ポリグルタミン酸は、化粧水や美容液に保湿成分として配合される、納豆のネバネバの主成分です。グルタミン酸というアミノ酸が数多くつながった高分子で、肌の表面に水分を抱え込み、乾燥を防ぐ目的で使われます。
しわやシミを改善する医薬部外品の有効成分として承認された記録は確認されておらず、毎日の保湿ケアに使う成分です。ただし、人の肌で保湿効果を測った試験は確認されていません。
この記事では、ポリグルタミン酸の性質や期待できる保湿効果、化粧品での使い方、納豆アレルギーに関わる危険性や注意点、ヒアルロン酸など他の保湿成分との違いを解説します。

この記事の執筆者
小林 智子こばやし ともこ
こばとも皮膚科 院長
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医・医学博士
経歴を開く
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
関連医療機関:医療法人社団豊正会 大垣中央病院
ポリグルタミン酸とはどんな保湿成分か
ポリグルタミン酸は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸が数多くつながった生分解性の高分子です。水分を抱え込む性質があり、化粧品や食品など幅広い分野で利用されています。
納豆の粘りから見つかった微生物由来の高分子
納豆や韓国の発酵大豆食品であるチョングッチャンの独特な糸引きや粘りは、納豆菌などの枯草菌が大豆を発酵させる過程でつくり出すγ-ポリグルタミン酸が主成分です。
納豆の粘りに含まれるポリグルタミン酸は、グルタミン酸が30〜5000個ほどつながった構造をしています。分子量は通常10〜1000kDaで、2000kDaを超えるものもあります1)。
L-グルタミン酸やD-グルタミン酸がγ-グルタミル結合でつながっており、α型とは性質が異なります。たんぱく質分解酵素で分解されにくいのも特徴です。立体構造や分子量で性質が変わり、医療や排水処理でも使われてきました。
化粧品での成分表示名称と医薬部外品での扱い
日本では、ポリグルタミン酸が医薬部外品の有効成分として承認された記録は確認されていません。一般的な化粧品で角層のうるおいを保つ保湿成分として配合されています。
全成分表示では「ポリグルタミン酸」やナトリウム塩の「ポリグルタミン酸Na」、架橋構造のクロスポリマーなどの名称で記載されます。なお「ポリグルタミン酸エチル」は別の成分にあたるため区別が必要です。
表示名称には「γ-」や「納豆由来」といった区別がありません。成分表示を見ただけでは、納豆菌の発酵で作られたものか、どの程度の分子量かは分かりません。
ポリグルタミン酸に関連する化粧品の成分表示名称
| 成分表示名称 | INCI名 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| ポリグルタミン酸 | Polyglutamic Acid | グルタミン酸を重合して得られるポリペプチドの保湿成分 |
| ポリグルタミン酸Na | Sodium Polyglutamate | ポリグルタミン酸のナトリウム塩 |
| ポリグルタミン酸Naクロスポリマー | Sodium Polyglutamate Crosspolymer | ポリグルタミン酸Naをグリセリルトリグリシジルエーテルで架橋した重合体 |
| (ヒアルロン酸/ポリグルタミン酸)クロスポリマー | Hyaluronic Acid/Polyglutamic Acid Crosspolymer | ヒアルロン酸とポリグルタミン酸の共重合体をリシンで架橋した成分 |
| ポリグルタミン酸エチル | Polyethylglutamate | グルタミン酸エチルの重合体であり上記の保湿成分とは別物 |
葉酸のポリグルタミン酸型や食品添加物との違い
よく検索される「ポリグルタミン酸型」という言葉は、ビタミンの一種である葉酸が食品中に存在する際の形(補酵素型のポリグルタミン酸型)を指す呼び名です。納豆や化粧品の保湿成分のポリグルタミン酸とは別のものです。
