ほくろから毛が生えるのは、ほくろの中や近くに、毛をつくる毛包という組織があるためです。気になる毛は、毛抜きで抜くより、はさみで短く切るほうが皮膚を傷つけずにすみます。
毛の生えたほくろも除去できますが、取った後に毛が残ることもあります。また、毛が生えているかどうかで、良性か悪性かは決まりません。
この記事では、毛が生える理由、抜く・切るときの注意点、除去する場合の方法と気をつけたい点を解説しています。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ほくろから毛が生えるのは、毛を作る組織があるため
ほくろの中や近くに毛包という毛を作る組織があると、その表面から毛が伸びます。毛が伸びることと、ほくろ自体が変化することは別です。
色のある部分にも毛の生える場所がある
一般に、ほくろは母斑細胞と呼ばれる細胞の集まりです。一方、毛は皮膚の中にある毛包で作られ、毛穴を通って表面に出てきます。
つまり、毛を作っているのは毛包で、ほくろの細胞とは別です。色のついた部分と毛が出る場所が重なるため、「ほくろから毛が生えている」と見えます。ほくろの盛り上がりの中央から生える場合も、端の近くから出る場合もあります。
この違いを押さえると、表面の毛だけを切ってもほくろの色が残る理由が分かります。
| 見えているもの | 皮膚の中で関係するもの | 処理したときの違い |
|---|---|---|
| ほくろの色や盛り上がり | ほくろの細胞(母斑細胞)の集まり | 毛を切ってもほくろは残る |
| 表面に伸びた毛 | 毛包で作られた毛 | 切っても毛包が働けばまた伸びる |
周りの産毛より太く長くなることもある
ほくろのある部分に、周囲の産毛より目立つ毛が生えることも、見られる変化の1つです。とくに、生まれつきあるほくろでは、毛が太く長くなる多毛が見られます。
ただ、これは赤ちゃんの生まれつきのほくろの話で、大人になってからできたほくろには当てはまらないこともあります。毛の太さを見るだけでは、ほくろがいつできたか、どのくらい深いかは見分けられないのが実際です。
1本だけが目立つと気になりやすいものですが、除去するかは、ほくろ自体の状態と手入れの負担に合わせて相談できます。
毛の長さとほくろの大きさは別に確かめる
毛が伸びて目立つことと、ほくろ自体が大きくなることは別の変化です。鏡で見るときは、毛先の位置だけでなく、色のついた範囲や盛り上がりにも目を向けると区別しやすくなります。
たとえば、長い毛を切ったら前と同じ形に見えるなら、目立って見えたのは毛のせいです。
一方、毛を整えても、ほくろ自体が広がっていたり色が変わっていたりするなら、ほくろを診てもらいましょう。毛の手入れだけで様子を見続けるより、いつから変わったかを伝えて受診するほうが確実です。
ほくろから毛が伸びたら、抜くより短く切る
毛抜きを使いたくなる長さでも、日常の手入れには短く切る方法が向きます。毛を引き抜くと、毛穴や周囲の皮膚に傷がつき、赤みや痛みの原因になるためです。
抜くと毛穴の周りに炎症が起こりうる
毛抜きで抜くときに引っ張られるのは、毛だけでなく、ほくろのある皮膚も同じです。そのときにできた小さな傷から細菌が入り、毛穴のまわりが炎症を起こす(毛包炎)ことがあります。
毛包炎では、赤いぷつぷつや押したときの痛みが見られ、膿がたまる場合もあります。また、毛が途中で切れると、残った毛を取ろうとして何度も皮膚をつまみやすくなります。ほくろが盛り上がっている部分では、毛と一緒に皮膚を挟むことにも注意が必要です。
抜いたあとの刺激を繰り返すより、表面に出た毛の長さを整えるほうが、毛穴を引っ張る負担を減らせます。
1回抜いたことだけで、がんになったと決めつけない
すでに毛を抜いてしまっても、それでほくろががんになるわけではありません。抜いた直後の赤みや痛みは、まず傷や炎症によるものと考えられます。
ただし、「抜いた刺激のせい」と自己判断すると、もともと起きていたほくろの変化を見落とすことがあります。毛を抜く前から色や形が変わっていた場合や、処理を休んでも出血やただれが続く場合は、皮膚科で相談してください。抜いた時期と、その前後に気づいた変化が診察の参考になります。
