リピジュアは、化粧水や乳液などに配合される保湿原料で、肌の表面で水分を保って乾燥を防ぎます。成分表示では、ポリクオタニウム-51などの名称で確認できます。
保湿を支える研究はありますが、肌の病気を治す成分ではありません。敏感肌の方は、配合製品全体が肌に合うかを確かめることも大切です。
この記事では、リピジュアの成分表示での名前、研究で分かっている保湿の効果、化粧品での使い方、赤みやかゆみが出たときの対処を解説します。ヒアルロン酸やセラミドなど、ほかの保湿成分との違いも紹介します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
リピジュアとは
リピジュアは、細胞膜の構造を参考につくった合成ポリマーの原料商標です。日油が開発し、登録商標として展開しています。一般的な成分名と商標名は異なるため、容器の成分表示には別の名称が載ります。
細胞膜の研究から生まれたMPCポリマー
ポリマーは、小さな分子が多数つながった大きな分子です。リピジュアは、細胞膜のリン脂質が持つ「ホスホリルコリン」という、水となじみやすい部分を取り入れたMPCポリマーに属します。
細胞から膜を取り出してつくるのではなく、その構造を参考に化学的に合成します。MPCを単独でつなげる場合も、別の分子と組み合わせる場合もあり、組成によって水へのなじみ方や膜の性質が変わります。
開発の背景には、人工臓器など、体に接する医療材料の研究があります。水になじむ表面をつくる性質を生かし、医療機器の表面処理やコンタクトレンズ関連の材料にも使われています。
MPCの合成・精製技術は、大学で進められた医療材料の研究で確立されました。その技術が日油へ移され、1999年には工業生産の設備が設けられました。
成分名はポリクオタニウム-51など
ポリクオタニウム-51は代表的な化粧品表示名称ですが、リピジュアには、これ以外にも複数の種類があります。すべてを同じ表示名称の成分として扱うと、組成や性質が異なる原料を混同してしまいます。
表示名称には、ポリクオタニウム-61・64・65などもあります。化粧品を確認するときは、広告上の原料名に加えて、容器や外箱の全成分表示を見てください。
MPCだけをつなげた種類の表示名称は「ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン」です。この種類はポリクオタニウムの名前では表示されません。角層の構造や物質の通り方を調べた実験の一部では、この種類のポリマーが使われています。
| 名称 | 何を表すか |
|---|---|
| リピジュア | 日油の原料商標 |
| MPCポリマー | MPCを構成単位に持つ高分子の総称 |
| ポリクオタニウム-51 | MPCとほかの分子を組み合わせた、代表的な種類の表示名称 |
| ポリクオタニウム-61・64・65 | 組み合わせる分子が異なる、ほかの種類の表示名称 |
| ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン | MPCだけをつなげた種類の表示名称 |
医薬部外品への配合と有効成分の違い
リピジュアは、保湿や皮膚の保護を目的とする化粧品原料です。医薬部外品にも、効能を担う有効成分とは別に配合できる種類があります。
ただし、美白や抗炎症の有効成分として承認された成分ではありません。薬用化粧品の効能は、リピジュアが入っているかどうかではなく、有効成分と製品の表示で確かめられます。
リピジュアに期待できる効果
リピジュアに期待できる中心的な働きは、肌の水分を保ち、乾燥を防ぐことです。皮膚を保護する働きも研究されていますが、配合された化粧品すべてに同じ効果があるとは限りません。
水分を抱え込み、肌のうるおいを保つ
MPCの部分は、水分子となじみやすい性質を持ちます。肌の表面に水分を含む膜をつくり、うるおいを保ちます。肌の奥に届くことよりも、表面付近で乾燥を防ぐ働きに注目した成分です。
健康な成人21人の前腕で、MPCと別の分子を組み合わせたポリマーを調べた試験では、塗った5分後から4時間後まで、水だけを塗った側より角層が水分を保つ力が高いことが確認されています1)。
実験で検討された角層を守る働き
皮膚の最も外側にある角層では、細胞の間に並ぶ脂質が、水分の蒸発や外からの物質の侵入を抑えます。MPCポリマーについても、この角層の構造を保つ働きや、物質の通り方への影響を調べた研究があります。
摘出したマウスの皮膚での実験では、水に長時間触れる条件で、MPCだけをつなげたポリマーを使うと、角層の脂質の並びが崩れにくくなることが確認されています。人の荒れた肌が治るとまでは言えません。
別の実験では、この種類のポリマーを加えると、皮膚を通り抜ける試験物質の量が減ったことが報告されています。肌を外から守る働きをうかがわせる結果ですが、刺激物やアレルゲンをすべて防げるとは限りません。
原料試験と配合化粧品で異なる保湿効果
化粧品の保湿感は、ほかの保湿成分や油分、塗る量、肌の乾燥状態でも変わります。原料同士の比較で差が出ても、配合化粧品の優劣までは決まりません。数字だけで選ぶより、乾燥や刺激の出方を見て判断しましょう。
| 研究・評価 | 確認した内容 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 健康な成人21人 | 塗布後4時間までの水分保持 | 顔に毎日使った効果は未確認 |
| 摘出した動物の皮膚 | 角層の脂質構造や物質の透過 | 人の肌では未確認 |
| 皮膚モデルと26人での評価 | ヒアルロン酸併用で角層水分増加 | 別々の化粧品を重ねた効果は未確認 |
リピジュアの使い方とスキンケアへの取り入れ方
リピジュア配合化粧品は、乾燥が気になるときの日常的な保湿に使えます。リピジュアのための特別な塗り方はなく、使う化粧水や乳液の説明と、肌の状態に合わせるのが基本です。
化粧水・乳液からシャンプーまでの用途
リピジュアは、化粧水や乳液のように肌に残す製品から、シャンプーやコンディショナーのように洗い流すヘアケア製品まで、さまざまな化粧品に使われています。保湿や、肌・髪を整える目的で配合されます。
目薬やコンタクトレンズ関連の材料にも、同じMPC系の技術が使われています。ただし、用途ごとに原料の種類や製品設計が異なります。目薬に使われる材料だからといって、化粧品を目に入れてよいわけではありません。
朝夜の塗る順番と量
使用時間は製品の説明に従い、朝や夜の保湿に組み込んでください。一般的には、洗顔後に化粧水を使い、必要に応じて乳液やクリームを重ねます。成分名を理由に、今のお手入れを一度に変える必要はありません。
塗るときは、容器に示された量を目安に、肌を強くこすらずなじませましょう。乾燥感が残る場合も、同じ化粧水を何度も重ねる前に、乳液やクリームを含めた保湿の組み合わせを見直すとよいでしょう。
使った後につっぱりや赤み、かゆみ、べたつきがないかを確かめ、重ね塗りでよれが出る場合は、量や重ねる製品の数を減らしてください。厚く塗った分だけ保湿効果が高まるとは限りません。
- 量は容器に示された目安に合わせ、使う時間帯は製品の説明に従う
- 洗顔後は化粧水を強くこすらずになじませ、必要なら乳液やクリームを重ねる
- 使った後に、つっぱりや赤み、かゆみ、べたつきがないかを確かめる
- 重ね塗りでよれが出たら、量や重ねる製品の数を減らす
相性の良い保湿成分と併用時の注意
日常の保湿では、水分を保つ成分と、油分を補う成分を組み合わせて使います。ヒアルロン酸とMPC系ポリマーを組み合わせ、実験用の皮膚モデルや人の肌の水分量を調べた試験もあります。
26人での評価を含むこの試験では、ヒアルロン酸とMPC系ポリマーを小さなカプセルに入れた製剤で、角層の保湿が確認されています2)。別々の化粧品を重ねても同じ結果になるとは限りません。

