ヒト型セラミドは、人の肌にあるセラミドと同じ構造を持つ保湿成分です。化粧水や乳液、クリームなどに配合され、肌のうるおいを保ち、乾燥を防ぐために使われます。「ヒト型」は、人から採取したという意味ではありません。
成分表示ではセラミドNPやAPなどの名前で見つかります。ただし、同じヒト型セラミドを含む製品でも、配合量や他の成分との組み合わせ、肌の状態によって実感は変わります。
この記事では、ヒト型セラミドの種類と表示名、化粧水やクリームでの使い方、天然・植物性・疑似セラミドとの違いを解説します。敏感肌やアトピー性皮膚炎で取り入れる際の注意点も、保湿の範囲に絞ってお伝えします。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ヒト型セラミドとは
ヒト型セラミドとは、人の角層のセラミドと同じ構造を持つ成分の総称です。1つの物質だけを指す名前ではないため、どの種類が入っているかは、容器の裏側の成分表示を見ると分かります。
「ヒト型」は肌のセラミドと同じ構造を表す
セラミドは脂質の仲間で、脂肪酸とスフィンゴイド塩基という2つの部分が結びついた構造です。皮膚のいちばん外側にある角層で、細胞の間を満たす脂質の一部となり、水分を逃しにくい状態を支えています。

ヒト型の原料には、酵母の発酵技術を利用してつくるものがあります。肌と同じ構造の原料を工業的につくる技術は1990年代から発展してきました。「ヒト型」とあっても、人の細胞や皮膚そのものを化粧品に入れているわけではありません。
セラミドNP・APなどの種類と成分表示名
化粧品の成分欄には、セラミドNP・AP・EOP・NG・NS・AGなどと書かれています。末尾のアルファベットは主に分子の構造を区別するための記号で、保湿力の順位や配合濃度、肌への刺激の強さを表すものではありません。
「セラミド」のあとの文字は、前のN・A・EOが脂肪酸の型、最後のP・Gがスフィンゴイド塩基の型を表します。こうした型の違いは脂質の並び方に関わりますが、化粧品として塗ったときの働きを種類ごとに見分けるのは簡単ではありません。
セラミド3などの数字の名前は以前の表示名で、今も数字で表示された製品があります。以前の名前の一部は複数の新しい名前にあたります。製品を選ぶときは、成分表示にどの名前が記載されているかを確かめてください。
| 成分表示名 | 以前の表示名 | 2つの部分の型 |
|---|---|---|
| セラミドNP | セラミド3 | 脂肪酸がN、スフィンゴイド塩基がP |
| セラミドAP | セラミド6II | 脂肪酸がA、スフィンゴイド塩基がP |
| セラミドEOP | セラミド1 | 脂肪酸がEO(別の脂肪酸が結合)、スフィンゴイド塩基がP |
| セラミドNG | セラミド2 | 脂肪酸がN、スフィンゴイド塩基がG |
| セラミドAG | セラミド5 | 脂肪酸がA、スフィンゴイド塩基がG |
保湿成分と医薬部外品の有効成分は別に確認する
ヒト型セラミドは、保湿のために配合される成分です。「ヒト型セラミド配合」という説明だけでは、医薬部外品の有効成分として承認されたことや、美白・肌荒れ防止などの効能を持つことを意味しません。
薬用化粧品では、ヒト型セラミドを保湿成分として含み、別の成分を有効成分とする製品もあります。薬用化粧品の容器や外箱には「医薬部外品」と表示されています。こうした製品では、有効成分の名前と記載された効能を確かめましょう。
ヒト型セラミドに期待できる効果
ヒト型セラミド配合化粧品に期待するのは、肌のうるおいを保ち、乾燥を防ぐ働きです。肌のバリア機能に関係する成分ですが、化粧品を塗るだけで皮膚の病気が治療できるわけではありません。
角層のうるおいを保ち、乾燥を防ぐ
角層では、セラミドがコレステロールや脂肪酸とともに層状に並んでいます。ヒト型セラミドを含む保湿剤は、この脂質の働きを外から補うためのものです。水分を与える成分や油分との組み合わせも、保湿には関わります。
乾燥して湿疹が出やすい成人34人が4週間クリームを使った試験では、セラミドなどを含む製品を塗った部位で、比較用の保湿剤より水分量などが改善しました1)。複数成分を含む製品全体の結果です。
乾燥によるごわつきを和らげ、肌をなめらかに保つ
保湿によって角層の水分を保つと、乾燥した肌のかさつきやごわつきを和らげることが期待できます。塗った直後のしっとり感には、ヒト型セラミドだけでなく、製品に含まれる油分や水溶性の保湿成分も関わっています。
同じNPという種類でも、分子を構成する脂肪酸の長さには幅があります。そのため、成分名だけで「NPはこの悩み専用」「APを足せば保湿力が上がる」といった使い分けは決められません。
「効果なし」と感じるときに見直す点
肌のつっぱりが変わらないときは、使用量だけでなく、洗いすぎや油分の不足、肌に合わない製品の併用も見直しましょう。実感には個人差があります。赤みやかゆみが続く場合は、化粧品を増やす前に受診が必要です。