不安から毎日つまんだり、強く押して確かめたりすると、皮膚への刺激がさらに増えます。
毛だけが気になっても、処理方法は選ぶ
表面の毛を整える目的なら、ほくろへの刺激が少ない方法から選ぶのが基本です。肌を滑らかにしようとして根元ぎりぎりまで処理すると、皮膚まで傷つけやすくなります。
| 処理の方法 | 気をつけたい点 | 日常の手入れでの判断 |
|---|---|---|
| はさみで切る | 刃がほくろに当たると傷になる | 皮膚から離れた毛先だけを整える |
| 毛抜きで抜く | 毛穴の傷や炎症につながる | 繰り返し抜かない |
| カミソリで剃る | 盛り上がりを削るおそれがある | ほくろの上に直接刃を当てない |
また、家庭用の光美容器をほくろへ直接当てる自己処理は避けてください。光脱毛後には、ほくろの見た目や拡大して見える特徴が変化した例があります。ただし、これは悪性化を示した研究ではなく、長期の影響はまだ分かっていません。
ほくろの毛をはさみで整えるときの注意点
短く切る場合も、深追いは禁物です。皮膚から出た部分だけを、ほくろに刃が触れない位置で切ると、傷をつける危険を減らせます。
根元を狙わず、毛先を少し残す
毛を切るときは、清潔で先の丸い小さなはさみが使いやすいです。明るい場所で鏡を見ながら切ると、毛とほくろの境目が見やすくなります。
毛は引っ張り上げず、皮膚から離れた部分で切ってください。根元を完全に見えなくしようとするより、少し残すほうが皮膚との距離を保てます。短い毛を無理につまむと皮膚を傷つけるおそれもあるため、短い間は触らずにおくほうが安全です。
- 処理前に道具の汚れを落とし、明るい場所で鏡を使います。
- 毛先が見える長さになってから、皮膚との間隔を保って切ります。
- 刃を近づけにくい場所や、手元が安定しないときは処理を休みます。
目の近くや自分で見えにくい位置では、無理に道具を近づけず、診察で手入れの方法を相談するほうが安全です。
赤みや傷がある間は、毛の処理を休む
抜いた後に赤くなっていたり、皮膚がめくれていたりしたら、見た目を整えるより皮膚を休ませるのが先です。洗うときも強くこすらず、いつもどおりやさしく洗う程度で十分です。
もし小さな傷から出血したら、清潔なガーゼなどを当てて、しばらく続けて押さえてください。何度もめくって確認すると、止まりかけた出血が再び始まることがあります。傷の表面にできたかさぶたも、無理にはがすと治りを妨げます。
押さえても血が止まらない、赤みや腫れが広がってきた、というときは受診のタイミングです。
処理の間隔は毛の長さと皮膚の状態で決める
切る間隔は、毛の伸び方と皮膚の状態に合わせて決められます。目立つ長さになり、皮膚に赤みや傷がないときに整える方法なら、無理なく続けやすい手入れです。
切った直後に毛が太く見えるのは、先細りだった毛先が切れて、断面が見えることも理由です。毛を切る行為は皮膚の外に出た部分の処理であり、毛を作る組織を取り除く処置とは異なります。そのため、同じ場所から再び伸びることは自然な経過です。
毎日の確認や手入れが負担になってきたら、その困りごとも受診時に伝えてください。毛だけが気になるのか、ほくろの形も変えたいのかで、相談したい内容が具体的になります。
毛が生えたほくろも、診察を受けてから除去できる
毛が生えているほくろでも、状態によっては取ること自体は可能です。ただ、取り方は毛があるかどうかでは決まらず、ほくろの大きさや深さ、悪性を疑う変化があるかで変わります。
最初にほくろそのものを診察で確かめる
取り方を決めるときは、ほくろの大きさや場所に加えて、悪性を疑う変化がないかも確認します。診察では、ダーモスコピーという拡大鏡で、肉眼では分かりにくい色や模様を見ます。
毛が生えていても、良性と断定できるわけではありません。悪性、つまり皮膚のがんが疑われる場合は、美容目的の処理を進める前に、切り取った組織を顕微鏡で調べる病理検査などが優先されます。レーザーの熱で組織を取り除くと検査用の組織を残しにくいため、処置前の診断が重要です。
