フェルラ酸とは、植物に広く含まれるポリフェノールの一種です。化粧品では主に抗酸化成分として使われ、紫外線などで生じる酸化ストレスへの働きが今も研究されています。
とくにビタミンCとビタミンEを組み合わせた処方が研究されています。ただし、フェルラ酸だけで日焼けを防げるわけではなく、日中は別途、日焼け止めとの併用が必要です。
外用研究は増えていますが、処方や濃度がそれぞれ異なり、フェルラ酸単独の効果を判断しにくい研究もあります。刺激や変色にも注意し、少量から肌の様子を確かめましょう。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
フェルラ酸とはどのような成分?
フェルラ酸は、植物が外部環境から身を守るために持つフェノール酸です。スキンケアでは、酸化反応の連鎖を抑える性質と、ほかの抗酸化成分を支える特徴に注目が集まっています。
米ぬかや小麦ふすまにも存在するポリフェノール
フェルラ酸は米ぬかや小麦ふすまなど、植物の細胞壁に多く存在します。化学的にはヒドロキシケイ皮酸誘導体に分類し、芳香環と側鎖を持つ比較的小さな分子です。
植物内では単独で存在するほか、多糖や脂質に結びついた形でも見つかります。化粧品原料では、植物由来か合成由来かより、純度や安定性、製剤全体の品質が使い心地を左右します。
ポリフェノールは植物フェノール類で、フェルラ酸はフェノール酸です。フェルラ酸の水酸基はフリーラジカルに電子を渡し、反応性の高い分子を比較的安定な状態へ導きます。
γ-オリザノールから得られる場合もある
γ-オリザノールは、フェルラ酸と植物ステロールなどが結びついたエステルの混合物です。製造方法によっては、この結合を分けてフェルラ酸を得る場合があります。
そのため両者は関係のある成分ですが、同じ物質ではありません。フェルラ酸は遊離した小分子であり、γ-オリザノールとは溶けやすさや皮膚へのなじみ方も異なります。
| 確認項目 | フェルラ酸の基本情報 | 化粧品での見方 |
|---|---|---|
| 分類 | ヒドロキシケイ皮酸誘導体 | 抗酸化を補う成分 |
| 主な形 | トランス体 | 光や空気による変化に注意 |
| 表示名称 | フェルラ酸 | INCI名はFerulic Acid |
トランスフェルラ酸は分子の形を表す
フェルラ酸には、二重結合を挟んだ原子の並びが異なるトランス体とシス体があります。自然界や化粧品原料では、比較的安定なトランス体を主に扱います。
「トランスフェルラ酸」は別の美容成分名というより、立体的な形を明示した呼び方です。光を受けると一部がシス体へ変わる可能性があり、遮光容器や保管条件が重要になります。
化粧品表示ではフェルラ酸と記載
日本の化粧品成分表示名称は「フェルラ酸」、国際的なINCI名は「Ferulic Acid」です。全成分表示で配合の有無は確認できますが、並びだけで正確な濃度は判断できません。
フェルラ酸は、一般的な化粧品では整肌成分や製品の酸化を抑える成分として配合します。配合量、pH、溶媒、容器まで含めた処方設計によって安定性や肌への届き方が変わります。
医薬部外品の美白有効成分としてフェルラ酸を扱うものではありません。「美白」や「シミ対策」という印象だけで選ばず、製品の区分と表示された使用目的を確認することが大切です。
フェルラ酸に期待できる肌への効果
フェルラ酸の中心的な働きは抗酸化です。紫外線による赤みや光老化を調べた外用研究もありますが、研究用の高濃度ピーリングと毎日の化粧品は分けて考える必要があります。
酸化ストレスの連鎖を穏やかに抑える
紫外線や大気中の刺激を受けると、皮膚では活性酸素が増えます。活性酸素が過剰になると脂質やたんぱく質などに影響し、乾燥感やハリ低下につながる一因となります。
フェルラ酸は自ら電子を渡してフリーラジカルを安定化し、酸化反応の連鎖を抑える方向に働きます。分子内で電子を分散できるため、反応後も比較的安定しやすい点が特徴です。
ただし、試験管内で高い抗酸化力が見られても、人の肌で同じ程度の変化が起こるとは限りません。角層への浸透、製剤中での安定性、使用量などが実際の働きを左右します。
光老化に関わる酸化ストレスへの効果
