脱毛抑制薬　フィナステリド

「髪は人の印象を左右する」という言葉がある通り、髪の状態は多くの人にとって重要です。とくに男性にとって、薄毛や抜け毛の悩みは自信や気分に大きな影響を与えることも。

こうした悩みに対し、AGA（男性型脱毛症）治療の一環としてフィナステリドがあり、その作用機序によって薄毛の進行を遅らせる効果が期待されます。

この記事では、フィナステリドに関する詳しい情報を提供していきましょう。

フィナステリドの成分

フィナステリドは、男性型脱毛症（AGA）の治療に使用される経口薬の有効成分です。この薬は、5αリダクターゼという酵素を阻害することで作用します。

5αリダクターゼは、テストステロンをより活発な形であるジヒドロテストステロン（DHT）に変換するための酵素です。

作用機序

フィナステリドは、5αリダクターゼの阻害により、テストステロンのDHTへの変換を抑制します。DHTは、毛髪の成長を阻害し、脱毛を促進。

したがって、フィナステリドによるDHTの生産の抑制は、毛髪の喪失を遅らせ、さらには新しい毛髪の成長を促進する可能性があります。

成分	作用機序	影響
フィナステリド	5αリダクターゼの阻害によるDHTの生産の抑制	脱毛の進行の遅延と毛髪の再生

効果

フィナステリドの投与により、次のような効果が期待されます。

• AGAの進行を遅らせることができる。
• 毛髪の密度や太さの増加が期待。
• 頭皮上の毛髪の総数が増加する可能性¹⁾。

フィナステリドの効果は、継続的な使用によって維持されるとされているため、薬物の投与を中止すると、治療前の状態に戻る可能性があります。継続的な治療が効果を最大限に引き出す鍵です。

参考文献

1) Whiting DA. “Male pattern hair loss: Current understanding.” Int J Dermatol. 1998.

フィナステリドの使用方法と注意点

フィナステリドの正確な使用方法や量は、医師の指示に従ってください。一般的な使用ガイドラインには以下の点が含まれています。

• 通常、1日1回1mgのフィナステリド錠を経口摂取。
• 食事の有無に関係なく摂取できますが、一定の時間に定期的に摂取することが推奨。
• 錠剤を割ったり、噛んだりしない。
• 毎日同じ時間に薬を摂取することで、最良の結果を得る。

使用方法のポイント	詳細
服用頻度	1日1回
服用量	1mg
食事	食事の前後に関係なく摂取可能
錠剤の取り扱い	割ったり噛んだりしない
摂取のタイミング	毎日同じ時間に

注意点

フィナステリドの使用に際しては、以下の点を考慮する必要があります。

フィナステリドの使用方法や注意点に関しては、必ず医師や薬剤師との相談を行ってください。個人の健康状態や他の服用中の薬によって、上記のガイドラインが変わることがあります。

参考文献

2) Whiting DA. “Male pattern hair loss: Current understanding.” Int J Dermatol. 1998.

適応対象となる患者さん

フィナステリドは、特定の条件を持つ患者さんにすすめられる治療薬です。適応対象を正確に理解することで、適切な治療を受けることが可能になります。

1. 成人男性: 主に成人男性のAGA治療のために承認されており、若年者や高齢者に対する治療効果や安全性は、十分に確立されていません。
2. 初期から中程度の脱毛: 頭頂部や前頭部の薄毛が進行していても、まだ部分的に髪が残っている方に効果的で、完全に髪が失われた部分には効果が期待できません。
3. 遺伝的背景を持つAGA患者さん: 家族にAGAの既往がある場合、フィナステリドの効果が高まることが報告されています。
4. 長期的な治療を受け入れられる方: フィナステリドの効果を維持するためには、持続的な摂取が必要で、短期間のみの使用では、脱毛が再進行する可能性が高まります。

以下に、フィナステリドの適応対象の概要をまとめました。

適応対象	説明
成人男性	若年者や高齢者には注意
初期~中程度の脱毛症状者	部分的に髪が残っている場合に有効
遺伝的背景を持つ方	家族内でAGAの症状がある場合、効果が期待
長期治療を希望する方	継続的な摂取が必要なため、治療を長期間継続できる方

