酸化亜鉛は、紫外線のUVAとUVBをどちらも防ぐ白い粉状の成分で、日焼け止めや化粧下地に使われています。一方で、乾燥感や毛穴詰まりが気になり、酸化亜鉛フリーの化粧品を選ぶ人もいます。
ただし、酸化亜鉛が入っているだけで肌に悪いとはいえません。肌との相性は製品全体や使い方でも変わるため、フリー表示だけで決めず、刺激の有無や落としやすさを確かめることが大切です。
この記事では、酸化亜鉛の効果と研究でわかっている安全性、フリーを選ぶ目安を説明します。成分表示の見分け方、酸化チタンとの違い、日焼け止めの塗り方やクレンジングも整理します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
酸化亜鉛とは
酸化亜鉛は、紫外線を防ぐ目的などで化粧品に配合する無機粉体です。無機粉体とは鉱物に近い性質を持つ粉状の原料のことで、植物エキスや油分とは異なる種類の成分に当たります。
白色の粉体を日焼け止めに配合
工業的には、加熱した亜鉛の蒸気を空気中で酸化する方法などで作ります。水にはほとんど溶けず、化粧品では細かな粒子を均一に分散させて使います。別名は「亜鉛華」です。
皮膚を保護する軟膏にも使われてきた成分で、日焼け止めでは粒子を細かくする工夫が進んできました。同じ酸化亜鉛でも、粒子の大きさや形、表面の加工によって、白さや塗り心地が変わります。
成分表示名とコーティングの見方
化粧品の表示名称は「酸化亜鉛」です。表面を加工した原料には、酸化亜鉛とともに「含水シリカ」「ハイドロゲンジメチコン」などを表示する例があります。
コーティングとは、粒子の表面を別の物質で覆う加工です。加工用の成分が表示されていても、それだけでは酸化亜鉛が入っているかどうか分かりません。見分けるには、「酸化亜鉛」の文字そのものがあるかを確かめましょう。
| 確認する表示 | 読み取れること |
|---|---|
| 酸化亜鉛 | 化粧品の成分表示名称 |
| 含水シリカなど | 表面加工にも使う成分の例 |
| SPF・PA | 製品としての紫外線防御力 |
医薬部外品の有効成分との関係
酸化亜鉛には、腋臭防止剤という医薬部外品の有効成分として配合した例があります。一方、日焼け止めに入っていることだけで、美白や肌荒れ予防の有効成分とは判断できません。
「薬用」の日焼け止めでも、有効成分とその他の成分は分けて確認するのが基本です。酸化亜鉛の紫外線防御と、その製品が承認を受けた効能は区別し、パッケージに記載された範囲で選びましょう。
酸化亜鉛に期待できる効果
日焼け止めに配合する酸化亜鉛の主な働きは、肌に届く紫外線を減らすことです。完成した製品の防御力は配合量だけでは決まらず、他の成分との組み合わせや、肌を覆う膜の均一さも関わります。
UVA・UVBから肌を守る働き
酸化亜鉛は、UVAとUVBの両方を含む幅広い紫外線を防ぎます。なかでも長い波長のUVAまで防げることが特徴で、他の紫外線防御成分と組み合わせて、この範囲の防御を補う目的でも使われています。
SPFは主にUVBによる赤い日焼けを防ぐ指標で、PAはUVAへの防御力の目安です。成分名だけで効果を見積もらず、両方の表示を確認しましょう。なお、SPFやPAが高くても、日焼けを完全に防げるわけではありません。

紫外線散乱剤でも吸収の働きがある
酸化亜鉛は一般に「紫外線散乱剤」に分類されますが、紫外線を跳ね返すだけの成分ではありません。実際に光を当てて測った研究では、紫外線の大部分を反射ではなく吸収によって防いでいることが確認されています。
「ノンケミカル」は通常、紫外線吸収剤を使わない製品に用いる表現です。化学物質が含まれない、誰にでも刺激がないという意味ではありません。分類の呼び名と、肌への相性は別に考えましょう。
