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ヒト幹細胞培養液とは?化粧品の効果・使い方・安全性

ヒト幹細胞培養液は、ヒト由来の幹細胞を培養する過程で得られる上澄み液を指し、多種多様な成長因子やサイトカインを含むとされるスキンケア成分です。美容液やクリームに配合される例が増え、エイジングケア成分として注目を集めています。

一方で「本当に効果があるのか」「安全性に問題はないのか」といった不安の声も少なくありません。この記事では、ヒト幹細胞培養液の基礎知識から期待できる効果、正しい使い方、注意すべき点までを皮膚科専門医の監修のもとで整理します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

ヒト幹細胞培養液は「細胞そのもの」ではなく「培養した液」

化粧品に使われるヒト幹細胞培養液は、ヒトの幹細胞を直接肌に塗るものではありません。幹細胞を培養した際に分泌される成長因子やタンパク質を含む上澄み液を精製・加工したもので、細胞そのものは製品中に残っていない点を押さえておきましょう。

ヒト幹細胞培養液はどうやって作られる?

ヒト幹細胞培養液の原料となる幹細胞は、おもに脂肪組織由来の間葉系幹細胞が使われます。脂肪吸引などで採取した脂肪組織から幹細胞を分離し、特殊な培地で培養を行います。

培養の過程で幹細胞はEGF(上皮細胞成長因子)やFGF(線維芽細胞成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、TGF-β(トランスフォーミング成長因子β)など数百種類にのぼるタンパク質を分泌するとされています。この分泌液を回収し、細胞を除去・ろ過して得られたものが「ヒト幹細胞培養液」あるいは「ヒト幹細胞順化培養液」と呼ばれるスキンケア原料です。

化粧品の成分表示に記載される名称

化粧品の全成分表示では、「ヒト脂肪細胞順化培養液エキス」「ヒト幹細胞順化培養液」「ヒト脂肪由来幹細胞エキス」など、由来組織や製法によって表示名が異なります。いずれもINCIコード(国際化粧品成分命名法)に基づいた名称が使われており、「Human Adipose Conditioned Media Extract」などが対応します。

おもな化粧品表示名称と由来

表示名称由来組織特徴
ヒト脂肪細胞順化培養液エキス脂肪組織流通量が多い
ヒト臍帯血細胞順化培養液臍帯血GDF-11を含む報告あり
ヒト歯髄幹細胞順化培養液乳歯歯髄採取侵襲が低い
ヒト骨髄幹細胞順化培養液骨髄研究歴が長い

医薬部外品の有効成分には認められていない

ヒト幹細胞培養液は、現時点で医薬部外品の有効成分としては承認されていません。あくまで化粧品原料としての使用にとどまります。そのため、「シワを改善する」「メラニン生成を抑える」といった効能効果を化粧品で表示することはできず、広告における表現にも制限があります。

「ヒト幹細胞」と聞くと再生医療を連想するかもしれませんが、化粧品に配合される培養液と、医療で用いる幹細胞治療はまったく別のアプローチです。この違いは後半であらためて触れます。

ヒト幹細胞培養液に期待できる効果とエビデンス

ヒト幹細胞培養液には複数の成長因子が含まれるため、シワ・ハリ改善や美白、保湿、抗酸化といった複合的な美容効果が報告されています。ただし研究の多くはin vitro(試験管内)試験や小規模の臨床試験であり、大規模な無作為化比較試験による確立されたエビデンスとはいえない段階です。

コラーゲン産生を促し、シワ・ハリにアプローチ

ヒト幹細胞培養液中のFGFやTGF-βは、真皮の線維芽細胞に働きかけてI型コラーゲンの合成を促進する可能性が示唆されています。Kimら(2009)の研究では、脂肪由来幹細胞の培養液がUVBによる線維芽細胞のダメージを軽減し、コラーゲン分解酵素であるMMP-1の発現を抑えたと報告されました。

また、25名の女性を対象とした臨床試験(Sohnら、2018)では、ヒト幹細胞由来の培養液を5%配合した美容液を4週間使用したところ、シワの深さや皮膚のテクスチャーに統計的に有意な改善がみられたとされています。

