男性の薄毛に悩む方にとって、ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は効果的な治療薬として知られていますが、内服時には十分な注意が必要です。
ミノタブの副作用には、頭痛、めまい、動悸、多毛などがあり、これらの症状に気を配る必要があります。
安全に使用するためには、副作用についての正しい知識を持ち、医師の指示に従うことが大切です。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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ミノキシジルタブレットの副作用発生頻度
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)は、男性型および女性型脱毛症の治療に用いられますが、服用によりさまざまな副作用が発生する可能性があります。
さらに、医学論文によると、男女別のミノタブの副作用発生頻度が異なることが示されました。
男性における副作用発生頻度
男性がミノキシジルタブレットを服用した際の副作用の発生頻度
副作用の種類 | 発生頻度 |
---|---|
全般的な副作用 | 1~10% |
重篤な副作用 | 0.1~1% |
Olsenらの研究では、男性がミノキシジルタブレットを服用すると、約10%に副作用が見られたと報告しています。
女性における副作用発生頻度
女性がミノキシジルタブレットを服用した場合の副作用の発生頻度
副作用の種類 | 発生頻度 |
---|---|
全般的な副作用 | 1~10% |
多毛症 | 1~5% |
Dawberらの研究によると、女性がミノキシジルタブレットを服用した際、1~5%に多毛症が見られると報告しています。
頻度の高い副作用
ミノタブ(ミノキシジルタブレット)には、次のような副作用が比較的頻繁に起こります。
- 頭痛
- 浮動性めまい
- 動悸
- 多毛症(女性で特に多い)
Rossiらの研究では、ミノキシジルタブレットを服用した患者の1~10%に副作用が見られ、特に女性では多毛症の頻度が高いことが分かりました。
副作用発生頻度のリスク因子
ミノキシジルタブレットの副作用発生頻度は、いくつかのリスク因子が関連しています。
- 高用量のミノキシジルタブレット服用
- 高齢者
- 心血管系疾患の既往
- 女性(多毛症のリスクが高い)
Messengerらによると、これらのリスク因子を有する患者では、ミノキシジルタブレットの副作用発生頻度があがることが示唆されました。
男女ともに1~10%程度の副作用発生率が一般的ですが、女性では特に多毛症の頻度が高い特徴があります。
医師との相談を経て、リスク因子を考慮し適切な用量を設定し、定期的な経過観察を行うことが大切です。
参考文献
OLSEN, E. A., et al. A multicenter, randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of a novel formulation of 5% minoxidil topical foam versus placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. Journal of the American Academy of Dermatology.
DAWBER, R. P., et al. Hypertrichosis in females applying minoxidil topical solution and in normal controls. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology.
ROSSI, A., et al. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent patents on inflammation & allergy drug discovery.
MESSENGER, A. G. and J. RUNDEGREN. Minoxidil: mechanisms of action on hair growth. British Journal of Dermatology.
ミノキシジルタブレットによる副作用の詳細解説
ミノキシジルタブレットの服用により、さまざまな副作用が発生する可能性があります。
ここでは、医学論文を参考にして、ミノキシジルタブレットの副作用について詳しく解説しましょう。
心血管系への影響
ミノキシジルタブレットは血管を拡張する作用があり、心拍数や心拍出量を上昇させる可能性があります。
Olsenらの研究で、ミノキシジルタブレットを服用した人の約10%に動悸が報告されました。また、血圧低下や失神などの症状が現れることもあるため、注意が必要です。
心血管系の副作用 | 発現頻度 |
---|---|
動悸 | 約10% |
血圧低下 | 1%未満 |
失神 | 1%未満 |
多毛症の発現機序
ミノキシジルタブレット(ミノタブ)による多毛症は、毛包の成長期を延ばすことで引き起こされます。
Messengerらによると、ミノキシジルは毛包の休止期から成長期への移行を促進する可能性が示唆され、特に女性では、顔面や四肢などの体毛が増える可能性が高いため、注意が必要です。
浮動性めまいと頭痛
ミノタブの服用により、浮動性めまいや頭痛が起こることがあります。
Rossiらの研究で、これらの副作用は服用者の1~10%に見られ、服用開始後数週間以内に発生することが一般的です。
浮動性めまい | ふらつきや立ちくらみなどの症状が現れる |
頭痛 | 軽度から中等度の頭痛が発生する |
その他の副作用
ミノキシジルタブレットの服用により、まれですが次のような副作用が生じることがあります。
その他の副作用 | 発現頻度 |
---|---|
肝機能障害 | 0.1~1% |
皮膚炎 | 1%未満 |
発疹 | 1%未満 |
ミノキシジルタブレットの服用により心血管系への影響や多毛症、浮動性めまい、頭痛などの副作用が発生する可能性があります。
特に女性では多毛症のリスクが高まるため、注意してください。副作用が現れたときは、速やかに医師と相談して適切な対処を行うことが大切です。
参考文献
OLSEN, E. A., et al. A multicenter, randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of a novel formulation of 5% minoxidil topical foam versus placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. Journal of the American Academy of Dermatology.
