膝の裏が腫れて痛い原因疾患とは?ベーカー嚢腫(のうしゅ)の特徴と整形外科での治療

膝の裏が腫れて痛い原因疾患とは?ベーカー嚢腫(のうしゅ)の特徴と整形外科での治療

膝の裏が腫れて痛いとき、原因として見落とされやすい疾患のひとつがベーカー嚢腫(のうしゅ)です。ベーカー嚢腫は膝関節内の関節液(滑液)が膝裏の袋にたまることで生じる嚢胞で、変形性膝関節症や半月板損傷に合併しやすい疾患として知られています。

嚢腫を放置して大きくなると、破裂してふくらはぎが急激に腫れたり、深部静脈血栓症と紛らわしい症状を引き起こしたりすることがあります。

この記事では、ベーカー嚢腫の原因や特徴的な症状、整形外科で行われる検査・診断の流れから、保存療法や手術療法の選択肢までを詳しく解説します。膝裏の腫れと痛みが気になっている方は、受診を判断する材料としてお役立てください。

目次

膝の裏が腫れて痛い症状はベーカー嚢腫のサインかもしれない

膝裏に腫れやしこりを感じ、曲げ伸ばしで痛みが出る場合、ベーカー嚢腫が原因となっている可能性があります。膝裏の違和感は放っておくと悪化する場合があるため、早めの確認が大切です。

症状特徴注意点
膝裏の腫れピンポン玉大のやわらかいしこり膝を伸ばすと目立ちやすい
膝裏の痛み鈍い痛みや圧迫感長時間の歩行後に強まりやすい
膝の曲げにくさ嚢腫が大きくなると可動域が狭くなる正座やしゃがみ込みが困難になる
ふくらはぎへの波及嚢腫が下方へ広がると下腿にも違和感破裂時はふくらはぎの急な痛みと腫れ

膝裏の腫れ方や痛みの出方は人によって異なる

ベーカー嚢腫ができても、全員が強い痛みを感じるわけではありません。嚢腫が小さいうちは無症状のことも多く、MRIを撮ったときに偶然見つかるケースも珍しくないでしょう。一方で、嚢腫が5cmを超えるほど大きくなると、膝裏の圧迫感や鈍い痛みを訴える方が増えます。

痛みの出やすいタイミングには個人差がありますが、長時間の立ち仕事や歩行のあとに膝裏がだるく感じるという声は多くの方に共通しています。しゃがむ動作や階段を降りるときに違和感が強まるときもあり、日常生活への影響は嚢腫の大きさや膝関節の状態によって変わります。

膝を伸ばしたときに痛みが増すのがベーカー嚢腫の特徴

ベーカー嚢腫に特有の傾向として、膝を完全に伸ばした姿勢で膝裏の腫れや痛みが強まるという点があります。嚢腫は半膜様筋腱と腓腹筋内側頭の間にできる袋であり、膝を伸展させると周囲の筋肉や腱に圧迫されて痛みが出やすくなります。

反対に、膝を45度ほど曲げた姿勢では袋への圧力が減り、腫れが目立ちにくくなる傾向があります。こうした姿勢による腫れや痛みの変化は、ベーカー嚢腫を疑う手がかりのひとつです。

膝裏の異変に気づいたら早めに整形外科を受診する

膝裏のしこりや違和感を「年のせいだろう」と思い込んで放置すると、嚢腫が徐々に大きくなったり、破裂して急な痛みを引き起こしたりする恐れがあります。深部静脈血栓症など別の疾患が隠れている場合もあるため、自己判断で様子を見続けるのは得策ではありません。

整形外科を受診すれば、超音波検査やMRIなどで嚢腫の有無や大きさを短時間で確認できます。原因となっている膝関節内の問題を早い段階で把握することが、効果的な治療への第一歩となります。

ベーカー嚢腫は関節液が膝の裏にたまってできる嚢胞

ベーカー嚢腫とは、膝関節内で産生された関節液(滑液)が膝裏の滑液包にたまって膨らんだ状態を指します。正式には膝窩嚢腫(しつかのうしゅ)とも呼ばれ、膝の裏側に生じる嚢胞性病変のなかでは特に頻度が高い疾患です。

関節液が弁のように一方向に流れ込んで嚢胞を形成する

膝関節の後方内側には、半膜様筋腱と腓腹筋内側頭の間に「腓腹筋‐半膜様筋滑液包」と呼ばれる袋があります。この滑液包は膝関節の後方関節包と交通していることが多く、関節包との間に弁のような構造が存在します。