使ってはいけない組み合わせが特に知られているわけではありません。一方、角質を取り除く化粧品などでヒリつくときは、リピジュアを追加して使い続けず、刺激の原因になりそうな製品の使用をいったん控えてください。
リピジュアを使う際の注意点
リピジュア配合化粧品でも、赤みやかゆみ、ヒリつきが出ることがあります。安全性の評価がある成分でも、誰の肌にも合うとは限りません。刺激が出るかどうかは、成分単独ではなく、実際に使う製品で確かめる必要があります。
副作用・刺激のリスクと安全性評価
化粧品成分の安全性を評価するCIRの専門家委員会は、ポリクオタニウム-51などを、報告書に記載した使用方法・濃度の範囲で安全と結論づけています。濃度を問わず安全という意味ではありません。
報告書には、ポリクオタニウム-51を0.12%含む美容液を212人の肌に繰り返し貼った試験が含まれます。この条件では、皮膚への刺激も感作も見られませんでした。感作とは、アレルギー反応を起こす状態になることです。
「ポリクオタニウム」という名称だけで、刺激の強さは判断できません。MPCはプラスとマイナスの電荷を持つ部分を備えた構造で、同じ名称の系統でも分子の大きさや組成は異なります。
小さな分子の陽イオン界面活性剤と同じ刺激性とは決めつけられず、反対に、名前や構造だけで低刺激を保証することもできません。実際の安全性試験と、製品全体の成分を合わせて判断する必要があります。
使って赤み、腫れ、かゆみなどが出た場合は、その製品の使用を中止してください。原因はリピジュア以外の成分の場合もあります。症状が続くときは、製品と全成分表示を持って皮膚科に相談しましょう。
敏感肌・アトピーで使用を控える場面
以前に同じ製品や配合成分でかぶれた方は、自己判断で再使用しないでください。新しい化粧品を狭い範囲で試して様子を見る方法はありますが、自宅での試用ではアレルギーの有無を確定できません。
アトピー性皮膚炎では、乾燥には保湿で、炎症には治療で対応します。赤みやかゆみが強い、皮膚がじゅくじゅくする場合は、新しい化粧品の追加よりも受診を優先し、普段の保湿についても主治医に相談してください。
化粧品がしみるときは、我慢して塗り続けないことが大切です。少量で問題がなくても、顔全体に使ったときや、肌の調子が悪いときには反応が変わることがあります。
化粧品と処方薬の違い
リピジュア配合化粧品は、肌のうるおいを保つための選択肢です。皮膚の炎症などを治療する処方薬とは、目的が違います。処方薬をやめて化粧品に切り替えたいときは、主治医に相談してください。
医療材料に使われているからといって、化粧品に治療効果があるわけではありません。医療用と化粧品用では、使う場所や評価方法が異なります。「医療でも使う成分」という説明があっても、今の治療に代わるものにはなりません。
| 肌の状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 使用後に赤み・かゆみが出る | 使用を中止し、続く場合は受診 |
| 過去に同じ製品でかぶれた | 自己判断での再使用を控える |
| 強い炎症・じゅくじゅくした皮膚 | 化粧品の追加より診察を優先 |
リピジュアと似た保湿成分との違い
リピジュアとほかの保湿成分は、水分を保つという目的が共通していても、分子の構造や働き方が異なります。どれか1つに絞る必要はなく、配合された製品全体の使い心地で選べます。
ヒアルロン酸・グリセリンとの違い
ヒアルロン酸は、糖がつながった構造を持つ保湿成分です。リピジュアも水分を保ちますが、細胞膜の一部を参考にした合成ポリマーという違いがあります。保湿力の優劣は、成分名だけでは決まりません。

