赤ら顔、朝は白いのになぜ？皮膚科医が教える原因と治療法

肌悩みの一つとして挙げられる顔の赤み。当院でも、赤ら顔で受診される方が非常に多いです。

メイクである程度は目立たなくできるものの、根本的に直すには悪化原因を除去して皮膚科での治療が必要となります。

この記事では、赤ら顔の原因や朝は白いのに日中赤くなる理由、皮膚科での治療方法や自宅でできる対策を解説しています。

赤ら顔の自己診断方法や間違えやすい似た症状などもまとめていますので、赤ら顔でお悩みの方はぜひ参考になさってください。

赤ら顔の基本知識【症状】

赤ら顔は、健康な人では暑さ寒さなどの環境変化や、感情の変化に対する生理的な反応として起こります。

ただし、このような変化がなくても顔の赤みが目立つケースがあり、赤ら顔の症状や程度、悪化するタイミングは人によって違いがあります。

赤ら顔とは

赤ら顔は、その名の通り顔の赤みが目立つ状態です。皮膚の浅い部分にある血管が拡張して表面から透けて見えるため、顔が赤くなったり肌が炎症して赤みを帯びたりします。

30～50代の女性に好発しやすい「酒さ」と呼ばれる皮膚疾患であるケースも多くみられます。

ただし、赤ら顔＝酒さという訳ではありません。

赤みが気になる部分としては、頬や鼻、おでこやあごなどが一般的です。

単なる赤ら顔で重大な疾患とは言えないのでは？治療は必要ないのでは？と考える方もいますが、コンプレックスとなってしまったり、顔の赤みのせいで人と会うのが怖くなってしまったりしている方も少なくありません。

赤ら顔の症状チェックリスト

顔の広範囲に広がる赤み（紅斑）があったり、赤みとともにほてりやピリピリとした感覚を認めたり、ニキビのようなブツブツ（丘疹・膿疱）があるときは、赤ら顔である可能性が高いです。

肌が敏感になっていて、合わないスキンケアアイテム（かゆみや刺激感を認める）が多く、敏感肌用の化粧品でないと使えない場合もあります。

赤ら顔は皮脂が多い方もいれば少ない方もいますが、毛穴周りに赤みがあったり毛穴が開いていたりする方は皮脂の多さが特徴です。

また、皮膚がゴワゴワと厚くなったり、顔にむくみが生じたりする方もいます。

どんな人がなりやすい？

皮膚が薄い人や肌の色が白い人、肌バリア機能が低下している人は赤ら顔になりやすい傾向があります。

もともとの体質として皮膚が薄い人や肌の色が白い人は、皮膚内部の血管が透けて見えやすいです。また、肌バリア機能が低下している人は、ちょっとした刺激でも皮膚や血管が反応してしまい赤みが目立ってしまう傾向があります。

赤ら顔になる理由【原因】

治療やご自身でのケアを行って赤ら顔を改善するためには、原因をきちんと見極めるのが大切です。

朝は白いのに赤くなる理由

日中は赤ら顔の悪化因子が多いため、朝は白くても活動する時間になると顔が赤くなりやすいです。

赤ら顔では、朝は白いのに時間の経過とともに顔が赤くなるパターンも見受けられます。

起きた直後は自宅といった同じ環境下に長時間居たため、温度や湿度の変化、感情の変化やストレスなどが少なくて赤みが落ち着いている状態です。

一方、活動を始めると悪化因子による刺激が加わって血管が拡張し、顔の赤みが目立ってくるようになります。

紫外線の影響

紫外線は赤ら顔の最も大きな悪化原因の一つです。

赤ら顔ではない方であっても、紫外線を浴びると肌が傷ついて炎症が起き、血管が拡張します。

顔の赤みやブツブツは炎症を起こしている状態ですが、紫外線の影響でさらに炎症が悪化するため肌の赤みが増してしまいます。

紫外線は季節を問わず午前7時頃から増えて、午前9時頃になると急増します。曇りの日であっても快晴時の約6割程度の紫外線がありますので、気づかないうちに紫外線を浴びているケースも少なくありません。