膝関節内で炎症や損傷があると、関節液の産生量が増えます。増えた関節液は弁構造を通じて一方向に滑液包へ流れ込みますが、逆方向には戻りにくいため、袋の中に液体がたまり続けて嚢胞となるのです。

変形性膝関節症や半月板損傷がベーカー嚢腫を招きやすい

ベーカー嚢腫は単独で生じることは少なく、多くの場合は膝関節内の何らかの障害に伴って発症します。成人のベーカー嚢腫に合併しやすい疾患として挙げられるのが、変形性膝関節症、半月板損傷、関節リウマチなどです。

ある研究では、変形性膝関節症に伴う慢性的な膝の痛みを持つ方の約27%にベーカー嚢腫が確認されたと報告されています。軟骨のすり減りや半月板の損傷による関節内の慢性的な炎症が、関節液の過剰産生を招き、結果としてベーカー嚢腫が形成されやすくなります。

ベーカー嚢腫は子どもにもできる?

ベーカー嚢腫は中高年に多いイメージがあるかもしれませんが、4〜7歳頃の子どもにも発生する場合があります。ただし、子どものベーカー嚢腫は成人とは性質が異なります。

成人では変形性膝関節症などの関節内病変が背景にあることが大半ですが、子どもの場合は関節内に明らかな異常がなく、原因不明のまま滑液包が膨らむことが多いとされています。子どものベーカー嚢腫は自然に消えていくケースも多く、経過を観察するだけで済む方が少なくありません。

  • 変形性膝関節症:軟骨の摩耗に伴う慢性的な関節内炎症が関節液の増加を引き起こす
  • 半月板損傷:特に後角の損傷は膝裏への液体流入を助長しやすい
  • 関節リウマチ:滑膜の炎症が活発になり関節液が過剰に産生される
  • 前十字靭帯損傷:関節の不安定性が二次的な関節液増加を招く

膝裏の腫れと痛みを調べる検査と診断の進め方

ベーカー嚢腫の診断は超音波検査やMRIで高い精度で行えます。膝裏の腫れが嚢腫によるものか、それとも別の疾患によるものかを鑑別するため、段階的な検査を組み合わせるのが一般的です。

触診とFoucher徴候で膝裏のしこりを確認する

整形外科での診察ではまず、膝裏を丁寧に触って腫れやしこりの有無を確かめます。ベーカー嚢腫がある場合、膝を伸ばした状態で膝窩部にやわらかい腫瘤を触知できることが多いでしょう。

Foucher徴候(フシェ徴候)と呼ばれる所見も参考になります。膝を伸ばしたときに硬く触れる腫瘤が、膝を曲げると軟らかくなる現象で、この変化が確認できるとベーカー嚢腫の存在を強く示唆します。

超音波検査で嚢腫の大きさや構造を映し出す

超音波検査(エコー)は、ベーカー嚢腫の診断において簡便かつ有用な方法です。体への負担がなく、検査にかかる時間も短いため、外来で手軽に行えます。

エコー画像では、嚢腫の内部が液体で満たされた無エコー域として映し出されます。嚢腫の大きさや形状、内部に隔壁(しきり)があるかどうか、周囲の血管との位置関係なども確認でき、穿刺吸引を行う際のガイドとしても活用されます。

MRI検査で膝関節の全体像を精密に評価する

MRIは嚢腫だけでなく、膝関節内部の軟骨・半月板・靭帯などの状態を一度に把握できるため、ベーカー嚢腫の原因究明に適した検査です。T2強調画像では嚢腫が高信号(白く光る像)として鮮明に描出され、嚢腫と関節腔との交通路もはっきりと確認できます。

MRIで膝関節全体を評価すると、ベーカー嚢腫を生じさせている根本的な問題(半月板の断裂や軟骨の損傷など)を特定でき、治療方針の決定に欠かせない情報が得られます。

膝裏の腫れは深部静脈血栓症と間違えやすい?

膝裏やふくらはぎの腫れ・痛みは、深部静脈血栓症(DVT)でも生じるため、ベーカー嚢腫との鑑別は臨床上とても大切です。特にベーカー嚢腫が破裂した場合は、ふくらはぎの急な腫れと発赤がDVTの症状と酷似し、「偽血栓性静脈炎」と呼ばれる状態を引き起こします。

DVTが見逃されると肺塞栓症という重篤な合併症につながる恐れがあるため、膝裏やふくらはぎの急な腫れに対しては超音波検査で血栓の有無を確認する手順が推奨されています。

鑑別項目ベーカー嚢腫深部静脈血栓症
腫れの部位膝裏中心、破裂時はふくらはぎへ広がるふくらはぎから大腿部にかけて広範囲
経過徐々に増大、破裂時は急性突然または短期間で発症
超音波所見嚢胞性腫瘤、血流なし静脈内に血栓像、圧迫で潰れない