白く見せる効果と美白作用の違い
酸化亜鉛の白い粉体は、化粧品の色や仕上がりにも関わります。塗った直後に肌が明るく見える場合は、主に表面を覆う粉体による見た目の変化です。できているシミが薄くなったわけではありません。
| 期待する働き | 受け止め方 |
|---|---|
| 紫外線防御 | 製品のSPF・PAで確認 |
| 明るい仕上がり | 粉体による化粧効果 |
| シミ・ニキビの治療 | 日焼け止めの効果として期待しない |
酸化亜鉛フリーを選ぶ理由と選ぶ目安
酸化亜鉛フリーは、酸化亜鉛を配合しない製品を指す表現です。肌に合う製品を探すときの条件の1つにはなりますが、誰もが避けるべきだという根拠も、フリーなら肌荒れしないという根拠もありません。
乾燥感やきしみが気になる場合
粉っぽさやさらさらした感触を、乾燥やきしみとして感じる人がいます。ただし、触れたときの感触と、肌の水分量の低下は同じではありません。酸化亜鉛だけを原因と決めるのは難しいところです。
医薬品の亜鉛華軟膏には、皮膚を引き締め、分泌物を減らす作用があります。この作用は乾いた感触の一因にはなりえますが、酸化亜鉛入りの化粧品で肌の水分が減るとまでは確かめられていません。
乾燥感には油分や保湿成分の配合、洗顔の強さ、もともとの肌の状態も関わります。つっぱりが続く製品は無理に使わず、使用感の違うものに替えてみてください。酸化亜鉛フリーの製品も、その候補の1つです。
毛穴詰まりやニキビとの関係
酸化亜鉛には、皮脂に含まれる脂肪酸と反応しやすい性質があります。ただし、化粧品として普通に使って、毛穴詰まりやニキビが増えるとまでは確かめられていません。
使用中にニキビが増えた場合は、その製品を休んで経過を見ましょう。フリーの製品に替えて落ち着いても、油分や他の成分も変わるため、酸化亜鉛が原因だったと断定はできません。
ニキビができやすい人には「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示も目安になります。ニキビのできにくさを調べたことを示す表示ですが、誰にもニキビができないと保証するものではありません。
| 気になる点 | わかっている範囲 |
|---|---|
| 乾燥・きしみ | 感触だけで原因成分は特定できない |
| 毛穴詰まり | 酸化亜鉛単独の影響を示す、人での研究は限定的 |
| フリー表示 | 刺激やニキビを防ぐ保証ではない |
金属アレルギーがある人の選び方
金属アレルギーがあるという理由だけで、酸化亜鉛を一律に避ける判断はできません。反応する物質は人によって異なります。亜鉛へのアレルギーを診断された人は、使える製品を主治医に確認してください。
日焼け止めによるかぶれには、紫外線防御成分以外の成分が関わることもあります。フリー製品でも赤みやかゆみが出るなら、成分を自己判断で絞り込まず、製品や成分表示を持って皮膚科で相談しましょう。
下地・ファンデーションのフリー表示を確認
酸化亜鉛を避けたいときは、日焼け止めだけでなく、下地、ファンデーション、パウダーの表示も確認してください。容器に書かれていない場合は、外箱やメーカーの全成分情報で確かめられます。
「紫外線吸収剤不使用」と「酸化亜鉛フリー」は別の条件です。前者には酸化亜鉛入りのものもあり、後者には紫外線吸収剤入りのものもあります。肌に合わない成分を避ける際は、言葉を取り違えないようにしましょう。
酸化亜鉛の使い方とスキンケアへの取り入れ方
酸化亜鉛入りの日焼け止めは、製品に書かれた量をむらなく塗り、汗や摩擦で落ちたら塗り直すことが基本です。白浮きが気になっても量は減らさず、毎日使い続けやすい製品を探すのが現実的です。
日焼け止め・下地・パウダーでの使い分け
