当院のAGA治療 WEB予約 052-228-1280

フィナステリドだけで十分な場合とそうでない場合 – AGA治療

フィナステリドだけで十分な場合とそうでない場合 - AGA治療

男性型脱毛症(AGA)の治療において、フィナステリドは広く使用される有効な薬剤です。

しかし、すべての患者にフィナステリドだけで十分な効果が得られるわけではありません。

個々の症状や進行度によって、適切な治療法は異なります。フィナステリドの効果が不十分な場合、他の薬剤との併用や代替薬の検討が必要となることがあります。

本記事では、フィナステリドだけで効果が期待できるケースと、追加の治療が必要なケースについて解説します。また、治療前の適切な検査の重要性についても触れていきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

フィナステリドだけで十分なケース

フィナステリドのみでAGA治療が十分な場合があり、これは主に症状が軽度から中等度の患者さんや、早期に治療を開始した方に当てはまります。特に若年層や初期段階の薄毛の方々にとって、有効な選択肢となる可能性が高いです。

フィナステリドの効果と作用機序

フィナステリドは、5α還元酵素阻害薬として知られており、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換されるのを効果的に防ぐ働きがあります。この作用は、AGAの根本的な原因に対処する上で非常に重要な役割を果たします。

DHTは男性型脱毛症の主な原因物質であり、これを抑制することで薄毛の進行を抑え、場合によっては毛髪の再生を促進する効果が期待できます。

フィナステリドによるDHT抑制は、毛包を健康な状態に保つことにも寄与し、長期的な発毛効果につながる可能性があります。

作用効果
5α還元酵素阻害DHT生成抑制
DHT抑制毛包萎縮防止
毛包保護発毛促進

フィナステリド単独治療が効果的な患者層

初期から中期のAGA患者さんは、フィナステリド単独での治療効果が期待でき、特に以下のような特徴を持つ方々がこれに該当することが多いです。これらの特徴に当てはまる方は、フィナステリド単独でも十分な効果を得られる可能性が高いと言えるでしょう。

  • 20代から30代の比較的若い年齢層
  • 頭頂部や生え際の薄毛が軽度から中等度
  • 家族歴がそれほど強くない
  • 全体的な毛髪の質がまだ保たれている
  • 薄毛の進行速度が比較的緩やか
年齢症状効果予測
20代軽度非常に高い
30代中等度高い
40代以上重度要検討

早期治療開始の重要性

AGAの進行を効果的に抑えるには、早期発見・早期治療が鍵となり、症状が軽いうちにフィナステリド治療を開始することで、単独使用でも十分な効果を得られることが多いです。

早期治療は、将来的な薄毛の進行を予防し、より健康な頭髪を長期間維持することにつながります。

毛髪の状態が良好なうちに治療を始めることで、毛包の機能をより長く保つことができ、結果として薄毛の進行を抑制しやすくなる傾向があります。

早期治療のメリットは以下の通りです。

  • 毛包のダメージを最小限に抑える
  • 治療効果が現れるまでの期間が短縮される
  • より自然な髪の状態を維持できる
  • 心理的なストレスを軽減できる

フィナステリドの服用期間と効果の関係

フィナステリドの効果は、継続的な服用により徐々に現れ、一般的に、以下のようなタイムラインが観察されることが多いです。ただし、個人差があるため、効果の現れ方には幅があることを理解しておくことが大切です。

期間効果
3~6ヶ月減少停止
6~12ヶ月新規成長
1~2年最大効果
2年以上効果維持

長期的な使用により、より安定した効果が得られることが多く、継続的な服用が推奨されています。治療を中断すると、徐々に効果が失われていく可能性があるため、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。

フィナステリド単独治療の利点

フィナステリドのみで治療を行うことには、いくつかのメリットがあり、患者さんの生活の質を向上させる可能性があります。これらの利点は、特に初期から中期のAGA患者さんにとって魅力的な選択肢となり得ます。

  • 薬の管理が簡単で、日常生活に組み込みやすい
  • 副作用のリスクが比較的低く、長期使用が可能
  • 費用面でも経済的で、継続しやすい
  • 効果が予測しやすく、治療計画を立てやすい
  • 他の治療法との併用も可能で、将来的な選択肢が広がる

