO脚変形が目立つようになります。変形が高度に進んだ段階では保存的治療だけでは十分な効果が得られず、人工膝関節置換術が選択肢に入ることもあります。

早い段階で受診し、適切な治療やリハビリテーションを開始すれば、関節の温存が十分に可能です。膝裏の痛みは「年だから仕方ない」と片付けず、専門家の力を借りて対処してください。

よくある質問

膝の裏を曲げると痛い症状は何科を受診すればよいですか?

膝の裏を曲げると痛い症状がある場合は、整形外科の受診をおすすめします。整形外科では膝関節の構造を専門的に診察でき、X線やMRIといった画像検査も行えます。

かかりつけ医がいる場合は、まず相談して紹介状を書いてもらうのも一つの方法です。膝裏の痛みに加えてふくらはぎの腫れや発熱がある場合は、血管系の疾患も考えられるため、早急に医療機関を受診してください。

膝裏を曲げると痛い時にやってはいけない動作はありますか?

膝裏に痛みがあるときは、正座や深いスクワットなど膝を深く曲げる動作を避けてください。こうした動作は膝裏に大きな圧力をかけ、炎症を悪化させる恐れがあります。

階段をなるべく使わない、重い荷物を持たないなど、膝への負荷を全体的に減らす意識も大切です。痛みを我慢して無理に動き続けると症状が長引くことがあるため、痛みの出ない範囲で活動量を調整しましょう。

膝裏の痛みにサポーターは有効ですか?

膝用サポーターは、膝関節を適度に固定し動きを安定させることで、膝裏の痛みを和らげる効果が期待できます。歩行時の不安定感がある方や外出時の痛みが心配な方には有用な補助具です。

ただしサポーターだけで痛みの根本原因が解消されるわけではありません。あくまで補助的な役割と考え、筋力トレーニングやストレッチと併用することが望ましいです。自分に合ったサイズと固定力のものを選ぶためにも、購入前に医師や理学療法士に相談してみてください。

変形性膝関節症による膝裏の痛みは完全に治りますか?

変形性膝関節症は軟骨の摩耗が主な原因であり、すり減った軟骨を元通りに再生させるのは現在の医療では困難です。しかし、運動療法や体重管理、薬物療法を組み合わせると痛みを大幅に軽減し、日常生活を快適に送ることは十分に可能です。

症状の進行を遅らせるためにも、痛みが出始めた段階で適切な治療を開始することが大切です。膝裏の痛みを放置せず、早めに専門医と治療方針を相談してください。

膝裏のベーカー嚢腫は自然に消えることがありますか?

ベーカー嚢腫は、もととなる関節内の炎症や半月板損傷が治まると、自然に縮小・消失することがあります。とくに小さな嚢腫は経過観察のみで改善するケースも珍しくありません。

ただし嚢腫が大きい場合や、原因となる関節疾患が持続している場合は自然消失を期待しにくいでしょう。症状が続くようであれば、穿刺(せんし)による排液や関節内の治療を医師に相談することをおすすめします。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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