アトピー性皮膚炎の子ども53人の試験では、セラミド配合とパラフィン配合のどちらの製品でも3か月後に重症度が改善し、改善の度合いにはっきりした差はありませんでした2)。
| 気になる点 | 判断の目安 |
|---|---|
| しっとり感 | 製品全体の保湿力と使用感 |
| 種類の多さ | 種類数だけでは効果を決められない |
| 乾燥の持続 | お手入れと皮膚症状を見直す |
ヒト型セラミドの使い方とスキンケアへの取り入れ方
ヒト型セラミドは、化粧水・乳液・クリーム・美容液のどれでも取り入れられます。すべてを同じ成分でそろえる必要はありません。今のお手入れで水分と油分のどちらが足りないかを考え、使い心地も含めて選びましょう。
化粧水・乳液・クリーム・美容液の選び分け
セラミドは水になじみにくい脂質のため、水の多い化粧水へ安定して配合するには、細かく分散させるなどの工夫が必要です。透明な見た目やさらっとした感触だけでは、セラミドの有無や保湿力を判断できません。
化粧水だけでつっぱるなら、乳液やクリームを重ねて油分を補えます。乳液は広げやすく、クリームは乾燥する部分に使いやすいのが特徴です。ただし、油分量や感触は同じ剤形でも製品ごとに違います。
美容液やオールインワンにも配合例がありますが、美容液という名前が濃度の高さを保証するわけではありません。洗顔後から次のお手入れまで乾燥しにくく、負担なく使えるかを目安に取り入れてください。
朝夜の順番とこすらない塗り方
朝も夜も、洗顔や入浴の後に保湿する使い方が基本です。化粧水、美容液、乳液やクリームの順が一例ですが、先に使う設計の美容液もあります。塗る順番と1回の使用量は、製品の説明に従ってください。
清潔な手で、肌を強く引っ張らずに薄く広げましょう。乾燥しやすい頬や口元は塗り残しを減らし、べたつく部分は量を調整します。朝の日やけ止めは、保湿とは目的が異なるため、必要に応じて別に使います。
| 剤形 | 取り入れる目安 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 化粧水 | 軽い感触を好むとき | 後から乾燥しないか |
| 乳液 | 油分も補いたいとき | 伸びとべたつき |
| クリーム | 乾燥する部位の保湿 | 量と塗る部位 |
| 美容液・オールインワン | 手持ちのケアへの追加・集約 | 剤形名より製品の説明 |
相性の良い保湿成分と併用時の刺激
グリセリンは水分を抱え込む働きがあり、脂質であるヒト型セラミドと組み合わせる保湿成分の1つです。両方を含む製品なら、別々に何品も重ねる必要はありません。肌に合う製品を無理なく続けることが大切です。

ヒト型セラミドを塗れば、角質ケアなど他の化粧品の刺激を打ち消せるわけではありません。組み合わせの良し悪しは成分名だけでは決められないので、新しい製品は1つずつ加え、しみたらその製品の使用を中止しましょう。
ヒト型セラミドを使う際の注意点
肌にある成分と同じ構造でも、化粧品による刺激やかぶれは起こりえます。ヒト型という説明だけで安全性を判断せず、配合成分全体と使用中の変化を確認することが、敏感な肌への取り入れ方の基本です。
副作用・刺激は製品全体で判断する
使用後に赤み、かゆみ、腫れ、ヒリヒリ感が出たときは、いったん使用を中止してください。原因はセラミドとは限らず、他の配合成分の場合もあります。やめても症状が残る場合は、皮膚科で相談しましょう。
敏感肌の方は、初めから顔全体に使わず、肌の状態が落ち着いているときに狭い範囲から試す方法があります。ただし、自宅で少量を試して問題がなくても、その後にかぶれが出ないとは限りません。
使用を避けた方がよい肌の状態
傷やじゅくじゅくした湿疹、強い炎症がある部位には、新しい化粧品を自己判断で塗らないでください。過去にかぶれた成分が分かっている場合も、その成分を含む製品を避けます。
アトピー性皮膚炎では、保湿は治療を支えるケアですが、ヒト型セラミド配合化粧品は治療薬の代わりになりません。使用中の保湿剤や薬を自己判断で置き換えず、肌の状態と使いたい製品を診察時に伝えてください。
化粧品と処方薬は濃度だけで比べない
ヒト型セラミド配合化粧品は、肌のうるおいを保つために使います。処方薬は診断した症状や病気に合わせて選ぶもので、単にセラミドの濃度を高くしたものではありません。必要な治療は医療機関で相談してください。
湿疹の成人が28日間使った試験では、セラミド配合製品で水分量などは改善しましたが、重症度と悪化時に使う薬の量は比較用の製品と変わりませんでした3)。保湿と炎症の治療は別です。
- 赤みやかゆみ、ヒリヒリ感が出たらいったん使用を中止し、それでも症状が残れば皮膚科で相談する
- 傷やじゅくじゅくした湿疹、強い炎症がある部位には、新しい化粧品を自己判断で塗らない
- ヒト型セラミド配合化粧品は治療薬の代わりにならないため、使用中の薬を自己判断で置き換えない
ヒト型セラミドと天然・植物性・疑似セラミドの違い
ヒト型は構造、天然や植物性は主に由来で分けた呼び名で、疑似はセラミドに似せてつくった成分です。分け方の基準がそろっていないため、呼び名だけで優劣は決められません。具体的な成分名と製品の説明を確かめましょう。