単一の薬剤で効果が得られれば、日々の服薬管理も容易になり、加えて、複数の薬剤を併用する場合と比べて副作用のリスクも低くなる傾向にあります。

このため、患者さんの負担が少なく、長期的な治療継続が可能となります。

フィナステリドだけで十分ではない人の特徴

フィナステリド単独治療では効果が不十分な方がおり、これは主に、AGAの進行度が高い患者さん、遺伝的要因が強い方、高齢の患者さん、そして特定の症状パターンを持つ方々に当てはまることが多く、個別の状況に応じた治療法の検討が必要となります。

AGAの進行度と治療効果の関係

AGAが高度に進行している場合、フィナステリド単独での治療効果が限定的になることがあり、毛包の萎縮が進みすぎると、より複合的なアプローチが必要となる可能性が高まります。

毛包の萎縮が進みすぎると、フィナステリドによるDHT抑制だけでは十分な回復が難しくなる傾向があり、毛髪の再生に必要な他の要素もサポートする必要が出てくることがあります。

進行度フィナステリド単独の効果
軽度高い
中等度中程度
重度限定的

このような患者さんでは、他の治療法との併用や、より強力な薬剤の使用を検討する必要が生じ、総合的な治療アプローチが求められることがあります。

遺伝的要因の強さと治療反応性

AGAの発症に強い遺伝的背景がある患者さんは、フィナステリド単独での治療に対する反応が弱いことがあり、より複雑な遺伝子パターンが治療効果に影響を与える可能性があります。

家族歴が顕著な場合、以下のような特徴が見られることがあり、これらの特徴は治療方針の決定に重要な役割を果たす可能性があります。

  • 若年期からの急速な薄毛進行
  • 複数の近親者でAGAが見られる
  • 特定の頭皮部位での顕著な脱毛パターン
遺伝的要因治療反応性
弱い良好
強い低下

このような場合、遺伝子検査や詳細な家族歴の聴取が有用となることがあり、個別化された治療戦略の立案に役立つ可能性があります。

年齢と治療効果の関連

高齢の患者さんでは、フィナステリド単独での治療効果が減弱することがあり、加齢に伴う様々な生理学的変化が治療の複雑さを増す要因となることがあります。

年齢とともに以下のような変化が生じ、治療の難易度が上がる傾向があり、これらの要因を考慮した総合的なアプローチが必要となることがあります。

  • 毛包の老化と再生能力の低下
  • ホルモンバランスの変化と感受性の低下
  • 血流の低下による栄養供給の減少
年齢層フィナステリドの効果
20-30代高い
40-50代中程度
60代以上低下

高齢の患者さんでは、総合的なアプローチが重要となることがあり、生活習慣の改善や栄養補給など、多角的な治療法の検討が必要となる場合があります。

特定の症状パターンと治療反応性

特定の薄毛パターンを示す患者さんでは、フィナステリド単独での効果が限られることがあり、症状の分布や進行速度に応じて、より精密な治療計画の立案が求められる場合があります。

注意が必要な症状パターンには以下のようなものがあり、これらのパターンは治療の難易度や必要な介入の程度を示唆する重要な指標となることがあります。

  • 前頭部の著しい後退と頭頂部への進行
  • 頭頂部の広範囲な薄毛と周囲への拡大
  • びまん性の薄毛と全体的な毛髪密度の低下

このような場合、局所療法や他の内服薬との併用を考慮することがあり、患者さんの具体的な症状パターンに合わせてカスタマイズされた治療アプローチが必要となることがあります。

代謝や体質に関連する要因

個々の患者さんの代謝や体質も、フィナステリドの効果に影響を与えることがあり、これらの個人差を考慮した治療計画の調整が必要となる場合があります。

考慮すべき要因には以下のようなものがあり、これらの要因は薬物の効果や安全性に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

  • 肝機能の状態と薬物代謝能力
  • ホルモン感受性と反応性の個人差
  • 薬物代謝の遺伝的多型性と個体差
要因影響
肝機能低下薬物代謝への影響
低感受性DHT抑制効果の減弱

これらの要因により、標準的な用量では十分な効果が得られないことがあり、個別化された用量調整や代替治療法の検討が必要となる可能性があります。

併存疾患の影響

他の疾患を併せ持つ患者さんでは、フィナステリド単独での効果が限定的になることがあり、複数の健康問題が相互に影響し合う複雑な状況下での治療管理が求められる場合があります。

