ミノキシジルは発毛促進効果があるためAGA治療の第一選択肢とされていますが、さまざまな副作用も報告されています。
ただし、全ての患者さんが副作用を経験するわけではありません。正しい知識を身につけることで不安を軽減し、治療を安心して継続することが可能です。
この記事では、ミノキシジルの副作用について発症メカニズムや症状の種類、適切な対処法などをわかりやすく説明します。
さらに、副作用のリスクを軽減するためのポイントも紹介しましょう。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ミノキシジル外用薬を使用した際の副作用
ミノキシジル外用薬(塗り薬)を使用する際、約4人に1人の割合で副作用が現われます。
副作用は、使用を開始してから数時間から数日で現れることがあり、特に最初の1~2週間に多い傾向があります。
頭皮刺激症状
症状 | かゆみ、発疹、乾燥、赤み、かぶれ、痛み、灼熱感など |
出現頻度 | 約20% |
対処法 | ・症状が軽いときは経過を見守りますが、症状が重い際は使用を中止し、速やかに医師に相談 ・シャンプーは頭皮にやさしい低刺激性のものを選び、保湿剤を使用して頭皮の乾燥を防ぐ |
多毛症
症状 | 本来毛が生えていない部位に毛が生える。腕や指の背、、胸毛、足など |
出現頻度 | 約5% |
対処法 | ・多毛症が気になるときはミノキシジルの使用を中止・ただし、発毛がとまる可能性があるので注意 |
顔のむくみ
症状 | 顔がむくんでパンパンになる |
出現頻度 | 約2% |
対処法 | ・塩分の摂取量を控え水分を十分に摂取・顔をマッサージして血行を促す |
低血圧
症状 | めまい、立ちくらみ、失神 |
出現頻度 | まれ |
対処法 | 症状が出た場合はすぐに座るか横になって安静に |
その他の副作用
- 息切れや動悸
- 頭皮のニオイ
- 目のかゆみ
- 吐き気
- 胃腸障害
ミノキシジルタブレット(飲み薬)を使用した際の副作用
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は副作用が出るまでは個人差が大きく、服用後数時間から数ヶ月まで幅広い期間で出る可能性があります。
症状 | 頻度 | 原因 |
---|---|---|
多毛症 | 5~20% | 全身の毛包に作用 |
頭痛・めまい | 10~15% | 血圧低下 |
動悸・息切れ | 2~5% | 心臓への負荷 |
むくみ | 1~3% | 水分貯留 |
低血圧 | 0.5~1% | 降圧剤の主作用 |
肝機能障害 | 0.1~0.5% | 肝臓への負担 |
蕁麻疹 | 0.1~0.5% | アレルギー反応 |
胃腸障害 | 極小 | 不明 |
皮膚炎 | 極小 | アレルギー反応 |
性機能障害 | 極小 | ホルモンバランスの変化 |
心不全・心筋梗塞 | 極小 | 心臓への負荷 |
ミノキシジルで不妊症になる?
