膝の「ミシミシ」音は痛みがなくても要注意?スムーズな動きを保つストレッチ

膝の「ミシミシ」音は痛みがなくても要注意?スムーズな動きを保つストレッチ

膝を曲げ伸ばしするたびに「ミシミシ」と音が聞こえると、関節がどこか壊れているのではないかと不安になるものです。痛みのない膝の音であっても、軟骨や周囲組織に変化が起き始めているサインかもしれません。

この記事では、膝のミシミシ音が生じる原因を整理し、変形性膝関節症の予防やスムーズな動きの維持に役立つストレッチを具体的にご紹介します。

一般成人の約4割が膝の音を経験しているとの報告もありますが、放置すれば痛みへ発展する可能性があります。痛みが出る前に始めるケアこそ、膝を長く守る第一歩です。

目次

膝がミシミシと鳴る原因は軟骨のすり減りだけではない

膝のミシミシ音には複数の発生源があり、軟骨の摩耗だけが原因とは限りません。関節液の気泡や靭帯の動きなど、痛みを伴わない音の多くは加齢に伴う自然な変化から生まれます。

音の種類おもな原因痛みの有無
パキッ・ポキッ関節液中の気泡の破裂多くは痛みなし
コリコリ・カクカク靭帯や腱が骨の突起を乗り越える痛みなしが多い
ゴリゴリ・ミシミシ軟骨表面の凹凸による摩擦進行すると痛みを伴う

関節液に含まれる気泡が弾けて音になる

膝関節の内部は滑液(かつえき)と呼ばれる液体で満たされています。この液体には窒素や二酸化炭素などのガスが溶け込んでおり、膝を急に動かすと圧力差で気泡が生まれ、それが弾けるときに「パキッ」という音が鳴ります。

指の関節をポキポキ鳴らすときと同じ現象で、基本的には組織へのダメージはありません。ただし音が頻繁に繰り返される場合は、関節の動きや柔軟性に偏りが出ている可能性があるため、ストレッチで柔軟性を整えておくと安心でしょう。

気泡による音は一度鳴ると数十分は再発しにくいため、何度も立て続けに鳴る音とは区別して考える必要があります。

靭帯や腱が骨の上を滑るときの音

膝の周囲には大腿四頭筋の腱や腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)など、多くの軟部組織が走っています。これらの組織が膝の曲げ伸ばしに伴って骨の突起を乗り越えるとき、コリコリ・カクカクといった音が出ることがあります。

運動不足や加齢で筋肉や腱の柔軟性が低下すると、こうした音が増えやすくなります。とくに長時間のデスクワークや車の運転で膝を曲げたまま過ごす時間が長い方は、筋肉や腱が短縮して膝の動きがスムーズさを欠くことがあります。

痛みがなくても音の頻度が増えたと感じたら、膝まわりのストレッチを習慣にすることが対策の第一歩です。

軟骨表面の凹凸が生む摩擦音

関節軟骨の表面がなめらかなうちは、膝を動かしても音はほとんど生じません。加齢や体重の負荷で軟骨の表面がわずかに粗くなると、骨と骨の間でこすれるような「ミシミシ」「ゴリゴリ」という音が聞こえ始めます。

この段階ではまだ痛みを感じないケースも少なくありません。しかし研究では、膝の音を自覚している人は将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが高いことが報告されています。音だけの段階から予防に取り組むことが、関節を長持ちさせる鍵といえるでしょう。

痛みがなくても膝のミシミシ音は変形性膝関節症の前ぶれになり得る

「痛くないから大丈夫」と考えるのは早計です。大規模な追跡調査では、痛みのない膝であっても音を自覚している人は、将来の変形性膝関節症の発症率が有意に高いことが示されています。

痛みのない膝でも音がある人は発症リスクが高い

米国の変形性関節症イニシアティブ(OAI)のデータを用いた研究によると、膝に痛みがなくても「ミシミシ」「ゴリゴリ」といった音を自覚している人は、音のない人と比べて変形性膝関節症を発症しやすい傾向がありました。

音は膝関節の構造変化をとらえる早期のサインとして注目されています。

とくに、もともとレントゲンで軽度の変化が確認されている膝では、音の出現が症状進行のきっかけになることもあるため、痛みがない時期のセルフケアが大切です。音を感じたら膝まわりのストレッチや筋力維持を意識し、早い段階から関節への負担を減らす生活習慣を心がけてください。