生活習慣の影響

激しい運動や香辛料の多い食事、ストレスを溜め込むなどの生活習慣は、赤ら顔を悪化させます。

激しい運動を日常的に行う、スパイスや熱いものをよく食べる、ストレスを抱えやすい生活をしているなどの場合は顔の赤みが悪化しやすく、過剰な摂取は血管が拡張して戻らないケースもあるため注意しなければなりません。

また、洗顔時にゴシゴシとこするような洗い方やスクラブなどの摩擦も、肌が炎症する原因となります。

遺伝的な要因

赤ら顔の方は、家族にも同じような症状を認めるケースも少なくありません。

赤ら顔は、環境的な要因だけでなく、遺伝的な要因も組み合わさって発症・悪化します。祖父母や両親、兄弟などの血縁者に赤ら顔の方がいる場合、そうでない方に比べて赤ら顔になるリスクが高いです。

また、肌質や体質などの生まれつきの要素も赤ら顔に関わっています。

遺伝的な要因はご自身ではどうしようもない部分もあるのですが、家族に赤ら顔の方がいる場合はご自身が赤ら顔になりやすいことを認識して、正しい予防対策を行うようにしましょう。

これって赤ら顔？【自己診断】

顔が赤くなる疾患は、意外とたくさんあります。原因や症状によってどの疾患に当てはまるのかが分かれば、治療もスムーズです。

赤ら顔の主な種類

赤ら顔の主な種類には、酒さや酒さ様皮膚炎、毛細血管拡張症があります。

疾患名	特徴
酒さ	ほてりを伴う顔の赤みで、ブツブツが現れるケースも。はっきりとした原因は解明されていないが、紫外線や香辛料、激しい運動などが悪化因子になる。
酒さ様皮膚炎	ステロイド外用薬が原因で赤みやブツブツが現れる。ステロイドの長期使用による副作用。
毛細血管拡張症	毛細血管が拡張して元に戻らなくなる。細かな木の枝状のチリチリとした血管が透けて見える。小鼻周りに限定されるものから、広範囲に及ぶものまでさまざま。

赤ら顔のなかでも酒さは、大きく4つのサブタイプに分けられます（古典的病型分類）。

日本人では紅斑毛細血管拡張型や丘疹膿疱型の酒さが多いですが、いくつかの病型を同時に認めるときもあります。

鼻瘤型は比較的少ないものの、鼻の毛穴目立ちが気になって来院されたところ、実際は初期の鼻瘤型酒さであった方もいます。

間違えやすい似た症状（鑑別を要する疾患）

間違えやすい似た症状には、接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などがあります。

ただし、赤ら顔は顔面に生じる赤み全般を指しますので、鑑別が必要な似た疾患も赤ら顔と呼ばれることがあります。

鑑別を要する理由は、治療方法の違いです。間違った診断・治療をしてしまうと、顔の赤みが悪化するケースもあります。

ここでいう「赤ら顔」にはステロイド外用薬はNGですが、下記の疾患ではステロイド外用薬が有効なものも多いです。

顔の赤みで来院する方から「これは赤ら顔ですか？ニキビですか？」といった質問をよく受けますが、ほてりや毛穴の詰まり、毛細血管の拡張があるかどうかなどを基準に見分けます。

