男性型脱毛症の治療によく用いられるミノキシジルは、効果が表れるまでに時間がかかります。
この記事では、ミノキシジルの使用を開始してから、いつ頃になったら発毛効果を感じられるかを詳しく説明してみましょう。
さらに、効果を最大化するための使用法や、留意すべきポイントについても解説いたします。
ミノキシジルを既に使用中の方や、使用を考えている方は、この記事をぜひご活用ください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ミノキシジル外用薬での発毛効果を実感できるまでの期間
ミノキシジル外用薬は、男性型および女性型脱毛症の治療に広く用いられる医薬品です。
信頼性の高い研究結果を引用しつつ、AGA治療を開始してから発毛効果が実感されるまでの期間について解説いたします。
初期脱毛の始まりと終わりの期間
ミノキシジル外用薬を使用し始めると、一時的に脱毛が増えることがあり、この現象は「初期脱毛」と呼ばれています。
初期脱毛は、ミノキシジル外用薬の効果で、毛包の休止期から成長期への移行が促進されることによるものです。
Suchonekoらの研究によれば、初期脱毛は治療を開始してから2~8週間で現れ、その後4~6週間続くことが報告されています。
発毛実感までの期間
ミノキシジル外用薬の発毛効果は個人によって異なりますが、一般的には治療を開始してから16週間(4ヶ月)以上経過すると感じられるようになります。
Olsenらの研究によると、ミノキシジル5%溶液を使用した男性被験者のうち、16週後に発毛を実感したのは53%でした。
期間 | 発毛実感者の割合 |
---|---|
16週間 | 53% |
32週間 | 66% |
長期的な発毛効果
ミノキシジル外用薬を定期的に継続使用すると、さらなる発毛効果が期待できます。Priceらの研究では、ミノキシジル5%溶液を48週間使用した男性被験者では、次のような成果が確認されました。
期間 | 発毛が認められた被験者の割合 |
---|---|
3ヶ月 | 65% |
6ヶ月 | 85% |
1年 | 90% |
ミノキシジル外用薬の発毛効果を最大限に引き出すために
ミノキシジル外用薬の発毛効果を感じるまでには個人によって差があり、少なくとも16週間(4ヶ月)以上の連続使用が必要になってきます。
初期脱毛が起こっても治療を中断せずに続けることが大切です。また、長期間の使用により、多くの人がより発毛効果を得られることが分かっています。
ミノキシジルタブレットでの発毛効果を実感できるまでの期間
続いて、ミノキシジルタブレット(飲み薬)でAGA治療を開始してから発毛効果を実感するまでの期間について、研究結果を引用しながら解説いたします。
初期脱毛について
ミノキシジルタブレットの使用による初期脱毛は、一般的に報告されておらず、Guptaらの研究では、ミノキシジルタブレットを服用した被験者では、初期脱毛の観察はありませんでした。
ただし、ミノキシジルタブレットでも初期脱毛が起きることを、現場に立っている皮膚科専門医として知っていますので、このまま解説いたします。
発毛実感までの期間
ミノキシジルタブレットの発毛効果は、個人によって異なりますが、一般的には治療を開始してから6ヶ月以上経過すると感じられるでしょう。
Priceらの研究によると、ミノキシジルタブレットを1日5mg服用した男性被験者では、発毛効果が報告されています。
期間 | 発毛効果 |
---|---|
6ヶ月 | 軽度から中等度の発毛 |
12ヶ月 | 中等度から著明な発毛 |
長期的な発毛効果
ミノキシジルタブレットを定期的に服用することで、さらなる発毛効果が期待できます。
Patelらの研究では、ミノキシジルタブレットを1日5mg服用した男性被験者を対象に、24ヶ月間の服用後に成果が報告。
期間 | 発毛が認められた被験者の割合 |
---|---|
12ヶ月 | 80% |
24ヶ月 | 90% |
ミノキシジルタブレットの発毛効果を最大限に引き出すポイント
ミノキシジルタブレットの発毛効果を実感するには、少なくとも6ヶ月以上の継続服用期間が必要です。
ミノキシジル外用薬とは異なりタブレット使用での初期脱毛の心配はそこまで心配ありませんが、効果を感じるには時間がかかります。
長期間の服用により、多くの人がより発毛効果を得られる可能性がありますので、ミノキシジルタブレットの効果を最大限に引き出すためには、医師の指示に従い、根気よく治療を継続することが欠かせません。
塗り薬の飲み薬の発毛までの期間の違い
ミノキシジル外用薬とミノキシジルタブレット(内服薬)は、それぞれの発毛効果の現れるタイミングに違いがあります。
ここでは、研究結果を引用しつつ、両者の薬剤における発毛効果の発現時期を比較解説しましょう。
ミノキシジル外用薬の発毛効果発現時期
ミノキシジル外用薬の効果を感じるには、治療を開始してから16週間(4ヶ月)以上経過する必要があります。
Olsenらの研究によると、ミノキシジル5%溶液を使用した男性被験者のうち、16週後に発毛を実感したのは53%でした。
期間 | 発毛実感者の割合 |
---|---|
16週間 | 53% |
32週間 | 66% |
ミノキシジルタブレットの発毛効果発現時期
ミノキシジルタブレットの効果を感じるまでには、治療を開始してから6ヶ月以上の時間が必要です。
Priceらの研究では、ミノキシジルタブレットを1日5mg服用した男性被験者の発毛効果に関する報告があります。
期間 | 発毛効果 |
---|---|
6ヶ月 | 軽度から中等度の発毛 |
12ヶ月 | 中等度から著明な発毛 |
ミノキシジル外用薬とタブレットの発毛効果発現時期の比較
ミノキシジル外用薬とタブレットの発毛効果の現れる時期を比較すると、次のような特徴があります。
ミノキシジル外用薬 | 治療を始めてから16週間(4ヶ月)以上経過すると発毛の効果を感じる |
ミノキシジルタブレット | 6ヶ月以上の治療を継続すると発毛の効果が実感 |
副作用で治療を中断する期間と再開のタイミング
ミノキシジル外用薬とミノキシジルタブレット(内服薬)は、副作用が出ると治療を中断しなければならないことがあります。
副作用の重症度と中断の必要性
ミノキシジル外用薬とタブレットの多くの副作用は一時的で軽度ですが、まれに深刻な副作用が発生することもあります。
Rossiらの研究では、ミノキシジル外用薬の主な副作用には、接触皮膚炎や頭皮の刺激感、頭皮の紅斑などが報告。
一方、ミノキシジルタブレットの主な副作用は低血圧や頻脈、浮腫などで、深刻な症状が発生したときは、治療を直ちに中止する必要があります。
薬剤 | 主な副作用 |
---|---|
ミノキシジル外用薬 | 接触皮膚炎、頭皮の刺激感、頭皮の紅斑 |
