052-228-1280
WEB予約
男性型脱毛症の治療において、ミノキシジルとフィナステリドは二大薬剤として知られています。しかし、これらの薬剤をどのように使用するかによって、効果に大きな違いが生じることがあります。
本記事では、ミノキシジルとフィナステリドの単体使用と併用、そしてどちらか一方をやめた場合の効果について詳しく解説します。
特に、ミノキシジルをやめてフィナステリドだけにした場合の発毛効果の変化に焦点を当てていきます。
両薬剤の特性を理解し、適切な使用法を知ることで、より効果的な薄毛治療を目指しましょう。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
フィナステリド単体での脱毛抑制効果
フィナステリド単体での脱毛抑制効果は、男性型脱毛症治療において高い有効性を示し、DHT（ジヒドロテストステロン）の生成を抑制することで、毛髪の細くなりを防ぎ、脱毛の進行を遅らせる働きがあります。
フィナステリドの作用機序
フィナステリドは5α還元酵素阻害薬として知られており、テストステロンからDHTへの変換を阻害し、毛包周辺のDHT濃度が低下することで毛髪の成長サイクルが正常化されます。
結果として以下のような効果が期待できます。
- 毛髪の細くなりの抑制
- 脱毛の進行を遅らせる
- 既存の毛髪の維持
フィナステリドの効果的な使用方法
フィナステリドを効果的に使用するためには、以下の点に注意が必要です。
| 使用方法 | 注意点 |
| 用量 | 医師の指示に従う |
| 継続性 | 長期的な使用が重要 |
| 副作用 | 定期的な経過観察 |
| 生活習慣 | バランスの取れた食事と適度な運動 |
継続的な服用が不可欠であり、効果が現れるまでには数か月かかることがあります。また服用を中止すると効果が失われる可能性があるため長期的な使用が基本となります。
フィナステリド単体での治療効果
フィナステリド単体での治療は、DHT生成の抑制に特化した効果が期待でき、特にDHT感受性の高い前頭部や頭頂部の脱毛に対して効果的です。
| 効果が期待できる部位 | 期待される効果 |
| 前頭部 | 毛髪の維持 |
| 頭頂部 | 脱毛の進行抑制 |
| M字ライン | 毛髪の太さの維持 |
| 頭頂部の渦 | 毛髪密度の維持 |
ただし、すでに失われた毛髪を再生させる効果は限定的であり主に現状維持や進行抑制に有効です。
フィナステリド治療の限界と注意点
フィナステリド単体での治療には一定の限界があることを理解しておく必要があります。
| 限界点 | 説明 |
| 発毛効果 | 新しい毛髪の成長は限定的 |
| 個人差 | 効果の程度に差がある |
| 副作性 | 性機能関連の副作用の可能性 |
| 禁忌 | 妊娠中の女性や小児には使用不可 |
また、フィナステリドは男性ホルモンに作用するため女性への使用は避けるべきであり、妊娠中の女性が触れると胎児に影響を与える可能性があるため取り扱いには細心の注意が求められます。
ミノキシジル単体での発毛促進効果
ミノキシジル単体での発毛促進効果は、男性型脱毛症治療において高い有効性を示し、血流改善と毛包の活性化を通じて毛髪の成長を促進し、脱毛の進行を抑制する働きがあります。
ミノキシジルの作用機序
ミノキシジルは血管拡張作用を持つ薬剤として知られており、頭皮の血流を改善することで毛包に栄養を供給し、以下のような効果が期待できます。
- 休止期にある毛包の活性化
- 毛髪の成長サイクルの正常化
- 細くなった毛髪の太さの回復
ミノキシジルの効果的な使用方法
ミノキシジルを効果的に使用するためには適切な使用方法を守ることが重要です。
| 使用方法 | 注意点 |
| 濃度 | 医師の指示に従う |
| 使用回数 | 1日2回が一般的 |
| 塗布量 | 指定量を守る |
| 継続性 | 長期使用が効果的 |
定期的な使用が不可欠であり効果が現れるまでには数か月かかることがあります。使用を中止すると効果が失われる傾向があるため長期的な使用が基本となります。
ミノキシジル単体での治療効果
ミノキシジル単体での治療は、頭皮の血流改善と毛包の活性化に特化した効果が期待でき、特に初期から中期の脱毛に対して効果的とされています。
| 治療効果 | 説明 |
| 発毛促進 | 新しい毛髪の成長を促す |
| 脱毛抑制 | 既存の毛髪の脱落を防ぐ |
| 毛髪の太さ | 細くなった毛髪を太くする |
| 毛髪密度 | 単位面積当たりの毛髪本数を増やす |
ただし進行した脱毛や完全に失われた部位での効果は限定的であり個人差があることに留意が必要です。
ミノキシジルの長期使用による効果
ミノキシジルの長期使用では、持続的な血流改善効果により毛髪の状態を維持・改善することができ、研究によると1年以上の継続使用で多くの患者さんにおいて毛髪の状態が改善されることが報告されています。
長期使用による効果には個人差があり様々な要因が影響します。
- 脱毛の程度
- 年齢
- 遺伝的要因
- 生活習慣
ミノキシジル治療の限界と注意点