食品分野でのポリグルタミン酸そのものは、既存添加物の「納豆菌ガム」として収載されており、増粘安定剤や製造用剤に使われます。2003年には国内の食品メーカーがミネラル吸収促進作用を発表しました。特定保健用食品にも利用されています。
ポリグルタミン酸に期待できる化粧品での保湿効果
化粧品のポリグルタミン酸に期待できる主な働きは、肌の表面で水分を引き寄せて保つ保湿作用です。ただし、人の肌で保湿効果を測った試験は確認されていません。
肌の表面で水分を抱え込む保湿剤としての働き
化粧水や美容液などの基礎化粧品では、ポリグルタミン酸は角層に水分を引き寄せて保つヒューメクタント(保湿剤)として使われています。ヒアルロン酸より保湿力が高いかどうかも、人の肌では確かめられていません。
角層のバリア機能やうるおいに関する基礎実験の報告
肌への作用を調べた基礎研究として、2025年にヒト角化細胞と再構築皮膚モデルを用いた実験が報告されています。済州島の湿地から分離した枯草菌株由来の超高分子原料を使った実験です。
この実験では、分子量約697.5万Daのγ-ポリグルタミン酸を角化細胞に最高500µg/mLまで加えています2)。その結果、フィラグリンやインボルクリン、ロリクリンといったバリアに関わる遺伝子の発現が増えたことが確認されています。
ヒアルロン酸合成酵素1〜3やアクアポリン3の発現増加も確認されました。さらに再構築皮膚モデルに1%の濃度で5日間塗布した実験でも、フィラグリンやインボルクリン、CD44、アクアポリン3が対照より増えたことが確認されています。
基礎研究の結果を読む際に知っておきたい限界
培養細胞や皮膚モデルで起きた変化が、化粧品を塗った人の肌でも起こるとは限りません。実験に使われたのは特定の菌株から得られた超高分子の原料で、市販の化粧品すべてに同じ結果が当てはまるわけではありません。
しわを減らす効果は、人の肌では確かめられていません。毎日の乾燥対策に使う保湿成分として取り入れましょう。
ポリグルタミン酸の美容効果に関する根拠の整理
| 期待される働き | 確認されている研究段階 | 受け止め方の注意点 |
|---|---|---|
| 肌表面での水分保持 | 高分子の性質および総説での保湿剤としての位置づけ | 人の肌で角層水分量を測った査読つき試験や他成分との比較は未確認 |
| バリア関連因子への作用 | 培養角化細胞と再構築皮膚モデルでの基礎実験 | 特定の超高分子原料での結果・人の肌では未確認 |
| 乾燥による肌荒れ防止 | 一般的な化粧品の保湿によるうるおい補給 | しわ改善の有効成分として承認された記録は未確認・日常の乾燥対策に使う |
ポリグルタミン酸の使い方と化粧品での取り入れ方
ポリグルタミン酸は水になじみやすい保湿成分のため、化粧水や美容液、シートマスクなどで毎日のスキンケアに取り入れやすい特徴があります。肌の状態に合わせて使いましょう。
配合されている主な化粧品の種類と選び方
水分を抱え込んでとろみをつける性質があることから、しっとりタイプの化粧水や保湿美容液、ジェル、フェイスマスク、クリームなど幅広い基礎化粧品に配合されています。
配合量や分子量は製品ごとに異なります。さっぱり使いたいなら化粧水、乾燥しやすい季節なら美容液やクリームから選ぶと続けやすいでしょう。
朝と夜のスキンケアで使う順番と塗り方のコツ
朝と夜のどちらのお手入れにも取り入れやすい保湿成分です。使う順番は水分の多い化粧水から美容液、乳液やクリームの順に重ねてください。
製品によってはたくさん重ねすぎると、乾いたあとに白いモロモロが出ることがあります。朝のメイク前は手のひらでやさしくなじませ、少し時間を置いてから日焼け止めなどを重ねましょう。
ポリグルタミン酸配合の化粧品を使うときのポイント
- 洗顔後の清潔な肌に水分の多いアイテムから順番にやさしくなじませる
- 朝のメイク前は塗布後に少し時間を置いてモロモロや化粧ヨレを防ぐ
- 乾燥が強いときは乳液やクリームの油分を重ねて水分の蒸発を抑える
- 初めて使う製品は腕の内側などで少量を試して肌の反応を確かめる
相性の良い保湿成分と併用する際の考え方
ポリグルタミン酸は肌の表面で水分を抱えますが、油分でフタをする働きや細胞間脂質を直接補う働きはありません。水分を補ったあとにセラミドや油分を含む乳液・クリームを重ねるとうるおいを保ちやすくなります。