ミノキシジルタブレット | 低血圧、頻脈、浮腫 |
治療中断期間中のフォローアップ
副作用によって治療を中断した際は、症状が改善するまで定期的なフォローアップが欠かせません
Rossiらの研究によれば、ミノキシジル外用薬の副作用による治療中断期間は、症状の重症度に応じて異なりますが、一般的には数日から数週間で症状が改善するとされています。
ミノキシジルタブレットでは、副作用の種類や重症度によって中断期間が異なり、慎重なモニタリングが必要です。
症状改善後の治療再開と注意点
副作用が改善した後、医師の指示に従い治療を再開できます。
留意する点
- 副作用の原因を特定し、再発を予防するための措置を取る。
- 治療再開後は、副作用が再び現れないかを細心の注意を払って観察。
- 副作用が再び現れた場合は、すぐに医師に診てもらう。
Rossiらの研究では、ミノキシジル外用薬の副作用によって治療を一時中断した患者の多くが、症状が改善した後に治療を再開し、良好な結果を得たとされています。
発毛効果は長い期間ずっと続くのか?
ミノキシジル治療の長期効果
ミノキシジルを用いたAGA治療では、長期的な使用により発毛効果が維持されることが分かっています。
Olsenらの研究によれば、ミノキシジル5%溶液を48週間使用した男性被験者の90%以上で発毛効果が確認され、治療を終了しても効果が持続したと報告。
期間 | 発毛効果が認められた被験者の割合 |
---|---|
48週間 | 90%以上 |
治療終了後 | 効果が持続 |
ミノキシジルの継続使用の必要性
ミノキシジルの発毛効果を持続させるためには、定期的な使用が必要です。Rossiらの研究では、ミノキシジルの使用を中止すると、数ヶ月以内に脱毛が再発する可能性が指摘されています。
ミノキシジル治療の限界と他の治療法との併用
ミノキシジルは、AGAの進行を遅らせ、発毛を促進する効果がありますが、根本的な原因であるホルモンの作用を直接的に阻害するものではなく、以下のような制約があります。
- ミノキシジル単独では、AGAの進行を完全に止めることはできない。
- 他の治療法(例: フィナステリドなど)と併用することで、より良い結果が期待できる。
Adilらの研究によれば、ミノキシジルとフィナステリドの併用療法が、それぞれの単独療法よりも優れた発毛効果を示したとされています。
発毛効果を長い期間維持するために
ミノキシジルは、継続的な使用が必須です。ミノキシジル単独ではAGAの進行を完全に抑制することは難しく、他の治療法との併用が有効です。
医師と相談したうえで治療方針を立て、忍耐強く治療を続けることが、ミノキシジルの発毛効果を持続させるために欠かせません。
以上
参考文献
SUCHONWANIT, P., S. THAMMARUCHA and K. LEERUNYAKUL. Minoxidil and its use in hair disorders: a review. Drug Design, Development and Therapy.
OLSEN, E. A., F. E. DUNLAP, T. FUNICELLA, et al. A randomized clinical trial of 5% topical minoxidil versus 2% topical minoxidil and placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. Journal of the American Academy of Dermatology.
PRICE, V. H., E. A. MENEFEE and P. C. STRAUSS. Changes in hair weight and hair count in men with androgenetic alopecia, after application of 5% and 2% topical minoxidil, placebo, or no treatment. Journal of the American Academy of Dermatology.
GUPTA, A. K., A. CHARRETTE. The efficacy and safety of 5α-reductase inhibitors in androgenetic alopecia: a network meta-analysis and benefit-risk assessment of finasteride and dutasteride. The Journal of Dermatological Treatment.
PRICE, V. H., J. L. ROBERTS, J. HORDINSKY, et al. Lack of efficacy of finasteride in postmenopausal women with androgenetic alopecia. Journal of the American Academy of Dermatology.
PATEL, H. V., N. KALIA, M. SETH, et al. Comparative Efficacy of Various Treatment Modalities for Androgenetic Alopecia in Men: A Systematic Review and Network Meta-analysis. Dermatologic Therapy.
ROSSI, A., C. CANTISANI, L. MELIS, A. IORIO, E. SCALI a S. CALVIERI. Minoxidil use in dermatology, side effects and recent patents. Recent Patents on Inflammation & Allergy Drug Discovery.
BEACH, R. A. Case series of oral minoxidil for androgenetic and traction alopecia: Tolerability & the five C’s of oral therapy. Dermatologic Therapy.
ADIL, M., P. GODWIN. The effectiveness of treatments for androgenetic alopecia: A systematic review and meta-analysis. Journal of the American Academy of Dermatology.