【徹底比較】赤ら顔「酒さ」の塗り薬それぞれの効果と副作用とは

皆さんこんにちは皮膚科医の小林智子です。

このチャンネルではスキンケアから美容医療、そして皮膚疾患まで肌にまつわる全てのことを発信しています。

今回取り上げたいのは「赤ら顔」酒さです。毎日赤ら顔でお悩みの方がたくさんクリニックにいらっしゃるんですけれども、その中でも多いのが酒さという病態です。

酒さの場合、様々な原因によってその症状が悪化するという風に言われてるんですけれども実は赤ら顔だけではありません。

例えば火照りだったりあとは化粧品が合わない、痒みを感じるといったような刺激症状だったり、それから毛穴開きだったり、顔のむくみというような症状が現れます。

なので、実際は赤みではなくこういった症状を主訴にいらっしゃる方も多くいらっしゃいます。ご自身は酒さだという風に捉えていなくても、実は酒さだというようなケースも非常に多いです。

今回はそんな酒さの症状に対して有効だとされているお薬について、その使い分けや使い方などを中心に詳しく解説したいなと思います。それでは早速行ってみましょう。

この記事は、こばとも皮膚科院長、皮膚科医の小林智子が運営するYoutubeチャンネル「こばとも先生のスキンアカデミー」内の動画内容を書き起こしたものです。Youtubeでは薬の塗り方・副作用、スキンケア方法、美容施術の種類や効果についてなど、お肌のお悩みを持つ方の少しでも助けになれればと思い動画を公開しています。ぜひチャンネル登録をお願いします！

【酒さの悪化因子】

酒さに関しては以前にも詳しく解説している動画があるんですけども、酒さを見極めるために重要になってくるのが「問診」です。

具体的にはまず悪化原因を聞いていきます。

多くの方が寒暖差だったりあとは紫外線などによって赤みなどの症状が悪化 するというような自覚症状があるんですけれども、それだけではなく例えば運動や食事などによって悪化したり、あとは ストレスによって悪化するというようなケースも多いです。

それから赤ら顔の方の中には、ステロイドやコレクチムなどの外用薬を、長期に渡って塗っているような方も多くいらっしゃいます。

これを「酒さ様皮膚炎」という風に言うんですけれども、酒さがベースにある方が、こういったお薬を使うことによってより赤みが悪化してしまうようなケースもあります。

なので問診に加えて、酒さの方に典型的な頬などに広がる紅斑だったり、あとはダーモスコピー（特殊な拡大鏡）によって毛穴の開大や毛穴周りの赤み、それから毛細血管拡張などを認める際は、酒さの可能性が高まります。

【ブツブツについて】

中には赤みだけではなく、ブツブツを認める方がいらっしゃいます。

多くの方が最初からこのブツブツがあるわけではなく、赤みが繰り返し出たり引いたりするうちに、だんだんこのブツブツが出てくるケースが多いんですけれども、このブツブツを医学的には「丘疹」と言います。

それ だけではなく膿を伴う「膿疱」を認める方もいらっしゃいます。この丘疹や膿疱に対しては塗り薬が有効です。

ブツブツには1つ「ニキビダニ」と呼ばれるデモデックスが大きく関係していると言われていて、何らかの原因によって炎症が起こったり、あとはバリア機能が低下したり肌の常在環境が変化することによって、元々私たちの肌にいるニキビダニが増殖し、炎症やバリア機能の低下をもたらしてまうと言われています。

【有効な薬①ロゼックスゲル】

このニキビダニに対して有効なお薬が主に3つあります。

その1つが「ロゼックスゲル」と呼ばれるお薬です。このロゼックスゲルには0.75%の「メトロニダゾール」と呼ばれる有効成分が配合されています。

ロゼックスゲルには抗菌作用や抗炎症作用、それから免疫調整作用があり、ニキビダニにアプローチし肌の炎症、ブツブツを改善してくれる効果が期待できます。

このロゼックスゲルなんですけれども、メリットとしてはやはりまず「保険適用」だという点が上げられます。

ロゼックスゲルは2022年酒さに対して初めて保険適用となったお薬です。

それまで は酒さに対してはイオウカンフルローションなど処方されるケースはあったんですけども、エビデンスの高いお薬というのは保険適用ではありませんでした。

そういった意味では非常に画期的なお薬で、副作用なども比較的少ないお薬となります。

ロゼックスゲルのデメリット

なので初めて酒さと診断された方は、まずこのロゼックスゲルを使用されるケースが多いのではないかなと思うですけれども、このロゼックスゲルにはいくつかのデメリットもあります。

まず1つが乾燥しやすいという点です。ロゼックスゲルはゲル基剤になっていて人によっては皮剥けしたり、あとは ガサガサしたりといった乾燥症状を認めるケースがあります。

また稀ではありますが、防腐剤などの成分でかぶれるケースも報告されています。また妊娠中の方、特に妊娠3ヶ月以内の方はロゼックスゲルは使用することができません。

これらがロゼックスゲル のデメリットにはなるんですけども、このロゼックスゲルは酒さに対して非常に画期的なお薬であることは間違いなく、まずブツブツがある方には試していただきたいお薬かなと思います。

ロゼックスゲルの使い方

使い方としては1日2回、朝と夜化粧水や乳液などを塗っていただいた後に使用していただきます。

効果に関しては大体平均で言うと、使用を開始して1ヶ月程度で効果が見られるケースが多いです。

もちろん中には、使用して数日程度で効果を感じられるというような方もいらっしゃいます。ただどちらかというと、このロゼックスゲルは効果としてはマイルドなお薬かなと思います。

