膝の上が腫れて曲げると痛い原因とは?滑液包炎や変形性膝関節症の疑いと治療法

膝の上が腫れて曲げると痛い原因とは?滑液包炎や変形性膝関節症の疑いと治療法

膝の上が腫れて曲げると痛いとき、原因として多いのは滑液包炎(かつえきほうえん)や変形性膝関節症です。どちらも膝関節の周囲で炎症が起きている状態であり、放置すると日常動作に大きな支障をきたす場合があります。

腫れがひざの上側、つまり太ももとの境目あたりに集中するケースでは、膝蓋骨(しつがいこつ)の上にある滑液包に水がたまっている可能性があります。同時に軟骨のすり減りが進んでいると、変形性膝関節症が疑われるでしょう。

この記事では、膝上の腫れと痛みを引き起こす疾患の特徴や検査方法、保存療法から手術的治療まで幅広く解説します。

目次

膝の上が腫れて曲げると痛い原因として考えられる代表的な疾患

膝上の腫れと屈曲時の痛みは、主に滑液包炎と変形性膝関節症のいずれか、あるいは両方が関係しています。年齢・生活習慣・過去のけがなどによって原因は異なるため、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。

膝蓋上滑液包炎が膝上の腫れを起こす理由

膝蓋骨の上方には「膝蓋上滑液包(しつがいじょうかつえきほう)」という薄い袋状の組織が存在します。この滑液包は、大腿四頭筋の腱と大腿骨のあいだで潤滑材の役割を果たしており、過度な摩擦や圧迫で炎症を起こすと内部に液体がたまって腫れあがります。

長時間の正座やひざまずく姿勢を繰り返す方に多く見られ、ぶつけるなどの外傷がきっかけになるケースもあります。腫れが膝のお皿の上に集中しやすいのが特徴です。

変形性膝関節症と膝上の腫れの関係

変形性膝関節症は、関節内の軟骨がすり減ることで骨同士がぶつかりやすくなり、炎症や痛みが生じる病気です。炎症によって関節液(滑液)が過剰に分泌され、膝蓋上滑液包を含む関節周囲に水がたまります。

50代以降の発症が多いものの、肥満や膝への強い負荷がかかるスポーツ経験がある方は30~40代でも発症する場合があるでしょう。初期には曲げ始めに違和感を覚える程度ですが、進行すると安静時にもズキズキとした痛みが続きます。

その他に疑われる原因とセルフチェックの限界

関節リウマチや痛風、感染性の関節炎なども膝上の腫れを引き起こすときがあります。発熱や皮膚の赤みをともなう場合は感染症の可能性も否定できません。

膝の腫れが2~3日経っても引かない、あるいは熱感を感じるときは自己判断にとどめず、整形外科を受診してください。画像検査や血液検査を受けなければ正確な原因は特定できないためです。

疾患名腫れの特徴好発年齢
膝蓋上滑液包炎膝の上側に限局した柔らかい腫れ年齢を問わず
変形性膝関節症関節全体がぼってりと腫れる50代以降に多い
関節リウマチ左右対称に腫れやすい30~50代女性に多い

膝上の腫れと痛みを放置するとどうなるか

痛みが軽いうちは「そのうち治るだろう」と放っておく方も少なくありません。しかし炎症が慢性化すると関節の可動域が徐々に狭まり、階段の昇降や正座が困難になります。

とくに変形性膝関節症の場合は、軟骨の損傷が進行すると元に戻すのが難しくなります。早い段階で治療を始めるほど、保存的な方法だけで症状をコントロールできる見込みが高まるでしょう。

滑液包炎で膝の上が腫れるときの痛みの特徴と発症の引き金

膝を曲げたときにお皿の上あたりがぷくっと膨らんで痛む場合、滑液包炎の可能性が高いといえます。急性と慢性で痛みの出方や対処法が異なるため、どのような経緯で腫れたかを振り返ることが診断の手がかりになります。

急性の滑液包炎は外傷や感染で突然起こる

転倒やスポーツ中の衝突で膝を強く打つと、滑液包に出血や炎症が起きて急激に腫れるときがあります。感染が加わるとさらに赤みや熱感が強くなり、抗菌薬の投与が必要になるケースも見られます。

急性の場合は安静と冷却(アイシング)が第一対応となります。腫れが引かなければ医師による穿刺(せんし)で液体を抜く処置を行う場合もあるでしょう。

慢性の滑液包炎は繰り返す膝への負担で進行する

仕事で頻繁にひざまずく方や、床に膝をつく動作が多い方は、慢性的な摩擦で滑液包の壁が厚くなり、少しの刺激でも再び腫れるようになります。痛みは急性ほど強くないものの、だるさや重さを感じる方が多い傾向です。