ベーカー嚢腫が破裂したらどうなる?ふくらはぎの激痛と合併症

「ベーカー嚢腫は放っておいても大丈夫」と考える方もいますが、嚢腫が破裂すると激しい痛みに見舞われることがあります。まれに神経や血管が圧迫されて深刻な合併症を引き起こすケースも報告されています。

嚢腫の破裂で起きる偽血栓性静脈炎

ベーカー嚢腫が破裂すると、内部にたまっていた関節液がふくらはぎの筋肉間に漏れ出します。漏れた液体が組織を刺激して炎症反応を起こすため、ふくらはぎに急激な腫れ・発赤・痛みが生じます。

こうした症状は深部静脈血栓症と非常によく似ており、偽血栓性静脈炎(ぎけっせんせいじょうみゃくえん)と呼ばれます。治療法がまったく異なるため、正確な鑑別がとても大切です。

DVTに対する抗凝固療法をベーカー嚢腫の破裂に誤って行うと、出血リスクが高まるなど不利益が生じかねません。

神経や血管を圧迫して生じる合併症

嚢腫がかなり大きくなった場合、膝窩部を通る脛骨神経や膝窩静脈を圧迫することがまれにあります。脛骨神経が圧迫されると、足のしびれや筋力低下といった末梢神経障害が出現する恐れがあるでしょう。

膝窩静脈の圧迫は下肢の血液循環を妨げ、むくみや二次的な深部静脈血栓症のリスクを高めます。また、ごくまれに虚血やコンパートメント症候群のような重篤な状態に至ったケースも報告されています。

  • ふくらはぎの急激な腫れと発赤が生じたとき
  • 足先のしびれや動かしにくさを感じたとき
  • 膝裏の腫れが数日で急に大きくなったとき
  • 歩行時の痛みが普段よりも強くなったとき

上のような変化があった場合は、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに整形外科を受診してください。

重症化を防ぐためには早めの受診が大切

ベーカー嚢腫そのものは良性の疾患であり、命に関わることは基本的にありません。しかし、破裂や圧迫による合併症は生活の質を大きく損ないます。

嚢腫が見つかった段階で定期的に経過を観察し、膝関節内の原因疾患を並行して治療しておくことが、重症化を防ぐうえで有効です。症状が軽いうちに受診しておくと、治療の選択肢も広がります。

膝裏の腫れと痛みを手術せずに和らげる保存療法

ベーカー嚢腫の治療は、まず保存療法から始めるのが原則です。

嚢腫自体が膝関節内の原因疾患に伴って生じるものであるため、根本の炎症や損傷を抑えると嚢腫の縮小や症状の軽減が期待できます。

治療法目的特徴
安静・アイシング膝への負担軽減と炎症の鎮静急性期の基本的な対処法
消炎鎮痛薬痛みと炎症の抑制内服薬や外用薬を症状に合わせて使用
ステロイド注射強い炎症を速やかに鎮める関節内もしくは嚢腫内への注入
穿刺吸引嚢腫内の液体を排出して腫れを軽減超音波ガイド下で安全に実施
リハビリ・運動療法膝周囲の筋力強化と柔軟性の向上再発予防にもつながる

安静やアイシングで膝への負担を軽くする

膝裏の腫れや痛みが強い急性期には、まず膝を休め、アイシングで炎症を落ち着かせるのが基本の対処となります。氷嚢や保冷剤をタオルで包み、1回15〜20分程度、患部を冷やしましょう。

膝用のサポーターや弾性包帯で適度に圧迫することも、腫れの軽減に役立ちます。ただし、きつく巻きすぎると血行不良を起こす場合があるため、装着感に注意してください。

消炎鎮痛薬とステロイド注射で炎症を抑える

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、膝関節内の炎症と痛みを和らげる薬物治療の柱です。内服薬のほか、湿布などの外用薬も併用することがあります。

炎症が強い場合には、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を膝関節内へ注射する方法が選ばれることもあります。関節液の過剰産生を直接抑え、ベーカー嚢腫の縮小につながる場合があるでしょう。

ただし、ステロイド注射は繰り返しすぎると軟骨や腱に影響を及ぼす恐れがあるため、医師の判断のもとで適切な回数にとどめる必要があります。

超音波ガイド下の穿刺吸引で嚢腫を小さくする

嚢腫が大きく、痛みや膝の動かしにくさが日常生活に支障をきたしている場合は、超音波画像を見ながら針を嚢腫に刺して内部の液体を吸い出す「穿刺吸引」が行われます。

吸引後にステロイドと局所麻酔薬を注入する手法もあり、痛みのスコアや身体機能の改善が長期的に持続したとする報告もあります。

穿刺吸引はあくまで対症療法であり、膝関節内の原因が残っていれば液体が再びたまる可能性は否定できません。原因疾患の治療と並行して行うことが、再発を減らすためのポイントです。