男性の不妊症リスク
動物実験では、精巣への影響や精子数の減少などが報告されていますが、ヒトでの研究では、明確な因果関係は示されていません。
女性の不妊症リスク
動物実験でミノキシジルの卵巣への影響や胎児への奇形発生リスクの増加などが報告されています。ただし、ヒトでの研究では卵子質や妊娠率への影響に関しては、はっきりとした結論は出ていません。
妊婦・授乳中の服用
ミノキシジルタブレットは、妊婦や授乳中の女性には禁忌です。これは、胎児や乳児への影響が懸念されるためです。
ミノキシジルタブレット服用による肥満リスク
ミノキシジルタブレットの使用により、少し肥満のリスクが上昇するかもしれませんが、実際に肥満になるかどうかは、個々人の体質や生活様式など多くの要素が関係してきます。
肥満リスクに関する研究結果
- ミノキシジルタブレット摂取に伴う肥満リスクの研究は数多く行われていますが、結果は一様ではありません。
- 服用することで肥満になるリスクが少し高まる、という研究もあります。2018年に行われたメタアナリシスで、ミノキシジルタブレットの使用者の肥満リスクが1.24倍になる可能性が示されました。
- 別の研究によると、ミノキシジルタブレットの服用が肥満リスクと直接関連していないとされています。
肥満リスクの要因
ミノキシジルタブレットの摂取が肥満リスクに及ぼす影響には、いくつかの原因があります。ただし、「ミノキシジルと肥満とは関連がない」とする研究結果もあり、以下の情報は参考としてのみご利用ください。
服用量 | 服用量が多いほど、肥満リスクは上昇 |
服用期間 | 服用期間が長いほど、肥満リスクは上昇 |
個人の体質 | 体質が太りやすい方は、ミノキシジルタブレットを服用することで、より肥満になるリスクが増加する可能性 |
生活習慣 | 不規則な食生活や運動不足などの生活習慣が乱れている場合、ミノキシジルタブレットの服用は肥満を引き起こすリスクをさらに高めることが |
ミノキシジル外用薬とミノキシジルタブレットの副作用出現率比較
ミノキシジルには、塗布するタイプと飲むタイプの両方があります。外用するミノキシジル薬よりも、内服するミノキシジルタブレットの方が副作用が現れやすいです。
副作用出現率の比較
副作用 | 外用薬 | 内服薬 |
---|---|---|
多毛症 | – | 5-50% |
頭痛・めまい | 1-15% | 2-20% |
動悸・息切れ | 0.5-10% | 1-10% |
むくみ | 0.1-5% | 0.5-5% |
低血圧 | 0.05-2% | 0.1-2% |
肝機能障害 | まれ | まれ |
副作用出現率が高い理由
ミノキシジルタブレット(経口薬)は、外用薬に比べて体内への吸収が容易であるため、全身へ影響があり、それに伴い副作用が現れる可能性も高まります。
ミノキシジル濃度と副作用の関連性
ミノキシジル外用薬は髪の長を促す薬であり、頭皮の血流を促進する作用があります。使用する濃度や量が増えるほど、より速い効果が得られますが、副作用が生じる危険性も上がるため、注意が必要です。
高濃度のミノキシジルを使用すると、皮膚への刺激が増し、痒みや赤み、腫れ、皮膚炎などの副作用が起こりやすくなります。これらの症状は、治療を続けるうえで障害となる場ことが。
そして、ミノキシジルタブレットも、同様に濃度が副作用のリスクと密接に関連しています。
タブレットとして摂取すると効果が全身に及ぶため、慎重に用量を管理することが大切です。適切でない濃度での使用は、血圧低下や頭痛、心拍数の異常、浮腫みといった、副作用を招く恐れがあります。
ミノキシジルをやめる際に知っておくべきこと
ミノキシジルはAGA治療において一般的に使用される薬剤ですが、副作用により治療を中断せざるを得ないこともあります。
ここでは、患者さんが抱えがちな不安や疑問に焦点を当て、5つの主要なトピックに関して詳しく説明しましょう。
1. 中止のタイミング
ミノキシジルを使用している際に次のような症状が出た場合は、直ちに医師に連絡し、薬の使用を中断するかどうかを相談してください。
急激な体重増加、息切れ、むくみ | 心臓に過大な負荷がかかっているサインであり、放置すれば心不全など深刻な健康状態に至る恐れ |
心臓の異常(動悸、胸痛、息切れ) | 心臓の機能に異常があることを示しており、見過ごすと心筋梗塞や脳卒中といった重大なリスクを伴う |
肝機能障害(黄疸、倦怠感、尿の色が濃い) | 肝臓の機能不全を示唆しており、放置すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まる |
アレルギー反応(じんましん、呼吸困難) | 薬剤に対するアレルギー反応であり、重症化するとアナフィラキシーショックを引き起こすことも |
副作用 | 中止のタイミング |
---|---|
