ローヤルゼリーは、働きバチが分泌して女王バチの餌になる乳白色の物質で、アミノ酸やビタミン、ミネラル、そして特有の脂肪酸である10-HDAを含みます。近年はスキンケア成分としても化粧品に配合されています。
うるおいやハリの印象を助ける役割で親しまれ、化粧水や美容液などに取り入れられてきました。
外用でのローヤルゼリーは、肌をととのえてキメの印象を高める保湿系の成分として使われます。効果は研究で少しずつ調べられていますが、断定できる段階ではないため、期待とともに特徴を正しく知っておくことが大切です。
この記事では、ローヤルゼリーとは何かという基本から、肌への効果や化粧品での使い方、アレルギーなどの副作用と注意点、似た成分との違いまで、皮膚科専門医監修のもとでわかりやすく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ローヤルゼリーとは 働きバチが分泌する女王バチのための物質
ローヤルゼリーは、若い働きバチの体内でつくられ、女王バチだけが食べ続ける特別な栄養源です。乳白色でとろりとした物質で、化粧品では保湿やエイジングケアの印象を助ける成分として配合されています。
ミツバチの下咽頭腺から分泌される乳白色の物質
ローヤルゼリーは、生後およそ1〜2週間の若い働きバチの下咽頭腺と大あご腺から分泌されます。花粉やハチミツを食べた働きバチが体内でつくり出す、いわば分泌物です。
巣の中で女王バチはこのローヤルゼリーだけを与えられ続けます。同じ受精卵から生まれても、ローヤルゼリーを食べ続けた個体が女王バチへと育つことから、古くから注目されてきた歴史があります。
見た目は乳白色から淡い黄白色で、酸味のある独特の風味をもちます。水分が半分ほどを占め、残りをタンパク質や糖、脂質、ビタミン類などが構成しているとされています。
アミノ酸やビタミンに加え特有の脂肪酸10-HDAを含む
ローヤルゼリーの中身は、多くのアミノ酸やタンパク質、ビタミンB群、ミネラル、糖質など幅広い成分で構成されています。レビュー論文でも、タンパク質・脂質・糖質・ポリフェノール・ビタミン・ホルモン様物質など多様な成分を含むと整理されています。
なかでも注目されるのが、10-HDA(10-ヒドロキシ-2-デセン酸)と呼ばれる脂肪酸です。これはローヤルゼリー特有の成分で、他の食品にはほとんど見られないため、品質の指標としても使われます。
タンパク質のうち大きな割合を占めるのが、主要ローヤルゼリータンパク質と呼ばれるグループです。こうした成分が、肌に対する働きを調べる研究の対象になってきました。
ローヤルゼリーの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分泌するもの | 若い働きバチ |
| 分泌する部位 | 下咽頭腺・大あご腺 |
| 色・状態 | 乳白色でとろみのある物質 |
| 主な成分 | アミノ酸、タンパク質、ビタミン、ミネラル、糖質 |
| 特有成分 | 10-HDA(デセン酸) |
| 化粧品表示名 | ローヤルゼリーエキス(Royal Jelly Extract) |
化粧品表示名はローヤルゼリーエキス
化粧品に配合される場合、全成分表示には「ローヤルゼリーエキス」と記載されるのが一般的です。英語表記ではRoyal Jelly Extractとなり、水やグリセリンなどに溶かした抽出物として扱われます。
スキンケア成分としてのローヤルゼリーは、あくまで肌をととのえ、うるおいを補う目的で使われます。医薬部外品の有効成分として承認されている美白や抗シワの成分とは位置づけが異なり、化粧品原料の一つとして配合される点を押さえておきましょう。
ローヤルゼリーに期待できる肌への効果
ローヤルゼリーに期待される肌への効果は、うるおいを保つ保湿と、ハリやキメの印象を助ける働きが中心です。研究では10-HDAやタンパク質が肌の細胞に与える影響が調べられていますが、多くは培養細胞や動物での基礎研究の段階にあります。
うるおいを助けてキメをととのえる保湿の働き
ローヤルゼリーは多くのアミノ酸を含むため、肌のうるおいを補い、乾燥しがちな角層をやわらげる保湿成分として使われます。うるおいがゆきわたると、キメがととのって見え、肌あたりがなめらかに感じられるでしょう。