慢性化すると安静だけでは改善しにくく、消炎鎮痛剤の内服やステロイド注射を検討することもあります。膝当てパッド(ニーパッド)の使用など、物理的に膝への圧力を減らす工夫も予防に役立ちます。

滑液包炎と変形性膝関節症を同時に抱えるケース

高齢の方では、変形性膝関節症による関節内の炎症が滑液包にまで波及して、両方の疾患を同時に抱えることも珍しくありません。この場合、関節内と滑液包の双方に水がたまり、膝全体がひと回り大きく見えるほど腫れる場合があります。

変形性膝関節症で膝の上が腫れて痛みが続くときに知っておきたい進行度

変形性膝関節症は一気に悪化する病気ではなく、数年から十数年かけて段階的に進行します。腫れや痛みの出かたと軟骨の減り具合には相関があるため、自分がどの段階にいるかを把握することが治療方針を決めるうえで大切です。

初期の膝関節症は動き始めの痛みが目印

朝起きて最初の数歩で膝にこわばりを感じたり、椅子から立ち上がる瞬間に痛みが走ったりするのが初期の典型的なサインです。しばらく動いているうちに痛みは和らぎ、日常生活には大きな影響がないことが多いでしょう。

レントゲンでは軟骨の減少がまだわずかで、関節のすき間(関節裂隙)もほぼ保たれています。この段階で体重管理や筋力強化を始めれば、進行を遅らせることが十分に可能です。

中期になると階段の上り下りが苦痛に変わる

軟骨の摩耗が進むと、膝を深く曲げる動作や体重をかけた状態での屈伸がつらくなります。階段を下りるときに膝がガクッと崩れそうになる感覚を訴える方もいるでしょう。

膝上の腫れが頻繁に出るようになり、正座や和式トイレの使用が難しくなるのもこの時期です。関節液がたまって膝の曲げ伸ばしに抵抗感が出る場合もあります。

末期になると安静時にも痛みが続く

軟骨がほとんど失われると、骨と骨が直接こすれ合い、安静にしていても鈍い痛みを感じるようになります。膝が内側や外側に傾いて変形し、O脚やX脚が目立つケースも増えるでしょう。

日常的な歩行にも杖や手すりが必要になり、生活の質が大きく低下します。保存療法だけで十分な改善が見込めない場合、手術を含む治療計画を医師と相談する段階です。

進行度膝の状態痛みの特徴
初期軟骨がやや薄くなる動き始めに軽い痛み
中期軟骨がかなりすり減る階段や屈伸で痛みが増す
末期軟骨がほぼ消失する安静時も持続的に痛む

膝の上が腫れて曲げると痛いときに医療機関で受ける検査と診断の流れ

腫れの原因を正確に突き止めるには、問診・視診・触診だけでなく、画像検査や血液検査を組み合わせることが欠かせません。検査の種類ごとに分かることが異なるため、医師は症状に応じて複数の検査を選択します。

レントゲン検査で骨と関節のすき間を確認する

レントゲンは骨の形状や関節裂隙の狭さを調べる基本の検査です。骨棘(こつきょく)と呼ばれるトゲ状の骨の出っ張りや、関節のすき間が狭くなっている程度から変形性膝関節症の進行度を判定します。

ただし、レントゲンでは軟骨や滑液包の状態を直接見ることはできません。腫れの原因が軟部組織にある場合は、追加の画像検査が必要になるでしょう。

MRI検査なら軟骨や滑膜の炎症まで映し出せる

MRIは磁気を利用して関節内部の断面を詳しく撮影できる検査です。軟骨の残り具合、半月板の損傷、滑膜(かつまく)の厚みや炎症の範囲を一度に把握できる点が大きな強みとなります。

膝蓋上滑液包に水がたまっているかどうかもMRIではっきり確認でき、変形性膝関節症と滑液包炎の鑑別に役立ちます。造影剤を使うと、炎症が活発な部位をさらに明確に映し出すことも可能です。

超音波検査は体への負担が少なく即時に判断できる

エコー(超音波検査)は外来で手軽に受けられ、リアルタイムで腫れの内部を観察できます。滑液包に液体がたまっているか、炎症で壁が厚くなっているかなどをその場で確認できるのが利点です。