リハビリと運動療法で膝の安定性を取り戻す

膝周囲の筋力、特に大腿四頭筋やハムストリングスの筋力を高めることは、膝関節の安定性を向上させ、関節内の負担を軽減するうえで大切です。水中ウォーキングやストレッチなど、膝に過度な衝撃を加えない種目から始めるのがよいでしょう。

理学療法士の指導のもとで関節可動域の維持・拡大を図るリハビリも有効です。痛みが落ち着いてきた段階で少しずつ運動量を増やしていくと、膝関節への過剰な負荷を防ぎ、ベーカー嚢腫の再発リスクを下げることが期待できます。

整形外科でベーカー嚢腫の手術が選ばれる場面と手術法

保存療法を十分に行っても嚢腫が繰り返し再発する場合や、強い痛み・神経圧迫症状が続く場合には、手術治療が検討されます。手術法は主に関節鏡視下手術と開放切除術の2つに大別されます。

保存療法で改善しない場合に手術を検討する

手術はベーカー嚢腫治療の中で最終的な選択肢に位置づけられます。穿刺吸引やステロイド注射を行っても嚢腫が何度もたまってくる方、嚢腫の圧迫によって神経障害や歩行困難がある方には、手術のメリットが大きくなるでしょう。

手術を受けるかどうかの判断にあたっては、膝関節内の原因疾患がどの程度進行しているか、日常生活への影響がどれほどかといった点を医師と相談しながら総合的に決定します。

関節鏡視下手術で膝内部の原因と嚢腫を同時に治療する

関節鏡(内視鏡)を使った手術は、小さな皮膚切開で膝関節内を直接観察しながら治療を行える方法です。半月板の損傷修復や軟骨の処置といった原因疾患への介入と、嚢腫と関節腔との交通路(弁構造)の拡大や嚢腫壁の郭清を同時に行えるのが大きな利点です。

複数の研究を統合した分析では、交通路を拡大して関節液の循環を改善する方法に嚢腫壁の切除を併用することで、再発率が低下する傾向が示されています。体への侵襲が開放手術より小さいため、術後の回復も比較的早い傾向があります。

開放切除術で嚢腫そのものを取り除く方法

嚢腫が非常に大きい場合や複雑な形状をしている場合には、膝裏を直接切開して嚢腫を摘出する開放切除術が行われるときがあります。膝の後方内側からアプローチし、嚢腫の壁全体と関節包との接続部を丁寧に切除するのが基本的な手技です。

開放切除術は嚢腫を確実に取り除ける反面、関節鏡手術に比べると切開が大きいぶん回復にやや時間がかかることがあります。嚢腫の摘出だけでは膝関節内の原因が残るため、必要に応じて関節鏡手術を組み合わせるケースもあります。

関節鏡手術と開放切除術の比較

比較項目関節鏡視下手術開放切除術
切開の大きさ数mmの小切開が数カ所数cmの切開
関節内病変への対応同時に治療できる別途関節鏡が必要な場合がある
術後の回復比較的早いやや時間がかかる傾向

術後の再発を防ぐために大切なリハビリと経過観察

手術でベーカー嚢腫を除去しても、膝関節内の炎症が持続していれば再び嚢腫がたまる可能性はゼロにはなりません。術後は医師の指示に従い、段階的なリハビリに取り組むことが再発予防のカギとなります。

初期は膝の安静を保ちつつ、徐々に関節可動域訓練や筋力トレーニングを開始します。定期的な外来受診で超音波検査やMRIを行い、再発の兆候がないかを確認しながら、体重管理や運動習慣の見直しも並行して進めていきましょう。

よくある質問

ベーカー嚢腫は自然に治ることがある?

ベーカー嚢腫が自然に縮小・消失することはあります。特に子どものベーカー嚢腫は、成長とともに自然に消えていくケースが少なくありません。成人の場合でも、膝関節内の炎症が落ち着いて関節液の産生量が減れば、嚢腫が小さくなることはあり得ます。

ただし、変形性膝関節症のように原因となる疾患が慢性的に続いている場合は、嚢腫が自然に消えるのを待つよりも、整形外科で原因疾患の治療を受けたほうが結果的に改善が早いでしょう。膝裏の腫れが気になる方は、一度受診して状態を確認しておくことをおすすめします。

ベーカー嚢腫の痛みが強いときに自宅でできるケアはある?

