30代以降の女性に多い「酒さ」。近年は酒さで悩む人も増えていて、Vビームを検討中の方も多いです。
Vビームは肌の赤み治療の代表格とも言える美容機器で、塗り薬で良くならないような酒さの赤みを改善させる効果があります。
このページでは、Vビームの酒さへの効果や必要回数、値段やダウンタイムの過ごし方について解説しています。
Vビームで酒さが悪化する可能性や再発についてもまとめていますので、酒さにお悩みの方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
Vビームの酒さへの効果
酒さは、頬や鼻などの赤みが目立ったり、ニキビのようなブツブツが認められたり、ほてりやかゆみなどの症状がある皮膚疾患です。
原因は完全に解明されていないものの、紫外線を浴びたり体温が上がるような行動で悪化しやすい特徴があります。
赤みを治療するレーザーやIPLにはいくつかの種類がありますが、そのなかでも効果を実感しやすいと言われるのがVビームです。
血管にアプローチして肌の赤みを改善する
酒さの人は皮膚のなかで血管が拡張している状態で、血液が表面に透けて見えるので肌が赤くなっています。
酒さの人は皮膚が薄い人も多いです。
Vビームは赤い色によく反応するレーザーを当てて血管を収縮・破壊していき、肌の赤みが改善する仕組みです。
酒さには4つのタイプがありますが、Vビームが効果的なのは「紅斑毛細血管拡張型(こうはんもうさいけっかんかくちょうがた)」と「丘疹膿疱型(きゅうしんのうほうがた)」の酒さです。
- 紅斑毛細血管拡張型:頬の赤みが目立つ、毛細血管が拡張している
- 丘疹膿疱型:赤みのある肌にブツブツとした丘疹や膿疱ができる
- 腫瘤型(鼻瘤):皮膚が肥厚する、鼻の皮膚が凸凹している
- 眼型:まぶたや白目(結膜)に炎症や充血が起きる
紅斑毛細血管拡張型のぼんやりとした赤みはVビーム単体でも十分改善できますが、丘疹膿疱型(赤みと一緒にプツプツも認められる酒さ)には、ロゼックスゲルやアゼライン酸、イベルメクチンなどの塗り薬でブツブツをある程度改善してからVビームを行うとさらに効果を実感しやすいです。
酒さと併発する炎症後紅斑にも効果的
酒さの人は「炎症後紅斑」を併発しているケースもあります。
炎症後紅斑とは、肌の炎症が治ったあとでも残ってしまっている肌の赤みで、主にニキビ跡としてみられます。
通常は半年~1年程度で目立たなくなりますが、1年以上赤みが消えないときには治療が必要です。
また、半年経っていない場合でもVビームで治療すると、クレーターに発展してしまうのを防ぐメリットがあります。
炎症後紅斑は血管が拡張している状態ですが、このような症状にもVビームが良い適応となります。
酒さに対するVビーム、何回受ければ良いの?
Vビームはターゲットによって必要回数に大きな幅があります。ぼんやりとした顔の赤みが気になる酒さでは、最低5回の照射が必要となります。
5回~10回で効果を実感できる
酒さと一口にいっても、顔の赤みの程度には個人差があります。そのため、何回受ければ赤みが消えるかについても人によって差が出てきます。
ただ、目安として5~10回程度で症状が改善する人が多いです。
根気強い照射が必要
酒さの赤みに対しては、低めの出力でVビームを複数回当てていくようなアプローチが必要です。
1回の照射にどのくらい反応するかは人によって違いがありますし、最初の数回は改善度合いが少なく思ったような結果が得られない場合でも7~8回目の照射で急にグッと赤みがなくなる人もいます。
Vビームの必要回数は個人差が大きい、何回目かの照射で急に赤みが改善する人もいる、といった点を踏まえて根気強い照射を重ねましょう。
通院の間隔目安
Vビームは複数回の施術が必要ですが、医学的にいうと最短で2週間ごとに照射が可能です。
1カ月ごとの照射が1つの目安
