膝がパキパキ鳴って痛い原因は?半月板や靭帯のトラブルを疑うべきサイン

膝がパキパキ鳴って痛い原因は?半月板や靭帯のトラブルを疑うべきサイン

膝を曲げ伸ばしするたびに「パキパキ」と音が鳴り、同時に痛みを感じるなら、軟骨のすり減りや半月板の損傷、あるいは靭帯の異常が隠れている可能性があります。音の種類や痛みの出方は原因によって大きく異なります。

痛みをともなわない音であれば多くは生理的な現象ですが、腫れや引っかかり感が加わったときは変形性膝関節症をはじめとする疾患の初期サインと考えて、早めに対処することが大切です。

ご自身の症状がどのパターンに当てはまるかを知ることで、適切な受診タイミングとセルフケアの方向性が見えてきます。この記事では、膝のパキパキ音と痛みの原因を整理し、受診を急ぐべき具体的なサインを解説します。

目次

膝がパキパキ鳴って痛いとき関節の中では4つの原因が考えられる

パキパキという膝の音は、関節内の構造的な変化や摩擦が主な原因です。痛みの有無によって深刻度は異なりますが、代表的な原因は4つに分けられます。

音のタイプ考えられる原因痛みの有無
ゴリゴリ・ジャリジャリ軟骨のすり減り多くの場合あり
パキッ・ポキッ関節液の気泡通常なし
コキッ・カクン腱や靭帯の移動場合による
ガクッ・引っかかり遊離体・半月板断裂あり

軟骨の表面が粗くなると摩擦音が生じる

膝関節の表面を覆う関節軟骨は、加齢や繰り返しの負荷で徐々にすり減ります。滑らかだった表面が粗くなると、大腿骨と脛骨がこすれ合うたびにゴリゴリ、ジャリジャリといった音が発生しやすくなります。

この摩擦音は「クレピタス」と呼ばれ、変形性膝関節症の特徴的な所見の一つです。膝を深く曲げたときや、階段を下りるときに特に目立ちます。

関節液の中の気泡がはじけて鳴る

膝を急に伸ばしたりひねったりすると、関節液(滑液)の中に溶け込んでいたガスが気泡となり、それがはじける瞬間に「パキッ」という音が出ます。これはキャビテーションと呼ばれる現象で、痛みがなければ病的な意味はほとんどありません。

指の関節を鳴らすのと同じ原理で、一度鳴ると一定時間は鳴りにくくなるのが特徴です。ただし、毎回痛みをともなう場合は別の原因が隠れていることがあります。

腱や靭帯が骨の突起を乗り越える音

膝の曲げ伸ばしのとき、膝蓋骨の周囲にある腱や靭帯が骨の突起部分を乗り越えると「コキッ」という音が出ることがあります。運動不足で筋肉が硬くなっていたり、ウォーミングアップが不十分だったりすると起こりやすい傾向があります。

遊離体が関節内で引っかかるパキパキ音

軟骨や骨のかけらが関節の中で浮遊する「関節内遊離体」がある場合、膝を動かすたびにかけらが挟まり、パキッと音が出ると同時に急な痛みやロッキング(膝が動かなくなる感覚)を引き起こします。

この症状は放置すると軟骨をさらに傷つける恐れがあり、整形外科での早めの評価が望ましいでしょう。

半月板が損傷すると膝のパキパキ音と痛みが出やすい

「膝がパキパキ鳴って痛い」という訴えの背景に、半月板の損傷が潜んでいるケースは少なくありません。半月板が傷つくと関節面の適合性が崩れ、動作のたびに異常な音が出やすくなります。

半月板は膝のクッション兼安定装置

半月板は膝関節の内側と外側に1つずつある三日月形の線維軟骨で、衝撃吸収と荷重分散の働きを担っています。大腿骨と脛骨のあいだに挟まれた状態で位置しており、膝を曲げ伸ばしするたびに微妙に形を変えながら安定性を保っています。

この組織が傷つくと、衝撃吸収力が低下するだけでなく、関節軟骨に直接かかる負担が増えて変形性膝関節症の進行を早めるおそれがあります。

断裂した半月板が関節にはさまるとどんな音が出る?

