理学療法士の秋田です。今回は当院の整形外科部門で年間手術数が最も多い人工膝関節についてお伝えしたいと思います。
人工膝関節は、
- 全人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)
- 単顆式人工膝関節置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:UKA)
があり、さらにその中でもいくつか分類されています。
当院のTKAでよく用いられるtypeはVanguard PSRP(Vanguard PS Rotating Platform)というものになります。
特徴は適合性の良さと深屈曲位においての安定性を向上させるpost-cam機構(※1)です。
- 伸展位では大腿骨コンポーネントと完全に適合
- 伸展位から屈曲位にかけてペアリングの接触圧を最小にできるように大きい接触面積
- 伸展位から屈曲位にかけてスムーズな移行のためのpost-camの高い適合性
※1:生体の動きに近いロールバック(関節の動き)を可能とします
当院の特徴
Point1
当院では手術前に3Ⅾ術前計画専用ソフトを用いてシミュレーションを行います。
Point2
ナビゲーション技術を併用して正確な骨切りと人工関節の設置をしています。
レントゲンだけでは不十分な術前評価を3Ⅾ画像を用いることで良好な手術成績をもたらし、患者様の早期の社会復帰を可能にできると思います。
そこに我々理学療法士・作業療法士が患者様のニーズにあわせた治療を提供し、QOLを高めていけると考えています。
変形性膝関節症(以下OA)は進行すると骨に棘のようなものができ、痛みもそれに伴い増加します。さらに前十字靭帯(以下ACL)もOAの進行によってダメージを受けます。
以前は前十字靭帯がdisrupted(ダメージを受けている)度合によって手術の有無を決定する一つの因子としていましたが、現在はintact ACLでの手術も行われています。
豊野らの報告ではIntact(無傷)ACLが25%~86%でACLの残存が認められた1)としています。このことから以前よりも手術に踏み切るタイミングが急速に早くなっており、メリットが大きいことを裏付けているのではないでしょうか。
患者様の最大の悩みは「痛み」であり、早期の手術は痛みの改善や筋力の維持にもメリットがあるので、適応年齢になった際は一つの選択肢として必要かもしれません。
当院の年間手術数(人工膝関節の件数)は30件(2023.4月~2024.3月)で月に2~3件行われています。平均年齢は78.2歳で60歳代~80歳代の方が手術をされています。
人工関節の耐久性は以前より優れており、25年ほどといわれておりますが、平均寿命も比例して長くなっているため基本的には60~65歳以上の方を適応年齢とすることが多いです。
スケジュール
リハビリとしては、当院のプロトコルに従い進めています。
当院TKA後の歩行・膝可動域プロトコル
実際のTKA術後患者様の膝関節屈曲角度の変化です。
膝の痛みや変形でお悩みの方は一度当院へ来院してみてくださいm(__)m
参考文献
1)豊 野 修 二,豊 島 定 美,他:Primary TKAにおけるACL残存率,東北膝関節研究会会誌 Vol.25