光老化とは、長年の紫外線曝露で生じるシワ、弾力低下、色むらなどの変化です。フェルラ酸は紫外線を浴びた後の酸化ストレスを抑え、日中の防御を補う可能性があります。
人の皮膚を用いた研究では、ビタミンC・E・フェルラ酸の混合液が、疑似太陽光による紅斑や皮膚細胞の変化を抑えました。ただし、参加者数は少なく、混合処方の評価です。
14%フェルラ酸ピーリングを20人へ週1回、計8回行った研究では、水分量や紅斑、肌表面などの指標が改善しました。医療的な施術条件であり、市販化粧品へそのまま当てはめられません。
抗炎症作用は赤みを抑える方向に働く
紫外線による酸化ストレスは、炎症に関わる情報伝達も活発にします。フェルラ酸は活性酸素を抑える働きなどを通じ、炎症反応を穏やかにする可能性が報告されています。
外用に関する系統的レビューでは、紅斑の変化を報告した人対象の研究が確認されています。一方で対象者が少なく、製剤も一定ではないため、赤みの治療成分とは言えません。
炎症が続く、かゆみや腫れを伴う、範囲が広がるといった場合は、化粧品で様子を見続けないでください。原因を確かめるため、使用を中止して皮膚科へ相談しましょう。
メラニン生成への研究は美白効果を保証していない
マウス由来の色素細胞を使った研究では、フェルラ酸がチロシナーゼ活性とメラニン生成を抑えました。チロシナーゼは、メラニンを作る初期の反応に関わる酵素です。
これは細胞試験の結果であり、化粧品を塗れば人のシミが薄くなることを示す臨床試験ではありません。すでにあるシミを消す、肌を白くするという断定はできません。
色むらが気になる場合も、基本は毎日の紫外線対策です。形や色が変化する斑点、盛り上がりや出血を伴う部分があれば、自己判断で美容成分を重ねず皮膚科を受診してください。
- 抗酸化作用を補う
- 紫外線による酸化ストレスを抑える方向に働く
- 赤みや光老化の研究はあるが条件に限界がある
- シミを消す効果は確認されていない
フェルラ酸の使い方とスキンケアへの取り入れ方
フェルラ酸は美容液やクリームに配合され、朝と夜のどちらにも使えます。初めてなら低い頻度から始め、日中は日焼け止めを最後に重ねる使い方が基本です。
美容液やクリームの処方で取り入れる
フェルラ酸は、美容液、化粧水、クリームなどに配合します。水に溶けにくく酸化もしやすいため、溶媒やpHを調整し、ほかの抗酸化成分と組み合わせた美容液が中心です。
配合濃度が高ければよいとは限りません。高濃度になるほど溶解や安定化が難しくなり、酸性の処方や溶媒が刺激につながる場合もあるため、製品の使用方法を優先します。
ピーリング剤に高濃度で用いた研究もありますが、家庭用の美容液とは目的も管理方法も異なります。原料を自己流で混ぜたり、濃度を上げたりする使い方は避けてください。
朝夜の順番は薄い剤形から重ねる
洗顔後、化粧水を使う場合は化粧水の後にフェルラ酸配合美容液をなじませます。その後に乳液やクリームを重ね、朝は最後に日焼け止めをむらなく塗りましょう。
一度に多く塗るより、製品が示す量を顔全体へやさしく広げます。目のきわや口角、傷のある部分は刺激を感じやすいため避け、こすらず手のひらで軽く押さえます。
朝夜の指定がなければどちらでも使えますが、敏感肌は夜に隔日から始めると変化を見分けやすくなります。赤みやヒリつきがなければ、表示の範囲で頻度を調整してください。
| 使用場面 | 重ねる順番 | 使い方の要点 |
|---|---|---|
| 朝 | 美容液、保湿剤、日焼け止め | 日焼け止めを省かない |
| 夜 | 美容液、保湿剤 | 初回は低い頻度から |
| 敏感な時 | 保湿中心 | 刺激があれば休止する |
ビタミンCとビタミンEの併用配合が特徴
L-アスコルビン酸は水相で働くビタミンC、α-トコフェロールは脂質相で働くビタミンEです。異なる場所を守る2成分へフェルラ酸を加える処方が研究されています。
2005年、15%L-アスコルビン酸と1%α-トコフェロールに0.5%フェルラ酸を加えた製剤では化学的安定性が高まり、ブタ皮膚試験では疑似太陽光への防御指標が高まりました。
この結果は3成分を特定の濃度で組み合わせた研究のため、別の濃度やビタミンC誘導体でも同じとは限りません。それでも、フェルラ酸らしさを生かした代表的な処方設計です。
日焼け止めの代わりになる?