膝蓋大腿関節の軟骨変化とミシミシ音の深い結びつき

膝のなかでも、膝蓋骨(しつがいこつ=膝の皿)と大腿骨の間にある膝蓋大腿関節(しつがいだいたいかんせつ)は、ミシミシ音が出やすい部位です。MRIを使った研究では、膝のミシミシ音は膝蓋大腿関節の軟骨損傷と関連性が深いことが明らかになっています。

膝蓋大腿関節は階段の昇降やしゃがみ動作で大きな力がかかるため、日ごろから大腿四頭筋のストレッチで膝蓋骨の動きをスムーズに保つことが予防につながります。

日常動作のなかで見逃しやすい初期サイン

変形性膝関節症の初期には、朝起きたときの膝のこわばりや長時間座った後の動き始めの違和感が現れます。こうした症状は数分で消えるため見過ごしがちですが、膝のミシミシ音と合わさっている場合は要注意です。

  • 朝の起床後、膝の動きがぎこちなく感じる
  • 椅子から立ち上がる瞬間に膝がこわばる
  • しゃがむときにミシミシ音が以前より大きくなった

上記のような変化に気づいたら、まずはストレッチや軽い運動で膝まわりの血行と柔軟性を保つことから始めてみてください。

膝のミシミシ音を和らげる毎日のストレッチ3種

ストレッチで膝まわりの筋肉と腱の柔軟性を高めると、関節への摩擦や負担が減り、ミシミシ音の軽減が期待できます。以下の3種目はいずれも自宅で道具なしで行え、変形性膝関節症の痛み予防にも有効とされています。

大腿四頭筋を伸ばして膝蓋骨の動きを改善する

太ももの前面にある大腿四頭筋は膝蓋骨を上方向に引っ張る筋肉です。この筋肉が硬くなると膝蓋骨の動きが制限され、膝を曲げるときにミシミシという音が出やすくなります。

壁や椅子の背に片手を添えて立ち、反対側の足首を手でつかんでかかとをお尻に近づけてください。太ももの前面に心地よい伸びを感じたら20〜30秒キープします。左右交互に2〜3回ずつ繰り返しましょう。バランスが取りにくい方は壁にしっかり体重を預けて行うと安定します。

ハムストリングスを柔軟にして膝の屈伸を楽にする

太ももの裏側にあるハムストリングスは膝を曲げるときに働く筋肉です。ここが硬いと膝関節にかかる圧力が増し、軟骨への負担が大きくなるといわれています。

床に片脚を伸ばして座り、もう片方の膝を軽く曲げます。伸ばしたほうの脚のつま先に向かって上体をゆっくり倒し、太もも裏が伸びる感覚を得られたら20〜30秒キープしてください。反動をつけずにじんわり伸ばすのがポイントです。

ふくらはぎからアキレス腱まで伸ばして膝への負担を減らす

ふくらはぎの筋肉は足首の動きを支えていますが、硬くなると歩行時に膝が代償的に余分な負荷を受ける場合があります。壁に手をつき、伸ばしたい足を後ろに引いてかかとを床につけたまま前脚の膝を軽く曲げます。

ふくらはぎからアキレス腱にかけての伸びを感じたら20〜30秒キープしましょう。膝のストレッチとセットで行うと、下半身全体の柔軟性がバランスよく保たれます。

ストレッチ3種の比較

ストレッチ名おもな対象筋期待される効果
大腿四頭筋ストレッチ太もも前面膝蓋骨の動きを改善
ハムストリングスストレッチ太もも裏面膝関節の圧力を軽減
ふくらはぎストレッチ下腿後面歩行時の膝負担を軽減

ストレッチの効果を高める頻度とタイミングの工夫

正しいフォームで行っていても、頻度やタイミングを誤ると効果は半減します。変形性膝関節症の予防を意識するなら、毎日の短い時間を膝のストレッチに充てる習慣が欠かせません。

タイミングおすすめの理由
朝の起床後就寝中に固まった筋肉と関節をほぐし、一日の動き始めを滑らかにする
入浴後体温が上がり筋肉が温まった状態は伸びやすく、柔軟性の向上効果が高い
長時間座った後血流の低下で固まった膝まわりをリセットし、こわばりを防ぐ

