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【口囲皮膚炎】これ、ニキビではありません。皮膚科医が解説します。

皆さんこんにちは。皮膚科医の小林智子です。このチャンネルではスキンケアから美容医療そして皮膚疾患まで肌にまつわる全てのことを発信しています。公式LINEもありますので是非そちらも登録していただけたらと思います。

今日お話ししたいのは「口囲皮膚炎」という疾患です。口囲皮膚炎という名前を聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそれほど珍しい疾患ではありません。私のクリニックでもよくこの口囲皮膚炎の方を見かけます。

口囲皮膚炎なんですけれども、誤診が多いという特徴があります。口にニキビの薬を出されたけれどもブツブツがなかなか良くならない、赤みにステロイドを出されたけれどもかえって悪化したという方いらっしゃいませんか?

そういった方はこの口囲皮膚炎の可能性があります。

口囲皮膚炎の場合、ニキビ治療薬やステロイド外用薬をずっと塗り続けても改善することはありません。今回はそんな口囲皮膚炎について原因や正しい治療方法などを詳しく解説したいなと思います。それでは早速行ってみましょう。

目次

【口囲皮膚炎とは】

まず口囲皮膚炎とは何か、というところから少し触れたいと思います。口囲皮膚炎はその名の通り、口周りに症状を認めるのが特徴で、具体的に赤みやブツブツとした丘疹、膿を認めるのが特徴です。

この赤みは唇を避けるように出るのが特徴なんですけれども、悪化するとどんどん広がっていく傾向にあります。

【口囲皮膚炎の原因について】

次にこの口囲皮膚炎の原因なんですけども、これまでの報告で口囲皮膚炎の原因には様々なものがあるという風に考えられています。

まず1つ体質的な要素が挙げられます。これまでの報告で、アトピー性皮膚炎を持っている方は、この口囲皮膚炎の合併例が多いということが分かっています。

また、局所の感染症によっても口囲皮膚炎が誘発されることがあります。口囲皮膚炎の方の中には、化粧品の成分など特定の成分に対するアレルギーによって症状が誘発されることもあります。

最後に口囲皮膚炎の原因として最も多いとされているのが、ステロイド外用薬などの誤った使用です。

口囲皮膚炎のブツブツでクリニックに来られる方の中には、数年単位でステロイドの塗り薬を塗っていたというような方も中にはいらっしゃいます。

最初はですねそういった薬が一見効いてるように感じることが多いんですけれども、ずっと繰り返すうちに症状が悪化していくことが多いです。

冒頭でお話ししたように、口囲皮膚炎は誤診が非常に多い疾患となります。具体的にどういった疾患と誤診されるかというと、「脂漏性皮膚炎」と呼ばれるような疾患、尋常性痤瘡、いわゆるニキビだったり、あとは赤ら顔酒さと誤診されることもあります。

【酒さと口囲皮膚炎の違い】

特に赤ら顔、酒さに関しては、口囲皮膚炎と共通するところが多いです。具体的には、赤みやブツブツといったような症状は、酒さの方でもあとは口囲皮膚炎の方でも認めます。他に、ステロイドが症状を悪化させるということも共通しています。

酒さの方で、ステロイドによってその炎症が悪化して赤みやブツブツを認めるような方を「酒さ様皮膚炎」という風に言うんですけれども、ステロイド外用薬は、酒さでも口囲皮膚炎でもその症状を悪化させる傾向があります。

また、酒さの方も口囲皮膚炎の方も、化粧品を使用することでピリピリとした刺激を感じやすいという傾向にあります。

このように赤ら顔の酒さと口囲皮膚炎には共通点はいくつかあるんですけれども、今では別疾患という風に捉えられています。

どういった点が異なってくるかと言うと、まず口囲皮膚炎の方が若年層により起こりやすいという傾向にあります。酒さの場合、大体30〜40代の女性に起こりやすいことが知られてるんですけども、口囲皮膚炎の場合は小児でも起こることがあります。

また、酒さの場合は体質的な要素がより強いという風に言われていて、遺伝的な要素が大きい傾向にあります。

一方、口囲皮膚炎の場合は、ステロイドの塗り薬をやめるとさっと症状が改善する方もいらっしゃるように、完治することもよくあります。

最後に、先ほどちらっとお話ししたように口囲皮膚炎の場合はアトピー性皮膚炎の合併例が多いのが特徴です。アトピー性皮膚炎の場合、外からの刺激に対して弱い、すなわちバリア機能の障害があるという風に考えられています。