レチノールや酸など刺激が出やすい成分と併用する際は、肌の様子を見ながら少しずつ取り入れてください。
ポリグルタミン酸に危険性はある?注意点と納豆アレルギー
ポリグルタミン酸は生体適合性のある高分子とされていますが、納豆アレルギーの主な原因物質であることが報告されており、体質によっては使用を避ける必要があります。
体に悪いと検索される理由と遅発型アナフィラキシー
インターネットで「体に悪い」「危険性」と検索される背景には、納豆を食べたあとに起こるアレルギー(遅発型アナフィラキシー)の原因物質がこの成分だと判明した経緯があります。
2011年の日本の症例報告では、納豆で半日後にアナフィラキシーを繰り返していた38歳男性が、市販の冷やし中華を食べて3時間後に全身のじんましんや呼吸困難を起こしました3)。皮膚プリックテストでスープ中のポリグルタミン酸だけが陽性でした。
高分子のため腸で分解・吸収されるまで時間がかかり、食後数時間から半日ほど遅れて発症すると推測されています。2024年にも49歳男性の遅発型アナフィラキシー例が報告されました4)。また、慢性じんましんの形をとる例も知られています。
クラゲ刺傷による皮膚からの感作と使用を避けたい人
2018年に日本の食物アレルギー外来患者140人を調べた観察研究では、納豆アレルギー群13人全員がポリグルタミン酸に陽性でした5)。そのうち92.3%がマリンスポーツ、84.6%がサーフィンを趣味としていました。
納豆を食べる量とは有意な関連がなく、クラゲの刺胞にもポリグルタミン酸が含まれることから、クラゲに刺されて傷のある皮膚から感作される可能性が示唆されています。
化粧品を塗って感作されたという報告は確認されていませんが、症例報告では納豆以外の含有品も避けるべきとされています。納豆アレルギーがある人や疑われる人は配合化粧品を避け、医師に相談してください。
化粧品と処方薬の違いと皮膚科を受診する目安
ポリグルタミン酸を配合した化粧品は、あくまで健康な肌の角層に水分を補って乾燥を防ぐためのものであり、湿疹や皮膚炎、じんましんを治療する処方薬ではありません。
化粧品を使って赤みやかゆみ、ヒリつき、じんましんなどの異常が出た場合はすぐに使用を中止し、洗い流したうえで皮膚科を受診して使っていた製品の成分表示を伝えてください。
ポリグルタミン酸を使う前に確認したい安全上の注意点
| 確認したい項目 | 注意すべき内容 | 対処の目安 |
|---|---|---|
| 納豆での体調不良歴 | 食後数時間〜半日後にじんましんや呼吸困難が出る遅発型アレルギーの報告がある | 配合された化粧品や食品を避け皮膚科やアレルギー科に相談する |
| マリンスポーツの習慣 | クラゲ刺傷を通じて皮膚からポリグルタミン酸に感作される可能性が示唆されている | 納豆摂取後や化粧品使用時にかゆみや紅斑が出ないか注意する |
| 使用中の赤みやかゆみ | 肌荒れや乾燥がある状態では化粧品成分が刺激になることがある | すぐに使用を中止して洗い流し成分表示を持参して受診する |
ポリグルタミン酸と似た保湿成分との違い
ポリグルタミン酸は他の保湿成分と混同されやすいものの、原料の由来や肌での水分の抱え方に違いがあります。代表的な5つの保湿成分との違いを見ていきましょう。
ヒアルロン酸やコラーゲンとの違い
ヒアルロン酸は人の皮膚などにも存在する多糖類で、水分を抱え込む定番の保湿成分です。一方のポリグルタミン酸はグルタミン酸がつながったポリペプチドであり、肌表面でうるおいを保つ点は共通していますが化学的な分類が異なります。

コラーゲンは皮膚の真皮などを構成するたんぱく質で、化粧品に配合された場合は分子が大きいため角層の表面にとどまり、うるおいの膜をつくって乾燥を防ぎます。

グリセリンやセラミドとの違い
グリセリンは分子が小さいアルコール類の保湿成分です。角層にすっとなじんで水分を引き寄せる働きがあり、多くの化粧水や乳液で基本の保湿剤として使われています。

セラミドは角層細胞のすき間を満たす細胞間脂質の主成分で、水分の蒸発を防いでバリア機能を支えます。水溶性のポリグルタミン酸とは、水分を補う成分と脂質を補う成分として役割が分かれます。

