20代から40代の男性で「最近髪の毛が薄くなってきたかも…」
と感じていませんか? AGA(男性型脱毛症)は、生え際やつむじ(頭頂部)から徐々に髪が薄くなる進行性の脱毛症です。放っておくと薄毛が進行してしまうため、早めに症状に気づきセルフチェックや検査で現状を把握することが大切です。
本記事では、AGAの代表的な症状や脱毛のパターン、専門医による検査方法、自分でできるセルフチェックの仕方をわかりやすく解説します。髪のボリュームが気になり始めた方はぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
AGA(男性型脱毛症)とは?
AGAの概要
AGAとは男性型脱毛症のことで、思春期以降の男性によくみられる進行性の薄毛の症状です。男性ホルモンの影響で前頭部の生え際や頭頂部(つむじ周辺)の髪が徐々に細く短くなり、抜け毛が増えていきます。
その結果、おでこが広がったり頭頂部の地肌が透けて見えるようになり、放置すると薄毛の範囲が拡大していきます。
AGAは進行型で自然に治ることはほとんどなく、進行を止めない限り少しずつ脱毛が進んでしまう特徴があります。
逆に、側頭部や後頭部の髪はAGAでは影響を受けにくく、しっかり残るのが一般的です。このように、特定の部位に限局して薄毛が進むのがAGAの大きな特徴です。

20〜40代にもみられる薄毛
薄毛というと中高年のイメージがありますが、AGAは若い方にも起こりえます。実際、日本人男性の場合、20代で約1割、30代で2〜3割、40代で約3割の方にAGAの症状がみられるとも言われます。
また最近では、ストレス社会の影響か若年化も指摘されており、20代前半から生え際が後退し始めるケースも珍しくありません。

ただし年齢が上がるほど発症率も高まる傾向があり、50代では約半数が薄毛の進行を自覚するとされています。
【表1】に年代別のAGA発症率の目安を示します。
【表1】
年代 | AGA発症率(目安) |
---|---|
20代 | 約10% (10人に1人) |
30代 | 約20〜30% (3〜5人に1人) |
40代 | 約30% (3人に1人) |
50代 | 約50% (2人に1人) |
このようにAGAは決して珍しいものではなく、20〜40代の働き盛りでも十分起こりうる脱毛症です。家族や周囲に薄毛の方がいる場合は、自身も早めにチェックしておくと安心でしょう。

AGAの原因と進行メカニズム
AGAは主に男性ホルモン(テストステロン)が変換されてできるDHT(ジヒドロテストステロン)という物質が毛根に作用し、髪の成長サイクルを乱すことで起こります。
DHTの影響で髪の毛の成長期が短縮し、十分太く伸びる前に抜けてしまうため、細く短い毛(産毛)の割合が増えてボリュームダウンしていきます。また、DHTは頭皮の皮脂分泌も増やすため、毛穴環境が悪化して脱毛が進行しやすくなります。

こうしたホルモン感受性は遺伝することも知られており、家系に薄毛の人が多い場合はAGAになりやすい傾向があります(詳細は後述)。もっとも、生活習慣やストレスも影響しうるため、遺伝だけが全てではありません。
いずれにせよAGAは進行性であるため、初期段階で気づいて対処することが大切になります。
AGAの症状と脱毛の進行パターン
AGAによる薄毛は、ほとんどが次に述べる特有の初期症状から始まり、徐々に一定のパターンで進行していきます。ここではAGAに見られる主な症状と、脱毛の進行パターンについて解説します。
主なAGAの初期症状
AGAの初期段階では、以下のような髪や頭皮の変化が現れやすくなります。鏡や日常生活でこのような症状を感じたら、AGAの始まりかもしれません。

【表2】AGAにみられる代表的な初期症状とサイン
症状・サイン | 具体的な状態 |
---|---|
髪が細く軟らかくなった(産毛化) | 太かった髪が徐々に細く短くなり、産毛状の柔らかい髪が増える。ハリやコシがなくなり、セットが決まりにくくなる。 |
生え際・つむじの毛量減少 | 額の生え際がおでこの両端から後退しはじめる。または頭頂部(つむじ周辺)の地肌が透けて見えるようになる。側頭部や後頭部の毛量に変化がない一方、前頭部・頭頂部だけ薄くなるのが特徴。 |
抜け毛の増加 | 以前より抜け毛の本数が増える。朝起きたとき枕元に落ちている髪の毛が増える、シャンプー時に排水口に溜まる抜け毛が増える等で気づく場合が多い。 |
頭皮のかゆみ・脂っぽさ | 頭皮にかゆみを感じたり、触ると皮脂でベタつく状態になる。皮脂の過剰分泌で毛穴が詰まり、炎症を起こしている可能性がある。 |

