膝裏の痛み– category –

変形性膝関節症と診断された後、膝の皿周辺だけでなく裏側の痛みや張りに悩むケースは少なくありません。

膝裏の不快感は、関節内の炎症や筋肉の過緊張、あるいはベーカー嚢腫といった複数の要因が重なり合って生じます。

このページでは、膝裏に痛みが生じる背景やベーカー嚢腫の特徴、さらには間違いやすい坐骨神経痛との識別点について網羅的に解説します。

痛みの正体を正しく理解し、適切な対処法を見つけるための情報を整理しました。まずは、ご自身の痛みの原因を探っていきましょう。

膝の裏側が痛むのはなぜ?関節包の炎症と筋肉の緊張が招く不調

膝の裏側には痛みを感じるセンサーが豊富な組織が密集しており、関節内の炎症や筋肉の硬さが直接的な痛みの引き金になります。

炎症が後方へ波及するケースと、筋肉が硬化して血流不全を起こすケースについて、それぞれの成り立ちを解説します。

関節包の炎症が引き起こすズキズキとした痛み

変形性膝関節症では、すり減った軟骨の破片が滑膜を刺激し、関節内に炎症を引き起こします。

この炎症が関節を包む袋である「関節包」の裏側(後方関節包)にまで広がると、膝裏に重苦しい痛みや熱感が生じます。

後方関節包は神経が密に分布しているため、わずかな炎症でも敏感に痛みを感知してしまうのです。

膝裏を支える筋肉の緊張と血流不足による重だるさ

膝関節の変形が進むと、不安定になった膝を支えようとして周囲の筋肉が常に力を入れた状態になります。

特に膝裏にある「膝窩筋(しつかきん)」やふくらはぎの「腓腹筋(ひふくきん)」が過剰に緊張し続けると、筋肉内の血管が圧迫されて血流が悪化します。

この血行不良が発痛物質の蓄積を招き、慢性的な膝裏の痛みやだるさの原因となります。

炎症由来と筋肉由来の痛みの違い

原因痛みの感じ方主な発生タイミング
後方関節包の炎症ズキズキする、熱い安静時、夜間、動き始め
筋肉の過緊張突っ張る、重だるい歩行時、長時間立った後
血流障害ジンジンする、冷える同じ姿勢を続けた時

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変形性膝関節症で膝の裏側が痛む原因|後方関節包の炎症と筋肉の緊張

膝裏の違和感はベーカー嚢腫かも?圧迫感の正体と破裂のリスク

膝の裏側にピンポン玉から卵大のしこりが生じる状態をベーカー嚢腫(のうしゅ)と呼びます。これは腫瘍ではなく、関節液が袋状に膨らんだものです。

関節液が溜まる仕組みとコブの正体

膝関節内にある関節液は、本来であれば潤滑油としての役割を果たしています。

変形性膝関節症の炎症によって関節液が過剰に分泌されると、関節内の圧力が高まり、逃げ場を失った関節液が膝裏へ押し出されます。

これが関節包の弱い部分を風船のように膨らませ、ベーカー嚢腫を形成します。膝を曲げると目立ちにくく、伸ばすと硬く触れるのが特徴です。

破裂による炎症拡大と注意点

嚢腫が限界まで膨張すると、膜が破れて内容液がふくらはぎの筋肉内へ漏れ出すときがあります。これをベーカー嚢腫の破裂と呼びます。

破裂時にはふくらはぎに激痛が走り、広範囲に内出血やむくみが生じます。

この症状は血栓症(エコノミークラス症候群)と非常に似ているため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが極めて重要です。

ベーカー嚢腫の進行度別症状

段階自覚症状日常生活への影響
初期膝裏の違和感、張りほとんどなし
進行期圧迫感、曲げにくさ正座やしゃがみ込みが困難
破裂時ふくらはぎの激痛歩行困難、強い腫れ

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膝裏にできるコブ「ベーカー嚢腫」の症状|圧迫感と破裂した時のリスク