メラニン生成への影響と肌トーンの変化

脂肪由来幹細胞の分泌因子にはTGF-β1が含まれ、これがメラニン合成に関与するチロシナーゼの活性を抑制する可能性が基礎研究レベルで報告されています。Leeら(2014)のスプリットフェイス試験では、マイクロニードリングとヒト幹細胞培養液を併用した側の顔で、色素沈着スコアに有意差がみられました。

ただし、これはマイクロニードリングとの併用効果であり、化粧品として塗布するだけで同等の美白効果が得られるかどうかは別途検証が必要です。

バリア機能と保湿力の底上げ

幹細胞培養液に含まれるHGF(肝細胞増殖因子)やEGFは表皮のターンオーバーを正常化し、バリア機能の維持に寄与する可能性があります。Kimら(2020)の臨床試験では、脂肪由来幹細胞培養液を含む化粧品を使用した群でT-zoneの経表皮水分蒸散量(TEWL)が改善し、頬の水分量も増加傾向を示しました。

活性酸素から肌を守る抗酸化の力

Liら(2020)のin vitro研究では、ヒト脂肪由来幹細胞培養液がUVBによる活性酸素の発生を抑え、抗酸化酵素であるHO-1の発現を上昇させたと報告されています。紫外線ダメージからの防御という観点で、スキンケアへの応用が期待される分野です。

効果別エビデンスの確度

期待される効果研究の段階備考
シワ・ハリ改善小規模臨床試験あり4週間で改善報告
美白・色素改善併用試験のみ単独塗布の大規模試験なし
保湿・バリア強化臨床試験ありTEWL改善報告
抗酸化試験管内研究が中心ヒト試験は限定的

ヒト幹細胞培養液をスキンケアに取り入れるコツ

ヒト幹細胞培養液はおもに美容液やパック、クリームなどに配合されており、日々のスキンケアに無理なく組み込める点が支持を集めています。高価な原料のため、配合濃度や製品の選び方を知っておくと失敗が少なくなるでしょう。

美容液とパックに配合例が多い

ヒト幹細胞培養液は美容液(セラム)に配合されるケースがもっとも多く、化粧水やクリーム、フェイスパックにも広がっています。美容液は基剤の量に対して有効成分の配合比率を高めやすいため、培養液の力を実感しやすい剤型といえます。

パック製品は密閉効果によって成分の浸透を助けるとされ、週1~2回の集中ケアとして取り入れる方が多いようです。化粧水タイプは水分ベースのため培養液の濃度がやや低めになる傾向がありますが、日常使いのしやすさではメリットがあります。

朝晩どちらにも使えるが、夜のケアで真価を発揮

ヒト幹細胞培養液配合の化粧品は、朝晩いずれのスキンケアにも使用できます。ただし、肌の修復が活発になる夜間に使うほうが効率的と考えるのが一般的です。洗顔後、化粧水で肌を整えたあとに美容液として使用し、そのあと乳液やクリームで蓋をする流れが基本になります。

塗布する際は、手のひらで温めてからやさしく押さえるように馴染ませるとよいでしょう。こすったり引っ張ったりすると摩擦が刺激になるため避けてください。

ヒト幹細胞培養液と相性のよい成分

成分相乗効果補足
ナイアシンアミドバリア強化・美白刺激が少なく併用しやすい
セラミド保湿力アップ乾燥対策に効果的
ヒアルロン酸水分保持化粧水との重ね使いに◎
ペプチド類ハリ改善の相乗成長因子と似た方向性

高濃度レチノールとの併用は慎重に

ヒト幹細胞培養液自体は刺激の少ない成分ですが、高濃度のレチノール(ビタミンA誘導体)やピーリング系酸(AHA・BHA)と同時に使うと、肌への負担が増す場合があります。