初期には表2のような変化が少しずつ進みます。例えば「髪が細くなった気がする」「額の後退が進んだ気がする」といった違和感です。特に髪質の変化(軟毛化)や抜け毛量の増加は見逃されがちですが、AGAのサインであることが多いです。
また頭皮のかゆみは、AGAそのものの症状というより頭皮環境の悪化による付随症状ですが、AGAが進行している場合によく見られます。
これら初期症状はまだ軽度で見た目には分かりにくいことも多いですが、放置すると次第に周囲からも薄毛がわかる段階へと進んでいきます。
脱毛が起こる部位と3つの薄毛パターン
前述の初期症状が進行すると、AGA特有の脱毛パターンがはっきりしてきます。
AGAでは主に額の生え際(前頭部)と頭頂部(つむじ周辺)の2ヶ所で薄毛が進みますが、個人によって進行の仕方に違いがあり、大きく分けて次の3タイプに分類されます。

【表3】AGAにおける薄毛進行パターン(主な3タイプ)
薄毛の型(通称) | 脱毛が進行しやすい部位 | 特徴 |
---|---|---|
M字型(前頭部後退型) | 額の生え際(左右のこめかみ付近) | おでこの両端から後退が進み、正面から見ると髪の生え際がアルファベットの「M」字のように見える。一般に「M字ハゲ」と呼ばれるタイプで、比較的若い段階(初期)から現れやすい。 |
O字型(頭頂部薄毛型) | 頭頂部(つむじ周辺) | 頭頂部の髪が円形に薄くなり、上から見たときにアルファベットの「O」字のように地肌が露出する。つむじハゲとも呼ばれるタイプで、生え際より進行に気づきにくい傾向がある。 |
U字型(前頭部全体型) | 前頭部全体(額中央を含む) | 額の生え際全体が後退し、おでこの生え際がアルファベットの「U」字型に後退する。M字型がさらに進行した状態であることが多く、前頭部から頭頂部まで広範囲で薄毛が進むパターン。 |

AGAでは、多くの方が表3のいずれか、または複数を組み合わせたパターンで脱毛が進行します。例えば最初はM字型だったのが、進行して頭頂部も薄くなりM字+O字型になる場合や、最初から前頭部全体が薄くなるU字型傾向の方もいます。
どの型でも共通するのは、頭の上部(前頭部~頭頂部)にかけて薄毛が目立ち、側面や後ろは比較的髪が残るという点です。「自分の薄毛はどのタイプか」を知っておくと、セルフチェックや治療の際の目安になります。

AGAの進行度合い(ハミルトン・ノーウッド分類)
AGAの薄毛の進行度は、医学的にはハミルトン・ノーウッド分類と呼ばれる指標で7段階に分類されます。この分類では薄毛の範囲や程度をステージI〜VIIで表し、数字が大きくなるほど脱毛範囲が広く重度になります。
以下に各ステージの概要を示します。
【表4】AGAの進行度(ハミルトン・ノーウッド分類に基づく目安)
ステージ | 脱毛の進行状態 |
---|---|
I(1型) | AGA初期。生え際がわずかに後退しているが、ぱっと見には薄毛と分からない程度。 |
II(2型) | 生え際の後退がIより進行し、額が少し広がったのが見てわかる状態。 |
III(3型) | 生え際が明らかに後退しM字型が顕著になる。全体の髪のボリュームも若干減ってきている。 |
IV(4型) | 生え際の深い後退に加え、頭頂部も薄毛が拡大した状態。前頭部と頭頂部に薄毛部分が分離して存在している。 |
V(5型) | 前頭部と頭頂部の薄毛部分が拡大し、隙間が狭くなった状態(繋がりかけている)。わずかに髪が残る帯状の部分を挟んで、前と上に大きな薄毛範囲がある。 |
VI(6型) | 前頭部と頭頂部の薄毛部分がつながった状態。頭頂部から前頭部にかけて地肌が広く露出している。 |
VII(7型) | AGA最重度。頭頂部から後頭部にかけて大部分の髪が失われ、側頭部と後頭部に僅かに毛髪が残るだけの状態。 |