影響を与える可能性がある併存疾患には以下のようなものがあり、これらの疾患は毛髪の成長サイクルや全身状態に多面的な影響を及ぼす可能性があります。

  • 甲状腺機能障害とホルモンバランスの乱れ
  • 貧血による栄養および酸素供給の不足
  • 自己免疫疾患と慢性的な炎症状態

これらの疾患は、毛髪の成長サイクルや全身状態に影響を与え、AGAの治療効果を低下させる可能性があり、併存疾患の適切な管理と並行して、AGA治療を進める必要があることがあります。

追加すべきAGA治療薬

フィナステリド単独での治療効果が不十分な場合、追加のAGA治療薬を検討することが重要であす。

ミノキシジル、外用薬、栄養補助薬、そしてプロスタグランジンF2α誘導体などが主な選択肢となり、患者さんの状態や症状の進行度に応じて適切な組み合わせを選択することで、より効果的な治療が期待できます。

ミノキシジルの追加

ミノキシジルは、血流改善と毛周期の正常化を促進する薬剤として知られており、フィナステリドとの併用により、相乗効果が期待でき、より広範囲な毛髪成長促進効果を得られる可能性があります。

ミノキシジルには内服薬と外用薬があり、それぞれ以下のような特徴があり、患者さんの状態や希望に応じて適切な剤形を選択することが重要です。

  • 内服薬 より強力な効果が期待できるが、全身への影響に注意が必要で、慎重な経過観察が求められる
  • 外用薬 局所的な効果を発揮し、全身への影響が比較的少なく、長期使用に適している場合がある
剤形効果副作用リスク
内服高いやや高い
外用中程度低い

ミノキシジルの追加により、フィナステリドでは十分にカバーできなかった部分での発毛促進が期待でき、特に頭頂部や前頭部の薄毛改善に効果を発揮する可能性があります。

外用薬の併用

外用薬の併用は、内服薬では十分にカバーできない局所的な効果を補完するのに役立ち、特に部分的な薄毛や初期段階のAGAに対して効果を発揮する可能性があります。主な外用薬には以下のようなものがあり、それぞれ異なる作用機序を持っています。

  • ミノキシジル外用薬 血流を改善し、毛包の活性化を促進する
  • カルプロニウム含有外用薬 局所の代謝を促進し、毛髪成長を支援する
  • アデノシン含有外用薬 毛乳頭細胞を活性化し、毛髪の成長サイクルを正常化する

これらの外用薬は、それぞれ異なる作用機序を持っており、患者さんの症状や反応性に応じて選択され、内服薬との相乗効果を期待して使用されることがあります。

外用薬主な作用適応症状
ミノキシジル血流改善広範囲の薄毛
カルプロニウム代謝促進部分的な薄毛
アデノシン毛乳頭細胞活性化初期~中期のAGA

外用薬の併用により、内服薬では達成できない局所的な効果が期待でき、治療効果の向上につながる可能性があり、特に初期のAGAや部分的な薄毛に対して効果的である場合があります。

栄養補助薬の活用

栄養補助薬の活用は、毛髪の健康維持と成長促進に寄与する可能性があり、特に栄養状態が不十分な患者さんや、ストレスの多い生活を送っている方々にとって有効な選択肢となります。

主な栄養補助薬には以下のようなものがあり、それぞれが毛髪の成長や健康維持に重要な役割を果たしています。

  • ビタミンB群(ビオチンなど) ケラチン産生を促進し、毛髪の強度を高める
  • 亜鉛 毛包細胞の代謝を活性化し、新しい毛髪の成長を支援する
  • 鉄分 酸素供給を改善し、毛根の健康を維持する
  • ビタミンD 毛包の機能を正常化し、毛髪の成長を促進する
  • オメガ3脂肪酸 炎症を抑制し、毛包の健康を維持する

これらの栄養素は、毛髪の成長や健康維持に重要な役割を果たしており、適切な摂取により毛髪の質や量の改善が期待できる場合があります。

栄養素毛髪への効果推奨摂取源
ビオチンケラチン産生促進卵、ナッツ類
亜鉛毛包細胞の代謝活性化牡蠣、牛肉
鉄分酸素供給改善赤身肉、ほうれん草
ビタミンD毛包機能正常化魚、日光浴
オメガ3脂肪酸炎症抑制魚油、亜麻仁油

栄養補助薬の追加は、特に栄養状態に問題がある患者さんや、ストレスが多い生活を送っている方々に有効である可能性があり、全身の健康状態を改善することで、間接的にAGA治療の効果を高める可能性があります。

プロスタグランジンF2α誘導体の検討

プロスタグランジンF2α誘導体は、まつ毛や眉毛の成長促進薬として開発されましたが、頭髪にも効果がある可能性が示唆されており、新たなAGA治療の選択肢として注目されています。