ミノキシジル単体での治療にも一定の限界があることを理解しておく必要があります。
| 限界点 | 説明 |
| 効果の個人差 | 反応に個人差がある |
| 継続使用の必要性 | 中止すると効果が失われる |
| 副作用 | かゆみや乾燥などの可能性 |
| 使用部位の制限 | 指定された部位以外への使用は避ける |
加えてミノキシジルは外用薬であるため正しい使用方法を守ることが大切です。
過度な使用や指定外の部位への適用は望ましくない副作用を引き起こす可能性があります。
ミノキシジルとフィナステリドの併用効果
ミノキシジルとフィナステリドの併用は、男性型脱毛症治療において相乗効果を発揮し、単独使用よりも高い発毛効果と脱毛抑制効果が期待できるため、両薬剤の異なる作用機序を組み合わせることでより包括的な治療アプローチが可能となります。
併用療法の基本原理
ミノキシジルとフィナステリドは異なるメカニズムで発毛を促進し、ミノキシジルは主に血管拡張による頭皮の血流改善、毛包の活性化、毛髪の成長サイクルの延長といった効果があります。
一方フィナステリドは、DHT（ジヒドロテストステロン）の生成抑制、毛包の萎縮防止、既存の毛髪の維持といった作用を持ち、これらの異なる作用を組み合わせることでより効果的な脱毛治療が可能となります。
併用療法の効果
併用療法の効果は単独使用と比較して顕著です。
| 治療法 | 効果 |
| ミノキシジル単独 | 中程度の発毛効果 |
| フィナステリド単独 | 中程度の脱毛抑制効果 |
| 併用療法 | 高い発毛効果と脱毛抑制効果 |
研究によると併用療法を行った患者の多くが単独療法よりも良好な結果を得られたことが報告されており特に前頭部や頭頂部の脱毛に対して高い効果が認められています。
併用療法の適切な使用方法
併用療法を効果的に行うためには適切な使用方法を守ることが重要です。
| 薬剤 | 使用方法 |
| ミノキシジル | 1日2回の外用塗布 |
| フィナステリド | 1日1回の経口摂取 |
両薬剤とも医師の指示に従って正しく使用することが不可欠であり、併用療法の効果が現れるまでには通常3〜6ヶ月程度かかるため辛抱強く継続することが大切です。
併用療法の長期的効果
併用療法の長期的な効果は多くの患者で確認されており、1年以上の継続使用で毛髪の密度増加、毛髪の太さの改善、脱毛の進行抑制といった効果が期待できます。
ただし個人差があり効果の程度には差が生じる可能性があります。
| 期間 | 期待される効果 |
| 3〜6ヶ月 | 初期の改善が見られる |
| 6〜12ヶ月 | 効果が顕著になる |
| 1年以上 | 持続的な改善が期待できる |
併用療法の注意点と副作用
併用療法は効果が高い一方で両薬剤の副作用が重複する可能性、相互作用による予期せぬ反応、長期使用に伴う経済的負担といった注意点もあります。
副作用については、それぞれの薬剤に関連するものが現れる可能性があります。
| 薬剤 | 主な副作用 |
| ミノキシジル | かゆみ、乾燥、発疹 |
| フィナステリド | 性機能関連の副作用 |
副作用が現れた場合は速やかに医師に相談することが重要です。
ミノキシジルをやめてフィナステリドだけにした場合
ミノキシジルをやめてフィナステリドだけにした場合、発毛効果は一時的に低下する可能性があります。
しかし、フィナステリドの継続使用により長期的には脱毛の進行を抑制し、一定の毛髪状態を維持できる見込みがあり、この変更に伴う効果と副作用はミノキシジルの使用期間や個人の体質によって異なります。
短期間のミノキシジル使用後の変更
ミノキシジルを短期間（3〜6ヶ月程度）使用した後フィナステリドのみの治療に切り替えた場合の影響を考えます。
| 項目 | 影響 |
| 発毛効果 | 一時的な低下 |
| 脱毛抑制 | 緩やかに進行 |
| 副作用 | 変化の可能性あり |
短期間のミノキシジル使用では顕著な発毛効果が現れていない可能性があるため、フィナステリドへの切り替え後も劇的な変化は期待できません。
一方で以下のような変化が起こる可能性があります。
- ミノキシジルによる一時的な発毛の停止
- フィナステリドによるDHT抑制効果の開始
- 頭皮の状態変化（かゆみや乾燥の改善など）
長期間のミノキシジル使用後の変更
ミノキシジルを長期間（1年以上）使用した後フィナステリドのみの治療に切り替えた場合の影響を検討します。
| 項目 | 影響 |
| 発毛効果 | 緩やかな低下 |
| 脱毛抑制 | 維持される可能性 |
| 副作用 | 個人差が大きい |
長期間のミノキシジル使用によりある程度の発毛効果が得られていた場合、フィナステリドへの切り替えで以下のような変化が予想されます。
- ミノキシジルによって成長した毛髪の一部脱落
- フィナステリドによるDHT抑制効果の安定化
- 全体的な毛髪状態の緩やかな変化
フィナステリド単独治療への移行期
ミノキシジルからフィナステリド単独治療への移行期には特に注意が必要であり、この移行期には次のような対応が重要となります。
| 期間 | 注意点 |
| 1〜3ヶ月 | 一時的な脱毛増加の可能性 |