研究のなかには、10-HDAが角層のうるおい保持に関わるフィラグリンというタンパク質の産生を後押しする方向の結果を示したものもあります。ただし、これは培養皮膚モデルでの知見です。
化粧品を塗って同じ効果が得られると保証するものではないため、あくまで研究上の性質として理解しておきましょう。
ハリの印象を支えるコラーゲンへの関わり
ローヤルゼリーがエイジングケアの印象で語られる背景には、コラーゲンに関する研究があります。ある研究では、ローヤルゼリー抽出物からコラーゲン産生を後押しする成分として10-HDAが同定され、線維芽細胞に働きかける経路が示されました。
別の研究では、紫外線Bを浴びた皮膚の線維芽細胞にローヤルゼリーや10-HDAを加えると、I型プロコラーゲンなどの産生が増えたと報告されています。こうした知見はハリの印象を支える手がかりとして興味深いものです。
とはいえ、これらは細胞を使った実験が中心で、実際の肌でシワが改善すると示したものではありません。化粧品としては、ハリやキメの印象をととのえる補助的な働きとして捉えるのが誠実な見方でしょう。
肌のうるおいを守る土台への補助的な働き
ローヤルゼリー由来のタンパク質については、肌表面の細胞であるケラチノサイトの増殖や移動を後押しする方向の結果も、培養実験で報告されています。肌のうるおいを保つ土台に穏やかに関わる可能性が調べられている段階です。
また10-HDAには、メラニンの生成に関わる働きを穏やかに抑える方向の実験結果もあります。ただし美白をうたえる成分ではないため、あくまで研究上の性質として理解しておくとよいでしょう。
研究で調べられている主な働き
| 期待される働き | 関わる成分 | 研究の段階 |
|---|---|---|
| 保湿・キメの印象 | アミノ酸、10-HDA | 培養モデルでの報告が中心 |
| ハリの印象 | 10-HDA | 細胞・基礎研究の段階 |
| うるおいの土台の補助 | タンパク質(MRJP) | 培養細胞での報告 |
ローヤルゼリーの使い方とスキンケアへの取り入れ方
ローヤルゼリーエキスは、化粧水や美容液、クリームなど幅広いスキンケアに配合されています。使い方のコツは、うるおいを与える化粧水や美容液の段階で取り入れ、肌の様子を見ながら継続することです。
化粧水や美容液などどんなアイテムに入っている?
ローヤルゼリーエキスは、保湿やエイジングケアの印象をうたう化粧水、美容液、乳液、クリーム、マスクなどに配合されることが多い成分です。単独ではなく、ヒアルロン酸やコラーゲンといった他の保湿成分と一緒に処方されるケースがよく見られます。
全成分表示では「ローヤルゼリーエキス」と記載されます。配合量は製品ごとに異なり、成分表示の順番から大まかな配合の多さを推し量ることはできますが、正確な量は公開されないのが一般的です。
朝と夜のスキンケアに取り入れる塗り方のコツ
ローヤルゼリーエキスを配合した化粧水や美容液は、洗顔後の肌にまず取り入れるのが基本です。手のひらで顔全体になじませ、乾燥が気になる部分には重ねづけをすると、うるおいがゆきわたりやすくなります。
朝も夜も使えますが、はじめて使う製品は夜のケアから試すと、日中の刺激やメイクの影響を避けながら肌の反応を確かめられます。塗ったあとは乳液やクリームでうるおいを保つと、乾燥しにくい状態にととのえやすいでしょう。
スキンケアは一度で劇的に変わるものではありません。肌に合うと感じたら、数週間から数か月の単位で続けながら、季節や体調に合わせて量を調整していくと取り入れやすくなります。
スキンケアの順番と取り入れ方の目安
| タイミング | 取り入れ方 | ワンポイント |
|---|---|---|
| 洗顔後すぐ | 化粧水や美容液でなじませる | 乾燥部分は重ねづけ |
| 朝 | いつものケアに取り入れる | 使い慣れてから日中に |
| 夜 | 初めての製品はまず夜に試す | 肌の反応を確かめやすい |
相性のよい成分と気をつけたい組み合わせ
ローヤルゼリーエキスは、ヒアルロン酸のように水分を抱える保湿成分と組み合わせると、うるおいを与える方向でまとまりのよいケアがつくれます。乾燥が気になる肌では、こうした保湿成分どうしの組み合わせが取り入れやすいでしょう。

