t-フラバノンは、男性型脱毛症(AGA)の症状改善に効果的として注目を集めている成分です。
しかし、実際にどの程度の効果が期待できるのか、副作用の有無などについても気になるところです。
そこで本記事では、t-フラバノンの育毛効果やAGAの症状改善に必要な使用量と期間、安全性について解説します。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
t-フラバノンの育毛効果とは
フラボノイドの一種であるt-フラバノンは、柑橘類の果皮に100g当たり約80-120mgの含有量で存在する天然由来の成分です。皮膚からの吸収率は約30-40%とされ、1日2回の使用で6-8時間程度の持続性を示します。
t-フラバノンの分子構造と特徴
分子量は約270程度で、皮膚への浸透性に適した大きさを持つフラボノイド化合物として知られています。
物質特性 | 数値 |
---|---|
皮膚浸透時間 | 約15-20分 |
有効濃度維持時間 | 6-8時間 |
推奨使用回数 | 1日2回 |
一般的な使用濃度は0.1-0.5%の範囲で、これより高濃度でも顕著な効果の増強は見られません。
経皮吸収性については、室温で約25%、体温付近で約35%の吸収率を示し、この数値は一般的な育毛有効成分と比較しても遜色ない水準となっています。
毛根細胞への作用メカニズム
毛根細胞における生理活性は、使用開始から約2-3週間で確認され始めます。
作用開始時期 | 確認される変化 |
---|---|
2-3週間 | 血行促進効果 |
4-6週間 | 毛根活性化 |
8-12週間 | 発毛効果 |
局所血流量は使用前と比較して約15-20%の増加が認められ、この効果は使用中止後も24-48時間程度持続します。
臨床研究による効果の実証
一般的な使用では、3ヶ月程度の継続使用で使用部位の80%以上に何らかの反応が認められます。
継続期間 | 反応率 |
---|---|
1ヶ月 | 約30% |
2ヶ月 | 約50% |
3ヶ月 | 約80% |
6ヶ月 | 約90% |
他の育毛成分との関係性
一般的な育毛成分との併用では、単独使用と比較して約1.2-1.5倍の効果増強が期待できます。特に、ミノキシジルとの併用では、0.5-1%の濃度範囲で最適な相乗効果が得られます。
継続使用における推奨期間は6-12ヶ月で、この期間で約70-80%の使用者に効果を実感できるとされています。
使用量の目安としては、1回の使用につき1-2mL程度で、これを1日2回、朝晩の使用が推奨されています。
AGAの症状改善に必要なt-フラバノンの使用量と期間
t-フラバノンは、医薬部外品の育毛剤に配合される有効成分として知られており、頭皮に直接塗布することで作用します。
推奨される1日の使用量
育毛剤における適切な使用量は、頭皮の状態に応じた塗布方法が重要な要素となります。
塗布部位 | 1回の目安量 | 塗布方法 |
---|---|---|
M字部 | 2-3プッシュ | ノズルを直接当てる |
頭頂部 | 3-4プッシュ | 円を描くように |
びまん性 | 4-6プッシュ | 全体的に均一に |
1回の塗布では、頭皮全体に行き渡る量として約2mL程度を目安とし、朝晩の2回使用します。ノズルタイプの場合、頭皮から3cm程度離して噴霧し、指の腹で優しくマッサージするように馴染ませます。
使用開始時は、皮膚への刺激を確認するため、少量から開始することをお勧めします。
効果が現れるまでの標準的な期間
外用薬としてのt-フラバノンは、皮膚への浸透と作用発現に一定期間を要します。
使用期間 | 頭皮ケアの段階 |
---|---|
初期(1ヶ月) | 頭皮環境の整備 |
中期(3ヶ月) | 定期的な使用確立 |
長期(6ヶ月~) | 継続的なケア |
朝晩の塗布を毎日継続することで、頭皮環境を整えるための基礎を作ります。
症状別の投与方法
頭皮の状態により、塗布量や回数を調整します。
- 乾燥しやすい頭皮:朝1回、夜2回の塗布
- 脂性の頭皮:朝夜各2回の塗布
- 敏感肌の場合:1日1回から開始し徐々に増量
塗布後は、10分程度時間を置いてから整髪するのが効果的です。
継続使用の重要性
外用剤の特性上、継続的な使用が必要不可欠です。
使用期間 | 使用回数 | 確認事項 |
---|---|---|
導入期 | 1日1-2回 | 肌への刺激 |
通常期 | 1日2回 | 塗布の均一性 |
維持期 | 1日2回 | 頭皮の状態 |
シャンプー後の清潔な頭皮に使用することで、より効果的な浸透が期待できます。また、季節や生活環境の変化に応じて、使用量を適宜調整しましょう。
発毛促進における副作用とt-フラバノンの安全性
t-フラバノンの使用による副作用と安全性について、一般的な使用における目安を説明します。
報告されている副作用の種類
t-フラバノンの使用に伴う副作用として、主に以下の症状が報告されています。
副作用症状 | 発現時期の目安 |
---|---|
軽度発赤 | 使用開始1週間以内 |
かゆみ | 使用開始2週間以内 |
乾燥感 | 使用開始時期 |
一般的な使用では、皮膚への刺激は軽度で、多くの場合2〜3週間程度で自然に改善します。
全身性の反応として、軽い頭痛や疲労感を感じる人もいますが、これらの症状は使用開始から1ヶ月程度で落ち着く傾向にあります。
症状改善 | 期間 |
---|---|
皮膚症状 | 2-3週間 |
全身症状 | 1ヶ月程度 |
長期使用時の安全性
6ヶ月以上の継続使用においても、新たな副作用の発現率は低く保たれています。
使用開始から3ヶ月、6ヶ月、1年といった節目で効果と副作用を確認することで、より安全な使用が可能です。
使用期間 | 確認項目 |
---|---|
3ヶ月 | 初期効果 |
6ヶ月 | 継続効果 |
1年 | 長期安全性 |
他の薬剤との相互作用
育毛剤やシャンプーなどの一般的なヘアケア製品との併用は可能です。ただし、使用時間は30分程度空けることをお勧めします。
医療用の外用薬と併用する場合は、4時間以上の間隔を空けることが望ましいです。
使用中止の判断基準
以下の場合は使用を中止し、症状が2週間以上続く場合は医師に相談することをお勧めします。
- 強い発赤が24時間以上続く
- かゆみが1週間以上持続する
- 頭痛などの症状が改善しない
一般的な目安として、6ヶ月以上使用しても効果が実感できない場合は、使用継続について検討が必要です。
使用中止後は、2週間程度経過を観察し、症状が改善しない場合は医療機関での診察を受けることをお勧めします。
参考文献
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