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髪の毛に良い?亜鉛の効果・摂取方法と注意点を医師が解説

日々の生活で気づかないうちの亜鉛不足が、薄毛の原因の一つとなる可能性が指摘されています。

医師の視点から亜鉛が髪の毛に与える影響を詳しく解説するとともに、毎日の食事で意識したい亜鉛の摂取量や、摂りすぎた場合のリスクまで、実践的なアドバイスをお伝えしていきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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目次

亜鉛不足で起こる髪の毛の変化とは?

亜鉛は、髪の毛の健康維持において中核的な役割を担う栄養素です。まず、亜鉛不足がもたらす具体的な影響を、科学的な知見に基づいて詳しく説明します。

髪の毛のコシやツヤが低下する原因

亜鉛は、髪の毛の主要構成成分であるケラチンタンパク質の生合成過程において、触媒として機能する微量元素です。人体に必要な1日あたりの亜鉛摂取量は、成人男性で10〜12mg、成人女性で8〜10mgとされ、この量を下回ると様々な症状が出現します。

年齢層推奨亜鉛摂取量(mg/日)
成人男性10〜12
成人女性8〜10
高齢者12〜15

毛髪の成長サイクルにおいて、亜鉛はDNA合成やRNA転写過程の調節因子として機能し、世界保健機関(WHO)の調査によると、世界人口の約17%が亜鉛不足の状態にあることが報告されています。この状態が継続すると、髪の毛の構造に顕著な変化が生じます。

毛髪のケラチンタンパク質の形成には、18種類のアミノ酸が必要とされ、その合成過程における酵素活性の維持には、適切な量の亜鉛が必須です。血中亜鉛濃度が基準値(65〜110μg/dL)を下回ると、毛髪形成に関与する酵素活性が約40%低下することが確認されています。

血中亜鉛濃度酵素活性への影響
65μg/dL以上正常
45-65μg/dL30-40%低下
45μg/dL以下50%以上低下

抜け毛が増える仕組み

血中亜鉛濃度が基準値の70%を下回ると、毛包細胞の分裂速度が通常の約60%まで低下します。

毛根部における細胞分裂の活性が低下すると、新しい髪の毛の生成速度が遅延し、結果として1平方センチメートルあたりの毛髪密度が減少します。健康な成人の場合、頭頂部の毛髪密度は1平方センチメートルあたり約180〜220本程度ですが、亜鉛不足状態では、この密度が20〜30%減少する事例が報告されています。

毛髪密度の変化本数/cm²
正常値180〜220
軽度低下140〜180
中度低下100〜140

頭皮トラブルと亜鉛不足の関係性

頭皮の健康状態と亜鉛栄養状態には密接な関連性が認められ、医学研究によると、慢性的な亜鉛不足は様々な頭皮トラブルを誘発することが明らかになっています。特に注目すべき点として、血中亜鉛濃度が基準値の80%を下回ると、頭皮の免疫機能が約35%低下することが報告されています。

皮脂の分泌量は、亜鉛依存性酵素によって精密に制御され、1平方センチメートルあたりの適正な皮脂分泌量は、0.1〜0.5mgです。この範囲を超えると、脂漏性皮膚炎などの症状が発現する確率が上昇します。

皮脂分泌量頭皮への影響
0.1-0.5mg/cm²正常範囲
0.5-1.0mg/cm²軽度過剰
1.0mg/cm²以上重度過剰

髪の毛の健康に必要な1日の亜鉛摂取量

毛髪の健康維持における亜鉛の摂取量は、個人の年齢や性別に応じて変わります。ここでは、各年齢層における推奨摂取量から過不足の判断基準、そして効果的な摂取方法まで解説していきます。

年齢・性別による推奨摂取量の違い

人体における亜鉛の必要量については、世界保健機関(WHO)や各国の栄養学会による大規模な臨床研究を通じて、性別や年齢層ごとの基準値が設定されています。

特に思春期から成人期にかけては、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が活発化することにより、男性の体内では亜鉛の代謝が著しく亢進することが分かっています。

年齢区分推奨摂取量(mg/日)許容上限量(mg/日)
成人男性1140
成人女性835
妊婦1135
授乳婦1235

加齢に伴う生理的変化として、胃酸分泌の低下や腸管粘膜の萎縮により、高齢者の消化管における亜鉛の吸収効率は若年層と比較して20〜30%低下します。

このような生理学的特性を考慮すると、65歳以上の高齢者においては、消化吸収機能の個人差に応じて標準的な推奨量から10〜20%程度の追加摂取を検討する必要があります。

小児期における亜鉛の所要量は、骨格形成や神経系の発達、免疫機能の確立など、複数の生理学的プロセスが同時進行するため、体重あたりでは成人よりも高い値を示します。

年齢必要量(mg/日)目安量(mg/kg体重/日)
1-3歳30.3
4-6歳40.2
7-9歳50.15
10-11歳60.12

妊娠期においては、胎児の器官形成と神経発達に不可欠な微量元素として、通常の1.5倍程度の亜鉛摂取が推奨されており、特に妊娠後期では胎児の急速な成長に伴い、より慎重な栄養管理が求められます。