天然セラミドは由来と中身を分けて見る
天然セラミドという言葉は、動物から抽出した原料を指して使われることがあります。ただ、天然という語だけでは、含まれる脂質の種類や割合までは分かりません。人の角層と同じ組成であることを示す言葉でもありません。
ヒト型セラミドにも、発酵技術を利用した原料があります。そのため、「天然かヒト型か」の2択では分けきれない場合があります。原料の由来にこだわりがあるときは、製造元が示す情報も確かめるとよいでしょう。
天然由来であることだけで肌への刺激が少ないとは判断できません。逆に、工業的につくった成分だから肌になじまないともいえず、肌に使う際には原料の品質、製品の配合、実際の使用感を合わせて考える必要があります。
植物性のグルコシルセラミドは糖を持つ
植物性セラミドと呼ばれる原料には、米や小麦などに含まれるグルコシルセラミドがあります。セラミドにブドウ糖が結びついた構造で、糖の付いていないヒト型セラミドとは別の成分です。

リンゴの搾りかすに含まれるグルコシルセラミドは、米ぬかや小麦胚芽のものと似た構造だと確認されています。ただ、これは植物の脂質を調べた結果で、塗ったときの保湿力を比べたものではありません。
飲む製品の研究結果を、そのまま塗る化粧品の保湿効果へ当てはめることもできません。同じ「セラミド」でも、飲むものと塗るものでは成分の形も使い方も違います。読んでいる情報が、飲む製品と塗る製品のどちらの話かを確かめましょう。
| 呼び名 | 分類の軸 | ヒト型との違い |
|---|---|---|
| ヒト型セラミド | 人の角層にある構造 | NP・APなど複数の種類 |
| 天然セラミド | 動物などの原料由来 | 具体的な脂質の確認が必要 |
| 植物性セラミド | 植物由来の脂質 | 糖を持つグルコシルセラミドなど |
| 疑似セラミド | 働きを参考にした類似成分 | 人のセラミドと同一構造ではない |
疑似セラミドは構造が違っても保湿に用いる
疑似セラミドは、セラミドの構造や働きを参考に開発された類似成分です。「擬似セラミド」と書く場合もあります。ヒト型とは構造が異なりますが、保湿製品の成分として研究されており、名前だけでヒト型より劣るとはいえません。
アトピー性皮膚炎の19人が4週間使った試験では、疑似セラミドと植物エキスを含む保湿剤で、肌から水分が逃げにくくなるなどの改善が確認されています4)。疑似セラミドだけの効果とはいえません。
ヒト型と疑似のどちらが優れているかは、分かっていません。普段の保湿では、肌に合うか、続けやすいかも見て選ぶとよいでしょう。
ヒト幹細胞とヒト型セラミドは別のもの
ヒト幹細胞は細胞を指す言葉で、脂質であるヒト型セラミドとは別のものです。化粧品に使われるヒト幹細胞培養液は、細胞を培養したときに得られる液からつくる原料です。名前に同じ「ヒト」が付いていても、同じ仲間の成分ではありません。

「ヒト型セラミド配合」という表示は、細胞を増やす、幹細胞に働きかけるといった意味ではありません。乾燥対策で選ぶときに見るのは、「ヒト」という言葉の印象ではなく、保湿成分の表示と日々の肌の状態です。
まとめ
ヒト型セラミドは、肌にあるセラミドと同じ構造を持つ保湿成分です。種類の多さや由来だけで製品の効果は決まりません。成分表示を確認し、化粧水やクリームの油分、肌への刺激、続けやすさも含めて取り入れましょう。
- 「ヒト型」は人の肌のセラミドと同じ構造を指し、人から採取したという意味ではない
- ヒト型セラミドが入っているかは、成分表示のセラミドNP・APなどの名前で確かめる
- 保湿力はセラミドの種類の数だけで決まらないので、油分や他の保湿成分、化粧水かクリームかも見て選ぶ
- ヒト型セラミド配合化粧品は保湿のためのもので、湿疹やアトピー性皮膚炎の治療薬の代わりにはならない
気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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2) Gupta, S., Ramam, M., Sharma, V. K., Sethuraman, G., Pandey, R. M., & Bhari, N. (2023). Evaluation of a paraffin-based moisturizer compared to a ceramide-based moisturizer in children with atopic dermatitis: A double-blind, randomized controlled trial. Pediatric Dermatology, 40(4), 627–632. https://doi.org/10.1111/pde.15355
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