朝の起床時と入浴後が膝ストレッチに向いている

睡眠中は長時間にわたって膝を動かさないため、起床直後は関節液の循環が滞り、膝がこわばりやすい時間帯です。朝のストレッチで関節液の流れを促すと、膝のミシミシ音も軽くなることがあります。

入浴後は体温の上昇で筋肉が柔らかくなっているため、伸びやすく筋繊維を傷めるリスクも低いタイミングです。お風呂上がりの5分間をストレッチに充てるだけでも、柔軟性の維持に十分な効果が見込めます。

1回20〜30秒キープで筋肉の柔軟性を高めるコツ

ストレッチで伸ばした姿勢を保つ時間は、1回あたり20〜30秒が目安です。10秒以下では筋肉の伸張反射が残って十分に伸びず、60秒以上保持しても追加の効果はそれほど大きくないとされています。

呼吸を止めずにゆっくり吐きながら伸ばすと、筋肉がリラックスして柔軟性が高まりやすくなります。各ストレッチを左右2〜3回ずつ行えば、1日の習慣は合計でも10分以内に収まるでしょう。

痛みが出たら無理せず中止が鉄則

ストレッチ中に鋭い痛みを感じたら、それは膝や筋肉からの警告信号です。痛みを我慢して伸ばし続けると、靭帯や腱を損傷してかえって症状を悪化させるおそれがあります。

「心地よい伸び」と「痛み」の境目を意識し、気持ちよく伸びている範囲で止めてください。変形性膝関節症で膝に炎症がある場合や、腫れが引かない場合はストレッチを一時中断し、医師に相談するようにしましょう。

ストレッチだけでは足りない 膝まわりの筋力を保つ運動

ストレッチで得られるのは柔軟性であり、膝関節を安定させるには筋力の維持も同時に行う必要があります。膝まわりの筋肉を鍛えると衝撃吸収力が高まり、ミシミシ音の原因となる軟骨への直接的な負担を和らげることにつながります。

運動名鍛えられる部位難易度
膝伸展運動大腿四頭筋低い(座ったまま可能)
ウォールシット大腿四頭筋・臀筋中程度
クッション挟み内転筋群低い(座ったまま可能)

椅子に座って行う脚の伸展運動

椅子に深く腰かけ、片脚の膝をゆっくり伸ばして床と平行になるまで持ち上げます。太ももの前面にしっかり力が入る感覚を確かめたら5秒間キープし、ゆっくり下ろしてください。

左右交互に10回ずつ、1日2セットが目安です。テレビを見ながらでも行えるため習慣化しやすく、大腿四頭筋の筋力低下を防ぐ基本的な運動になります。

壁に背中をつけて行うウォールシット

壁に背中と頭をつけ、足を肩幅に開いて壁から一歩前に出します。そのまま背中を壁に沿わせながら腰を落とし、太ももが床とおよそ平行になる位置で10〜20秒キープします。

膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。スクワットに比べて膝への剪断力(せんだんりょく=横にずれる力)が小さいため、膝にミシミシ音がある方でも取り組みやすい運動です。慣れてきたらキープ時間を少しずつ延ばし、30秒を目標にしてみてください。

クッションを内ももで挟むアダクション運動

椅子に座り、両膝の間に丸めたタオルやクッションを挟みます。内ももに力を入れてクッションをぎゅっと5秒間つぶし、ゆっくり力をゆるめてください。10回を1セットとし、1日2セットを目安に行います。

内転筋群を鍛えると膝関節の横方向の安定性が高まり、歩行中のぐらつきが減ります。ストレッチと組み合わせることで柔軟性と筋力の両面から膝を守れるため、セットで取り入れるのがおすすめです。

膝のミシミシ音がひどくなったら早めに整形外科を受診する

音だけの段階であれば、セルフストレッチと筋力トレーニングで対処できる場合が多いでしょう。しかし音に加えて痛みや腫れが出始めたら、変形性膝関節症が進行している可能性があるため、整形外科の受診を検討してください。

腫れや熱感を伴うなら変形性膝関節症が疑われる

膝のミシミシ音に加えて関節が腫れている、あるいは触ると熱を感じるといった症状がある場合は、関節内で炎症が起きている可能性があります。変形性膝関節症では滑膜(かつまく)が刺激を受けて腫れ、関節液が過剰にたまる「関節水腫(かんせつすいしゅ)」を起こすことも珍しくありません。