膝裏の痛みが強いときは、まず膝を安静にし、アイシングで患部を冷やすのが基本です。氷嚢や保冷剤をタオルで包み、15〜20分ほど当てると炎症の広がりを抑えやすくなります。長時間の歩行や立ち仕事はなるべく控え、膝への負担を減らしてください。

市販の消炎鎮痛剤(湿布や内服薬)を一時的に使うと痛みが和らぐ場合もありますが、根本的な治療にはなりません。痛みが数日経っても改善しない場合や、ふくらはぎの腫れを伴う場合は速やかに整形外科を受診してください。

ベーカー嚢腫の穿刺吸引は痛みを伴う?

穿刺吸引は超音波で嚢腫の位置を確認しながら行うため、周囲の組織を傷つけるリスクが低く、比較的安全な処置です。通常、局所麻酔を併用するため、針を刺す際のチクッとした感覚はあるものの、強い痛みを感じる方は多くありません。

吸引後にステロイドと局所麻酔薬を注入する場合は、注入時の違和感が出ることもありますが、短時間で落ち着くのが一般的です。処置中の不安が強い方は、事前に医師へ伝えておくと配慮してもらえます。

ベーカー嚢腫の手術後はどのくらいで日常生活に戻れる?

回復期間は手術方法や個人の状態によって異なりますが、関節鏡視下手術の場合は術後2〜4週間程度で日常的な歩行が可能になる方が多い傾向です。デスクワークへの復帰は比較的早く、1〜2週間で可能なケースもあります。

開放切除術では切開がやや大きいぶん、創部の回復に少し時間がかかり、3〜6週間程度を要する場合があります。いずれの方法でも、膝に強い負荷がかかるスポーツや重労働への復帰は、医師の判断を仰ぎながら慎重に進めることが大切です。

ベーカー嚢腫を予防するためにできることは?

ベーカー嚢腫の多くは膝関節内の炎症や損傷に伴って発生するため、膝関節への過度な負担を避けることが予防の基本です。適正体重の維持や、膝に衝撃の少ない有酸素運動(ウォーキング、水泳など)を日常に取り入れると、膝関節への負荷を抑えやすくなります。

大腿四頭筋やハムストリングスの筋力トレーニングで膝周囲の筋力を維持する取り組みも膝関節の安定性を高め、ベーカー嚢腫の原因となる関節内病変の進行を遅らせる助けになります。

膝に違和感を感じたら早めに整形外科で相談し、問題が小さいうちに対処することが予防につながるでしょう。

参考文献

Frush, T. J., & Noyes, F. R. (2015). Baker’s cyst: Diagnostic and surgical considerations. Sports Health, 7(4), 359–365. https://doi.org/10.1177/1941738113520130

Herman, A. M., & Marzo, J. M. (2014). Popliteal cysts: A current review. Orthopedics, 37(8), e678–e684. https://doi.org/10.3928/01477447-20140728-52

Smith, M. K., Lesniak, B., Baraga, M. G., Kaplan, L., & Jose, J. (2015). Treatment of popliteal (Baker) cysts with ultrasound-guided aspiration, fenestration, and injection: Long-term follow-up. Sports Health, 7(5), 409–414. https://doi.org/10.1177/1941738115585520

Van Nest, D. S., Tjoumakaris, F. P., Smith, B. J., Beatty, T. M., & Freedman, K. B. (2020). Popliteal cysts: A systematic review of nonoperative and operative treatment. JBJS Reviews, 8(3), e0139. https://doi.org/10.2106/JBJS.RVW.19.00139

Zhou, X. N., Li, B., Wang, J. S., & Bai, L. H. (2016). Surgical treatment of popliteal cyst: A systematic review and meta-analysis. Journal of Orthopaedic Surgery and Research, 11, 22. https://doi.org/10.1186/s13018-016-0356-3

Chatzopoulos, D., Moralidis, E., Markou, P., Makris, V., & Arsos, G. (2008). Baker’s cysts in knees with chronic osteoarthritic pain: A clinical, ultrasonographic, radiographic and scintigraphic evaluation. Rheumatology International, 29(2), 141–146. https://doi.org/10.1007/s00296-008-0639-z

Sansone, V., De Ponti, A., Paluello, G. M., & Del Maschio, A. (1995). Popliteal cysts and associated disorders of the knee: Critical review with MR imaging. International Orthopaedics, 19(5), 275–279. https://doi.org/10.1007/BF00181107

変形性膝関節症による膝の炎症・腫れに戻る

変形性膝関節症の症状TOP

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

目次