関節穿刺で感染やほかの病気を除外する

腫れた部位に針を刺して内部の液体を採取する検査が関節穿刺です。抜いた液の色や透明度、白血球の数、結晶の有無を分析すると、感染性滑液包炎や痛風との鑑別が行えます。

穿刺は診断だけでなく、液体を抜くこと自体が圧迫感や痛みの軽減につながる治療的な側面もあります。感染が疑われる場合は細菌培養の検査も同時に実施します。

膝上の腫れや曲げると出る痛みに対する保存療法と日常の工夫

膝上の腫れと痛みの多くは、まず保存療法から治療を始めます。手術に至らずに症状を改善できるケースは少なくなく、日常生活の中で膝への負担を減らす意識が回復を後押しします。

  • 体重を1kg減らすだけで膝への負荷は歩行時に約3~5kg軽減するとされる
  • 大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)の筋力強化が膝関節の安定に直結する
  • 冷却(アイシング)は急性の腫れに、温熱療法は慢性のこわばりに向く

消炎鎮痛剤と外用薬で痛みと炎症を抑える

内服の非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、痛みと腫れを同時に和らげる代表的な薬です。胃腸への負担が気になる場合は、貼り薬や塗り薬といった外用タイプを選ぶこともできます。

長期間にわたって飲み続けると胃潰瘍や腎機能への影響が出る場合があるため、医師の指示のもとで使用量と期間を守ることが大切です。アセトアミノフェンは比較的胃への刺激が少なく、高齢の方にも使いやすい選択肢といえるでしょう。

ヒアルロン酸注射やステロイド注射で関節内の環境を改善する

ヒアルロン酸を関節内に注入すると、すり減った軟骨の代わりにクッションの役割を果たし、関節の動きが滑らかになります。痛みが強い時期にはステロイドを注射して炎症を短期間で鎮める方法も用いられます。

ステロイド注射は即効性がある一方、頻繁に繰り返すと軟骨に悪影響を及ぼすおそれがあるため、回数や間隔には注意が必要です。

リハビリテーションと運動療法で膝を支える筋力をつける

膝周囲の筋力が弱いと、関節に直接かかる衝撃が大きくなり痛みが悪化しやすくなります。太もも前面の大腿四頭筋や後面のハムストリングスを鍛える運動は、関節への負荷を分散させるうえで非常に有効です。

水中ウォーキングやエアロバイクなど、膝への衝撃が少ない運動から始めるとよいでしょう。理学療法士の指導を受けながらフォームを覚えると、運動中のけがを防ぎつつ効率よく筋力を高められます。

膝の上の腫れが繰り返し出て引かないときに検討する手術的治療

保存療法を数か月続けても腫れや痛みが十分に改善しない場合、手術という選択肢を医師から提案されることがあります。手術にはいくつかの方法があり、疾患の種類や進行度に応じて使い分けられます。

関節鏡手術で損傷した組織を処理する

関節鏡(アースロスコピー)は、膝に小さな穴をあけてカメラを挿入し、内部を直接見ながら処置する手術です。損傷した半月板の修復や、遊離した軟骨片の除去など比較的小さな手術に適しています。

入院期間が短く回復も早い傾向がありますが、軟骨の摩耗が広範囲に及ぶ場合は効果が限定的になることもあります。

骨切り術で膝の荷重バランスを矯正する

O脚変形によって膝の内側に集中していた荷重を外側にも分散させるのが高位脛骨骨切り術(HTO)です。50代前後で活動量が多く、人工関節をまだ入れたくないという方に向いた治療法といえます。

骨を切って角度を変えるため、骨が癒合するまで数か月のリハビリが必要です。成功すれば自分の関節を温存したまま痛みを軽減できる点が大きな利点となります。

人工膝関節置換術は末期の変形性膝関節症に対する最終手段

軟骨がほとんど残っておらず日常生活に支障が出ているケースでは、傷んだ関節面を金属やプラスチックの部品に置き換える人工膝関節置換術が選択されます。部分的に置き換える単顆置換術と、膝全体を置き換える全置換術があります。

術後は痛みが大幅に軽減し、歩行機能が改善する方がほとんどです。ただし人工関節にも寿命があり、20年前後で入れ替えが必要になる場合があるため、手術の時期は慎重に判断する必要があります。

手術の種類対象特徴
関節鏡手術半月板損傷・軟骨片の遊離低侵襲で回復が早い
骨切り術O脚変形を伴う中期の膝関節症自分の関節を温存できる
人工関節置換術末期の変形性膝関節症痛みの改善効果が大きい