フェルラ酸は日本の化粧品基準上、配合可能な紫外線吸収剤で、日焼け止めの紫外線防御を補う配合例もあります。ただし、配合美容液にSPF・PA表示はなく、日焼け止めの代わりにはなりません。
朝に使うならフェルラ酸配合化粧品をなじませ、保湿剤の後に日焼け止めを塗ります。屋外では衣類や帽子も利用し、汗や摩擦で落ちた日焼け止めは塗り直しましょう。
人の皮膚を調べた研究でも、抗酸化処方は日焼け止めを補うものと位置づけています。赤みが出るまで長く紫外線を浴びてよいという意味ではなく、曝露そのものを減らす対策が優先です。
刺激を感じる成分との重ね使いは慎重に
レチノールや角質ケア成分を同じ日に重ねると、製品ごとの刺激が積み重なる場合があります。併用が禁止とは限りませんが、初めは使用日や朝夜を分けると肌の反応を確認しやすくなります。

ナイアシンアミドは一般に併用できます。ただし、酸性の美容液と別製品を何層も重ねると刺激を感じる人もいるため、成分同士より各製品のpHや基剤、肌状態を見て判断しましょう。

フェルラ酸の危険性や副作用・注意点
フェルラ酸の外用はおおむね忍容性があると報告されていますが、誰にでも刺激が起こらないわけではありません。製剤の酸性度や溶媒、併用成分も含めて安全性を考えます。
ヒリつきや赤み
使用直後のヒリつき、赤み、かゆみ、乾燥は起こりうる反応です。短時間で治まる軽い刺激でも繰り返す場合は使用頻度を下げ、強い症状や腫れがあれば中止してください。
ブタ皮膚やマウスを用いた吸収試験では、フェルラ酸などを24時間塗布しても、紅斑や経皮水分蒸散量に明らかな刺激性を認めませんでした。ただし人への長期試験ではありません。
初回は腕の内側など狭い範囲に少量を塗り、翌日まで変化を確認します。簡易的な確認でアレルギーを完全には予測できないため、顔でも少量から始めてください。
敏感肌や皮膚炎がある時は使用を控える
傷、強い乾燥、日焼け直後など、皮膚のバリア機能が低下している時は刺激を感じやすくなります。肌が落ち着くまでは新しい美容液を始めず、保湿と紫外線対策を優先しましょう。
アトピー性皮膚炎などで治療中の人は、炎症部位へ自己判断で塗らないでください。フェルラ酸に抗炎症研究があっても、皮膚疾患を治療する化粧品ではありません。
過去に化粧品でかぶれた人、複数の外用薬を使っている人も注意が必要です。成分表示と使用したい部位を医師や薬剤師へ伝え、現在の治療を妨げない使い方を相談してください。
酸化による黄変やにおいの変化に注意
フェルラ酸やL-アスコルビン酸を含む美容液は、光、熱、酸素で徐々に色が変わることがあります。もともと淡い黄色の製品もあるため、購入時の色を覚えておくと判断しやすくなります。
短期間で濃い黄褐色へ変わった、においや質感が変化した場合は、使用期限内でも使い続けない方が安全です。メーカーが示す廃棄の目安や問い合わせ窓口を確認してください。
容器の口を肌や指へ直接触れさせず、使用後はすぐにふたを閉めます。直射日光や高温多湿を避け、冷蔵の指定がなければ自己判断で凍らせないようにしましょう。
化粧品と医療機関の施術は濃度も目的も異なる
日常用の化粧品は、継続して肌を整える目的で処方します。一方、研究で用いた14%ピーリングなどは、施術として塗布時間や頻度、皮膚反応を管理した条件です。
論文に濃度が記載されていても、同じ濃度の原料を家庭で塗る根拠にはなりません。濃度以外にpHや溶媒も刺激性を左右し、洗い流す施術と塗ったままの製品では条件が違います。