酒さに対するVビームは回数を重ねることが大切ですので、無理なく通えるスケジュールとしては1カ月間隔での通院をおすすめしています。
とはいえ、効果を早く実感したい方や集中的に照射して治療期間を短くしたい方は、2週間ごとの照射も可能です。
通院間隔によって治療の効果が左右されるような施術ではなく、2~3カ月空いてもまったく問題はありません。
ただ、通院間隔が空けば空くほど治療が完了するまでに時間がかかってしまう点はデメリットです。
1カ月ごとの通院(治療期間:5~10カ月)を目安として、短い治療期間を望む方は2週間ごとに通院(治療期間:2カ月半~5カ月)すると良いでしょう。
ダウンタイムと注意点
Vビームのダウンタイムの期間は1~2週間程度です。
赤みや腫れ、むくみは数日から1週間、内出血(紫斑)は2週間ほどで治まります。
Vビームのダウンタイム
- もともとの赤みが強い方は赤み、腫れが出やすい
- むくみは1~2日後に現れ始めるケースが多い
- 目周りは内出血が出やすい
Vビームのダウンタイムでは、軽度の赤みや腫れ、顔のむくみなどの症状が現れます。
もともと肌の赤みが強い方は施術後の赤みや腫れが出やすく、照射する強さによってもダウンタイムが異なります。
酒さの場合は赤あざや老人性血管腫よりも弱めの出力で全体的に照射するので、内出血は出にくいです。
ただ、顔のパーツによって紫斑の出やすさは変わり、目の周りはほかのパーツに比べて出やすい傾向があります。
出力を調整して内出血が出ないような照射も可能ですので、ダウンタイムが気になる方は医師に相談しましょう。
ダウンタイム中の過ごし方
Vビームは皮膚の表面にダメージを与えない施術ですので、当日からメイクや洗顔ができます。
紫外線は肌への刺激になりますし、副作用の赤みや腫れが増してしまう可能性もありますので、施術後は日焼け止めで紫外線対策を行うようにしてください。
また、強いむくみがあったり内出血が認められるようなときには、血行が良くなる行動を控えるようにしましょう。
- 赤みや腫れを強くこすらないように過ごす
- 当日はアルコールやサウナ、激しい運動を控えたほうが無難
- 照射直後から紫外線対策を徹底する
酒さへのVビームの保険適用・値段について
酒さに対してVビームを行うときは自由診療となる方が多いですが、症状によっては健康保険が適用できます。
保険適用となるケース
ご自身では酒さと思っていても、診察によって「毛細血管拡張症」と診断されれば保険が適用できます。
小鼻の横や鼻下、頬などにみられるチリチリとした細い血管で、炎症を伴わないものを指します。
自然に治るものではなく、スキンケアや薬でも改善しない皮膚疾患です。
ただし、毛細血管拡張症でVビームが保険適用となるときは、次の治療まで3カ月空けなければならない決まりがあります。
照射する面積によって値段が決められていて、10㎠で6510円、50㎠で1万2510円、100㎠で2万10円です(3割負担の場合)。
保険適用になるかどうかは医師の判断にゆだねられますので、Vビームを検討している方はいちど皮膚科で相談いただくと良いかと思います。
基本的には自由診療となる
毛細血管拡張症と診断された場合を除き、酒さへのVビームは自由診療となります。
クリニックごとに料金設定が異なり全額が自己負担となる一方で、治療期間や照射する範囲に制限がなくご希望に合わせた照射ができるのがメリットです。
Vビームの値段相場
照射範囲 | 値段相場 |
---|---|
全顔(1回) | 3万3000円 |
両ほほ(1回) | 1万5000~2万2000円 |
顔全体にVビームを照射したときの値段相場は3万3000円程度です。稀に回数コースがあるクリニックもみられますが、1回ごとの支払いとなるところが多い印象です。
このほかに、塗り薬を併用する際は治療薬の費用がプラスされます。また、初診料や再診料、麻酔代などが別途かかるクリニックもあります。
Vビームで酒さが悪化する可能性は?