膝上の腫れや痛みを繰り返さないための予防と生活習慣

適正体重を維持し、膝まわりの筋力を日常的に鍛えておくことが、再発予防の柱です。治療で痛みが落ち着いても、以前と同じ生活を続ければ再び膝に負担が蓄積していきます。

体重管理が膝への負担を減らす最も効果的な方法

歩行中、膝には体重の約2~3倍の荷重がかかるとされています。体重が増えるほど軟骨へのダメージが蓄積しやすくなるため、BMI25未満を目安に食事と運動のバランスを見直すのが望ましいでしょう。

急激なダイエットは筋肉量の低下を招き、かえって膝が不安定になります。月に0.5~1kgずつ減らすペースが、筋肉を維持しながら体重を落とす目安です。

膝に負担の少ない運動を生活に取り入れる

ウォーキングや水泳、自転車こぎは関節への衝撃が小さく、膝にやさしい有酸素運動です。1日20~30分を目標に、無理のない範囲で続けることが長期的な膝の健康につながります。

スクワットを行う場合は、膝がつま先より前に出すぎないフォームを意識してください。正しいフォームで行えば大腿四頭筋を効率よく鍛えることができ、膝関節の安定性を高められます。

仕事や家事での膝への圧迫を減らす工夫

床掃除や庭仕事でひざまずく場面が多い方は、厚手のニーパッドやクッションを敷いて膝蓋上滑液包への直接的な圧迫を避けることが大切です。和式トイレの使用が多い環境では、洋式への変更を検討するのも膝への負担軽減につながるでしょう。

定期的な受診で早期に変化をつかむ

痛みが引いた後も半年から1年に一度は整形外科を受診し、レントゲンで関節の状態を確認しておくと安心です。自覚症状がなくても軟骨の減少が進んでいる場合があり、早期に対処することで大がかりな治療を回避できます。

よくある質問

膝の上の腫れは冷やすのと温めるのとどちらが効果的ですか?

腫れが出てから数日以内の急性期であれば、氷嚢やアイスパックを使って患部を冷やし、炎症の拡大を抑えるのが基本です。1回あたり15~20分を目安に、タオルを挟んで直接肌に当てないようにしてください。

慢性的なこわばりや鈍い痛みが中心の場合は、入浴や蒸しタオルで膝まわりを温めることで血流が促進され、筋肉の緊張がやわらぎやすくなります。急性の赤みや熱感がある段階で温めると炎症が悪化するときがあるため、判断が難しいときは医師に相談してください。

変形性膝関節症で膝にたまった水は抜いたほうがよいのですか?

膝に水がたまって曲げ伸ばしがしにくい、あるいは強い圧迫感がある場合は、穿刺で水を抜くことで症状が楽になるケースが多いです。抜いた液を調べることで感染の有無や炎症の程度を確認できるため、診断にも役立ちます。

ただし水を抜いても、原因となる炎症が治まっていなければ再びたまる場合があります。水を抜く処置と並行して、消炎治療やリハビリテーションで根本的な炎症のコントロールに取り組むことが再発防止につながるでしょう。

膝上の腫れがある状態で運動しても問題ありませんか?

熱感や強い痛みをともなう急性期の腫れがあるときは、膝に負荷がかかる運動を控えたほうがよいです。無理に動かすと炎症が広がり、症状が長引く原因になります。

痛みが落ち着いている時期であれば、水中ウォーキングやストレッチなど膝への衝撃が小さい運動から再開できます。運動の種類や強度は主治医や理学療法士と相談しながら段階的に上げていくのが安全です。

滑液包炎と変形性膝関節症は同時に発症することがありますか?

滑液包炎と変形性膝関節症は同時に起こることがあります。とくに膝蓋上滑液包は関節腔と交通していることが多く、変形性膝関節症による関節内の炎症が滑液包にまで広がるケースが報告されています。

両方が存在する場合は腫れが大きくなりやすく、関節液の量も増える傾向です。治療ではそれぞれの原因に対してアプローチする必要があるため、MRIなどの画像検査で両者を区別して把握することが大切です。

変形性膝関節症の膝上の腫れは手術なしで改善できますか?

初期から中期の変形性膝関節症であれば、体重管理・運動療法・薬物療法を組み合わせると腫れや痛みを大幅に軽減できる方が多いです。とくに太もも周りの筋力を強化すると膝関節が安定し、腫れの再発を防ぎやすくなります。

末期まで進行している場合は保存療法だけでは十分な効果が得られないこともありますが、まずは手術以外の方法を試したうえで、改善が見込めない場合に手術を検討する流れが一般的です。担当医と相談しながら、自分に合った治療計画を立てていきましょう。

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この記事を書いた人

臼井 大記のアバター 臼井 大記 大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

日本整形外科学会認定専門医

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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