ご自身でセルフチェックする際、「自分はまだII型くらいかな?」といった目安をつけておくと、薄毛の進行具合を把握しやすくなります。
一般的にはIII型(生え際が明らかに後退してきた)あたりから、見た目にも薄毛が目立ち始めると言われます。
AGAはステージが進むほど治療による回復も難しくなるため、可能であればII型までの早期に対策を始めるのが望ましいとされています。
もっとも正確な進行度の判断は専門医に任せる必要がありますが、セルフチェックでも薄毛の程度を大まかに評価することはできます。
前頭部・生え際にみられるAGAの症状(M字型)
AGAの症状が現れやすい部位の一つが前頭部、いわゆるおでこや生え際の部分です。ここでは額の生え際が後退するタイプの薄毛(M字型)の特徴やセルフチェック方法について説明します。

M字型薄毛(生え際の後退)の特徴
額の両サイドから髪が薄くなるM字型の薄毛は、AGA初期によく見られるパターンです。鏡で正面から見たとき、生え際のラインがM字状に凹んでいるのが特徴で、俗に「M字ハゲ」とも呼ばれます。
具体的には、こめかみ上部の生え際から徐々に後退が進み、額の左右に三日月形の薄毛部分ができます(アルファベットのMの両山にあたる部分)。

20〜30代でAGAが始まる方は、このM字型から生え際が後退していくケースが多いです。
M字型の初期では、おでこの両端が少し後ろに下がる程度で、額の中央部分(U字部分)はまだ残っているため、一見すると「額が広くなったかな?」と感じる程度かもしれません。
しかし進行すると、生え際の後退がどんどん深くなり、おでこの面積が大きく増えたように見えてきます。髪型にも影響が出やすく、前髪でおでこを隠すスタイルが難しくなったり、分け目から地肌が透けて見えたりするようになります。
なお、M字型の薄毛は比較的左右対称に進行するのが一般的です(左右どちらかだけ極端にハゲることは少ない)。
また前頭部のAGAでは額の生え際から後頭方向へとゆっくり後退していくため、1ヶ月単位の短期間では変化がわかりにくいものです。半年〜1年スパンで見たときに、「確かに生え際が昔より上がっている」と気づくケースが多いでしょう。
生え際の後退をセルフチェックする方法
自分の生え際が後退しているかどうか、次の方法でチェックしてみましょう。
指で額の広さを測る
眉毛の上から髪の生え際までに指が何本入るかを目安にします。一般的な成人男性の額の高さは指3本程度(約5〜6cm)と言われますが、指4本以上すっぽり入るようであれば、生え際が広めである可能性があります。
もっとも個人差が大きいため、「以前は指3本くらいだったのに今は4本入るようになった」といった以前との変化に着目してください。
過去の写真と現在を比較
数年前と最近の写真で自分のおでこの広さを比べてみましょう。昔は隠れていた生え際の剃り込み部分(こめかみ上の辺り)が、今は露出していないか確認します。特に20代後半以降で写真を比較すると、生え際のラインの変化に気づきやすいです。
前髪のセットのしにくさ
最近、前髪が思うように下ろせなかったり、分け目が決まりにくくなっていませんか? 髪が細くコシがなくなると、生え際のボリュームが減ってヘアスタイルが崩れやすくなります。
生え際の産毛化が進むと前髪がスカスカした印象になり、セットがしづらくなるため、髪質変化も後退の兆候といえます。

こうしたセルフチェックを行い、「昔よりおでこが広がっている」「生え際の毛が弱々しくなっている」と感じたら、AGAによるM字型薄毛が進行している可能性が高いでしょう。
M字型は初期段階では気づきにくいものの、早めに発見できれば適切な対策で進行を遅らせることも可能です。
前頭部の薄毛が進行するとどうなる?

