ミノキシジルが効果ない(効かない)理由と効かなくなった時の対処法

ミノキシジル 効果ない 効かない

ミノキシジルは、発毛効果が公的に認められているAGA治療薬です。

国内では非推奨扱いになっているミノキシジルタブレット(飲み薬)も海外では薄毛治療に積極的に用いられており、当院でも処方しています。

「発毛実感率96.5%」のようなAGA専門クリニックの広告宣伝を一度は見たことがあると思いますが、あながち誇大広告ではなく、ミノキシジルが効かなかったらもう何をやっても無駄といっても過言でない強い薬です。

ただし、塗っても飲んでも効果が実感できない患者さんがいるのも事実で、ミノキシジルの効果がない理由と効果が出なかったときの対処法を解説してみます。

塗り薬(ミノキシジル外用薬)と飲み薬(ミノキシジルタブレット)では発毛にかなりの差があるので、それぞれ分けて説明していきましょう。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

ミノキシジル外用薬で効果がない人は多い

大正製薬のリアップ(ミノキシジル外用薬)が市販されたのは20年以上前ですが、もし効果があるなら日本人男性の薄毛の悩みは激減してもおかしくないと思います。

実際はどうでしょうか?

どこを見渡しても薄毛男性はいますし、後に説明するミノキシジルタブレット(飲み薬)は、「やっぱり効くなあ」ということはあっても、AGAの治療を行っている皮膚科専門医の私からしても、外用薬が薄毛治療の決定打になっているという実感を得たことはほとんどありません

ミノキシジル外用薬は最低6か月使用してみて効果があるかないか最終判断をし、「気持ち増えた気がする」という患者さんなら見たことはありますが、

  • フサフサになった
  • 全盛時を取り戻した

という感想を聞いたことは一度もなく、私もそのような患者さんを見たことは一度もないです。

それでもなぜ当院でミノキシジル外用薬を処方しているのかというと、ミノキシジルタブレット(飲み薬)に比べて副作用の心配がほぼないのと、効果が薄い薬から治療を始めるのが薄毛治療の基本だからです。

ミノキシジル外用薬が効かない人はミノタブに移行

当院では濃度5%のミノキシジル外用薬(液体系の塗り薬)から治療をスタートし、治療開始から半年経過しても患者さんが満足する結果を得られなければ、より効果が期待できる飲み薬タイプのミノキシジルタブレット(ミノタブ)に移行します。

発毛効果は高いが副作用が強い

ミノキシジルタブレット(飲み薬)は育毛剤タイプのミノキシジル外用薬に比べて、発毛効果は明らかに高いです。

高いです、と書いてしまうと薬機法や景品表示法に抵触するので問題発言かもしれませんが、AGA治療をしている医師なら分かっていることで、「ミノキシジルタブレットのほうが発毛効果が高いです」と書かざるを得ません。

ただ、「美しいバラにはトゲがある」ということわざがあるとおり、効果が高い薬は当然ながら副作用も高いです。

  • 男性なら2.5mg
  • 女性なら1mg

がミノキシジルタブレット(ミノタブ)の濃度の限界です。

これ以上の濃度のミノタブを処方するクリニックもあるようですが、ミノキシジルタブレットは心臓に副作用が出るので、上記の濃度以内のミノキシジルでがまんしてください。

もし仮に男性で5mg、女性で2.5mgのミノキシジルを飲みたい方は、循環器内科を専門とするクリニックや病院に行って定期的に心電図などで心臓の調子を検査して欲しいです。健康あっての発毛なので。

ミノタブの最初の効果は初期脱毛

ミノキシジルタブレットを飲んで発毛促進する「前」の段階として多くの方が「初期脱毛」という症状を経験します。

私が知るかぎりですが、初期脱毛なくして発毛したという話は聞いたことがなく、ミノキシジルタブレットを服用して抜け毛が始まったからと言って慌てる必要はありません。

とはいえただでさえ薄毛で悩んでいる状況なのに、さらに髪の毛が抜け落ちるのは耐えがたいですよね。

耐えたいただくしかないのですが、どうしても耐えがたい方は、効果はそれほど期待できなくてもミノキシジル外用薬に切り替えましょう。

初期脱毛は服用後2~3週間で始まる

服用を開始してから14日~21日頃に抜け毛が増える現象が起こります。これは、ミノキシジルの作用で休止期の毛髪が成長期へと移行し、古い毛髪が抜け落ち新しい毛髪が生える過程で生じる一時的なものです。

個人差はありますが結構抜けます。「結構とはどれくらい?」なのですが、1日100~200本程度は抜け落ちるでしょう。

シャンプーするときに顔に抜け落ちた髪の毛が付くので「うわっ」と気づくくらい抜け、一晩寝て起きたときの枕元に30本くらいの抜け毛がついていることもあると思ってください。