どちらも肌のターンオーバーに作用する成分なので、併用する場合は朝と夜で使い分けるか、肌の様子を見ながら頻度を調整しましょう。

ヒト幹細胞培養液は本当に安全?知っておきたい注意点

「ヒト由来」と聞くと不安を感じる方もいるかもしれません。化粧品に配合されるヒト幹細胞培養液は、ヒトの細胞そのものを含まず、厳格な品質管理のもとで製造されています。とはいえ、すべての人にリスクがゼロとは言い切れないため、使用前に知っておきたいポイントを整理します。

副作用の報告は少ないが、ゼロではない

公表されている臨床試験では、ヒト幹細胞培養液による重大な副作用の報告はほぼみられません。ただし、培養液以外の配合成分(防腐剤・香料・界面活性剤など)によって赤みやかゆみが出る可能性は否定できないでしょう。

初めて使用する際は、上腕の内側など目立たない部位でパッチテストを行い、24~48時間後に異常がないか確認してから顔に塗るのが安心です。

アレルギー体質や妊娠中の方は医師に相談を

タンパク質やペプチドが豊富に含まれる原料であるため、タンパク質にアレルギーのある方は念のため使用前に皮膚科医へ相談してください。妊娠中・授乳中の方についても、安全性に関する十分なデータが蓄積されていないのが現状です。

皮膚に炎症やびらんがある状態で使用すると、成分が過度に吸収されて刺激となるおそれがあります。アトピー性皮膚炎やニキビが悪化している時期は、治療を優先したうえで落ち着いてから取り入れるのが賢明でしょう。

化粧品と医療行為はまったくの別物

「ヒト幹細胞」という言葉は再生医療のイメージと結びつきやすいですが、化粧品に配合される培養液と、クリニックで行われる幹細胞治療や培養上清液の点滴・注射は根本的に異なります。化粧品はあくまで角質層への浸透を前提とした製品であり、真皮や皮下組織に直接作用するわけではありません。

医療機関で行われるヒト幹細胞培養上清液の注入治療や点滴治療は、再生医療等安全性確保法の規制下にあります。

  • 化粧品は角質層までの浸透を前提とした穏やかな作用
  • 医療行為は真皮・皮下への直接注入で高濃度の培養液を使用
  • 感染症リスク管理やドナースクリーニングの基準も両者で異なる
  • 「ヒト幹細胞培養液 危険」「死亡」といった検索情報は、医療行為に関する情報が混在しやすい

ヒト幹細胞培養液と間違えやすい成分を整理する

「植物幹細胞」や「エクソソーム」など、ヒト幹細胞培養液と混同されやすい成分が存在します。それぞれの特徴と違いを正しく把握しておくことで、自分の肌悩みに合った製品を選びやすくなります。

植物幹細胞とはアプローチが根本的に異なる

リンゴやアルガンなどの植物由来幹細胞エキスは、植物の未分化細胞から抽出した成分です。ヒトの成長因子は含まれていないため、作用のしくみがヒト幹細胞培養液とは大きく異なります。

植物幹細胞はポリフェノール等の抗酸化成分を多く含む傾向があり、保護的なスキンケアに向いているといえるでしょう。

エクソソームとの混同に気をつけたい

エクソソームは細胞から分泌される直径50~150nm程度の微小な小胞体で、内部にmRNAやmiRNAなどの遺伝情報伝達物質を含みます。幹細胞培養液にもエクソソームは含まれますが、「エクソソーム配合」と謳う製品は、エクソソームだけを精製・濃縮したものである場合があります。

ヒト幹細胞培養液と周辺成分の比較

成分由来おもな特徴
ヒト幹細胞培養液ヒト脂肪組織など成長因子を多数含む
植物幹細胞エキスリンゴ・アルガン等抗酸化中心、成長因子なし
エクソソーム各種細胞miRNA等を内包
卵殻膜エキス鶏卵の薄膜III型コラーゲン促進
プラセンタエキス動物の胎盤アミノ酸が豊富

卵殻膜エキスとの違い

「卵殻膜とヒト幹細胞、どちらがよいか」という比較はよく見かけます。卵殻膜エキスはIII型コラーゲン(ベビーコラーゲン)の産生促進が報告されており、比較的安価な製品が多い点が特徴です。