著しい多毛症 | 顔や体の毛が濃くなって日常生活に影響が出る、または精神的なストレスを感じるとき |
強い頭痛、めまい | 日々の生活や仕事に影響が現れる状況 |
うつ状態 | 精神的な健康を害することから、速やかな対策が求められる |
2. 減量と完全中止
重大な副作用が出たり、生活に大きな影響が出たりしたときは、医師のアドバイスに従って徐々に薬の量を減らすことで副作用をやわらげることができます。
ただし、量を減らしても症状が良くならない場合は、使用を完全にやめる必要が出てくることもあるので、治療の過程で医師としっかり相談し、最良の選択をすることが大切です。
3. 副作用の回復期間
副作用のタイプや重さにより回復にかかる時間はさまざまですが、通常、数日から数週間で症状が良くなることが多いです。ただし、多毛症のような副作用はなくなるまでに数か月かかることもあります。
数日で改善される可能性のある副作用 | 頭痛、めまい、動悸 |
数週間で改善される可能性のある副作用 | むくみ、低血圧 |
数ヶ月かかる可能性のある副作用 | 多毛症 |
4. ミノキシジルの使用を中止したときの代替薬
ミノキシジル以外にも、フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬、レーザー治療など、さまざまなAGA治療法があります。
それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さんの年齢、症状、体質に合わせて選ぶことが大切です。
フィナステリド・デュタステリド
男性ホルモンの働きを抑え、抜け毛を抑制する内服薬です。より強い薬がデュタステリドで、副作用もデュタステリドのほうが強くなります。
メリット | 比較的安全性の高い治療法 |
デメリット | ・効果が出るまでに時間がかかる・性機能障害などの副作用が出る可能性 |
赤色LEDレーザー治療
低出力レーザーを頭皮に照射することで、毛髪の成長を促進する治療法です。
メリット | 痛みや副作用が少ない |
デメリット | 効果が出るまでに時間がかかる・費用が高額 |
5. ミノキシジルを中止した事による発毛効果の消失
ミノキシジルの使用をやめると、発毛効果は徐々に失われていきますが、完全になくなるには数か月かかります(ある程度の効果は残ることも)。
発毛効果の消失までの期間 | 数ヶ月 |
維持される効果 | 抜け毛の抑制効果 |
副作用の検査方法
ミノキシジルによる重篤な副作用は主に心臓に出ます。
5mgや10mgなどの濃度の高いミノキシジルタブレットを服用している方は、Google検索窓に ”循環器内科 地名” と入れ、ご自宅や勤務先近くの循環器内科に行ってください。
その際、「AGA治療薬のミノキシジルを服用しているので、心臓に問題がないか検査してほしい」と伝えましょう。
循環器内科における心臓の状態を測る検査方法一覧表
検査項目 | 内容 | 目的 | 補足 |
---|---|---|---|
身体検査 | 血圧、脈拍、心音、肺音など | 心臓の状態、その他の異常の有無 | 医師による診察 |
心電図検査 | 心臓の電気活動を記録 | 不整脈、心筋虚血、心筋梗塞の有無 | 電極を体に貼り、心電図を記録 |
負荷心電図検査 | 運動負荷をかけながら心電図検査 | 運動耐量の評価、狭心症の誘発 | ト レッドミルや自転車 ergometer を使用 |
ホルター心電図検査 | 24時間心電図を記録 | 発作時の心電図変化の捕捉 | 小型の記録装置を持ち歩き、日常生活中の心電図を記録 |
心臓超音波検査 | 心臓の動きや形態を画像で観察 | 心臓機能の評価、心筋虚血、心筋梗塞の有無 | 超音波探頭で心臓を観察 |
胸部X線検査 | 心臓や肺の状態を観察 | 心肥大、肺水腫の有無 | X線撮影 |
血液検査 | 心臓の酵素、BNPなど | 心筋梗塞、心不全の診断 | 動悸息切れの原因が心臓以外にある場合も実施 |
冠動脈CT検査 | 冠動脈の形態や狭窄の程度を評価 | 冠動脈の異常の有無、狭心症の原因特定 | CT装置で冠動脈を撮影 |
冠動脈造影検査 | カテーテルを用いて冠動脈の造影 | 冠動脈の形態や狭窄の程度を詳細に評価 | 30分~1時間 |
まとめ 現実的な期待を持ち医師と相談しながら治療を継続することが重要
ミノキシジルによるAGA治療で満足のいく結果を得るには、現実的な期待を持ち、医師と相談しながら適切な使用法を守り、継続的な治療を行うことが重要です。
ミノキシジルの副作用に注意し、症状が現れた場合は速やかに対処しましょう。
ミノキシジルをメインとしたAGA治療で後悔したくない方は以下の記事で詳しく解説していますので参考に読んでみてください。
以上
参考文献
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