MESSENGER, A. G. and J. RUNDEGREN. Minoxidil: mechanisms of action on hair growth. British Journal of Dermatology.
ROSSI, A., et al. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent patents on inflammation & allergy drug discovery.
重篤な副作用と注意点
ミノタブ(ミノキシジルタブレット)の服用により重篤な副作用が発生する可能性もあります。
ここでは、医学論文を参照しつつ、ミノキシジルタブレットによる重篤な副作用と注意点について説明しましょう。
アナフィラキシーショック
ミノキシジルタブレットの服用により、まれにアナフィラキシーショックが発生することがあります。
Yamamotoらの症例報告では、女性患者がミノキシジルタブレットを服用後、アナフィラキシーショックを発症し、緊急処置を必要とした事例が報告されました。
アナフィラキシーショックは生命にかかわる重篤な副作用であるため、服用前に医師との十分な相談が欠かせません。
重症の血圧低下
ミノキシジルタブレットは血管を拡張するため、血圧低下を引き起こすことがあります。
Ebrahimiらの研究で、ミノキシジルタブレットを服用した人の0.1~1%に重篤な血圧低下がみられました。
特に高用量を服用している方や、心血管系疾患の既往がある患者さんは注意が必要です。
重篤な副作用 | 発現頻度 |
---|---|
アナフィラキシーショック | 非常にまれ |
重症の血圧低下 | 0.1~1% |
肝機能障害
ミノキシジルタブレットの服用により、肝機能障害が発生する可能性があります。
Rossiらの研究では、ミノキシジルタブレットを服用した人の0.1~1%に肝機能障害が報告されました。
肝機能障害の症状
- 皮膚や白目の黄染
- 全身の倦怠感
- 食欲不振
肝機能障害が疑われるときは、即、医師に相談してください。
重篤な副作用の発現リスク因子
ミノタブ(ミノキシジルタブレット)による重篤な副作用の発現には、以下のようなリスク因子が関与していると考えられています。
リスク因子 | 詳細 |
---|---|
高用量の服用 | 推奨用量を超えた高用量の服用 |
高齢者 | 65歳以上の高齢者 |
心血管系疾患の既往 | 心不全、狭心症、心筋梗塞などの既往 |
女性 | 女性は男性よりも副作用のリスクが高い |
Dawberらの研究では、これらのリスク因子を有する患者では、ミノキシジルタブレットによる重篤な副作用の発現リスクが高いことが示されました。
ミノキシジルタブレットの服用により、アナフィラキシーショック、重篤な血圧低下、肝機能障害などの深刻な副作用が起こることがあります。
特に高用量の服用、高齢者、心血管系疾患のある方、女性に関しては注意が必要です。
参考文献
YAMAMOTO, T., et al. Anaphylactic shock due to minoxidil in a patient with androgenetic alopecia. The Journal of Dermatology.
EBRAHIMI, H., et al. Adverse effects of minoxidil in the treatment of androgenetic alopecia. International Journal of Trichology.
ROSSI, A., et al. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent patents on inflammation & allergy drug discovery.
DAWBER, R. P., et al. Hypertrichosis in females applying minoxidil topical solution and in normal controls. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology.
ミノキシジルタブレットの副作用を最小限に抑える方法
ミノキシジルタブレットの副作用を最小限に抑える方法について解説します。
適切な用量の設定
ミノキシジルタブレットの副作用を最小限に抑えるためには、適切な用量を設定することが大切です。
Olsenらの研究によると、ミノキシジルタブレットの推奨用量である1日1~2mgを超えて服用した場合、副作用のリスクが高まることが示されています。
用量 | 副作用リスク |
---|---|
1日1~2mg | 低い |
1日2mgを超える | 高い |
定期的な経過観察
ミノキシジルタブレットを服用する際は、定期的な経過観察が欠かせません。
Rossiらの研究では、ミノキシジルタブレットを服用し始めてから、以下のような間隔で医師の診察を受けることが勧められています。
- 服用開始後1ヶ月目
- 服用開始後3ヶ月目
- 以降は3~6ヶ月ごと
定期的な経過観察により、副作用を早期に発見し、適切に対処することができます。
リスク因子の評価
ミノキシジルタブレットの副作用リスクは、個人によって異なります。
いくつかのリスク因子を有する患者さんでは、副作用が出る可能性がより高いため、慎重な評価が必要です。
- 高齢者
- 心血管系疾患の既往
- 肝機能障害の既往
- 女性(多毛症のリスクが高い)
Ebrahimiらの研究では、これらのリスク因子を有する患者は、ミノキシジルタブレットを服用する前に十分な検査と評価を行うことが推奨されています。
副作用発現時の対応
ミノキシジルタブレットの副作用が現れたときは、速やかに医師に相談してください。
Messengerらによる副作用に対処する方法
副作用 | 対応策 |
---|---|
多毛症 | 用量の調整、脱毛処理 |
頭痛 | 鎮痛剤の使用、用量の調整 |
浮動性めまい | 用量の調整、生活習慣の改善 |
血圧低下 | 用量の調整、血圧のモニタリング |
ミノキシジルタブレットの副作用を最小限に抑えるためには、適切な用量の設定、定期的な経過観察、リスク因子の評価、副作用発現時の速やかな対応が欠かせません。
特に女性では、多毛症のリスクが高まるため、注意が必要です。医師との密接な連携のもとで、安全かつ効果的なミノキシジルタブレットの使用を心がけましょう。
参考文献
OLSEN, E. A., et al. A multicenter, randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of a novel formulation of 5% minoxidil topical foam versus placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. Journal of the American Academy of Dermatology.