赤ら顔（酒さ）ではほてりと毛細血管の拡張がありますが、ニキビにはほてりがないか、あっても軽度で毛穴の詰まり（コメド）を認めます。

また、同じ赤ら顔のような症状を呈する疾患でも、接触性皮膚炎や脂漏性皮膚炎、ニキビなどでは朝だけ白くなることはほとんどないです。

皮膚科を受診するタイミング

赤ら顔は、赤みが出たり引いたりするうちにブツブツが出てくる、赤みが消えずに定着してしまうようになるという経過を辿るケースも少なくありません。

はじめのうちは何らかの要因で一時的に赤くなっただけのように感じますが、段階的に進行してしまう場合もあるため早めの対応が必要です。

「時間が経てば赤みが引くから」「そのうち治るだろう」と軽く考えずに、顔の赤みが気になったタイミングで皮膚科医に相談してみましょう。

赤ら顔の治し方【治療】

赤ら顔の治療には、外用薬や内服薬、美容医療の3つがあります。

原因や症状によって適した治療法が異なりますので、皮膚科できちんと診断してから一人ひとりに合った治療計画を立てます。

皮膚科での治療の流れ

外用薬 → 内服薬 → レーザー（Vビーム）・IPL（BBL）・マイクロニードリングRF（ポテンツァ）

皮膚科での赤ら顔の治療は、いきなりレーザーやIPLを行うというより、まずは塗り薬から始めます。

はじめにロゼックスゲルやアゼライン酸などの外用薬を塗り、ブツブツが多い、広範囲にあるといったときや外用薬で症状が改善しない場合は、外用薬と内服薬の併用を検討します。

外用薬や内服薬を使用して残った赤みに対しては、VビームやIPL、ポテンツァなどの美容医療を行うときもあります。

ただし、チリチリとした血管を認める毛細血管拡張症は外用薬や内服薬からではなく、はじめからVビームでの治療を行うのが一般的です。

保険が使える治療・使えない治療

保険が使える治療：ロゼックスゲル（外用）・抗菌薬（内服）・一部Vビーム（レーザー）

赤ら顔の一種である酒さに対して保険適用となっているのは、ロゼックスゲル（外用薬）と抗生物質の内服薬（ミノマイシン・ビブラマイシン）のみです。

アゼライン酸やブリモニジンといった外用薬、イソトレチノインの内服、VビームやIPL（BBL）などの美容医療は保険が使えません。

ただし、美容医療のなかでもVビームは、毛細血管拡張症に対して保険が使えます。

保険	治療法
適用	ロゼックスゲル（外用） ミノマイシン（内服） ビブラマイシン（内服） Vビーム※
適用外	アゼライン酸（外用） ブリモニジン（ミルバソゲル・外用） オキシメタゾリン（外用） イソトレチノイン（内服） Vビーム IPL（BBL） ポテンツァ

治療にかかる期間と費用

治療期間：数カ月～1年程度
治療費用：数万円～30万円程度

外用薬は効果が出るまでに最低でも1～2カ月程度はかかり、治療を終えるまでの期間は長いと1年近くかかる場合もありますので、根気強い継続が必要です。

ブツブツが伴う酒さに有効なイベルメクチンは比較的早く効果が現れるものの、それでも効果が現れるまで3週間ほどはかかります。

内服薬は外用薬に比べてやや短い期間で効果を実感できますが、イソトレチノインによる凸凹の改善は数カ月～半年が一つの目安です。

レーザーやIPLといった美容医療は約1カ月ごとに複数回の施術が必要ですので、半年～1年程度は見ておくと良いでしょう。

症状や治療方法にもよりますが、赤ら顔を改善するためには総額数万円～30万円程度の費用がかかります。

VビームやIPLなどの美容医療は1回の施術が高めのため、予算とどの程度赤みを抑えたいかを総合して検討すると良いかと思います。

家でできる対策【予防】

赤ら顔では、治療以外に悪化因子の除去とスキンケアといったご自身でできる対策も非常に重要となります。

皮膚科で治療を行っていても悪化因子が除去できていないと改善するまでにかなり時間がかかってしまったり、いちど良くなってもまた赤みが戻ってしまったりしやすいので、お家でできる対策をしていきましょう。