主な特徴としては、以下のようなものが挙げられ、これらの作用により毛髪の成長を促進する可能性があります。

  • 毛周期の延長 成長期を延ばし、より長い毛髪の成長を促進する
  • 毛乳頭細胞の活性化 毛髪の成長を直接的に刺激する
  • 毛包の血流改善 栄養供給を向上させ、毛髪の健康を維持する
  • 毛包の肥大化 より太い毛髪の成長を促進する

この薬剤は、他の治療薬との併用により、さらなる相乗効果が期待できる可能性があり、特に従来の治療法で十分な効果が得られなかった患者さんにとって、新たな治療オプションとなる可能性があります。

作用期待される効果適応症状
毛周期延長より長い毛髪の成長短い毛髪
毛乳頭細胞活性化新しい毛髪の成長促進薄毛全般
血流改善栄養供給の向上毛髪の質低下
毛包肥大化より太い毛髪の成長細い毛髪

ただし、使用に際しては専門医の指導のもと、慎重に経過を観察する必要があり、定期的な診察と効果の評価が重要です。また、長期使用における安全性については更なる研究が必要とされています。

フィナステリドの代替薬デュタステリド

デュタステリドは、フィナステリドの代替薬として注目されているAGA治療薬であり、より強力なDHT抑制効果を持つことが特徴です。フィナステリドで十分な効果が得られない患者さんや、より迅速な改善を求める方々に対して選択される傾向があります。

ただし、その強力な作用ゆえに、副作用のリスクや使用上の注意点についても十分な理解が必要となります。

デュタステリドの作用機序

デュタステリドは、フィナステリドと同じく5α還元酵素阻害薬に分類されますが、その作用はより広範囲に及び、より強力なDHT抑制効果をもたらします。

フィナステリドがⅡ型5α還元酵素のみを阻害するのに対し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害することで、より効果的にDHT生成を抑制します。

薬剤阻害する5α還元酵素DHT抑制率
フィナステリドⅡ型のみ約70%
デュタステリドⅠ型とⅡ型約90%

この強力なDHT抑制作用により、毛包の萎縮を防ぎ、健康な毛髪の成長を促進する可能性が高まり、より効果的なAGA治療が期待できます。

デュタステリドの効果

デュタステリドの効果は、フィナステリドと比較してより早期に現れる傾向があり、多くの患者さんでより迅速な改善が観察されています。一般的に、以下のようなタイムラインが観察されることがあります。

  • 1~3ヶ月 薄毛の進行が止まり、毛髪の質が改善し始める
  • 3~6ヶ月 新しい毛髪の成長が始まり、薄毛部分の密度が増加する
  • 6~12ヶ月 顕著な改善が見られ、全体的な毛髪量が増加する
期間期待される効果
1~3ヶ月進行停止、質改善
3~6ヶ月新規成長、密度増加
6~12ヶ月顕著な改善、量増加

ただし、個人差があるため、効果の現れ方には幅があることを理解しておくことが大切であり、専門医との定期的な経過観察が重要です。

デュタステリドの適応

デュタステリドは、主に以下のような患者さんに適していると考えられており、より効果的なAGA治療の選択肢となる可能性があります。

  • フィナステリドで十分な効果が得られなかった方で、より強力な治療を必要とする場合
  • より迅速な改善を求める方で、副作用のリスクを理解している場合
  • 進行度の高いAGAの患者さんで、早急な治療介入が必要とされる場合
  • 若年でAGAが急速に進行している方で、早期からの積極的な治療を希望する場合

一方で、以下のような方には注意が必要であり、使用を控えるべき場合があります。

  • 肝機能障害のある方で、薬物代謝に影響がある可能性がある場合
  • 前立腺癌の既往がある方で、ホルモン環境の変化が望ましくない場合
  • 妊娠中または妊娠の可能性のある女性との接触がある方で、胎児への影響が懸念される場合
適応注意が必要な場合
フィナステリド無効例肝機能障害
高度なAGA前立腺癌既往
若年急速進行例妊娠関連

デュタステリドの副作用

デュタステリドは強力な薬剤であるため、副作用のリスクにも十分な注意が必要であり、使用前に医師と詳細な相談をすることが重要です。

主な副作用には以下のようなものがあり、患者さんによっては生活の質に影響を与える可能性があります。

  • 性機能関連(勃起不全、性欲減退、射精障害など)
  • 乳房関連(女性化乳房、乳房痛、乳頭の腫れなど)
  • 精液関連(精液量減少、精子の質の低下、不妊など)