半月板に亀裂が入ると、裂けた部分が膝の動きにともなって関節面に挟まり込み、パキッ、カクンという音が出ます。特に膝をひねる動作やしゃがみ込みの際に「引っかかり感」を覚えるのが典型的な症状です。

中高年に多い半月板後根断裂では、日常の軽い動作で突然「ポキッ」という音とともに強い痛みが走ることが報告されています。この痛みをともなうポッピング音は、半月板後根断裂を強く疑わせるサインとして知られています。

加齢による変性断裂と外傷性の断裂では症状が異なる

若い世代に多い外傷性の半月板断裂は、スポーツ中のひねり動作で急に起こります。

一方、40代以降に多い変性断裂は、長年の負荷で弱くなった半月板に小さな力が加わるだけで発生し、はっきりしたきっかけがないまま徐々にパキパキ音と痛みが増えていくのが特徴です。

半月板損傷が疑われるおもな症状

  • 膝の曲げ伸ばしでパキパキ・カクンという引っかかり感がある
  • しゃがみ込みや正座が痛くてできない
  • 膝の内側または外側の関節裂隙に押すと痛い部分がある
  • 急に膝が動かなくなるロッキング症状がある

靭帯のトラブルで膝がパキパキ鳴って不安定感が出る場合

靭帯に問題があると、膝がパキパキ鳴るだけでなく「膝がグラつく」「力が抜ける」といった不安定感をともなうことが多い点が特徴です。

前十字靭帯損傷の後に残るパキパキ音

前十字靭帯(ACL)はスポーツ中のジャンプ着地やひねり動作で損傷しやすく、受傷時に「パキッ」という大きな音を自覚する方が多くいます。損傷後に適切な治療を受けなかった場合、膝の前後方向の安定性が低下し、歩行時やしゃがみ込み時にパキパキと異常な音が出続けることがあります。

靭帯が切れたまま放置すると、半月板や軟骨への負担が増して変形性膝関節症に移行するリスクが高まります。受傷後1年を過ぎても膝の不安定感やパキパキ音が残る場合には、再度の画像評価と治療方針の見直しが必要になることもあります。

内側側副靭帯が傷むと膝の内側に痛みが走る

内側側副靭帯(MCL)は膝の内側を支えており、膝に外から力が加わったときに損傷しやすい組織です。MCL損傷があると膝の内側に腫れや圧痛が出るほか、曲げ伸ばしの際に小さなパキパキ音が出る場合もあります。

MRI研究では、MCL損傷がクレピタスと関連している可能性が指摘されています。

靭帯と半月板が同時に損傷する合併パターン

ACL損傷と半月板断裂は同時に起こりやすい組み合わせです。両方が損傷すると、音や痛みの原因が複合的になり、診断も複雑になります。受傷直後は腫れがひどくて正確な診察が難しい場合もあるため、MRIによる画像評価が診断の柱になります。

靭帯損傷の種類おもな症状
前十字靭帯(ACL)膝崩れ、前方への不安定感、受傷時の破裂音
内側側副靭帯(MCL)膝内側の腫れと圧痛、外反ストレスで痛み
後十字靭帯(PCL)膝の後方への落ち込み、階段の下りで不安定

変形性膝関節症が進むとパキパキ音と痛みは増えていく

一般人口の約41%に膝のクレピタスがあるとされますが、変形性膝関節症の患者では約81%に上るという報告があります。音の頻度と疾患の進行には密接な関係があります。

軟骨がすり減るほど音が増える理由

変形性膝関節症では、軟骨の劣化が進むにつれて関節面のなめらかさが失われ、膝を動かすたびに摩擦音が出やすくなります。さらに軟骨の下にある骨(軟骨下骨)も硬化し、骨同士がぶつかるような音を生むことがあります。

クレピタスを感じる頻度が増えるほど、将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高まることが大規模な疫学調査で報告されています。頻繁にパキパキ音を感じている方は、早めの検査を受けるとよいでしょう。

骨棘の形成が音の性質を変える

変形性膝関節症が進行すると、関節の縁に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるとげのような骨の突出が生じます。骨棘が膝蓋大腿関節や脛骨大腿関節の動きを妨げ、これまでとは異なるゴリゴリ、ギシギシという音が出るようになる場合もあります。

骨棘はレントゲンでも確認しやすい所見であり、MRIではさらに小さな骨棘も映し出せます。音の質が変わったと感じたら、関節構造に変化が起きているサインかもしれません。

体重と膝への負荷が症状の進行を左右する

体重が1kg増えると膝にかかる負荷は歩行時に約3~5kg増加するとされています。過体重は軟骨のすり減りを加速させ、パキパキ音と痛みの悪化につながりやすくなります。逆に言えば、体重を適正範囲に近づけることが症状の進行を抑える有力な手段になります。

パキパキ音の頻度が上がったら変形性膝関節症を疑う

日常生活のなかで膝の音が「以前より明らかに増えた」「動作ごとに毎回鳴る」と感じたら、それは変形性膝関節症が進行しているシグナルかもしれません。

とくに朝の動き始めに強い音と痛みが出て、動いているうちにやや和らぐパターンは初期変形性膝関節症に多い特徴です。

変形性膝関節症の段階パキパキ音と痛みの傾向
初期(軟骨の部分的すり減り)動き始めに音と軽い痛み。休むと消える
中期(軟骨が広範囲にすり減る)音が頻繁になり、歩行・階段で痛む
進行期(骨同士が接触)常にゴリゴリ音。安静時にも痛みが続く

膝のパキパキ音に痛みがなければ心配しなくてよい?

