ミノキシジルの作用機序は塗る方は解明し飲む方は未解明

AGA（男性型脱毛症）やFAGA（女性型脱毛症）の治療には毛乳頭細胞を活性化させることがカギです。ミノキシジルは毛乳頭細胞に直接作用することで発毛を促進します。

ただし、具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

ミノキシジルが毛乳頭細胞の分裂を増加させることで、ヘアサイクルを正常化し、結果として発毛を促すということは分かっていますが、その詳細なプロセス（作用機序）は完全には判明していないのです。

この記事では、ミノキシジルの作用機序について現段階で分かっていることを詳しく解説していきます。

ミノキシジルの有効成分

ミノキシジルの有効成分はミノキシジル（minoxidil）です。

もともとは血圧降下剤として開発されロニテンという商品名で売られていましたが、副作用として多毛症が報告され、「薄毛治療に使えるのでは？」と薄毛治療薬として転用され現在に至っています。

ミノキシジル外用薬（塗り薬）の作用機序

ミノキシジルは外用薬（塗り薬）と飲み薬（タブレット剤）の2タイプがあり、作用機序が若干違いますので分けて説明していきましょう。まずは外用薬から。

毛包の血流を促進

ミノキシジル外用薬が頭皮から浸透して毛包に到達すると、毛包の毛細血管の細胞にあるATP感受性Kチャネル（KATP）を開放し、これにより毛細血管が拡張し血流が改善されます。

毛髪の成長には、毛母細胞に十分な栄養素や酸素が供給されることが重要なのですが、ミノキシジルによって毛包の血流が改善されることで、毛母細胞に栄養素や酸素が十分に行き渡り、毛髪の成長が促進されることに。

毛母細胞の活性化を促す

ミノキシジルは毛包の毛母細胞に直接作用し、細胞増殖やタンパク質合成を促進。

頭皮から浸透したミノキシジルによって毛母細胞が活性化されると、休止期にある毛母細胞が成長期に移行し、新しい髪の毛が生えてきます。

ミノキシジルのタンパク質合成の仕組み

• 毛母細胞の細胞膜にある受容体と結合し、シグナル伝達を介して細胞増殖やタンパク質合成を促進。
• 毛母細胞の増殖や分化を促進するタンパク質の合成を促進。

大正製薬さんの公式サイトにミノキシジルの作用機序の最新研究結果が公開されていますので、是非ご覧になってください。

ミノキシジルタブレット（飲み薬）の作用機序

続いてミノキシジルタブレット（飲み薬）の作用機序を説明していきます。

ミノキシジルタブレット（通称ミノタブ）は男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版で非推奨となっていますが、海外では臨床試験が続いており、

「ミノキシジルは外用薬より飲み薬の方が効果が高い」

という結論に達しつつありますので、最新情報を追うことを心がけている当院では、2.5mgのミノキシジルタブレットを処方しております。

もともとは高血圧患者への降圧剤

ミノキシジルは血管拡張作用による高血圧治療用の経口薬として開発された薬で「ロニテン」という商品名で飲み薬として販売されていました。

血管平滑筋細胞のアデノシン三リン酸（ATP）感受性カリウムチャネルを開くことによって作用します。

平滑筋血管系の弛緩と末梢抵抗の減少をもたらし、最終的に高血圧患者の血圧値を下げるのに役立つとともに、副作用として多毛症になることが分かり、AGA治療に転用されるようになりました。

頭皮に塗るより飲んだ方が吸収率が高い

ミノキシジルは消化管からの吸収率が高く（ヒトでは少なくとも90％）、血漿タンパク質と結合しないため全身に広く効果を発揮します。

そのため外用薬として塗るより飲み薬として使用したほうが発毛促進効果はを期待できますが、発毛を促進するメカニズムは完全には解明されていません。

ヘアサイクルの休止期（テロゲン期）を短縮し、休止期の毛包を早期に成長期（アナゲン期）に移行させることは確認できています。

さらに、毛包に直接成長因子として作用することも示唆されているものの、それ以上何が起きて発毛に寄与するのかは解明しきれていないのです。

ミノキシジルタブレットの副作用

ミノキシジルタブレット（飲み薬）は、腸から吸収されて全身に作用する過程で主に心臓に副作用が出ることがあります。

当院で処方している2.5mgではそこまで気にする必要はありませんが、発毛を焦り5mgや10mgの高濃度を服用すると、胸の動悸や痛みが発症することがありますので容量用法には十分ご注意ください。

ミノキシジル外用薬（塗り薬）でも循環器に副作用が出る患者さんがいることも事実ですが、頻度としてはまれで、それよりも頭皮が赤くかぶれてしまうことをケアしましょう。

※頭皮がかぶれた場合は使用を中止してください。

塗り薬と飲み薬の効果の違い

ミノキシジルの薄毛治療の作用機序は解明しきれていない点が多いですが、結果はシンプルです。

	効果	副作用
塗り薬	フサフサになるのは極まれ	頭皮のかぶれ
飲み薬	塗り薬より高い発毛促進効果が期待	胸の動悸や痛み、圧迫感等

上記の表を言い換えると、

• 塗り薬（ミノキシジル外用薬）はローリスクローリターン
• 飲み薬（ミノキシジルタブレット）はミドルリスクミドルリターン

さらに、外用薬のミノキシジル濃度を6%以上、飲み薬のミノキシジル濃度を5mg以上に上げていくと、

• 塗り薬（ミノキシジル外用薬）はミドルリスクミドルリターン
• 飲み薬（ミノキシジルタブレット）はハイリスクハイリターン

ということになります。

作用機序のまとめ

医学用語を使いながら詳しく解説しましたが、ミノキシジルの作用機序を一覧表にまとめておきます。

	作用機序 STEP1	作用機序 STEP2
塗り薬	頭皮から浸透し毛包の毛細血管を拡張し血流を改善	毛母細胞の活性化を促進し発毛を促す
飲み薬	腸から体内に吸収され全身の血流を改善	恐らく同上↑も未解明

ミノタブ（飲み薬）の作用機序は未解明な部分も多いですが、臨床医としての実感としてミノキシジル外用薬よりは効果が期待できるのは明白で、海外の論文でも塗るより飲むほうが効果が高いとの研究結果が多数出ています。

ただし、ミノタブは副作用が強いので治療のスタートは塗り薬を推奨します。効果が実感できない場合はミノキシジルタブレットに移行しましょう。

以上