これらの副作用は、服用を中止することで多くの場合改善しますが、長期的な影響については更なる研究が必要とされており、慎重な経過観察が求められます。

副作用発現率対処法
性機能関連1~5%経過観察or中止
乳房関連1~2%専門医相談
精液関連3~5%経過観察or中止

デュタステリドの使用上の注意点

デュタステリドを使用する際は、以下の点に注意が必要であり、これらを守ることで安全性を高めることができます。

  • 定期的な前立腺検査を受けること(PSA値の変動に注意が必要)
  • 服用中および服用中止後6ヶ月間は献血をしないこと(薬剤の血中濃度が高いため)
  • 妊娠中の女性や妊娠の可能性のある女性との接触に注意すること(胎児への影響を防ぐため)

加えて、長期使用における安全性については、まだ十分なデータが蓄積されていないため、継続的な経過観察が重要であり、定期的な検査や医師との相談を欠かさないようにする必要があります。

デュタステリドは、フィナステリドよりも強力なAGA治療薬ですが、その使用には慎重な判断が必要であり、効果と副作用のバランスを十分に考慮する必要があります。

効果と副作用のバランスを考慮し、専門医との綿密な相談のもとで使用を決定することが大切です。個々の患者さんの状態に応じて、最適な治療法を選択することが、AGAの効果的な管理につながり、長期的な治療成功の鍵となります。

治療前の検査で処方薬を決定しましょう

AGA治療を始める前に適切な検査を行うことは、効果的な処方薬の決定に不可欠であり、患者さん一人ひとりに最適な治療計画を立てる上で重要な役割を果たします。

個々の患者さんの状態を正確に把握し、最適な治療法を選択するためには、血液検査、ホルモン検査、頭皮の状態確認など、複数の検査を組み合わせることが重要であり、総合的な評価が求められます。

これらの検査結果に基づいて、フィナステリドやその他の治療薬を適切に選択することで、より効果的なAGA治療が可能となり、患者さんの満足度向上につながる可能性が高まります。

血液検査の意義

血液検査は、全身の健康状態を評価し、AGA治療に影響を与える可能性のある要因を特定するために重要であり、治療の安全性と効果を最大化するための基礎情報となります。

主な検査項目には以下のようなものがあり、それぞれが治療方針の決定に重要な役割を果たします。

  • 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)薬物代謝能力を評価し、処方薬の選択に影響を与える
  • 腎機能検査(クレアチニン、尿素窒素)薬物の排泄能力を確認し、用量調整の参考となる
  • 血糖値 代謝状態を把握し、全身の健康管理に役立てる
  • 脂質プロファイル(コレステロール、中性脂肪)心血管系リスクを評価し、総合的な健康管理に活用する
検査項目評価内容治療への影響
肝機能薬物代謝能力薬剤選択・用量調整
腎機能薬物排泄能力用量調整・副作用リスク
血糖値代謝状態全身管理・治療効果予測
脂質全身の健康状態併存疾患リスク評価

これらの検査結果は、薬物の代謝や排泄に影響を与える可能性があるため、処方薬の選択や用量調整に重要な情報となり、安全で効果的な治療計画の立案に不可欠です。

ホルモン検査の重要性

AGAの主な原因はDHT(ジヒドロテストステロン)の過剰産生であるため、ホルモン検査は治療方針を決定する上で非常に重要であり、個々の患者さんのホルモンバランスを正確に把握することができます。

主な検査項目には以下のようなものがあり、それぞれがAGAの進行度や治療効果の予測に重要な情報を提供します。

  • テストステロン 基礎的な男性ホルモンレベルを確認し、AGAの進行リスクを評価する
  • DHT AGAの直接的な原因物質の量を測定し、治療の必要性と効果予測に役立てる
  • SHBG(性ホルモン結合グロブリン)ホルモンの生物学的利用能を評価し、実効的なホルモン活性を把握する
  • FSH(卵胞刺激ホルモン)および LH(黄体形成ホルモン)下垂体機能を確認し、ホルモン分泌の調節状態を評価する
ホルモン関連性治療方針への影響
テストステロンAGA進行度治療開始タイミング
DHT直接的原因5α還元酵素阻害薬の必要性
SHBGホルモンバランス治療効果の予測
FSH/LH内分泌系全体の状態併存疾患の可能性評価