痛みをともなわない膝の音は、多くの場合は治療を急ぐ必要のない生理的な現象です。健康な人の約36%にもクレピタスがみられるという調査結果があります。

生理的な音と病的な音を分けるポイント

生理的な音は、一時的で再現性が低く、痛みや腫れをともないません。関節液の気泡がはじける音や、腱の移動音がこれに該当します。一方、病的な音は毎回同じ動作で再現性があり、痛み・腫れ・引っかかり感のいずれかをともなう場合が多いという違いがあります。

膝のパキパキ音が気になったら、まず「音が出るときに痛みがあるか」「膝のまわりに腫れや熱感があるか」を確認してみてください。どちらもなければ緊急性は低いと考えてよいでしょう。

項目生理的な音病的な音
再現性一時的で毎回同じではない同じ動作で毎回鳴る
痛みなしあり
腫れ・熱感なしともなうことが多い

「音=壊れている」わけではないと知る

膝から音がするだけで「自分の膝はもうダメだ」と感じてしまう方もいますが、音が鳴ること自体は関節の機能低下や筋力低下と直接結びつかないという報告が複数あります。

音に対する過度な不安がかえって運動を避ける行動につながり、筋力が落ちて膝の安定性が低下するという悪循環に陥るおそれがあります。

膝のパキパキ音が気になっても痛みがなければ、まずは適度な運動を続けることが関節の健康を守るうえで大切です。

運動を控えすぎると逆に膝の調子が悪くなる

膝の音を恐れて運動をやめてしまうと、太ももの筋力が落ちて膝を支えるちからが弱くなります。筋力が低下した状態では関節への負担が増え、痛みが出やすくなるという研究結果もあります。

音は気になるけれど痛みがないという方は、ウォーキングや水中運動など膝への衝撃が少ない運動から始めるとよいでしょう。

実際に、膝のクレピタスがある方でも適度な運動を続けたグループのほうが、運動を避けたグループよりも膝の機能が維持されたとする報告があります。「音が出ても痛みがなければ動いてよい」という基本方針を覚えておくと、不安なく運動を継続できます。

膝がパキパキ鳴って痛いなら受診を検討すべきタイミング

以下に挙げるような症状がある場合は、整形外科への受診をおすすめします。早期に原因を特定すると、治療の選択肢も広がります。

痛みや腫れをともなう音は早めの整形外科受診を

パキパキ音に加えて、膝のまわりが腫れている、触ると熱を持っている、曲げると痛い、といった症状があれば関節内に炎症が起きている可能性があります。

滑膜炎や半月板損傷が背景にある場合、放置すると軟骨の劣化が加速することがあるため、できるだけ早く専門医の診察を受けてください。

膝がロッキングする・力が入らないとき

膝を曲げた状態から伸ばそうとしても途中で引っかかって動かなくなる「ロッキング」や、歩行中に突然膝の力が抜けて崩れる「膝崩れ(giving way)」は、半月板の断裂片や遊離体が関節内で挟まっているサインです。

これらの症状は日常生活の安全にも関わるため、速やかに受診してください。

画像検査でわかる半月板と靭帯の状態

整形外科ではまずレントゲンで骨の変形や関節の隙間の狭まりを確認します。半月板や靭帯の状態を詳しく調べるにはMRI検査が有用で、断裂の位置や程度まで評価できます。

レントゲンだけでは異常なしと言われた方でも、MRIで初めて半月板損傷が見つかるケースは珍しくありません。

検査の種類わかること
レントゲン骨の変形、関節裂隙の狭小化、骨棘の有無
MRI半月板損傷、靭帯損傷、軟骨の状態、骨髄浮腫
超音波関節液の貯留、滑膜の厚み、腱の状態