グリセリンは、リピジュアのような高分子とは異なる、小さな分子の保湿成分です。角層の水分を保つ目的で広く使われています。膜をつくる高分子と、水分を抱える小さな分子は、同じ製品に一緒に配合されることもあります。

セラミドとの違い
セラミドは、角層の細胞間にある脂質の主要な構成成分です。化粧品では、この脂質を補う目的で配合されます。リピジュアは、セラミドのように脂質を補う成分ではありません。

セラミドも、製品中でどのように溶かし、ほかの成分と組み合わせるかによって働きが変わります。リピジュアと一緒に使う場合も、入っているかどうかだけで決めず、乾燥が落ち着くか、刺激なく使えるかを確かめましょう。
| 成分 | 主な特徴 | 保湿で着目する点 |
|---|---|---|
| リピジュア | MPC系の合成ポリマー | 水分保持と肌表面の膜 |
| ヒアルロン酸 | 糖がつながった高分子 | 水分を抱える働き |
| セラミド | 角層の細胞間脂質 | 脂質を補う配合設計 |
| グリセリン | 小さな分子の多価アルコール | 角層の水分保持 |
| コラーゲン | たんぱく質 | 化粧品では主に保湿 |
| プロテオグリカン | たんぱく質と糖鎖の複合体 | 水分を保持する性質 |
コラーゲン・プロテオグリカンとの違い
コラーゲンはたんぱく質で、化粧品では水溶性コラーゲンなどが保湿の目的で使われています。塗ったコラーゲンが、そのまま真皮のコラーゲンになるわけではありません。リピジュアとは、たんぱく質か合成ポリマーかという構造が違います。

プロテオグリカンは、たんぱく質に糖鎖がつながった成分で、水分を保つ性質があります。合成ポリマーであるリピジュアとは構造が異なります。化粧品に配合したときの働きは、原料の状態や製品設計も関係します。
「肌にもある成分」「細胞膜に似た成分」という説明は、成分の成り立ちを表す言葉です。その言葉だけで、効果や肌へのやさしさは決まりません。大切なのは、肌に合う保湿を続けられることです。
まとめ
リピジュアは、肌表面で水分を保つ働きに着目した保湿原料です。化粧品に取り入れるときは、成分表示と使い方を確認し、乾燥感や刺激の出方を見ながら選びましょう。保湿の研究はあっても、皮膚の病気を治す成分ではありません。
- リピジュアは原料の商標で、細胞膜の構造を参考に合成したMPCポリマーに属する
- 容器の成分欄には商標名ではなく、ポリクオタニウム-51などの名称で載る
- 期待できる働きの中心は保湿で、肌の表面に水分を含む膜をつくって乾燥を防ぐ
- 赤みやかゆみ、腫れが出たらその製品の使用をやめ、続くときは皮膚科に相談する
- 刺激が出るかは成分単独で判断せず、実際に使う製品全体で肌に合うかを確かめる
気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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