受診時には、いつからあるか、最近変わったかに加えて、毛を抜いたり傷つけたりした時期も伝えると、変化の経過が分かりやすくなります。
切除とCO2レーザーは、傷と検査の条件も異なる
外科的切除は、ほくろを切り取る方法で、傷を糸で縫い合わせる場合があります。一方、CO2レーザーは、炭酸ガスレーザーの熱で組織の水分を蒸発させ、ほくろを削る方法です。CO2レーザーによるほくろ除去の経過もご参照ください。
| 方法 | ほくろへの処置 | 毛が気になる場合の注意点 |
|---|---|---|
| 外科的切除 | 組織を切り取る。病理検査に出せる | 毛を作る組織が残るかは、切り取る範囲しだい |
| CO2レーザー | 熱でほくろの組織を取り除く | 毛が生えなくなることは保証できない |
どちらも傷跡が残る治療で、出血や感染、色素沈着などのリスクがあります。色素沈着は、傷が治る過程で皮膚に茶色っぽい色が残ることです。治療後に問題となりうるのは、切除では線状の傷跡、CO2レーザーでは凹みや白っぽい跡です。
当院で行っているほくろ除去は、保険診療の外科的切除と、自由診療のCO2レーザーです。保険診療の対象になるかを判断する基準は、毛の有無ではなく症状や診断です。治療の流れは、当院のほくろ除去のページで案内しています。
毛をなくす希望と、ほくろを取る希望を分けて伝える
「ほくろを取りたい」という言葉だけでは、毛もなくしたいという希望は伝わりにくく、毎回毛を切るのが負担なのか、色や盛り上がりも気になるのかを言葉にすると、治療後に望む状態が伝わります。
ただし、毛をなくすために広く深く取ればよいとは限らず、傷跡との兼ね合いがあります。毛の処理の負担を減らす希望と、目立つ傷を避けたい希望の両方を、診察時に伝えてください。除去後に残りうるものまで説明を受けると、治療を受けるか判断しやすくなります。
肌の色が濃い人の顔のほくろを、拡大鏡で見ながら浅く削る方法では、仕上がりがよく、再発も少なかったという報告があります。ただ、調べた人や方法が限られているため、切除やCO2レーザーでも同じ仕上がりになるか、毛が生えなくなるかは、まだ分かっていないのが現状です。
除去したあとも毛が伸びることはある?
毛を作る組織が残っていると、ほくろを取った後も毛は伸びてきます。毛がまた生えてきたのか、ほくろの色が戻ってきたのかは、別々に見てもらいましょう。
表面の色が取れても毛包が残る場合がある
ほくろの細胞と、毛を作る組織は同じではありません。色のある部分を取り除いても、その下や周囲に毛包が残って働いていれば、毛が再び伸びる場合があります。
そのため、毛が生えたという事実だけで、ほくろの除去が失敗だったと決めるのは早すぎます。逆に、毛が見えなくなったことだけで、ほくろの細胞まで完全になくなったと判断することも困難です。治療した部分の色や形、傷の治り方も合わせた確認が必要です。
毛が残った場合の対応も、まずは傷の状態を確かめてからです。
同じ場所への色の戻りは、毛の再生と分ける
ほくろの細胞が残ると、除去後に同じ場所へ再び色が出ることがあります。このような変化は再発母斑と呼ばれ、浅く削って取ったあとにも報告されています。
| 気づいた変化 | 関係するもの | 相談するときに伝える内容 |
|---|---|---|
| 毛がまた伸びてきた | 残った毛包 | 毛が出た位置と、傷の状態 |
| 茶色や黒っぽい色が戻った | ほくろの再発や、傷あとの色の変化など | 色が出た時期と広がり方 |
浅く削る方法で分かった再発のしやすさが、ほかの除去方法にも当てはまるとは言い切れず、再発する割合もはっきりした数字は出ていない状況です。受ける方法とほくろの状態に合わせて、医師から見通しを聞いてください。
切り取った組織を検査した結果は、後で色が戻ってきたときにも、比べる材料として使えます。
傷が治るまでは、伸びた毛にも触りすぎない
治療直後の皮膚は傷が治る途中のため、毛抜きやカミソリによる刺激を避ける時期です。毛が見えても引っ張らず、処理を再開できる時期は治療を受けた医療機関へ確認してください。