成長因子を幅広く含むヒト幹細胞培養液とは得意分野が異なるため、肌悩みの優先度に合わせて選ぶとよいでしょう。

ヒト幹細胞培養液の効果と注意点をおさらい

ヒト幹細胞培養液は、幹細胞を培養する過程で分泌される成長因子やタンパク質を活用したスキンケア成分です。エイジングケアの選択肢として関心が高まっている一方、エビデンスの蓄積は発展途上にあります。

  • 化粧品に使われるのは幹細胞そのものではなく、培養過程で得られる上澄み液
  • コラーゲン産生促進、抗酸化、保湿などの効果が小規模な研究で報告されている
  • 医薬部外品の有効成分としては承認されておらず、効能の断定はできない
  • クリニックでの幹細胞治療と化粧品は作用も規制もまったく異なる
  • 初めて使うときはパッチテストを行い、肌に合うか確認する

スキンケアだけでは改善しない肌トラブルや、シワ・シミが深刻化している場合は、自己判断で高額な化粧品に頼る前に皮膚科を受診してください。専門医による診断と治療が、肌悩みの解決への近道になることも少なくありません。

よくある質問

ヒト幹細胞培養液は敏感肌でも使える?

ヒト幹細胞培養液そのものは比較的低刺激な成分として知られていますが、製品に含まれる他の配合成分(防腐剤・香料など)が肌に合わないケースがあります。敏感肌の方は、まず上腕の内側などでパッチテストを行い、赤みやかゆみが出ないか確認してから顔に使用するのが安心です。

肌のバリア機能が著しく低下している時期は、スキンケアよりも炎症の鎮静を優先し、症状が落ち着いてから取り入れるのが望ましいでしょう。不安がある場合は皮膚科で相談してみてください。

ヒト幹細胞培養液の効果が出るまでどれくらいかかる?

公表されている臨床試験では、4週間の継続使用でシワやテクスチャーの改善が報告されています。ただし、個人差が大きく、肌のターンオーバー周期(約28~45日)を考慮すると、少なくとも1~2か月は使い続けて変化を観察するのが現実的です。

数日で劇的な変化が出ることは考えにくいため、短期間で効果を判定せず、焦らず続けてみることが大切になります。

ヒト幹細胞培養液にがんのリスクはある?

化粧品として肌に塗布するヒト幹細胞培養液に、がん(悪性腫瘍)の発生リスクがあるという科学的根拠は現時点で報告されていません。化粧品中の培養液は角質層への浸透にとどまり、体内の細胞増殖に直接影響を与えるものではないと考えられています。

ネット上で「ヒト幹細胞 ガン」と検索すると、幹細胞治療全般に関する議論や、再生医療の注射・点滴に関する情報が混在しています。化粧品としての塗布使用と、医療行為としての体内投与は区別して考える必要があります。

ヒト幹細胞培養液を使った化粧品はなぜ価格差が大きい?

ヒト幹細胞培養液の原料価格は、ドナーのスクリーニング費用や培養設備の維持費、品質試験のコストによって左右されます。培養液の配合濃度が製品ごとに異なることも、価格差が生じる大きな要因です。

極端に安い製品では、培養液の配合量がごくわずかである可能性も否定できません。全成分表示で「ヒト脂肪細胞順化培養液エキス」などの成分名がリストのどのあたりに記載されているかを確認すると、おおよその配合量の目安になるでしょう。成分表示は配合量の多い順に記載するルールがあるためです。

ヒト幹細胞培養液を「気持ち悪い」と感じるのは普通?

「他人の細胞から作られた液を顔に塗る」という点に心理的な抵抗を感じる方は少なくありません。こうした感覚は衛生観念や倫理観に由来するもので、ごく自然な反応です。

実際の製品には細胞そのものは含まれておらず、培養過程で分泌されたタンパク質を精製・ろ過した液体が使われています。とはいえ、無理に使う必要はまったくありません。植物由来のエイジングケア成分やペプチド系の化粧品など、別のアプローチも数多く存在します。自分が納得できる範囲でスキンケアを楽しむことが、続けるうえで一番大切です。

参考文献

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