注意点

お子さま、ご高齢の方への使用

フィナステリドは、成人男性のAGA治療を目的として開発され、お子さまへの使用に関する公式のデータは限られています。

お子さんへの使用

一般的に、お子さまはホルモンバランスの変動が激しいため、フィナステリドのようなホルモンに影響を持つ薬の使用には注意が必要です。

効果の検証: お子さまへの使用に関する臨床試験は、成人の場合と比較して少ないです。若干のデータが存在し、一部の研究では効果が示されましたが、全体的な効果の結論を出すには、さらなる研究が必要となります。

安全性の問題: フィナステリドは成長期にあるお子さまのホルモンバランスに影響を及ぼす可能性があります。特に、思春期の男子においては使用に慎重を要するとの報告が。

ご高齢の方への使用

ご高齢の方でもAGAの治療としてフィナステリドを用いる場合がありますが、高齢に伴う体質や他の疾患、使用中の他の薬との相互作用を考慮する必要があります。

効果の検証: ご高齢の方におけるフィナステリドの効果についても、一部の研究で良好な結果が報告されていますが、年齢による体の変化を考慮した際の治療効果や副作用は、中高年と比較してデータが限られています。

安全性の問題: ご高齢の方は、複数の薬を服用している場合が多いため、薬の相互作用に注意が必要で、フィナステリドは一部の薬との相互作用が報告。また、ご高齢の方は副作用が出やすいともされています。

お子さまとご高齢の方の使用における注意点

効果と安全性の比較

対象	効果の検証	安全性の問題
お子さま	限定的	慎重を要する
高齢者	一部良好	注意が必要

フィナステリドの治療期間

フィナステリドは、AGA治療薬の中でも高い実績を持つものの一つです。ただし、その効果を最大限に引き出すためには、適切な投与期間を理解することが重要になってきます。

最初の効果の現れ

フィナステリドを服用し始めてから初めて効果を感じ取れるまでの期間は、個人差が大きいものの、平均して3～4ヵ月程度です。この時期に、脱毛の進行が遅くなる、または停止することが報告されています。

最大の効果を得るための期間

多くの患者さｎがフィナステリドの効果を最大限に感じるのは、服用開始からおおよそ12ヵ月後との研究結果があり、この時期に、頭髪の太さや密度の向上が顕著になると言われています。

長期的な服用とその効果

フィナステリドの持続的な効果に関しては、2年以上の服用を続けることで、80%以上の患者さんが脱毛の進行の停止や改善を体感しているとのデータがあります。

ただし、5年以上の服用を続けた場合のデータは、まだ十分ではありません。

服用を中断した場合の影響

フィナステリドの服用を中断すると、服用前の状態に戻る可能性があるとされていて、服用を中断した後、6～12ヵ月の間に脱毛の進行が再開することが報告されています。

効果と期間の関係

期間	効果の変化
3~4ヵ月	脱毛の進行停止
12ヵ月	頭髪の太さ・密度の向上
2年以上	脱毛の進行の停止・改善
中断後	脱毛の進行再開 (6~12ヵ月)

中断時の注意点

フィナステリドの副作用やデメリット・使用上の注意点

フィナステリドの服用に際しては副作用やデメリットを理解し、適切に対処することが必要です。

主な副作用

フィナステリドの服用により、以下のような副作用が報告されています。

特に、性的機能に関連する副作用は、多くの患者さんが懸念するものであり、これが理由でフィナステリドの服用を中止する方も少なくありません。

デメリットと使用上の注意点

フィナステリドの副作用の発現率

副作用	発現率
性的機能障害	3.8%1)
乳腺の腫れ・痛み	0.4%1)
皮膚の発疹	0.3%1)
精子の変化	0.8%1)

フィナステリドの服用を継続するか、または新たに服用を開始するかを検討する際は、必ず皮膚科専門医と十分な相談を行い、適切な判断をされることをおすすめします。

参考文献

3) U.S. Food and Drug Administration. “Propecia (finasteride) Prescribing Information”. 2011.