Vビームで酒さが悪化するのではないかと心配される方もたまにいますが、結論からいうと症状に合わせた出力で照射すればVビームで酒さが悪化するというのは考えにくいです。
正しい出力で照射すれば悪化しない
Vビームは赤い色素に良く反応し、赤みにとくに効果を実感できる治療です。そのため、症状に合わせて正しい出力で照射すれば酒さは悪化することは基本的にありません。
Vビーム後に酒さが悪化したと感じるのであれば、酒さを悪化させるほかの要因がないかどうかを確認してみましょう。
- ステロイドやプロトピック
- ヘパリン類似物質(保湿剤)
- 紫外線
- 誤ったスキンケア
- 血行が良くなるような行動
- 香辛料やカフェインなどの食べ物
ステロイドやプロトピックといった外用薬やヘパリン類似物質(ヒルドイド)は、酒さを悪化させてしまう原因です(ただし、酒さと湿疹が混在しているときは2~3日ほど短期使用する場合があります)。
また、Vビームのあとに紫外線を浴びる、ゴシゴシとこすったり刺激の強いスキンケアで酒さが悪化するケースもあります。
化粧品に含まれる界面活性剤や防腐剤が原因の場合も多いですが、美白成分で酒さの症状が悪化する例も報告されています。
Vビームのダウンタイム中は一時的に赤みが強くなったり腫れが出たりしますので「悪化した」と感じる方もいますが、肌の炎症が落ち着くと本来のVビームの効果を実感していただけるかと思います。焦らず紫外線対策をしながら過ごしましょう。
酒さを悪化させないためにクリニック選びを慎重に行う
Vビームを照射する際には、出力、パルス幅(照射時間)、スポット径の3つを症状に合わせて変更しますが、この調整が適切でないと酒さが悪化してしまう可能性も否定できません。
また、酒さに似た皮膚疾患に「酒さ様皮膚炎」があり、診断を誤ると症状が悪化する場合があります。
酒さ様皮膚炎は、酒さと似たような名前ですが異なる皮膚疾患です。
ステロイドを長期間使用したために起こる副作用で、赤みや毛細血管の拡張、丘疹や膿疱といった酒さに似た症状が認められます。
酒さ様皮膚炎に対してはVビームは第一選択の治療ではありません。まずはステロイド外用薬を中止して、治療薬である程度改善してからVビームが検討されます。
酒さと酒さ様皮膚炎を見分けて正しい治療を行うためにも、経験や知識の豊富な医師が在籍したクリニックを選ぶようにしましょう。
Vビームを受けた後、酒さが再発することはある?
Vビームを適切な回数受けたあとは、赤みがグッと改善します。ただ、Vビームの効果は永久ではない点は覚えておいていただきたいです。
Vビームの効果は永久ではない
Vビームは酒さの根本的な治療ではないため、持続期間にも限りがあります。
原因が完全に解明されていないこともあり、酒さを完全に治す治療方法は今のところありません。
Vビームで増殖した血管を破壊しても何らかの原因で再び血管が増殖したり拡張したりする可能性もありますし、ニキビができて赤みが残るケースもあります。
再発させないためのポイント
酒さの方は超敏感肌といっても過言ではなく、バリア機能の低下を認めるケースが多いです。そのため、普段のスキンケアや生活習慣が原因となって再び顔の赤みが強くなる人もいます。
遺伝的な要因も酒さの原因として挙げられますので、悪化因子をすべて取り除いたからといって必ずしも再発しない訳ではないですが、Vビームの効果を持続させるためにも紫外線や肌への摩擦などの悪化因子を取り除く工夫が必要です。
まとめ
Vビームは肌の赤みを改善する施術で、酒さに効果的な治療方法です。
基本的には自由診療となるものの、症状によっては保険適用になる場合もあります。
Vビームの酒さへの効果まとめ
- 酒さの拡張した血管にアプローチして赤みが改善する
- 5~10回が目安で1カ月ごとの照射がおすすめ
- 全顔の平均相場は1回3万3000円
- 悪化・再発させないためには紫外線対策やスキンケアも大切
ただし、「肌の赤み=即Vビームが適応」ではなく、皮膚科で診察を受けて外用薬や飲み薬でまず治療し、さらに赤みを減らしたい方はVビームを検討するのがおすすめです。
ご自身の酒さがVビームの適応であるか否か、毛細血管拡張症や酒さ様皮膚炎などのほかの疾患ではないかどうかを確認するためにも、顔の赤み治療をお考えの方はお気軽に皮膚科に足を運んでみてください。
参考文献
LAUBE, S.; LANIGAN, S. W. Laser treatment of rosacea. Journal of cosmetic dermatology, 2002, 1.4: 188-195.
BERNSTEIN, Eric F., et al. Pulsed dye laser treatment of rosacea using a novel 15 mm diameter treatment beam. Lasers in Surgery and Medicine, 2018, 50.8: 808-812.
ABOKWIDIR, Manal; FELDMAN, Steven R. Rosacea management. Skin appendage disorders, 2016, 2.1-2: 26-34.
KWON, Hyuck Hoon, et al. Combined treatment of recalcitrant papulopustular rosacea involving pulsed dye laser and fractional microneedling radiofrequency with low‐dose isotretinoin. Journal of Cosmetic Dermatology, 2020, 19.1: 105-111.
KWON, Won Joo, et al. Comparison of efficacy between long-pulsed Nd: YAG laser and pulsed dye laser to treat rosacea-associated nasal telangiectasia. Journal of Cosmetic and Laser Therapy, 2018, 20.5: 260-264.