M字型の生え際の後退がさらに進むと、額の中央部分まで含めて前頭部全体が薄くなるU字型に移行する場合があります。
前頭部の薄毛範囲が広がると、生え際の形がアルファベットのU字状(Ω字状)になり、おでこから頭頂部にかけて大きく地肌が露出します。
ここまで進行すると髪型で薄毛を隠すことが難しくなり、周囲から見ても「薄くなっている」と認識されやすくなります。
もっとも、AGAの進行スピードには個人差があり、M字部分が後退しても中央部(前髪の真ん中)がある程度残るケースもあります。俗に「M字ハゲ止まり」などと言われますが、これはU字型まで至らずM字型のままで維持している状態です。
ただし完全に進行が止まったわけではなく、時間をかけて少しずつ進んでいることも多いです。前頭部の薄毛は基本的に自然に治まることは少なく、何年もかけてゆっくりでも進行していくのがAGAの特徴と言えます。
頭頂部(つむじ)にみられるAGAの症状(O字型)
もう一つAGAの症状が出やすい部位が頭頂部(頭のてっぺん)です。俗に「つむじハゲ」と呼ばれるタイプで、ここでは頭頂部の薄毛(O字型)の特徴やセルフチェック方法について解説します。

O字型薄毛(つむじ周りの薄毛)の特徴
頭頂部から地肌が見えてくるO字型の薄毛は、額の生え際よりも自分では気づきにくい傾向があります。
文字通りつむじを中心に丸くO字状に髪が薄くなっていくパターンで、上から見るとポツンと地肌が透ける円形の薄毛部分が現れるのが特徴です。
鏡で正面を見るだけでは分からず、ふとしたときに他人から「後ろ薄くなってない?」と指摘されて気づくケースも多くなります。

O字型の初期では、つむじの輪郭が少し広がる程度で、鏡で後ろをしっかり見ないとわかりません。しかし進行すると、つむじ周りの毛がどんどん細く短くなり、頭頂部の地肌がはっきり見える状態になります。
頭頂部は太陽光や照明の下で特に目立ちやすく、写真に写った自分の頭頂部を見て驚く、といったことも起こりがちです。
O字型薄毛は、AGAが中期以降まで進行した場合によく現れる症状ですが、中には若いうちから頭頂部が薄くなるケースもあります。
髪質の変化としては、生え際同様につむじ周辺の毛が産毛状に細くなり、ハリコシが無くなることでボリュームダウンしていきます。ただし本人の視界には入りづらいため、抜け毛の増加など間接的な兆候や周囲からの指摘で気づくことになります。
頭頂部の薄毛をセルフチェックする方法
自分で頭頂部の状態を確認するには、以下のような方法があります。
鏡を使ってチェック
手鏡と洗面鏡(またはスタンド鏡)を使い、後頭部から頭頂部を映して確認します。明るい場所で頭頂部を映し、「つむじ周辺の地肌がどの程度見えているか」「つむじの範囲が広がっていないか」を観察しましょう。
過去の自分の写真(上から撮られたもの)があれば比較すると変化がわかりやすいです。
家族や友人に見てもらう
信頼できる家族や親しい友人に頼んで、頭頂部の様子を正直に教えてもらいましょう。自分では見えない分、他人の視点は貴重です。「前より地肌が透けてるよ」といった指摘があればAGAの可能性を考えるべきです。
美容師に相談する
ヘアカット時に美容師さんから「つむじ辺り、髪が細くなってきましたね」など言われることがあります。プロの目から見ても薄毛傾向が指摘されたら、早めにセルフチェックや医療機関の受診を検討しましょう。
美容師のコメントは日頃から多くの人の頭皮を見ているからこそ出るものですので、客観的な判断材料になります。

これらの方法で頭頂部の地肌が以前より目立つようであれば、AGAによるO字型薄毛が進行している可能性が高いです。特につむじ部分は意識して見ないと変化に気づきにくいため、意識的に鏡チェックする習慣をつけると良いでしょう。頭頂部の薄毛も進行性ですので、早めに気づけばそれだけ対処もしやすくなります。
「つむじハゲ」はなぜ気づきにくい?
頭頂部の薄毛は、生え際に比べてどうしても発見が遅れがちです。その理由は単純で、自分の目で直接見えない位置だからです。髪をセットするときも正面や側面は鏡で確認しますが、頭頂部は見落としやすくなります。
また、薄毛の進行はゆっくりなため、毎日見ている自分自身では変化に慣れてしまい「気のせいかな?」と思ってしまうことも一因です。
さらに、頭頂部は周囲の髪でカモフラージュされやすい部位でもあります。ある程度周囲の髪が残っていると、薄毛部分とのコントラストがはっきりしないため、初期には薄毛が目立ちにくいのです。
そのため、自分では気づかずに進行し、かなり薄くなってから「あれ?こんなに地肌が…」と驚くケースが少なくありません。
このように「つむじハゲ」は発見が遅れやすいので、意識してセルフチェックすることが大切です。鏡で後頭部を見る習慣をつける、家族に定期的にチェックしてもらうなどして、早期発見に努めましょう。
AGAのセルフチェック方法