エイジングケアの印象を重ねたい場合は、コラーゲンを配合したアイテムと合わせる使い方もあります。それぞれ働き方は異なりますが、うるおいやハリの印象をととのえる目的では組み合わせやすい成分です。

肌のトーンをととのえたい場面では、ナイアシンアミドのような成分と併用されることもあります。一方で、レチノールやピーリング作用のある成分を使った直後の肌は敏感になりやすいため、新しい成分を重ねるときは量や順番を控えめにして様子を見ましょう。

ローヤルゼリーを使う際の副作用と注意点
ローヤルゼリーで最も気をつけたいのが、アレルギー反応の報告があることです。とくに喘息やアレルギー体質のある方では、まれに重い反応が起きた例が知られており、使う前にパッチテストで肌の反応を確かめることが大切です。
アレルギーやアナフィラキシーの報告がある
ローヤルゼリーは、アレルギー反応の原因になりうる成分として医学的に知られています。摂取に関する研究では、喘息やアナフィラキシーといった重い反応が起きた症例が報告されており、その多くはIgEが関わる本物のアレルギー反応と考えられています。
喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの既往がある方が、ローヤルゼリーを含む飲料でアナフィラキシーを起こした症例も報告されています。こうした報告は主に飲んだり食べたりした場面のものですが、肌に塗る場合も体質によっては注意が必要です。
肌に使ったときには、赤みやかゆみ、腫れ、じんましんといった反応が出る可能性があります。もしこうした症状が現れたら、すぐに使用を中止して、症状が強い場合は医療機関を受診してください。
喘息やアレルギー体質の方は特に慎重に
喘息をお持ちの方やアレルギー体質の方、ハチや花粉に反応した経験のある方は、ローヤルゼリーの使用にとくに慎重になることがすすめられます。過去の報告でも、こうした背景をもつ方で反応が起きやすい傾向が指摘されています。
初めてローヤルゼリー配合の化粧品を使う際は、腕の内側などの目立たない部分に少量を塗り、24〜48時間ほど肌の変化をみるパッチテストを行うと安心です。赤みやかゆみが出た場合は使用を控えてください。
妊娠中や授乳中の方、心配な持病がある方は、化粧品であっても不安があれば事前に医療機関や薬剤師へ相談すると、より安心して判断できます。過度に恐れる必要はありませんが、自分の体質を踏まえて選ぶ姿勢が大切です。
化粧品と健康食品では目的が異なる
ローヤルゼリーは、飲むタイプの健康食品としても広く流通していますが、化粧品に配合されるローヤルゼリーエキスとは目的も使い方も異なります。この記事で扱うのは、あくまで肌に塗るスキンケア成分としての側面です。
肌のかゆみや炎症が強い、なかなか改善しないといった症状がある場合は、化粧品でのケアに頼りきらず、医療機関で相談することが大切です。自己判断で対処せず、専門家の診察を受けましょう。
- アレルギーやアナフィラキシーの報告があるため体質に注意する
- 喘息やアレルギー体質、ハチ・花粉に反応した経験がある方は特に慎重に
- 初めて使うときはパッチテストで肌の反応を確かめる
- 赤みやかゆみが出たら使用を中止し、症状が強ければ受診する
ローヤルゼリーと似た蜂・生物由来の成分との違い
ローヤルゼリーは、プロポリスやハチミツ、プラセンタといった蜂や生物に由来するエイジングケア系の成分と混同されがちです。いずれも肌をととのえる目的で使われますが、由来や含まれる成分、期待される働きが異なります。
プロポリスやハチミツとの違いは由来と成分
プロポリスは、ミツバチが樹木の樹脂と自らの分泌物を混ぜてつくる物質で、巣を守るために使われます。ローヤルゼリーが働きバチの分泌物であるのに対し、プロポリスは樹脂が主体で、ポリフェノールを多く含む点が異なります。

ハチミツは、ミツバチが花の蜜を集めて熟成させた糖分中心の食品です。保湿目的で化粧品に使われることもありますが、アミノ酸やタンパク質を多く含むローヤルゼリーとは、成分の構成が大きく違います。
プラセンタとの違いは何から採れるか
プラセンタは、哺乳動物の胎盤から採れるエキスで、化粧品では豚や馬由来のものが使われます。ローヤルゼリーが蜂由来であるのに対し、プラセンタは動物の胎盤由来という点で出発点から異なる成分です。

どちらもエイジングケアの印象で語られることが多いものの、含まれる成分や研究の蓄積はそれぞれ違います。名前の響きや「なんとなく良さそう」というイメージではなく、由来と目的で選ぶことが大切でしょう。
蜂・生物由来成分の比較
| 成分名 | 由来 | 特徴 |
|---|---|---|
| ローヤルゼリー | 働きバチの分泌物 | アミノ酸や10-HDAを含む |
| プロポリス | 樹脂と蜂の分泌物 | ポリフェノールが豊富 |
| プラセンタ | 動物の胎盤 | 豚・馬由来が中心 |
迷ったら由来と表示名で選ぶ
蜂や生物に由来する成分は名前が似ていて混同しやすいため、由来と全成分表示の名称を確認する習慣が役立ちます。ローヤルゼリーなら「ローヤルゼリーエキス」と記載されているかどうかで見分けられます。
またハチ由来の成分はアレルギーに配慮したい点も共通します。どの成分を選ぶ場合も、自分の体質と肌の様子を踏まえて、少量から試すことが失敗を避ける近道です。
まとめ
ローヤルゼリーは、働きバチが分泌して女王バチの餌になる乳白色の物質で、アミノ酸や10-HDAを含むスキンケア成分です。特徴と注意点を押さえれば、うるおいやハリの印象をととのえるケアに無理なく取り入れられます。
- ローヤルゼリーは働きバチの分泌物で、アミノ酸・ビタミン・特有の脂肪酸10-HDAを含む
- 化粧品表示名はローヤルゼリーエキスで、保湿やハリの印象を助ける成分として使われる
- コラーゲンや保湿への関わりは研究されているが、多くは基礎研究の段階にある
- アレルギーやアナフィラキシーの報告があり、喘息やアレルギー体質の方は特に注意する
- 気になる肌トラブルがある場合は自己判断せず、皮膚科を受診してください
よくある質問
参考文献
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