フィナステリドに効果がなかった場合の代替治療薬

フィナステリドはAGA治療において有効とされる薬の一つですが、すべての患者さんに効果が見られるわけではありません。

このような場合、他の治療法を検討することが考えられます。

ミノキシジル

ミノキシジルは、毛母細胞の成長を刺激する外用薬として知られており、フィナステリドとは異なる作用機序を持つため、併用することでより良い効果を得られることが期待されます。

特徴: 外用薬であり、毎日2回の塗布が推奨されます。初期には抜け毛が増加することがありますが、これは新しい毛が生えるための過程です。

デュタステリド

デュタステリドは、5αリダクターゼのタイプ1と2の両方を阻害する薬であり、フィナステリドよりも強力なDHT低下効果があります。

特徴: フィナステリドよりも強力な効果を持つとされていますが、副作用のリスクも高まる可能性があり、性的副作用や乳腺の腫れなど、フィナステリドと類似の副作用が報告されています。

PRP療法

PRP（Platelet Rich Plasma）療法は、自分の血液を使用して頭皮に注射する治療方法です。これにより、毛母細胞の活性化や毛髪の成長が促進するとされています。

特徴: 手術が不要で、比較的短時間で治療が完了しますが、治療効果の持続時間や回数には個人差があります。

ロゲイン

ロゲインはミノキシジルを主成分とする外用薬で、AGAの進行を遅らせ、髪の太さや密度を改善する効果があります。

特徴: 日本では男性用と女性用の2種類が販売されていて、通常、1日2回の使用が推奨されます。

代替治療薬の比較表

治療薬/方法	作用機序	用法	主な副作用
ミノキシジル	血管拡張	外用薬、１日２回	皮膚のかゆみ、発疹 1)
デュタステリド	5αリダクターゼ阻害	経口薬、１日１回	性的副作用、乳腺の腫れ2)
PRP療法	血小板リッチプラズマ	頭皮への注射、周期的に	軽度の痛み、腫れ 3)
ロゲイン	血管拡張	外用薬、１日２回	皮膚のかゆみ、発疹 4)

これらの治療法は、患者さんの状態や希望に応じて選択されます。効果や副作用に関する詳しい情報は、皮膚科専門医との相談を通じて得ることが最も確実です。

他の治療薬との併用禁忌

フィナステリドと他の薬との併用には注意が必要です。併用禁忌とされる薬や注意が必要な薬について、解説いたします。

デュタステリド

デュタステリドもフィナステリドと同じく、5αリダクターゼ阻害薬に分類される薬です。これらの薬は同じ酵素を阻害するため、併用するとDHTの低下が過度になる可能性があります。

このため、フィナステリドとデュタステリドの同時使用は推奨されません。

一部のハーブ製品

ソウパルメットなどのハーブ製品は、5αリダクターゼの活性を低下させる可能性があると報告されていて、フィナステリドとの併用により、予期しない副作用が発生するリスクがあります。

女性ホルモン製剤

女性ホルモン製剤の中には、フィナステリドの作用を強化するものがあるため、併用には十分な注意が必要です。過度なDHTの低下やホルモンバランスの乱れによる副作用が考えられます。

アルコール

フィナステリドの服用中にアルコールを過度に摂取すると、肝機能への負荷が増加する可能性があるため、適度な摂取を心掛けることが重要です⁴⁾。

併用時の主な注意点

フィナステリドと併用時の注意点

薬物/物質	併用時のリスク	推奨
デュタステリド	過度なDHT低下	併用禁忌 1)
ソウパルメット	予期しない副作用の発生	併用注意 2)
女性ホルモン製剤	ホルモンバランスの乱れや副作用の増加	併用注意 3)
アルコール	肝機能への負荷増加	適度な摂取を避ける 4)

フィナステリドを安全に使用するためには、他の薬やサプリメントとの併用に関する知識が不可欠となります。

上記の情報は一般的なガイドラインを示すものであり、個別の状況に応じたアドバイスを得るためには、医師との相談が最も信頼できる方法です。

参考文献

4) Merck & Co., Inc. “Propecia (finasteride) prescribing information.” 2011.

保険適用について

フィナステリドは、男性型脱毛症（AGA）の治療に用いられる効果的な薬ですが、保険の適用外となっており、自己負担として医療費がかかります。

治療をご検討の際には、医師とよく相談して、費用面も含めてご判断いただくことをおすすめします。