膝を伸ばすと裏側が突っ張る!ハムストリングスの短縮が原因かもしれません

変形性膝関節症の方は、膝が完全に伸びない「伸展制限」を抱えることが多くあります。

無理に膝を伸ばそうとすると膝裏に激痛が走るのは、太もも裏の筋肉であるハムストリングスの短縮が深く関係しています。

膝伸展制限を生む筋肉の短縮

膝の痛みを避けるために軽く膝を曲げて歩く生活を続けると、ハムストリングスは縮んだ状態で硬く固定されます。

この状態で膝を真っ直ぐに伸ばそうとすると、短縮した筋肉が無理やり引き伸ばされ、その付着部である膝裏に強い牽引痛が生じます。

ストレッチ不足や運動不足もこの短縮を助長する大きな要因です。

代償動作が招く筋肉への過剰な負担

ハムストリングスが硬いまま歩行を続けると、骨盤が後ろに傾くなどの代償動作が生じます。そうすると、膝裏だけでなく腰や股関節にも負担が波及してしまいます。

膝裏の突っ張りを解消するには、単に膝を伸ばすだけでなく、骨盤周りを含めた全身のバランスを整え、筋肉の柔軟性を取り戻すことが必要です。

関連する筋肉と症状の関係

筋肉名主な作用短縮時の症状
ハムストリングス膝を曲げる膝を伸ばすと裏側全体が痛む
腓腹筋足首を伸ばすアキレス腱から膝裏が突っ張る
膝窩筋膝の回旋安定膝の奥深くに鋭い痛みが出る

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膝を伸ばした時に膝裏が突っ張る|ハムストリングスの短縮と痛みの関係

痛みの原因は腰?それとも膝?坐骨神経痛との見分け方をチェック

膝裏の痛みは、必ずしも膝関節そのものの異常だけで生じるわけではありません。

腰椎の病気が原因で神経痛が生じ、その痛みが膝裏に出現することもあります。適切な治療方針を立てるために、痛みの発生源を正しく見極めましょう。

腰椎疾患が引き起こす下肢への放散痛

腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの腰の病気は、坐骨神経を圧迫します。

坐骨神経は腰からお尻、太もも裏、膝裏を通って足先まで伸びているため、腰で神経が圧迫されると、膝裏に痛みや痺れを感じる場合があります。

これを放散痛と呼び、膝自体の治療を行っても改善しない痛みの典型例です。

膝由来と腰由来を見極める主要な視点

痛みの原因が膝関節にあるのか、それとも腰にあるのかを区別するためのチェックポイントを挙げます。

  • 膝を動かさなくても常にジンジン痛む場合は腰由来の疑い
  • お尻や太ももの裏にも痺れを伴う場合は坐骨神経痛の可能性
  • 歩くと痛むが前屈みで休むと楽になる場合は脊柱管狭窄症の特徴
  • 膝に腫れや熱感がなく可動域も正常な場合は腰を疑う

ただし、両方の疾患を合併している場合も多いため、最終的な判断は医療機関での画像診断が必要です。

坐骨神経痛との見分け方について詳しく見る
膝裏の痛みが坐骨神経痛ではない見分け方|腰由来か膝関節由来かの判別点

よくある質問

変形性膝関節症による膝裏の痛みは温めるべきですか、それとも冷やすべきですか?

変形性膝関節症による膝裏の痛みが「急な炎症や腫れ」を伴う場合は冷やすのが効果的ですが、慢性的な筋肉の張りや血行不良が原因の場合は温めることが大切です。

特に入浴後に痛みが和らぐようであれば、温めると筋肉の緊張が解け、症状の緩和が期待できます。ご自身の痛みのタイプに合わせて使い分けましょう。

変形性膝関節症でベーカー嚢腫ができたら、その部分をマッサージしても良いですか?

変形性膝関節症で生じたベーカー嚢腫そのものを強くマッサージすることは、嚢腫を破裂させる危険性があるため避ける必要があります。

ただし、嚢腫の周囲にあるふくらはぎや太ももの筋肉を優しくほぐす工夫は、膝裏にかかる負担を減らす上で有効です。しこりを直接刺激せず、周辺のケアに留めてください。

変形性膝関節症の裏側の痛みに効果的な、市販のサポーターの選び方はありますか?

変形性膝関節症の裏側の痛みには、膝裏部分がメッシュ素材などで柔らかくなっているサポーターを選ぶことが重要です。

膝裏まで硬い素材で覆ってしまうと、圧迫により血流が悪化したり、ベーカー嚢腫を刺激したりして逆効果になるときがあります。

膝のお皿を安定させつつ、裏側の圧迫が少ないタイプを使用することが推奨されます。

変形性膝関節症の膝裏の痛みは、治療すれば治りますか?それともずっと続きますか?

変形性膝関節症の膝裏の痛みは、適切な治療とケアを行うと改善する可能性が高いです。

炎症が原因であれば抗炎症治療で、筋肉の硬さが原因であればストレッチやリハビリで症状は軽快します。

放置すると慢性化しやすいため、痛みの原因に応じた対策を早期に開始しましょう。

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