AGAかどうかを 自己診断(セルフチェック) するためのポイントを解説します。薄毛が気になり始めたら、以下のチェック項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。
ただしセルフチェックはあくまで目安です。実際にAGAかどうか最終判断するには医師の診断が必要である点に留意してください。
AGAセルフチェックのポイント
まずはご自身で現在の薄毛の状況やリスクを把握するため、次のポイントを確認してみましょう。以下にAGAに該当しやすいセルフチェック項目を挙げます。
- 親族(特に母方)の家系に薄毛の人がいる
- 髪が産毛のように細く柔らかくなってきた
- 枕元やシャンプー時に抜け毛が以前より増えている
- 前頭部の生え際が少しずつ後退してきている
- 頭頂部(つむじ周り)が薄く地肌が見えやすくなってきた
- 同年代の人と比べて自分の髪が薄い(ボリュームが少ない)と感じる
- 脂っこい食べ物が好きなど、食生活のバランスが乱れがちである
- 仕事や生活でストレスが多く、睡眠不足が続いている
- 喫煙の習慣がある(タバコを吸っている)

上の項目で当てはまるものが多いほどAGAの可能性が高まると考えられます。例えば1〜6は主に髪や頭皮の状態に関するチェックで、7〜9は生活習慣に関するチェック項目です。
特に1〜6の髪そのものの変化はAGAの直接的なサインと言えます。「髪が細くなった」「抜け毛が増えた」「生え際・つむじが薄くなった」といった複数の項目に心当たりがある場合は、AGAを強く疑ったほうがいいでしょう。
一方、7〜9の項目に関しては、AGAのリスク要因と考えられるものです。
脂肪分の多い食事・睡眠不足・喫煙といった生活習慣の乱れは、直接AGAの原因になるわけではありませんが、髪の成長を妨げたり頭皮環境を悪化させることで薄毛の進行を助長する可能性があります。
例えば栄養バランスの悪い食生活では髪の材料となるタンパク質や亜鉛が不足しがちですし、慢性的な睡眠不足やストレスはホルモンバランスを崩してDHTの産生を高めたり血行を悪くしたりします。
また喫煙もニコチンによる血管収縮作用で頭皮の血行が悪くなり、発毛にマイナスです。このような要因が複合的に重なると、AGAを発症しやすくなったり進行を早めることが考えられます。

セルフチェックの結果、当てはまる項目が複数ある方は一度専門医の診断を受けることをおすすめします。特に「髪の変化」に関する項目(1〜6)で該当が多い場合は早めの受診を検討しましょう。
セルフチェックをする際の注意点
セルフチェックはあくまで自己判断の目安にすぎません。薄毛の進行具合や原因は素人目には判断が難しい場合も多く、「チェック項目に当てはまらない=AGAではない」と断言できるものではありません。
例えば「家族に薄毛がいないから自分は大丈夫」と思っていても、生活習慣など他の要因でAGAになる可能性はありますし、その逆も然りです。

大切なのはセルフチェックで現状を知ることと、それを踏まえて必要なら専門家に相談することです。
また、セルフチェックの結果「自分はAGAかも…」と思っても、過度に不安になる必要はありません。最近はAGAについての知識も広まり、治療できる時代です。
セルフチェックは早期発見・早期対処のための第一歩と捉え、冷静に現状を把握しましょう。
AGA以外の脱毛症の可能性もチェック
薄毛=すべてAGAというわけではなく、他の原因で抜け毛が起きるケースもあります。セルフチェック項目に当てはまらない症状がある場合や、脱毛のパターンがAGAと異なる場合は、以下のような脱毛症の可能性も考えられます。