日焼け止めでは紫外線防御を、下地やファンデーションでは仕上がりとの両立を考えて選びましょう。パウダーは外出先での化粧直しに使えますが、薄くはたくだけで表示どおりの防御力が得られるとは限りません。
朝の塗る順番と白浮きを抑える工夫
塗る順番は製品の説明が優先で、一般には保湿をした後、メイクの前に日焼け止めを塗ります。額や頬などに分けて置いてから広げると、塗りむらを減らせます。少量ずつ重ねる場合も、合計の使用量は減らさないようにしましょう。
日中は2〜3時間を目安に、汗や摩擦で落ちたときにも塗り直してください。日傘や帽子、衣服も組み合わせると、化粧品だけに頼らない紫外線対策になります。
保湿ケアとの併用と混ぜ使いの注意
乾燥しやすい肌では、肌に合う保湿剤を先に使う方法があります。酸化亜鉛との組み合わせだけを理由に保湿成分を避ける必要はありませんが、重ねたときによれたり、しみたりしないか確かめましょう。
日焼け止めを手のひらで美容液やクリームと混ぜると、塗る量や膜の状態が変わります。表示の防御力を当てにできなくなるため、別々に使ってください。刺激のあるお手入れを重ねることも避けるのが基本です。
落とし方は耐水性とクレンジング表示で判断
落としにくさは、酸化亜鉛だけでなく、製品全体の耐水性や肌への密着性に左右されます。「石けんで落とせる」などの表示を確認し、重ねたメイクも含めて必要な洗浄料を選んでください。
20人を対象とした試験では、耐水性のある日焼け止めは、試験に用いた洗顔料よりクレンジングオイルで落ちやすい結果でした1)。ただ、製品によって落ちやすさは変わります。
粉体を落とそうと強くこすると、洗浄自体が刺激になります。指の腹でやさしくなじませ、すすいだ後は保湿もしておくと安心です。洗い上がりのつっぱりが続くなら、洗う回数や洗浄料も見直してください。
- 製品に書かれた量を塗り、白浮きが気になっても減らさない
- 額や頬などに分けて置いてから広げ、塗りむらを減らす
- 日中は2〜3時間を目安に、汗や摩擦で落ちたときも塗り直す
- 「石けんで落とせる」などの表示に合う洗浄料を選び、強くこすらずに落とす
酸化亜鉛を使う際の注意点
酸化亜鉛入りの製品で異常が出たときは、使い続けて慣らそうとせず、いったん使用を中止してください。成分の安全性を調べた研究があっても、その製品が肌に合うかどうかは人によって違います。
刺激が出たときの対応と使用を控えたい人
塗った後に赤みやかゆみ、ヒリヒリ感が続く場合は、やさしく洗い流してください。繰り返す場合は、使った製品と、塗ってから症状が出るまでの時間をメモして皮膚科で相談することが大切です。
以前に同じ製品でかぶれた人や、含有成分へのアレルギーを指摘された人は、自己判断で再使用しないでください。傷や強い炎症がある部位も、日焼け止めを無理に塗らず、保護の方法は医師と相談して決めるのが安全です。
ナノ粒子の皮膚への浸透と研究の限界
ナノ粒子は非常に小さな粒子です。人に5日間塗った研究では、酸化亜鉛粒子は肌の表面や溝にとどまり、生きた表皮細胞がある層への侵入や、細胞への害は認められませんでした2)。
一方、20人が5日間使った別の研究では、血液や尿から製品由来の亜鉛がごく微量検出されています3)。ただ、それが粒子のまま吸収されたものか、溶けた亜鉛なのかは分かっていません。
粒子が肌の奥まで入らなくても、溶けた亜鉛がわずかに吸収されることはありえます。一方で、「ナノだから肌の奥へ大量に入る」と決めつける根拠もありません。
| 研究で調べたこと | 知っておきたいこと |
|---|---|
| 粒子の皮膚内への侵入 | 5日間の試験で、表面や溝にとどまった |
| 亜鉛の血液・尿中への移行 | ごく微量で、粒子のままかは不明 |
| 短期間の局所の安全性 | 長く使った場合は未確認 |