スキンケアのポイント

赤ら顔の方のスキンケアは「とにかくシンプルなケア」が大前提です。

赤ら顔の方は肌のバリア機能が低くなっていて、バリア機能を高めると症状を軽減できることが分かっています¹⁾。

赤ら顔の方におすすめのスキンケア成分は、バリア機能を高めるセラミドやナイアシンアミド、抗炎症作用のあるトラネキサム酸やアラントインです。

たくさんのアイテムを使うとそれだけ刺激も増えますので、最小限のアイテムで保湿を行うようにします。

また、たっぷりの泡で優しい洗顔を心がけ、pHにも着目して弱酸性の洗顔料を選ぶと良いでしょう。

人の肌はもともと弱酸性で、健康な肌であれば洗顔で一時的にアルカリ性に傾いても30分かからずに自然に弱酸性に戻る機能（中和能）が働きますが、赤ら顔の人はアルカリ性に傾くと弱酸性に戻りにくいです。

アルカリ性の肌は刺激に敏感になって炎症や肌トラブルを引き起こしますので、常に肌の表面を弱酸性に保つのが大切です。

食事で気をつける点

食事では、辛いものや熱いもの、アルコールの摂取を抑えるようにします。

唐辛子や黒コショウなどのスパイスは、赤ら顔を悪化させるトリガーです。また、熱いものを食べたり飲んだりすると顔の赤みが悪化することも分かっていて、アルコールを頻繁に摂取すると赤ら顔が進行しやすい傾向があります。

また、過酸化酸素は赤みを悪化させますし、ブツブツを伴う赤ら顔（丘疹膿疱型の酒さ）の方は腸内環境に異常が見られるケースが多いと分かっています²⁾。

そのため、オメガ3脂肪酸（DHA・EPA）やハーブティーなどの抗酸化成分、腸内環境を整える発酵食品や水溶性食物繊維などを積極的に摂るようにするのがおすすめです。

生活習慣の見直し方

サウナ・激しい運動などの血行が良くなる行動のあとは赤みが強く出やすいです。

一時的な赤みの悪化であり、赤ら顔でない人であっても赤みが出るのが一般的ですが、赤ら顔の人では頻繁に行うと赤みが残るケースがあるため注意が必要です。

寝不足やストレスも赤ら顔の悪化原因となりますので、規則正しい生活やストレスの発散を意識しましょう。

赤ら顔のQ&A【よくある質問】

ここでは、赤ら顔の方からよくいただく質問への答えをまとめています。

化粧はして良い？

赤ら顔の方は、基本的にはお化粧をしても問題ないです。ただ、肌に刺激感があったり症状が悪化するようなアイテムは避けるようにしてください。

また、ブツブツの程度がひどいときには、アイブロウや口紅などのポイントメイクのみにするといった工夫も大切です。

赤みに効果的なナイアシンアミドが含まれた下地も販売されていますので、そういったものを使用するのも良いかと思います。

お酒は飲めない？

アルコールの適量は体質によって人それぞれで、どのくらい飲んだら赤ら顔が悪化してしまうかも人によって違いがあります。

付き合い程度の軽い飲酒であれば問題とならない方も多いですが、お酒を大量に飲んだり頻繁に飲んだりすると顔の赤みが増すため量と頻度に気をつけつつ、できる限り避けた方が無難です。

完治する？

赤ら顔の原因によっては完治するまでに時間がかかったり、新たに血管が拡張してしまったりする場合があります。そのため、「完治する」とは言い切れないのが正直なところです。

ただ、適切な治療と悪化因子の除去を行うと、ほとんどの方で症状が大幅に軽減できます。根気強い治療が必要という点を認識しながら、皮膚科での治療とご自身でのケアを行うと良いでしょう。

まとめ

赤ら顔の原因は一つではなく、環境や体質、遺伝など複数の要素が絡み合っています。

治療には時間がかかる傾向がありますが、まずはしっかりと皮膚科で診断してもらい、ご自身に合った治療を行っていくのが大切です。

また、紫外線や温度、食べ物や生活習慣が赤ら顔を悪化させるトリガーとなりますので、悪化因子を排除する取り組みを実践していきましょう。

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