膝のパキパキ音と痛みを和らげるセルフケアと保存療法

手術をせずに膝のパキパキ音と痛みを軽減する方法はいくつかあります。日常生活でできるセルフケアと、医療機関で受けられる保存療法を組み合わせることが効果的です。

大腿四頭筋の強化で膝を安定させる

太ももの前面にある大腿四頭筋は、膝関節を安定させる最も重要な筋肉群です。この筋肉を強化すると膝蓋骨の動きが安定し、パキパキ音の軽減につながる場合があります。

椅子に座ったまま脚をまっすぐ伸ばして5秒間キープする「膝伸ばし体操」は、膝に痛みがある方でも取り組みやすいトレーニングの一つです。

運動中に音が鳴っても痛みが増えなければ続けてかまいません。痛みが増す場合は無理をせず、運動の種類や強度を医師や理学療法士に相談してください。

体重管理で膝への負担を軽くする

過体重は膝関節にかかる力を大幅に増やし、軟骨のすり減りを加速させます。体重を5%減らすだけでも膝の痛みが有意に改善したという報告があり、食事の見直しと適度な有酸素運動の組み合わせが推奨されています。

ヒアルロン酸注射や物理療法で痛みに対処する

ヒアルロン酸の関節内注射は、関節液の粘弾性を補って膝の動きを滑らかにし、パキパキ音と痛みの両方を軽減する効果が期待できます。注射は通常1~2週間おきに数回行われ、効果には個人差がありますが、多くの方で数週間から数か月にわたって症状の改善が報告されています。

温熱療法や電気刺激などの物理療法も、血行を促進して炎症を和らげるのに有用です。セルフケアと保存療法を組み合わせても改善が見られない場合には、手術的な治療について担当医と相談してみてください。

  • 大腿四頭筋を中心とした筋力トレーニング
  • ウォーキングや水中運動などの低衝撃有酸素運動
  • ストレッチによる膝周囲の柔軟性の維持
  • 必要に応じたサポーターやインソールの使用

よくある質問

膝のパキパキ音は軟骨がすり減っているサインですか?

膝のパキパキ音がすべて軟骨のすり減りを示しているわけではありません。関節液の中の気泡がはじける音や、腱が骨の突起を乗り越える音など、生理的な原因でも同様の音が出ます。

ただし、音に加えて動作時の痛みや膝のこわばりがある場合は、軟骨の劣化や変形性膝関節症の初期段階である可能性があります。痛みをともなうパキパキ音が繰り返し起こるようであれば、整形外科で画像検査を受けて原因を調べることをおすすめします。

膝がパキパキ鳴って痛いとき何科を受診すればよいですか?

膝のパキパキ音に痛みがともなう場合は、整形外科を受診してください。整形外科では膝の身体所見をとったうえでレントゲンやMRIなどの画像検査を行い、半月板損傷や靭帯損傷、変形性膝関節症などの原因を総合的に判断します。

かかりつけの内科にまず相談しても問題ありませんが、膝の画像検査や専門的な治療は整形外科で行われるため、最終的には整形外科の受診が必要になるでしょう。

膝のパキパキ音と痛みに対して自分でできるセルフケアはありますか?

大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)を鍛える筋力トレーニングや、ウォーキング・水中運動などの低衝撃の有酸素運動が膝の安定性を高め、パキパキ音と痛みの軽減に役立つ場合があります。体重が過多気味であれば、減量も膝への負担を減らす効果的な方法です。

ただし、ロッキング症状や膝崩れが起きている場合はセルフケアだけで対処するのは困難なため、まず整形外科を受診して原因を確認してから運動に取り組むようにしてください。

半月板損傷で膝がパキパキ鳴る場合に手術は必要ですか?

半月板損傷のすべてが手術を必要とするわけではありません。小さな断裂で痛みが軽い場合は、筋力トレーニングや生活動作の改善などの保存療法で症状が落ち着くことも珍しくありません。

ロッキング症状が頻繁に起きる場合や、保存療法を数か月続けても症状が改善しない場合には、関節鏡を使った手術(半月板縫合術や部分切除術)が検討されます。治療方針は断裂の位置や形状、年齢、活動レベルによって変わるため、担当医とよく相談して決めることが大切です。

膝のパキパキ音を放置すると変形性膝関節症に進行しますか?

痛みのない生理的なパキパキ音をそのままにしても、それだけで変形性膝関節症に進行するとは限りません。しかし、膝のクレピタスを頻繁に感じる人ほど将来変形性膝関節症を発症するリスクが高いという疫学データがあります。

痛みや腫れをともなうパキパキ音がある場合は、半月板損傷や軟骨の劣化がすでに始まっている可能性があるため、放置せず整形外科で原因を調べておくことで、進行を遅らせる対策を早い段階で始められます。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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