亜鉛の過不足を判断する目安

生体内における亜鉛状態の評価においては、血液生化学的検査に加え、臨床症状や食事歴など、複数の指標を総合的に分析することでより正確な判定が実現します。

血清亜鉛値(μg/dL)状態臨床所見
80以上正常特記事項なし
60-80境界域軽度症状の出現
60未満欠乏状態明確な症状を呈する

毛髪組織における亜鉛濃度の測定結果と臨床症状との関連性については、以下のような特徴的な所見が報告されています。

  • 毛髪のコシやツヤが著しく低下し、繊維強度の減少が確認される
  • 成長期毛髪の割合が減少し、休止期毛髪が増加する傾向を示す
  • 頭皮の微小炎症や角化異常が高頻度で観察される

血中亜鉛濃度の評価においては、日内変動や食事の影響を考慮する必要があり、特に早朝空腹時の採血が推奨されます。

効率的な吸収を促す組み合わせ方

相性の良い栄養素効果代表的な食品源
タンパク質吸収率向上魚介類、肉類
ビタミンB6代謝促進玄米、レバー
ビタミンE抗酸化作用の相乗効果ナッツ類、種子類

動物性タンパク質に含まれるシステインやヒスチジンなどの含硫アミノ酸は、亜鉛とキレート結合を形成することで、消化管からの吸収効率を向上させます。

一方、植物性食品に豊富に含まれるフィチン酸(イノシトール6リン酸)は、亜鉛とのキレート結合により不溶性の複合体を形成し、吸収を阻害する要因となるため、摂取のタイミングや調理方法に関する配慮が必要です。

体内における亜鉛プールの容量は比較的限定的であり、特に骨格筋や骨組織における貯蔵量は、わずか2〜3週間程度の需要しか満たすことができません。このため、継続的かつ適切な摂取を通じて、毛髪の健康維持に必要な血中濃度を保持することが推奨されます。

効果的な亜鉛の摂り方と過剰摂取の注意点

亜鉛は毛髪の成長サイクルと密接に関連する微量元素として、毛包細胞の新陳代謝を促進する働きがあるため、毛髪の健康維持には食事やサプリメントを通じた適切な摂取量の確保が必須となります。ただ、同時に過剰摂取による健康被害や他の栄養素との相互作用についても十分な理解が必要です。

年齢層推奨摂取量(mg/日)上限摂取量(mg/日)
成人男性1140
成人女性835
妊婦1135

亜鉛を多く含む食材と調理のポイント

食事からの亜鉛摂取において、牡蠣は群を抜いて優れた供給源となっており、100グラムあたり13.2ミリグラムという豊富な亜鉛含有量を誇ります。

食材分類亜鉛含有量(mg/100g)生体利用率(%)
牡蠣13.285
牛レバー5.275
豚ロース2.870
大豆2.050

植物性食品では、ごまやかぼちゃの種子が注目に値する亜鉛源として挙げられ、特にかぼちゃの種子は100グラムあたり7.5ミリグラムの亜鉛を含有しています。

調理過程における亜鉛の損失を最小限に抑えるためには、加熱時間の調整と適切な調理法の選択が鍵となります。

  • 魚介類(亜鉛含有量mg/100g):牡蠣(13.2)、かき(12.8)、ほたて(2.0)、あさり(1.8)
  • 肉類(亜鉛含有量mg/100g):牛レバー(5.2)、豚ロース(2.8)、鶏むね肉(1.0)

亜鉛の生体利用率を向上させるためには、ビタミンCを含む食材との組み合わせが推奨されています。

サプリメント選びで確認すべきこと

亜鉛サプリメントの選択においては、製品の品質保証と安全性確認が髪の健康維持の観点から最優先事項となります。

亜鉛形態吸収率(%)特記事項
グルコン酸亜鉛60-70胃への負担が少ない
酸化亜鉛40-50長期保存に適する
ピコリン酸亜鉛70-80価格が比較的高い

米国食品医薬品局(FDA)の規定では、サプリメントの亜鉛含有量表示には±10%の誤差が許容されているため、表示量よりもやや多めに摂取している点に留意する必要があります。

過剰摂取による健康リスク

亜鉛の過剰摂取は健康被害をもたらす危険性があり、特に長期的な過剰摂取では不可逆的な健康障害を引き起こす懸念があります。

症状発現時期要注意事項
急性胃腸炎即時水分補給必要
銅欠乏性貧血2-4週間定期検査必要
免疫機能低下1-3ヶ月感染リスク上昇

成人における亜鉛の耐容上限摂取量は、1日あたり40ミリグラムと設定されています。

参考文献

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KONDRAKHINA, Irina N., et al. Plasma zinc levels in males with androgenetic alopecia as possible predictors of the subsequent conservative therapy’s effectiveness. Diagnostics, 2020, 10.5: 336.

EL‐ESAWY, Fatma Mohamed; HUSSEIN, Mohamed Saber; IBRAHIM MANSOUR, Amira. Serum biotin and zinc in male androgenetic alopecia. Journal of Cosmetic Dermatology, 2019, 18.5: 1546-1549.

DHAHER, Samer A.; YACOUB, Abdulla A.; JACOB, Ausama Ayob. Estimation of zinc and iron levels in the serum and hair of women with androgenetic alopecia: Case–control study. Indian journal of dermatology, 2018, 63.5: 369-374.

FAMENINI, Shannon; GOH, Carolyn. Evidence for supplemental treatments in androgenetic alopecia. J Drugs Dermatol, 2014, 13.7: 809-812.

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