初期脱毛の期間

初期脱毛の持続期間には個人差があり、1~3ヶ月程度です。多くの方は、抜け始めてから2か月程度で落ち着くことが多いですが、中には4か月くらい続く人もいます。

4か月以上続くようであれば服用は中止してください。ミノキシジルタブレットが体質的に向いていないということなので、濃度を薄めるか育毛剤タイプのミノキシジルに切り替えることをおすすめします。

初期脱毛と同時に副作用として胸の痛みが出ることも

初期脱毛はミノキシジルタブレットの効果とも言えますが、同じ時期に胸に痛みを感じる患者さんもいます。

  • 動悸
  • 不整脈
  • 狭心症

ミノキシジルタブレットの副作用はすべて心臓に出ると思ってください。他の副作用は軽微です。

特に、10mgの高濃度のミノキシジルタブレットを服用すると、はっきり分かる形で胸に痛みが出ることがあり、男性なら2.5mgまで、女性なら1mgまでの濃度にしてください。

濃度を上げれば発毛効果は期待できますが、副作用が出るのが心臓です。高濃度ミノキシジルタブレットの服用はしないように。

※当院では2.5mgまでのミノタブしか処方しません

ミノキシジルの効果はいつから?

ミノキシジルの発毛効果は塗り薬と飲み薬では2か月くらいのズレがあります。

ミノキシジル外用薬(塗り薬)治療開始から半年くらい
ミノキシジルタブレット(飲み薬)治療開始から4か月後くらい

上記はあくまで目安で、個人差があることにご留意ください。

ミノキシジルタブレットは初期脱毛が終わってから一気に効果を実感し始めます。服用を開始して3か月で初期脱毛が終わったら、3か月目以降から産毛が生え始めかなりの速度で発毛促進を実感できる方がいるでしょう。

初めてミノキシジルタブレットを飲む方の中にはかなり驚く人もいます。

一方、育毛剤タイプのミノキシジル外用薬(発毛剤とも言います)は、半年くらい治療を続けないと目立った効果を感じるのは難しいです。

とはいえ、副作用が頭皮のかぶれ程度ですむことを考えると、初めて薄毛治療をされる方はミノキシジル外用薬を選ぶことをおすすめします。

ミノタブの副作用(動悸・不整脈・狭心症)はかなり強めに出る方がいて、強い薬を最初に飲んでしまうと後がなくなりますので、効果が弱くてもミノキシジル外用薬から治療を開始してください。

5mgで効かなくかったら治療をやめる

より発毛促進効果の高いミノキシジルタブレット(飲み薬)の話に戻しましょう。

当院では副作用を鑑(かんが)みて、濃度2.5mgのミノキシジルタブレットまでしか処方いたしませんが、中には5mgどころか10mgの高濃度ミノキシジルを初診から処方する怖い治療法をとっている医療機関があるようです。

もし当院や、あるいはお近くの皮膚科やAGA専門クリニックで2.5mgのミノキシジルタブレットで効果があまりなかったと感じた方は、最大で5mgまでならと個人的には思っております。

「5mgまでなら大丈夫」と書かれた論文はありませんし、国内ではミノキシジルタブレットは非推奨薬であることは大前提としてお話していることをご理解ください。

5mgのミノキシジルタブレットを試す場合は、服用を開始したら必ずお近くの循環器内科に行って「ミノキシジルタブレットを服用していて、心臓への副作用が心配なので受診にきました」と伝えましょう。

そして、5mgのミノキシジルで効果ないと思ったら服用を停止し、間違っても10mgに進むことは避けてください。健康あっての発毛ライフです。

※女性のMAX濃度は2.5mg。当院では1mgを限度に処方しています。

ミノキシジルの効果がない場合の対処法

濃度を濃くしていく

  1. ミノキシジル外用薬 濃度5%から治療を開始
  2. ミノキシジル外用薬 濃度10%まで徐々に濃くしていく
  3. ミノキシジルタブレット1mgに切り替える
  4. ミノキシジルタブレット2.5mgに濃度を上げる

当院ではこのように、ミノキシジル外用薬(塗り薬)のミノキシジル濃度5%から治療を開始し、発毛効果を実感できなければ少しづつミノキシジル濃度を上げていって最終的には10%のものを使用します。

それでも効果が出ない場合は内服薬(ミノキシジルタブレット)に切り替えることに。

ミノキシジルタブレットはすでに説明したように副作用が強い薬なので、(男性の場合)まずは1mgのものから処方を開始し、効果が弱ければ2.5mgのミノキシジルタブレットへと移行します。

フィナステリドかデュタステリドを併用する

ミノキシジル外用薬からミノキシジルタブレットに治療薬を切り替えるタイミングで、脱毛抑制剤であるフィナステリドを併用します。

※最初からフィナステリドを処方することも。

  1. フィナステリド0.2mg
  2. フィナステリド1mg
  3. デュタステリド0.5mg

このような順で脱毛抑制剤を濃くしていき、それでもダメなときは自毛植毛やウィッグということになります。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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