こんにちは。作業療法士の西川のあです。今回は転倒を予防するために、日常生活の中ですぐにできる工夫をご紹介します。
「家の中だから大丈夫」「いつも歩いているから大丈夫」と思っていても、転倒はちょっとした段差や床の物につまずくことで起こります。特に、入院後は体力や筋力が低下していたり、動作に慣れていなかったりするため、退院後も転倒に注意することが大切です。
次回以降予告
①家の中の「つまずきやすい場所」の確認
- 転倒の原因
- 段差の大きさによっての違い
- つまずきやすい場所の工夫
②急がず、ゆっくり動くこと・・10月に更新予定
③自分に合った靴を選択すること・・ 11月に更新予定
④「ちょっと不安」と感じたら、無理をしない理由・・12月に更新予定
⑤夜間の移動に注意すること・・1月に更新予定
9月のブログは、家の中の「つまずきやすい場所」の確認について紹介します。
転倒の原因
転倒の原因になりやすいのが、床に置かれた物や小さな段差です。
2021年度東京都福祉保健基礎調査報告書3によれば、居住者が自宅の環境に対して考えるバリアの箇所は「玄関」が最も多く、次いで「玄関から道路までの通路」「浴室・洗面所」「階段」の順でした(図1)。
この調査結果により、居住者が考えるバリアとは、段差が大きい箇所のような住宅の構造的障壁であり、室内に配置された家具や日用品などの生活用品はバリアとしてあまり意識されていないことが示されました。
つまり、床に置かれた物よりも段差を意識することが多く、認識では段差を注目することが多いと言えます。これらはバリアとして認識しているものであるため転倒と直接的関係しているものとなります。
しかし、転倒される原因は、室内の段差のみではなく、床に置かれた物で転倒することも少数ではありますが実際に起きている要因となっています。

段差の大きさによっての違い
段差には主に2つの種類があります。一つは、和室入口の敷居のように上がるまたは下がる単純な段差、もう一つは戸の下枠の立ち上がりのようにまたいで越える段差です(図2)。
またぎ段差は足部を持ち上げるだけでなく、歩幅を広げてまたぐ動作であるため難易度が高いです。
また、人の歩行特性上、2〜3mm程度の低い段差に最もつまずきやすいとされ、高齢者や子どもだけでなく、健常者でも不意の転倒事故に繋がる可能性があります。

数ミリのわずかな段差の例として、カーペットやマット、床にあるコード、部屋と部屋の間、和室入口敷居、ユニットバス入口などと室内には多くの数ミリ単位の段差が存在しています。これらの段差をいくつ把握できているでしょうか?
つまずきやすい場所とその工夫
転倒を誘発する要因は段差の大きさだけとは限りません。小さな段差にもさまざまな特徴があります。段差を見分けにくくする色合い、暗がり、床の滑りやすさ、戸の開閉動作の不安定さ、履物、敷物などの 段差周囲の環境と動作の組み合わせ等によって転倒の危険性は増大します。
木材の日焼けや黒ずみによって、敷居上部の平面と敷居の側面は見分けにくくなります。さらに敷居前面の廊下の床材もフローリングなどの木質系床材で同系色の場合には、段差を立体的に見ることが難しくなるため、目印をつけたり段差解消の用具を置く必要があります。
視覚的に段差と認識されにくく、注意が向かないことでつまずく、転倒されることがあるため、視覚的情報として目印を黄色などの目立つ色のテープを床に貼るなどが有効とされています。
実際に訪問リハビリで自宅に伺うと、床にコード類が多く散乱しているお宅を見かけることがあります。

いますぐできることとして
- 床にコードや物を置かない
- カーペットやマットがずれていないか確認する
- 階段や廊下に物を置かない
- 段差がある場所には目印をつける
また、介護保険を利用することで図4のような小さな敷居に対して、段差を解消する福祉用具もあります。活用される方も多くみえます。「いつも通っている場所だから大丈夫」と思わず、一度家の中を歩いて確認してみましょう。

まとめ
リハビリでは、患者さん一人ひとりの身体の状態や生活環境に合わせて、安全に動くための方法を一緒に考えます。
「床に物を置かない」「暗い場所を明るくする」「急がない」「自分に合った靴を履く」など、毎日のちょっとした工夫が転倒予防につながります。
退院後も安心して生活するために、ぜひ一度、ご自宅の環境や普段の動作を見直してみましょう。
当院の訪問リハビリでは、自宅で安心して生活を続けられるように、実際の生活環境を確認しながら転倒予防に取り組んでいます。「この動作はどうしたら安全にできる?」など、気になることがあれば、ぜひリハビリスタッフにご相談ください。
参考文献
橋本 美芽 居住環境と転倒予防
日本転倒予防学会誌 Vol.12:21-26 2025