化粧品と亜鉛華軟膏などの医薬品の違い
亜鉛華軟膏には酸化亜鉛を20%含む医薬品があり、湿疹・皮膚炎などに対する収れん・消炎・保護などを目的に使います。日焼け止め化粧品とは濃度の設計も使用目的も異なります。
化粧品の配合量は製品ごとに違い、同じ成分だからといって軟膏と置き換えることはできません。亜鉛華軟膏を日焼け止め代わりに使ったり、日焼け止めで皮膚炎の治療を試みたりせず、必要な薬は医療機関で相談してください。
酸化亜鉛と似た成分との違い
酸化亜鉛、酸化チタン、紫外線吸収剤、酸化鉄は、防ぐ光の範囲や仕上がりが異なります。1つの成分の優劣だけで選ぶより、完成品のSPF・PA、色、塗り心地を組み合わせて判断することが大切です。
酸化チタンとの違いは防ぐ波長
酸化チタンも日焼け止めに使う無機粉体です。試験用の配合で比べると、長い波長のUVAは酸化亜鉛の方がよく防ぐことが確認されています。ただ、市販品は配合がそれぞれ違うため、この結果だけで製品の優劣は決められません。
紫外線吸収剤との違いは原料の種類
一般に紫外線吸収剤と呼ばれる成分は有機系で、酸化亜鉛は無機系です。両方を組み合わせた製品もあります。酸化亜鉛フリーでも、他の防御成分の組み合わせによって幅広い紫外線への対策ができます。
吸収剤の中には接触アレルギーの原因になるものもありますが、すべてを一律に肌に悪いと扱うのは適切ではありません。刺激が出た経験がある場合は、「吸収剤」とひとくくりに避けるより、皮膚科で原因の成分を調べてもらうことをおすすめします。
酸化鉄は色と可視光への対策に関わる
酸化鉄はファンデーションなどの色づけに使う顔料です。スキンタイプIV(赤くなりにくく褐色に焼けやすい肌)の人を対象にした試験では、酸化鉄入りの色つき製剤が可視光による色素沈着を抑えました。紫外線とは異なる光への対策です。

ただ、酸化鉄入りの製品ならどれでも同じ効果があるとは限りません。色素沈着が気になる場合も、まず紫外線対策を基本とし、色つき製品を補助として考えるとよいでしょう。
| 成分・分類 | 主な特徴 | 選ぶ際の確認点 |
|---|---|---|
| 酸化亜鉛 | UVA・UVBを広く防御 | 白浮き・塗り心地 |
| 酸化チタン | UVBや短い波長のUVAを防御 | 他の成分との組み合わせ |
| 紫外線吸収剤 | 成分ごとに防ぐ波長が異なる | 製品のSPF・PAと相性 |
| 酸化鉄 | 着色・可視光への防御を補助 | 色調・製品ごとの性能 |
まとめ
酸化亜鉛は、日焼け止めの紫外線防御を支える成分です。フリー表示は製品選びの条件の1つですが、肌へのやさしさを決める印ではありません。防御力と使用感、肌の反応をあわせて確かめましょう。
酸化亜鉛入りの化粧品を選ぶときの確認点
酸化亜鉛を避けたいときは、まず理由をはっきりさせましょう。かぶれが理由なら皮膚科で原因の成分を確かめ、乾燥感や白浮きが理由なら、使い心地の違う製品を試すのが近道です。
- 防御力は成分名だけで見積もらず、UVBはSPF、UVAはPAの表示で確かめる
- 酸化亜鉛を避けるなら、下地やパウダーも全成分表示で「酸化亜鉛」の文字を探す
- 乾燥感や毛穴詰まりの原因を酸化亜鉛だけと決めず、洗い方や他の成分も見直す
- 塗る量も落とし方も、容器や説明書に書かれた方法に合わせる
肌に合う日焼け止めで紫外線対策を続ける
問題なく使えている製品を、成分名だけを理由に替える必要はありません。合わないと感じたときは、使用を休んで肌の状態と製品を見直すのが先です。気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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