シミや強い赤みなど治療したい症状がある場合は、化粧品へ高い治療効果を求めず皮膚科へ相談してください。
| 注意する変化 | まず行うこと | 相談の目安 |
|---|---|---|
| 軽いヒリつき | 洗い流して使用を休む | 繰り返すなら相談 |
| 赤みや腫れ | 直ちに使用を中止 | 強い症状は早めに受診 |
| 製品の濃い変色 | 使用を止め表示を確認 | メーカーへ問い合わせる |
フェルラ酸と似た抗酸化成分との違い
抗酸化成分は、溶けやすい環境や安定性、得意とする働きが異なります。優劣だけで選ぶより、フェルラ酸を含む製剤全体の設計と、自分の肌が無理なく使えるかを確認しましょう。
フェルラ酸とトランスフェルラ酸は何が違う?
フェルラ酸は成分を広く示す名称で、トランスフェルラ酸は原子の立体配置まで示した名称です。化粧品で主に使うのはトランス体ですが、全成分表示は通常フェルラ酸となります。
ビタミンC誘導体とは安定性と働く場所が異なる
ビタミンC誘導体は、ビタミンCへ別の構造を加えて安定性や溶けやすさを調整した成分群です。種類によって水溶性、油溶性、両親媒性があり、皮膚での変換のされ方も異なります。
フェルラ酸はビタミンC誘導体ではなく、フェノール酸です。L-アスコルビン酸を含む処方では安定化を助ける研究がありますが、すべての誘導体へ同じ利点があるとは限りません。
| 成分 | 主な特徴 | フェルラ酸との違い |
|---|---|---|
| フェルラ酸 | フェノール酸 | ビタミンC・Eを支える研究がある |
| ビタミンC誘導体 | 種類により溶解性が異なる | 皮膚内での変換も種類別 |
| トコフェロール | 脂溶性ビタミン | 脂質相で酸化を抑える |
トコフェロールは脂質の酸化を抑えやすい
トコフェロールはビタミンEの一種で、油になじみやすい抗酸化成分です。細胞膜や皮脂のような脂質の多い場所で働きやすく、水相で働くL-アスコルビン酸と役割を補い合います。
フェルラ酸とトコフェロールは競合する成分ではなく、同じ処方で組み合わせる研究があります。単独成分の多さより、酸化を抑えた状態で肌へ届ける製剤設計が重要です。

エルゴチオネインやレスベラトロールも性質が違う
エルゴチオネインは含硫アミノ酸誘導体で、水になじみやすい抗酸化成分です。フェルラ酸とは化学構造も皮膚での移動の仕方も異なり、同じ濃度で単純に強さを比べられません。

レスベラトロールも植物由来のポリフェノールですが、スチルベン構造を持ちます。どちらも光や酸素への安定性が課題となり、配合技術や容器が使い始めからの品質維持に関わります。
まとめ
- 植物由来のフェノール酸
- 抗酸化と併用配合が中心
- 日中は日焼け止めを併用
- 刺激と黄変を確認
- 症状は皮膚科へ相談
フェルラ酸は、植物に存在するヒドロキシケイ皮酸誘導体です。化粧品では抗酸化を補い、ビタミンCやビタミンEを組み合わせた処方に特徴があります。
紫外線による酸化ストレスや赤みを調べた研究はありますが、日焼け止めの代用にはなりません。高濃度の施術研究を、家庭用化粧品の効果として読み替えないことも大切です。
初めて使う時は少量から始め、ヒリつきや赤み、製品の濃い変色を確認します。気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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