| 3〜6ヶ月 | 新たな平衡状態への移行 |
| 6ヶ月以降 | 長期的な効果の安定化 |
- 定期的な頭皮と毛髪の状態チェック
- 医師との密な相談と経過観察
- 生活習慣の改善（ストレス管理、適度な運動など）
副作用の変化
治療法の変更に伴い副作用のプロフィールも変化し、ミノキシジル中止により頭皮関連の副作用は改善する可能性がある一方、フィナステリド特有の副作用に注意が必要となります。
| 薬剤 | 主な副作用 |
| ミノキシジル | かゆみ、乾燥、頭皮の炎症 |
| フィナステリド | 性機能関連の副作用、肝機能への影響 |
治療方針の再検討
ミノキシジルからフィナステリドへの切り替えを検討する際は以下の点を考慮することが大切です。
- 現在の脱毛の程度と進行速度
- ミノキシジル使用中の効果と副作用
- フィナステリド単独使用での期待効果
- 長期的な治療継続の可能性
医師との綿密な相談を通じて最適な治療方針を決定することが重要です。
まとめ
ミノキシジルをやめてフィナステリドだけにした場合短期的には発毛効果の低下が見られる可能性がありますが、長期的には脱毛の進行を抑制し一定の毛髪状態を維持できる見込みがあります。
治療法の変更に際しては個々の状況を十分に考慮し医師の指導のもとで慎重に進めることが重要です。
また定期的な経過観察と必要に応じた治療方針の見直しを行うことで、より効果的な脱毛治療を継続できる可能性があります。
フィナステリドをやめてミノキシジルだけにした場合
フィナステリドをやめてミノキシジルだけにした場合、DHT抑制効果が失われるため一時的に脱毛が進行する可能性がありますが、ミノキシジルの血流改善効果により新たな発毛が促進される見込みがあります。
この変更に伴う効果と副作用はフィナステリドの使用期間や個人の体質によって異なるため、慎重な経過観察が必要です。
短期間のフィナステリド使用後の変更
フィナステリドを短期間（3〜6ヶ月程度）使用した後ミノキシジルのみの治療に切り替えた場合の影響を考えます。
| 項目 | 影響 |
| 脱毛抑制 | 一時的な悪化 |
| 発毛効果 | 緩やかに向上 |
| 副作用 | 変化の可能性あり |
短期間のフィナステリド使用ではDHT抑制効果が十分に現れていない可能性があるため、ミノキシジルへの切り替え後も劇的な変化は期待できません。
一方で以下のような変化が起こる可能性があります。
- フィナステリドによるDHT抑制効果の消失
- ミノキシジルによる血流改善効果の開始
- 頭皮の状態変化（かゆみや乾燥の出現など）
長期間のフィナステリド使用後の変更
フィナステリドを長期間（1年以上）使用した後ミノキシジルのみの治療に切り替えた場合の影響を検討します。
| 項目 | 影響 |
| 脱毛抑制 | 緩やかな悪化 |
| 発毛効果 | 徐々に向上 |
| 副作用 | 個人差が大きい |
長期間のフィナステリド使用によりある程度の脱毛抑制効果が得られていた場合、ミノキシジルへの切り替えで以下のような変化が予想されます。
- フィナステリドによって維持されていた毛髪の一部脱落
- ミノキシジルによる血流改善効果の安定化
- 全体的な毛髪状態の緩やかな変化
ミノキシジル単独治療への移行期
フィナステリドからミノキシジル単独治療への移行期には特に注意が必要であり、この移行期には次のような対応が重要となります。
| 期間 | 注意点 |
| 1〜3ヶ月 | 一時的な脱毛増加の可能性 |
| 3〜6ヶ月 | 新たな平衡状態への移行 |
| 6ヶ月以降 | 長期的な効果の安定化 |
- 定期的な頭皮と毛髪の状態チェック
- 医師との密な相談と経過観察
- 生活習慣の改善（ストレス管理、適度な運動など）
副作用の変化
治療法の変更に伴い副作用のプロフィールも変化し、フィナステリド中止により性機能関連の副作用は改善する可能性がある一方、ミノキシジル特有の頭皮関連の副作用に注意が必要となります。
| 薬剤 | 主な副作用 |
| フィナステリド | 性機能関連の副作用、肝機能への影響 |
| ミノキシジル | かゆみ、乾燥、頭皮の炎症 |
長期的な効果予測
ミノキシジル単独治療への移行後長期的には次のような効果が期待できますが、フィナステリドによって得られていたDHT抑制効果は失われるため、脱毛の進行が加速する可能性があります。
- 血流改善による毛包の活性化
- 新たな発毛の促進
- 既存の毛髪の維持
治療方針の再検討
フィナステリドからミノキシジルへの切り替えを検討する際は以下の点を考慮することが大切です。
- 現在の脱毛の程度と進行速度
- フィナステリド使用中の効果と副作用
- ミノキシジル単独使用での期待効果
- 長期的な治療継続の可能性
医師との綿密な相談を通じて最適な治療方針を決定することが重要です。
まとめ
フィナステリドをやめてミノキシジルだけにした場合短期的には脱毛の進行が見られる可能性がありますが、長期的には新たな発毛促進効果が期待できます。
治療法の変更に際しては個々の状況を十分に考慮し医師の指導のもとで慎重に進めることが重要です。