同じように口囲皮膚炎の場合も、バリア機能障害がその発症要因に大きく関係しているという風に言われています。

では酒さではどうかというと、酒さの方でもバリア機能が低下する例はよくあるんですけれども、酒さの場合元々の酒さの症状に加えて様々な悪化原因によって炎症が誘発されることによって、バリア機能の障害が起こっているのではないかという風に考えられています。

一方、口囲皮膚炎の場合は元々バリア機能の障害があって、それによって炎症が誘発されるのではないかという風にも考えられていますし、また別の意見では、ステロイドの外用薬などによってバリアの障害がより悪化しているのではないかという風にも言われています。

【口囲皮膚炎の治療法】

このように、完全に口囲皮膚炎の病態は明らかになっているわけではないんですけれども、治療方法としてはまずその悪化原因を中止することが何よりも重要になってきます。

これまでニキビの塗り薬だったり、あとはステロイド外用薬を漫然と続けていた方は、まずそれを中止する必要があります。

この時、特にステロイドの塗り薬に関しては、中止後「リバウンド現象」と言って赤みやブツブツが一時的に悪化することがよくあります。

この時にステロイドをまた塗ってしまう衝動に狩られると思うんですけれども、これを乗り越えていただくとある程度症状が改善することが多いので、ステロイドなどの塗り薬は保湿などをして極力塗らないようにしてください。

症状が軽度の場合はこれだけで完治することがあります。ただ、ブツブツや赤みが強い中等度から重度にかけてはお薬が必要になってくることもあります。まず最初に処方されることが多いのが酒さのお薬です。

具体的には「ロゼックスゲル」や「アゼライン酸」そして「イベルメクチン」などの塗り薬が挙げられます。これらの薬については以前の動画で詳しく解説しているものがありますので是非そちらを参考にしていただけたらと思います。

また重度の患者さんに対しては、テトラサイクリン系などの抗生剤の飲み薬だったり、あとは「イソトレチノイン」と呼ばれる内服薬を考慮することもあります。

早いケースですと原因物質が除去できて数ヶ月程度で症状が収まることが多いんですけれども、もし赤みやブツブツがなかなか引かないというような方は皮膚科で相談されることをお勧めします。

【スキンケアのポイントについて】

最後にスキンケアについてです。先ほどお話ししたように、口囲皮膚炎の方ではバリア障害が1つあるという風に言われています。スキンケアではバリア機能を高めるケアがポイントになってきます。

具体的には、まずあれこれつけないということが重要になってきます。

赤みやブツブツが気になってファンデーションを厚塗りしたくなる気持ちはよく分かるんですけれども、コンシーラーなどでグリグリと塗ってしまうとそれを落とすのにまた洗浄力の強いクレンジングが必要になってきます。

そうするとバリア機能がより低下してしまう可能性がありますので、できるだけシンプルなケアにとどめるようにしてください。

赤みに対してよくお勧めしてるのがこちら。グラファの「スキンケアエマルジョンAZ」というアイテムです。

こちらは肌色を補正してくれる化粧下地になるんですけれども、アゼライン酸が10%配合されていて、SPF35、PA+++と日焼け止めとしても機能してくれます。手に出してみると、このようにちょっと色は濃いんですけれども、赤みに対するカバー力は抜群かなと思います。

また保湿に関してもできるだけシンプルにすることをお勧めします。保湿に関して化粧水乳液クリームといくつも重ねる方いらっしゃるんですけれども、正直そこまでする必要はないかなと思います。

カサカサとした乾燥を認めない場合は乳液だけだったり、あとはオールインワンジェルだけというような使い方も有効です。口囲皮膚炎でお悩みの方は一度スキンケアも見直されることをお勧めします。

ということで今回は誤診の多い口囲皮膚炎について詳しく解説させていただきました。もし今回の動画を見て、なかなか口のニキビが治らないあるいは赤みが引かないというような方は、この口囲皮膚炎への可能性があるかなと思いますので一度皮膚科を受診されることをお勧めします。

今回の動画が少しでも参考になったなと思ったらいいねボタンやチャンネル登録ボタンを押していただけますと嬉しいです。ということで今回の動画は以上です。それでは〜。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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