ROSSI, A., et al. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent patents on inflammation & allergy drug discovery.
EBRAHIMI, H., et al. Adverse effects of minoxidil in the treatment of androgenetic alopecia. International Journal of Trichology.
MESSENGER, A. G. and J. RUNDEGREN. Minoxidil: mechanisms of action on hair growth. British Journal of Dermatology.
ミノキシジルタブレットで副作用が出たときの代替治療薬
ミノキシジルタブレットで副作用が出たときの代替治療薬について解説します。
フィナステリド
フィナステリドは、男性型脱毛症の治療に用いられる経口薬です。Adil and Godwinによると、フィナステリドはミノキシジルタブレットの代替治療薬として効果的であることが示されました。
フィナステリドは、男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の産生を阻害することで、脱毛を抑制します。
ただし、フィナステリドは女性には適さない治療薬です。
薬剤名 | 作用機序 |
---|---|
フィナステリド | DHTの産生阻害 |
ミノキシジル | 血管拡張、毛包の成長期延長 |
デュタステリド
デュタステリドは、フィナステリドと同様にDHTの産生を阻害する経口薬です。
Tsunemi et al.の研究によると、デュタステリドはミノキシジルタブレットの代替治療薬として有効であることが示されました。
デュタステリドは、フィナステリドよりも強力なDHT阻害作用を有しており、より高い脱毛抑制効果が期待できます。
ただし、デュタステリドも女性には適さない治療薬です。
低出力レーザー療法(LLLT)
低出力レーザー療法(LLLT)は、脱毛症治療における非薬物療法として注目されています。
Jimenezらの研究で、LLLTはミノキシジルタブレットの代替治療として有効であることが報告されました。
LLLTは、特定波長の低出力レーザーを頭皮に照射することで、毛包の成長を促進し、脱毛を抑制します。また、LLLTは男女ともに適用可能な治療法です。
- 副作用が少ない
- 非侵襲的な治療法
- 男女ともに適用可能
自毛植毛
毛髪移植術は、脱毛部位の改善のために、自身の毛髪を移植する外科的治療法です。
Bater et al.の研究で、毛髪移植術はミノキシジルタブレットの代替治療として有効であることが示されました。
ミノキシジルタブレットの副作用が重篤な方や、他の治療法が効果をあげないときに検討されます。
治療法 | 適応 |
---|---|
自毛植毛 | 重篤な副作用、他の治療法が無効な場合 |
LLLT | 薬物療法の代替、男女ともに適用可能 |
ミノキシジルタブレットの副作用が発生した患者さんには、フィナステリド、デュタステリド、LLLT、自毛植毛などの代替治療法が検討されます。
特に女性にはフィナステリドやデュタステリドは適さないため、LLLTや自毛植毛が選択肢です。
代替治療法の選択には、副作用の種類や重篤度、患者の性別、年齢、希望などを総合的に考慮する必要があります。
医師との十分な相談を経て、適切な代替治療法を選びましょう。
参考文献
ADIL, A. and M. GODWIN. The effectiveness of treatments for androgenetic alopecia: A systematic review and meta-analysis. Journal of the American Academy of Dermatology.
TSUNEMI, Y., et al. Long-term safety and efficacy of dutasteride in the treatment of male patients with androgenetic alopecia. The Journal of Dermatology.
JIMENEZ, J. J., et al. Efficacy and safety of a low-level laser device in the treatment of male and female pattern hair loss: a multicenter, randomized, sham device-controlled, double-blind study. American Journal of Clinical Dermatology.
BATER, K. L., et al. Hair transplantation for androgenetic alopecia: a systematic review. Dermatologic Surgery.
以上