また定期的な経過観察と必要に応じた治療方針の見直しを行うことで、より効果的な脱毛治療を継続できる可能性があります。
以上
参考文献
CHANDRASHEKAR, B. S., et al. Topical minoxidil fortified with finasteride: An account of maintenance of hair density after replacing oral finasteride. Indian dermatology online journal, 2015, 6.1: 17-20.
GUPTA, Aditya K.; TALUKDER, Mesbah; WILLIAMS, Greg. Comparison of oral minoxidil, finasteride, and dutasteride for treating androgenetic alopecia. Journal of Dermatological Treatment, 2022, 33.7: 2946-2962.
SUCHONWANIT, P., et al. A randomized, double‐blind controlled study of the efficacy and safety of topical solution of 0.25% finasteride admixed with 3% minoxidil vs. 3% minoxidil solution in the treatment of male androgenetic alopecia. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology, 2018, 32.12: 2257-2263.
ARCA, Ercan, et al. An open, randomized, comparative study of oral finasteride and 5% topical minoxidil in male androgenetic alopecia. Dermatology, 2004, 209.2: 117-125.
RAI, Priyam Bhaskar, et al. Comparing the therapeutic efficacy of topical minoxidil and finasteride with topical minoxidil and oral finasteride in androgenetic alopecia: a randomized trial. Int J Res Dermatol, 2018, 4.3: 386-390.
SABOOWALA, H. K. “Fortification of Topical Minoxidil with Finasteride”: An account of upkeep of hair density after replacing oral Finasteride. Dr. Hakim Saboowala, 2022.
MYSORE, Venkataram; SHASHIKUMAR, B. M. Guidelines on the use of finasteride in androgenetic alopecia. Indian journal of dermatology, Venereology and Leprology, 2016, 82: 128.
BHARADWAJ, Apoorva V., et al. Comparative Efficacy of Topical Finasteride (0.25%) in Combination with Minoxidil (5%) Against 5% Minoxidil or 0.25% Finasteride Alone in Male Androgenetic Alopecia: A Pilot, Randomized Open-Label Study. International Journal of Trichology, 2023, 15.2: 56-62.
SHADI, Zari. Compliance to topical minoxidil and reasons for discontinuation among patients with androgenetic alopecia. Dermatology and Therapy, 2023, 13.5: 1157-1169.
ALI MAPAR, Mohammad; OMIDIAN, Mohammad. Is topical minoxidil solution effective on androgenetic alopecia in routine daily practice?. Journal of dermatological treatment, 2007, 18.5: 268-270.