このような状態でストレッチを続けると、かえって炎症を悪化させるおそれがあります。まず医師に炎症の程度を診てもらい、治療方針が定まってからセルフケアを再開するほうが安全です。

消炎鎮痛薬やヒアルロン酸の関節内注射など、症状に応じた治療を受けたうえで運動療法を再開するのが一般的な流れとなります。

階段の上り下りで膝が不安定になったとき

ミシミシ音とともに、階段を下りるときに膝がガクッと崩れそうになる感覚が出てきたら注意が必要です。筋力の低下だけでなく、半月板や靭帯の損傷が隠れている可能性もあります。

  • 膝が急にカクンと折れそうになる
  • 正座やしゃがみ動作がつらくなってきた
  • 歩行中に膝が横にぶれる感覚がある

こうしたサインが見られる場合、レントゲンやMRIによる画像検査で関節の状態を確認することが望ましいです。

セルフケアと医療を上手に組み合わせる

ストレッチや筋力トレーニングは変形性膝関節症の予防と進行抑制に効果がある一方、それだけで軟骨が再生するわけではありません。医師による診断と治療計画があってこそ、セルフケアの効果を安心して引き出せます。

受診後に「運動療法を続けてください」と指導を受けた場合、この記事でご紹介したストレッチや筋力トレーニングをベースに取り組むとよいでしょう。定期的な経過観察を受けながらセルフケアを続けることが、膝のスムーズな動きを長く維持する秘訣です。

よくある質問

膝のミシミシ音はストレッチで完全に消えますか?

ストレッチで膝まわりの筋肉や腱の柔軟性が高まると、音が軽減するケースは多くあります。ただし、すでに軟骨表面に凹凸がある場合は摩擦音を完全にゼロにすることは難しいかもしれません。

ストレッチの目的は音を消すよりも、関節への負担を減らして変形性膝関節症の進行を予防することにあります。音が残っていても痛みや腫れがなければ、ストレッチと筋力トレーニングを続けながら経過を見てください。

変形性膝関節症の初期段階では膝のミシミシ音にどう対処すればよいですか?

初期の変形性膝関節症では、運動療法が治療の柱になります。大腿四頭筋やハムストリングスのストレッチに加えて、膝まわりの筋力トレーニングを日課にすることで、関節を支える力を維持できます。

体重管理も関節への負担を左右する大きな要素です。膝に違和感がある段階で整形外科を受診し、軟骨の状態を画像検査で確認したうえで、医師と一緒に運動メニューを組み立てると安心でしょう。

膝のミシミシ音があるときに避けたほうがよい運動はありますか?

膝に大きな衝撃が加わるジャンプ動作や、深いスクワットのように膝を強く曲げる運動は、軟骨への圧力が高まりやすいため注意が必要です。急な方向転換を繰り返すスポーツも膝への負荷が大きくなります。

水中ウォーキングや平地での通常歩行、椅子を使った軽い筋力トレーニングなど、膝への衝撃が少ない運動を選ぶと安全にケアを続けられます。どの運動が自分の膝の状態に合っているかは、整形外科や理学療法士に相談して判断するのが確実です。

膝のミシミシ音は加齢とともに必ず悪化しますか?

加齢は軟骨の変化を進めやすい要因のひとつですが、膝のミシミシ音が必ずしも年齢に比例して悪化するわけではありません。筋力や柔軟性を維持し、適正体重を保っている方のなかには、音があっても長期にわたり痛みなく過ごしているケースが多く見られます。

大切なのは「音が出た=もう手遅れ」と決めつけず、早い段階からストレッチや筋力トレーニングに取り組むことです。運動の継続が関節の健康を長く守る支えになります。

膝のストレッチを行う前に膝を温めたほうが効果的ですか?

ストレッチ前に蒸しタオルやホットパックで膝まわりを5〜10分ほど温めると、筋肉や腱が柔らかくなり、伸びやすい状態を作れます。入浴後に行うのと同様の効果を得られるため、朝や日中にストレッチする際にはとくにおすすめです。

ただし膝に腫れや熱感があるときは温めると炎症を悪化させるおそれがあるため、その場合は温めずに安静を優先し、整形外科で状態を確認してもらいましょう。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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