- 円形脱毛症: 突然丸いハゲができるのが特徴です。頭髪に円形または楕円形の脱毛斑が一つまたは複数できる自己免疫性の脱毛症で、AGAとは脱毛箇所や進行パターンが異なります。円形脱毛症の場合、皮膚科でのステロイド治療などが必要です。
- 牽引性・機械性脱毛症: ヘアスタイル(ポニーテール等)で髪を強く引っ張る習慣や、ヘルメット・帽子などで頭皮が長時間圧迫されることによって生じる脱毛です。特定の部分だけが薄くなる点ではAGAと似ていますが、原因を取り除けば脱毛の進行は止まり改善することが多いです。
- 休止期脱毛症(びまん性脱毛): 急激なダイエットや極度のストレス、高熱の出る病気、出産後のホルモン変動などが引き金となり、一時的に髪が抜ける現象です。頭髪全体が均一に薄くなる(びまん性脱毛)のが特徴で、AGAのように部分的ではありません。原因が解消されれば数ヶ月〜1年程度で自然回復する場合が多いです。
このように、薄毛・抜け毛には様々なタイプがあります。AGAの場合は生え際と頭頂部に集中し徐々に進行する点で他と異なりますが、自己判断が難しい場合もあります。
セルフチェックをして「ちょっと違うかも?」と感じた場合でも、不安であれば皮膚科や専門クリニックで相談すると安心です。
セルフチェックでAGAが疑われたら…
セルフチェックの結果、「AGAかもしれない」と思ったら、できるだけ早めに専門医療機関を受診しましょう。前述の通り、AGAは放置すると進行してしまうため、不安を感じた段階で行動することが大切です。

AGA専門クリニックや一般皮膚科で診察を受ければ、現時点でAGAかどうかを診断してもらえます。早期に治療を始めれば、まだ薄毛が軽度のうちに進行を食い止めることも期待できます。
「まだそこまで薄くないし病院に行くのは大げさでは…」と尻込みする必要はありません。最近は無料カウンセリングを行っているAGAクリニックも多く、オンライン診療で気軽に相談できるサービスもあります。
セルフチェックで多く当てはまった人ほど、後悔しないためにも専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。
AGAの検査・診断方法
AGAが疑われる場合、医療機関ではどのように検査・診断が行われるのでしょうか。この章では、クリニックや病院で受けられるAGAの主な診察・検査方法を紹介します。

専門医による診断の流れを知っておくことで、受診の際も安心です。
専門医による視診・問診(診察)
まず医療機関では、医師が問診と視診(視覚による観察)を行います。問診では家族に薄毛の人がいるか、抜け毛が気になる期間、生活習慣などについて質問されます。
セルフチェックで気になった点(「ここが薄い」「抜け毛が増えた」等)は遠慮なく伝えましょう。また実際に頭皮を見せて、触診しながら前頭部や頭頂部の薄毛の程度を確認します。
この段階で医師は、髪の抜けている箇所や髪質の変化からおおよその診断をつけます。AGAの場合、典型的な生え際・頭頂部の脱毛パターンがありますので、経験豊富な医師であれば視診だけでかなり高い確率で判断できます。
問診で家族歴(特に母方の祖父など)の情報も診断の参考になります。診察時には疑問や不安があれば医師に質問し、今の髪の状態についてしっかり把握しましょう。
マイクロスコープによる頭皮チェック
クリニックによっては、専用のマイクロスコープ(拡大鏡)で頭皮や毛髪を詳細に観察する検査を行います。髪の毛を拡大して見ることで、太い毛と細い毛の比率や毛穴の状態などをチェックします。