ポリグルタミン酸と代表的な保湿成分の比較
| 成分名 | 分類・主な由来 | 化粧品での主な保湿の特徴 |
|---|---|---|
| ポリグルタミン酸 | グルタミン酸の重合体・納豆菌などの発酵 | 角層に水分を引き寄せて保つ水溶性高分子 |
| ヒアルロン酸 | ムコ多糖類・微生物発酵など | 多くの水分を抱え込んで角層表面のうるおいを保つ定番成分 |
| コラーゲン | 線維状のたんぱく質・動物や魚由来など | 肌の表面で保護膜のように働きしっとりとした保湿感を与える |
| グリセリン | 多価アルコール・油脂や植物由来など | 分子が小さく角層になじみやすい基礎化粧品のベース成分 |
| セラミド | スフィンゴ脂質・合成や植物由来など | 角層細胞のすき間を満たして水分の蒸発を防ぎバリアを支える |
| リピジュア | 合成ポリマー(ポリクオタニウム-51) | 水洗い後も肌表面にとどまりやすくうるおいの保護膜を保つ |
リピジュアとの違いと使い分けの考え方
リピジュア(ポリクオタニウム-51など)は、人の細胞膜の構造を参考にして作られた合成ポリマーです。肌の表面に密着して、水洗い後もうるおいの膜を保つ特徴があります。

微生物の発酵から得られる生分解性のポリグルタミン酸に対し、リピジュアは分子設計された合成高分子という違いがあります。自分の肌でのなじみやすさやアレルギーの有無に合わせて選んでください。
ポリグルタミン酸のスキンケア効果と注意点のまとめ
ポリグルタミン酸は納豆の粘りの主成分として知られるアミノ酸由来の高分子で、化粧品では肌表面の水分を抱え込んで乾燥を防ぐ保湿成分として配合されています。
- 納豆菌などの発酵で作られるグルタミン酸の高分子で、化粧品では保湿成分として使われる
- 培養細胞や皮膚モデルではバリア関連因子の増加が報告されているが、人の肌で保湿効果を測った試験は確認されていない
- 化粧水や美容液で水分を補い、セラミドや油分を含む乳液・クリームと重ねると保湿しやすい
- 納豆による遅発型アナフィラキシーの原因物質のため、納豆アレルギーの人は使用を避ける
日々の保湿ケアに取り入れやすい一方、納豆アレルギーの原因物質でもあるため、体質に不安がある方や使用後に赤み・かゆみが出たなど気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
1) Hsueh, Y.-H., Huang, K.-Y., Kunene, S. C., & Lee, T.-Y. (2017). Poly-γ-glutamic acid synthesis, gene regulation, phylogenetic relationships, and role in fermentation. International Journal of Molecular Sciences, 18(12), 2644. https://doi.org/10.3390/ijms18122644
2) Ko, H.-J., Park, S., Shin, E., Kim, J., Lee, G. S., Lee, Y.-J., Park, S. M., Lee, J., & Hyun, C.-G. (2025). Poly-γ-glutamic acid from a novel Bacillus subtilis strain: Strengthening the skin barrier and improving moisture retention in keratinocytes and a reconstructed skin model. International Journal of Molecular Sciences, 26(3), 983. https://doi.org/10.3390/ijms26030983
3) Inomata, N., Chin, K., Nagashima, M., & Ikezawa, Z. (2011). Late-onset anaphylaxis due to poly (γ-glutamic acid) in the soup of commercial cold Chinese noodles in a patient with allergy to fermented soybeans (natto). Allergology International, 60(3), 393–396. https://doi.org/10.2332/allergolint.10-CR-0267
4) Shigeno, A., Suzuki, T., Obayashi, M., Asada, K., & Matsushima, S. (2024). Natto (fermented soybeans)-induced anaphylaxis in a surfer with the possibility of sensitization to poly(γ-glutamic acid) from cutaneous exposure to jellyfish sting: A case report. International Journal of Emergency Medicine, 17(1), 43. https://doi.org/10.1186/s12245-024-00617-1
5) Inomata, N., Miyakawa, M., & Aihara, M. (2018). Surfing as a risk factor for sensitization to poly(γ-glutamic acid) in fermented soybeans, natto, allergy. Allergology International, 67(3), 341–346. https://doi.org/10.1016/j.alit.2017.11.001
6) Ogunleye, A., Bhat, A., Irorere, V. U., Hill, D., Williams, C., & Radecka, I. (2015). Poly-γ-glutamic acid: Production, properties and applications. Microbiology, 161(Pt 1), 1–17. https://doi.org/10.1099/mic.0.081448-0
7) Fukuda, R., Ouchi, T., Asahina, Y., Shiiya, C., Takeuchi, S., Yasuda-Sekiguchi, F., Iriki, H., Kouno, M., Takahashi, S., Tanikawa, A., Amagai, M., & Takahashi, H. (2022). Diagnostic utility of the basophil activation test in natto-induced hypersensitivity. Allergology International, 71(1), 125–130. https://doi.org/10.1016/j.alit.2021.07.010