これらのホルモンレベルを確認することで、AGAの進行度や治療薬の効果予測が可能となり、フィナステリドやデュタステリドなどの5α還元酵素阻害薬の必要性を判断する指標となり、より精密な治療計画の立案につながります。

頭皮の状態確認

頭皮の状態を詳細に確認することは、適切な処方薬を決定する上で欠かせず、外用薬の選択や局所治療の必要性を判断する重要な情報源となります。

主な確認項目には以下のようなものがあり、それぞれがAGAの状態や併発症の有無を評価する上で重要な役割を果たします。

  • 毛髪密度 AGAの進行度を直接的に評価し、治療の緊急性を判断する指標となる
  • 毛髪の太さ 毛包の健康状態を反映し、治療効果の予測に役立つ
  • 頭皮の炎症状態 脂漏性皮膚炎などの併発症の有無を確認し、追加治療の必要性を判断する
  • 脂質分泌状態 頭皮環境の健康度を評価し、適切な頭皮ケア方法を決定する
確認項目評価内容治療への反映
毛髪密度AGA進行度治療の緊急性
毛髪太さ毛包の健康状態治療効果予測
炎症状態併発症の有無追加治療の検討
脂質分泌頭皮環境スカルプケア方法

これらの情報は、外用薬の必要性や、ミノキシジルなどの血流改善薬の適応を判断する際に重要となり、総合的な治療アプローチの基礎となります。

遺伝子検査の可能性

遺伝子検査は、AGAの発症リスクや薬剤への反応性を予測する上で有用な情報を提供する可能性があり、将来的には個別化医療の重要な要素となる可能性があります。

主な検査対象遺伝子には以下のようなものがあり、それぞれがAGAの発症メカニズムや治療反応性に関連する情報を提供します。

  • アンドロゲン受容体遺伝子 DHTに対する感受性を決定し、AGAの進行速度に影響を与える
  • 5α還元酵素遺伝子 DHT産生量に関与し、5α還元酵素阻害薬の効果予測に役立つ
  • 毛周期関連遺伝子 毛髪の成長サイクルを制御し、治療反応性に影響を与える可能性がある
遺伝子関連性治療への応用
アンドロゲン受容体DHT感受性治療強度の決定
5α還元酵素DHT産生量薬剤選択の指標
毛周期関連毛髪成長サイクル治療効果の予測

これらの遺伝子情報は、将来的なAGAの進行リスクや、特定の治療薬への反応性を予測する手がかりとなる可能性があり、より精密な治療計画の立案に貢献することでしょう。

以上

参考文献

YOSHITAKE, Toshihiro, et al. Five‐year efficacy of finasteride in 801 Japanese men with androgenetic alopecia. The Journal of Dermatology, 2015, 42.7: 735-738.

NESTOR, Mark S., et al. Treatment options for androgenetic alopecia: Efficacy, side effects, compliance, financial considerations, and ethics. Journal of cosmetic dermatology, 2021, 20.12: 3759-3781.

TANAKA, Yohei, et al. Androgenetic alopecia treatment in Asian men. The Journal of clinical and aesthetic dermatology, 2018, 11.7: 32.

GENTILE, Pietro; GARCOVICH, Simone. Systematic review of platelet-rich plasma use in androgenetic alopecia compared with Minoxidil®, Finasteride®, and adult stem cell-based therapy. International journal of molecular sciences, 2020, 21.8: 2702.

KANTI, Varvara, et al. Evidence‐based (S3) guideline for the treatment of androgenetic alopecia in women and in men–short version. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2018, 32.1: 11-22.

TAKEDA, A., et al. CG210 enables finasteride 1mg users to further improve hair pattern: a randomized, double-blind, placebo-controlled pilot study. Hair Ther Transplant, 2013, 3.107: 2167-0951.100010.

ROSSI, Alfredo, et al. Multi‐therapies in androgenetic alopecia: Review and clinical experiences. Dermatologic therapy, 2016, 29.6: 424-432.

KELLY, Yanna; BLANCO, Aline; TOSTI, Antonella. Androgenetic alopecia: an update of treatment options. Drugs, 2016, 76: 1349-1364.

MOTOFEI, Ion G., et al. Androgenetic alopecia; drug safety and therapeutic strategies. Expert opinion on drug safety, 2018, 17.4: 407-412.

DEVJANI, Shivali, et al. Androgenetic alopecia: therapy update. Drugs, 2023, 83.8: 701-715.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次