AGAが進行している部分では太い毛が減り細く短い毛(軟毛)が多く見られるのに対し、側頭部や後頭部では太くしっかりした毛が維持されている、といった違いがはっきり分かります。
マイクロスコープ診断では、現在の薄毛の進行度を客観的に評価でき、写真を保存しておけば経過の比較も可能です。治療前と治療後で毛の太さや密度がどう変化したかを確認するためにも用いられます。
痛みなどは全くなく、頭に小型カメラを当てて拡大映像を見るだけですので、機会があれば受けてみるとよいでしょう。
【表5】AGAの診断で行われる主な検査方法
検査・診断方法 | 内容・目的 |
---|---|
視診・問診(医師の診察) | 医師が肉眼で脱毛部位や髪の状態を観察し、問診票の回答(家族歴・症状経過・生活習慣など)をもとに総合判断します。典型的なAGAの薄毛パターンかどうかをチェックします。 |
マイクロスコープ検査 | 拡大鏡・特殊カメラで頭皮や毛髪を拡大し、薄毛部分の毛の太さや本数の密度などを詳しく観察します。正常な部分との比較でAGA特有の軟毛化を確認できます。 |
血液検査 | 希望または必要に応じて採血を行います。男性ホルモン(テストステロンやDHT)の量や肝機能値などを調べます。ホルモン数値からAGAリスクの高さを推測したり、治療薬を安全に使用できる健康状態か確認する目的があります。 |
遺伝子検査(最重要) | 頬の粘膜細胞から、AGA関連遺伝子を解析します。特に男性ホルモン受容体の感受性や5αリダクターゼ酵素のタイプを調べ、AGAになりやすい体質かどうかを判定します。治療薬の選定に大きな役割を果たしており、当院でも遺伝子検査を強く推奨しております。 |
血液検査・ホルモン検査
AGAの診断自体は視診でほぼ可能ですが、治療を行う前提で血液検査を行うことがあります。
血液検査では、男性ホルモン(DHT)の量を測定してAGAの進行リスクを見る検査や、肝機能・腎機能など全身状態を調べて治療に耐えられるか確認する目的があります。
特にAGA治療薬(内服薬)を使用する際は、安全のため事前に血液検査で問題がないかチェックするクリニックが多いです。
最近では、毛髪や血液を用いてホルモン濃度を測定し、AGAのリスクを数値化するサービスも登場しています。例えば数本の毛髪から体内のDHT量を分析する検査キットなどもあり、自宅で試すことも可能です(結果は郵送で知らされます)。
これらのホルモン検査はあくまで「薄毛になりやすい状態か」を見るものなので、数値が高いから必ずAGAになるわけではありません。しかし、薄毛が気になる方には有益な参考情報となるでしょう。
遺伝子検査による体質チェック

当院のように、希望すればAGAの遺伝子検査を受けられるクリニックもあります。これは主に頬の内側の細胞を採取し、AGAに関連する遺伝子の型を調べる検査です。
具体的には、AGA発症に深く関与する男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)の感受性を決める遺伝子や、5αリダクターゼ酵素のタイプ(Ⅰ型・Ⅱ型)などを解析します。
遺伝子的にこれらの活性が高いタイプであれば、AGAが進行しやすい体質と言えます。
遺伝子検査のメリットは、自分の薄毛リスクを事前に知ることで予防意識を高められる点や、治療薬の効果予測に役立つ点です。例えば男性ホルモン受容体の感受性が強いタイプの場合、より積極的な治療プランが提案されることもあります。
ただし遺伝子検査はあくまで可能性の判定であり、実際に薄毛が進行しているかどうかは別問題です。また費用もかかるため、興味がある方や将来への備えとして受けたい方に限られます。
必須の検査ではありませんが、科学的に自分のAGA体質を知りたい方には有用でしょう。
医師による総合診断

これらの診察・検査結果を踏まえ、最終的に医師がAGAかどうか診断します。AGAと診断されれば、現在の進行度や今後考えられる対策について説明を受ける流れになります。
一方、診察してみてAGAではない別の脱毛症と判明するケースもあります。その場合は原因に応じた専門的な治療(円形脱毛症ならステロイド治療など)が必要になります。
したがって「自己判断で様子見していたら実は他の脱毛症で悪化してしまった」という事態を避けるためにも、専門医の診断は重要です。
AGAの診断は専門医にとって難しいものではありません。上記のような基本的な診察で大まかな判断は可能ですし、必要に応じ検査も行われます。
AGAと確定した場合でも、それはゴールではなくスタートです。今後の治療や生活改善など方針を医師と相談していくことになります。
大事なのは、不安を抱え込まず専門家に任せることです。適切な診断がつけば、あとは対策を講じていくだけですから、まずは気軽にクリニックを受診してみましょう。
よくある質問(Q&A)