傷の保護に使うテープや塗り薬は、処置の内容と傷の状態に合わせて使い方が変わります。毛が気になるという理由でテープを何度もはがすことは、周囲の皮膚にも負担です。見た目の変化が気になる場合は、自分で触る回数を増やすより、写真などで経過を残すほうが診察で伝えやすくなります。
傷が落ち着いたあとも毛の処理が負担なら、その時点のほくろの残り方と傷跡に合わせて、今後の手入れを相談できます。
毛の有無より、ほくろ自体の変化に注意
受診の目安は、毛の有無よりも、ほくろの色や形の変化です。変化がなく毛だけが気になる場合は、皮膚を傷つけない手入れを続けながら、希望に合わせて除去を相談できます。
毛が生えていることを安心の根拠にしすぎない
ほくろが良性か悪性かは、色や形、変わり方などをまとめて見て判断します。「毛が生えているから大丈夫」と決めつけず、前の状態と比べて変わっていないかを見るほうが大切です。
- ほくろの色や形、大きさが以前と変わってきています。
- 毛を抜いたり傷つけたりしていないのに、出血やただれが起きている状態です。
- 処理を休んでも、痛みや赤みが続いています。
こうした変化があっても、それだけで悪性と決まるわけではありません。ただし、見た目の自己判断を続けるよりも、皮膚科で原因を確かめることが必要です。毛が生えているという理由で、受診を先延ばしにしないでください。
処理前後の変化が分かると相談しやすい
受診前には、毛を抜いた日や、赤みが出た時期をメモしておくと経過が伝わります。昔の写真にほくろが写っていれば、もとの色や大きさを比べる資料になります。
ただし、写真は以前の様子を診察時に伝えるための補助資料です。撮影の明るさや距離でも見え方が変わるため、良性・悪性の判断は実際の皮膚の状態を見たうえで行われます。撮るために毛を抜いたり、かさぶたを取り除いたりすると、新たな傷が加わって判断しづらくなります。
受診当日は、毛が生えた普段の状態のままで大丈夫です。
困りごとは、毛の処理だけでも相談できる
「毛が1本気になるくらいで受診していいのかな」と迷うかもしれませんが、毎日の手入れで困っているなら、受診して大丈夫です。見た目の悩みに加えて、何度も傷つく、処理するたびに赤くなる、といったことも話してみてください。
診察を受けたうえで、ほくろは取らずに毛を切る手入れを続けることもできます。取りたい場合は、取った後に毛が残るかもしれないことや、傷跡が残る可能性を聞いてから決めましょう。ほくろに変化がないかを見てもらうことも、見た目を整えたいという相談も、同じ診察でできます。
よくある質問
- ほくろから生える毛は、抜くと濃くなりますか?
-
抜いたあとに濃く見えたという変化だけで、毛抜きが毛を太くしたとは判断できません。見えている毛の長さや生え替わる時期で、印象が変わることがあります。濃さを抑えるために繰り返し抜くより、短く切るほうが毛穴への負担を減らせます。
- ほくろから生える毛は、白くても除去できますか?
-
毛が白いほくろも、ほくろ自体の状態に応じて除去できます。傷跡が残ることも含めて判断する点は、黒い毛が生える場合と共通です。白い毛もなくしたい場合は、色のあるほくろを取る希望とは分けて相談してください。
- ほくろから生える毛は、抜けたら危険ですか?
-
毛が1本抜けたという事実だけで、危険なほくろとは判断できません。毛には生え替わりがあり、自然に抜けることもあります。一方、毛の変化とともにほくろが大きくなる、出血するといった変化があれば、皮膚科で相談してください。
- ほくろから生える毛は、ほくろを取れば必ずなくなりますか?
-
ほくろを取ったあとも、毛を作る組織が残れば毛は生えます。毛を生えなくすることまで希望する場合は、処置前にその希望を伝え、できる範囲と傷跡のリスクを確かめてください。毛が再び出た場合も、傷が落ち着くまでは自己処理を控えるのが基本です。
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