【有効な薬②アゼライン酸】

次にアゼライン酸があります。これまでの報告で、酒さに対して有効だとされているアゼライン酸の濃度はおよそ15%から20%だと言われています。

DRXのAZクリアは、アゼライン酸が20%と高濃度配合されています。アゼライン酸には抗炎症作用や抗菌作用があり、メトロニダゾールと同様、酒さのブツブツに対して特に高い効果が期待できます。

アゼライン酸のメリットは、まずは妊娠中でも使えるという点です。妊娠の可能性がある方や、授乳中の方にとってもアゼライン酸は非常に使いやすい成分となります。

また、アゼライン酸には抗炎症作用や抗炎症作用に加えて、皮脂の分泌を抑える効果があります。

酒さの方には皮脂が多い方から少ない方まで、様々な肌質の方がいらっしゃるんですけれども、中には皮脂が多い方がいらっしゃっていて、そういった方はより毛穴の開大を認めやすい傾向にあります。

そういった方はこちらのアゼライン酸は非常に使いやすい成分になるのではないかなと思います。

注意点

注意点としては刺激などの副作用が挙げられます。特に使用開始して1週間程度でピリピリとした刺激症状を認めるケースが多いです。

ただこの刺激症状については、使用することでだんだん症状が薄れていくことが多いんですけれども、最初からいきなりこのアゼライン酸を使ってしまうと刺激症状で使えないというような方が一定数いらっしゃいます。

なので最初からこのアゼライン酸を使うという方ももちろん中にはいらっしゃるんですけれど、ロゼックスゲルを最初に試して効果がなかなか感じられないような場合だったり、あとはロゼックスゲルが副作用によって使えないというような方が、このアゼライン酸の適応になってくるかなと思います。

効果に関しては、メタロニダゾールと同等あるいは 少し高いという風にも言われていて、メタロニダゾールが大体使用して3ヶ月程度で効果が横ばいになるのに対して、アゼライン酸は使用すればするほどその効果が認められるというような報告もあります。

デメリット

デメリットとしては、ロゼックスゲルのように保険適用ではない点があるかなと思うんですけども、こちらのAZAクリアは1本1,980円と比較的手に届きやすい価格かなと思います。

最近ではこちらのAZクリアに加えて、グラファと呼ばれるブランドの「スキンケアエマルジョンAZ」と呼ばれるアゼライン酸が10%配合された化粧下地も販売されています。

こちらのアイテムは色付きの化粧下地になるんですけれども、SPF35 PA＋＋＋となっています。手に出してみるとこのように非常に赤みをカバーする効果が高いアイテムとなっています。

赤みの改善にVビームなどのレーザーを行うことがあるんですけども、Vビームのダウンタイムにこちらの製品を使う方も多いです。アゼライン酸もロゼックスゲルと同様、朝と夜1日2回使用いただきます。

【有効な薬③イベルメクチン】

最後にイベルメクチンと呼ばれるお薬もあります。

イベメクチンにも、メトロニダゾールやアゼライン酸と同じように抗炎症作用や抗菌作用があり、2015年にアメリカでは酒さに対して1%のイベルメクチンがFDA承認を取っています。

イベルメクチンの最大のメリットとしては、メトロニダゾールやアゼライン酸と比べてその効果がより高いという点が挙げられます。

「高い」というのはですね、メトロニダゾールなどと比べてより早く効果を認めやすいと いうことが言われてるんですけれども、例えばロゼックスゲルなどを使ってみても、なかなか効果を認めないというような方はこのイベルメクチンを使うことによって効果を認めるケースもあります。

また、ロゼックゲルはゲル基剤で乾燥感や刺激症状を感じてしまう方が一定数いらっしゃるんですけれども、こちらのイベルメクチンはクリーム基剤となっており、刺激が比較的少ないという特徴もあります。

なので人によってはイベルメクチンの方がより使いやすいことがあります。

また、このイベルメクチンはロゼックスゲルやアゼライン酸のように1日2回使用するお薬ではなく、1日1回の使用となります。

そのため1日2回だと塗り忘れてしまうというような方は、1日1回で済みますので継続しやすいというメリットもあるかなと思います。

デメリット

デメリットとしては、アゼライン酸と同様イベルメクチンも保険適用ではないという点があります。

当院ではこちらのイベルメクチンは1本4,400円で販売してるんですけれども、ロゼックスゲルやAZAクリアと比べるとやや高額になるかなと思います。

また妊婦に対してその安全性が確立されていないため、妊娠中の方や妊娠の可能性がある方はイベルメクチンではなくやはりアゼライン酸の方が安全かなと思います。

【まとめ】

この3つの薬はガイドラインなどでも強く推奨されている成分で、酒さの特に丘疹膿疱型と呼ばれるようなブツブツの症状に対して高い効果が期待できます。

ただこれらのお薬で赤みを完全に引かせるというのは難しく、ある程度使用してブツブツ感などがなくなった 時点で残る赤みに対しては、Vビームなどのパルス色素レーザーやIPLを併用していただくとその赤みの改善効果は高まります。

こばとも皮膚科ではこれらのお薬に加えて VビームやIPL、それからマイクロニードリングRFなど、様々な赤み改善のデバイスをご用意しています。

酒さの治療には特に力を入れておりますので、赤ら顔でお悩みの方は是非一度お気軽にご相談にお越しいただけたらと思います。