最後に、AGAの症状やセルフチェック、検査に関して患者さんから寄せられることの多い質問とその回答をQ&A形式でまとめます。
- 薄毛のセルフチェックだけでAGAかどうかわかりますか?
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セルフチェックはAGAの可能性を高める要素を知る目安にはなりますが、自己判断だけで確定診断することはできません。
チェック項目に多く当てはまればAGAの疑いは強まりますが、最終的な診断はやはり専門医による視診・検査が必要です。抜け毛や薄毛には他の原因もありうるため、「セルフチェックで該当=絶対AGA」とは言い切れません。
ただしセルフチェックで異常を感じたら放置せず、早めにクリニック等で相談する行動が重要です。セルフチェックはあくまで早期発見のための手段と捉え、気になる場合は医師の診断を仰ぎましょう。
- 1日に抜け毛が何本くらいあるとAGAを疑うべきですか?
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健康な人でも1日に50〜100本程度の髪は自然に抜けます。これくらいの抜け毛は生理的な範囲であり、すぐAGAとはなりません。ポイントは「以前より抜け毛が増えたと感じるか」です。
例えば、洗髪時や起床時の抜け毛が昔より明らかに増えた、抜ける髪の毛が細く短いものばかりになった、といった場合はAGA初期の可能性があります。
また季節の変わり目等で一時的に抜け毛が増えることもありますが、それが収まらず継続している時も注意が必要です。
本数そのものより変化に注目し、抜け毛が増加傾向にあればセルフチェック項目に照らして他の兆候もないか確認しましょう。
- おでこが生まれつき広いだけでも「ハゲ」ですか? 生え際が少し後退しただけでAGAと決まるのでしょうか?
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生まれつき額が広かったり、生え際の形状には個人差がありますので、額が広い=AGA発症とは限りません。いわゆる「額の広さ○本指」という基準も俗説の目安に過ぎず、医学的な定義はありません。
大切なのは以前との比較です。若い頃から額が広めでも変化がなければ問題ありませんが、以前より生え際が明らかに後退してきた場合はAGAの可能性があります。特にM字型に生え際が食い込んできたり、産毛が増えて前髪が薄くなってきたなら要注意です。
「元からおでこ広めだけど最近さらに広がった気がする」という場合はAGAが始まった可能性があります。一方、生え際の形がV字型・M字型なのは元々の額の形という方もおり、その場合はそれ以上進行しないこともあります。
結論として、生え際の後退は“進行しているかどうか”が重要で、少しでも進んでいると感じたらAGAの初期かもしれません。心配なら専門医に診てもらい、単なる勘違いかAGAの兆候か判断してもらうと安心です。
- 薄毛やAGAはやはり遺伝しますか?
-
遺伝的要素は大きいとされています。特に母方の家系からの影響が強く、医学データでは「母方の祖父が薄毛の場合、孫である男性(つまり質問者様)のAGA発症リスクは約75%」とも言われます。
また両親双方から薄毛の素因を受け継いだ場合、さらに高い確率で発症するとの報告もあります。ただし、遺伝したから必ず薄毛になるわけではなく、実際にAGAを発症するかどうかは生活習慣や年齢要因など複合的に決まります。
逆に、家族に薄毛がいなくてもAGAになる方もいます。つまり遺伝は「AGAになりやすい体質」を受け継ぐものであり、それが実際の薄毛として現れるかはその後の環境次第とも言えます。
もし家系的に薄毛が多い場合は、他の人より早めにセルフチェックや予防を心がけると良いでしょう。最近では遺伝子検査で自分の薄毛リスクを調べることも可能です。
いずれにせよ遺伝だからと悲観せず、正しい知識で適切に対処すれば発症を遅らせたり進行を食い止めることも十分期待できます。
- AGAかもしれないと思ったら何科に行けばいいですか? どんな医療機関を受診すればよいでしょうか?
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薄毛治療の場合、大きく分けて皮膚科かAGA専門クリニックの二択になります。
一般皮膚科でもAGAを診てもらうことはできますが、保険診療の範囲だと十分な治療が受けられないことも多いです(AGA治療は基本的に保険適用外の自費診療になります)。
一方、AGA専門クリニックや薄毛治療専門外来であれば、AGA診断に慣れた医師が在籍し、最新の治療法も含めて提案してもらえます。
費用は自費になりますが、初回カウンセリング無料の所も多いのでまず相談してみると良いでしょう。
また、近くに専門クリニックがない場合はオンライン診療(ビデオ通話による遠隔診察)を提供している医療機関もありますので活用できます。
AGAの症状や検査(セルフチェック含む)について理解された方は、AGAの真の原因について一緒に勉強しましょう。