052-228-1280 WEB予約 LINE予約

丹毒(たんどく)

丹毒(たんどく、erysipelas)とは皮膚の細菌感染症の一つで、顔面や下肢などに腫れ、痛みを伴う赤みを突然認めるのが特徴です。

丹毒では多くの場合、A群β溶血性レンサ球菌が原因菌となります。

この記事では丹毒について詳しく解説していきましょう。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

丹毒(たんどく)の症状

丹毒は皮膚の真皮における皮膚感染症です。皮膚にできたわずかな傷から原因菌が侵入し、突然発熱を伴う境界明瞭な腫れや、痛み赤みを顔面や下肢などに認めます。

発症の1〜2日前に発熱が始まることが多く、リンパ節の腫脹があり、皮疹は急速に拡大し表面は張りを持って光沢を伴うのが特徴です。

丹毒(たんどく)の原因・リスクファクター

丹毒は細菌感染症の一つで、最も一般的な原因菌は、A群β溶血性連鎖球菌です。顔面の丹毒のほとんどがこの菌によるもので、下肢などの他の部位では異なる細菌が原因となることがあります。

丹毒のリスクファクター

丹毒は皮膚の傷から侵入することが多く、いくつかのリスクファクターがあります。

  • リンパ浮腫
  • 虫刺され
  • うっ滞性潰瘍
  • 動静脈瘻
  • 肥満
  • コントロール不良の糖尿病

丹毒(たんどく)の診断・チェック方法

丹毒の診断は、視診や触診による臨床診断によって行われます。それに加え、前駆症状(発熱や悪寒など)の有無や皮膚外傷の有無、下肢潰瘍の既往などを問診によって確認することに。

血液検査を行うこともありますが、白血球やCRPの上昇など、一般的な感染所見を認める程度で、臨床的な診断がより大切です。

血液培養は通常陰性のため行うことはありませんが、潰瘍がある患者さんや免疫不全の患者さんでは敗血症のリスクを考慮して行われることがあります。

蜂窩織炎との鑑別

丹毒と最も鑑別が必要なのは、蜂窩織炎です。丹毒は真皮の皮膚感染症で境界が明瞭なのに対し、蜂窩織炎はより深部に病変があり境界が不明瞭な点で異なります。

その他、顔面の丹毒では帯状疱疹や接触皮膚炎などがあり、下肢の丹毒では血栓性静脈炎、深部静脈血栓などが鑑別疾患です。

自己チェック方法

丹毒は自宅で完全に診断することはできませんが、以下のような症状が現れたときは丹毒が疑われるため、早めに皮膚科を受診してください。

  • 皮膚の赤みや腫れ: 一般的に、急激に顔などが赤く腫れ上がり、触ると熱を感じることが多い。
  • 痛み:病変部位は触れるだけで痛みを伴うことが。
  • 発熱や倦怠感: 丹毒は全身の症状を引き起こすことも。

丹毒(たんどく)の治療薬

丹毒は皮膚に起こる細菌感染症であるため、治療として抗菌薬の投与が行われます。

抗菌薬

丹毒の初期段階では、主に経口抗生物質が処方されますが、症状が進行している場合や重症のときには、静脈内投与が選択されることもあります。

原因菌であるA群β連鎖球菌に対しては、ペニシリンが第一選択薬です。また、黄色ブドウ球菌など他の細菌が原因の場合もあり、疑わしいときには第一世代セフェム系抗菌薬が投与されます。

抗菌薬治療の際の注意点

抗菌薬治療を受ける際には、いくつかの点に注意してください。

  • 抗菌薬は医師の指示に従って正確に服用。
  • 副作用が現れた場合は、速やかに医師に報告。
  • 抗菌薬の使用により、腸内環境が乱れ、下痢などの症状を引き起こすことも。

丹毒(たんどく)の治療期間

丹毒の治療期間には個人差がありますが、一般的には症状の改善が見られるまで1週間〜2週間程度のことが多いです。

ただし、重症だったり合併症があるときは、治療期間が長くなる可能性があるため、必ず医師の指示に従ってください。

引用元:https://www.your-doctor.net/derma_atlas/index.php?id=2

薬の副作用や治療のデメリット

丹毒の治療に用いられる抗菌薬には副作用やデメリットを伴うことがあります。

抗菌薬の副作用・デメリット

抗菌薬の副作用やデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 胃腸障害: 抗菌薬は胃腸の働きを乱し、下痢、吐き気、嘔吐などが起こる。
  • アレルギー反応:発疹、かゆみ、時にはアナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)を引き起こすことがあり、特にペニシリン系抗生物質に対しては注意が必要。
  • 耐性菌:長期間または繰り返し抗菌薬を使用することで、耐性菌が発生しやすくなり、将来、抗菌薬が効かない感染症が増えるリスクに繋がる。
  • 再発の可能性:完全に治癒したと思われても、丹毒は再発することがあるので、基礎疾患をお持ちの方や免疫力が低下している方は、再発のリスクが高まる。

保険適用の有無について

丹毒(たんどく)の治療には保険が適用されますが、治療費は、抗菌薬の種類や内服期間などによって異なります。

詳しくはお問い合わせください。

参考文献

Karakonstantis S. Is coverage of S. aureus necessary in cellulitis/erysipelas? A literature review. Infection. 2020 Apr;48:183-91.

Ren Z, Silverberg JI. Burden, risk factors, and infectious complications of cellulitis and erysipelas in US adults and children in the emergency department setting. Journal of the American Academy of Dermatology. 2021 May 1;84(5):1496-503.

Brindle RJ, O’Neill LA, Williams OM. Risk, prevention, diagnosis, and management of cellulitis and erysipelas. Current Dermatology Reports. 2020 Mar;9:73-82.

Drerup C, Eveslage M, Sunderkoetter C, Ehrchen J. Diagnostic value of laboratory parameters for the discrimination between erysipelas and limited cellulitis. JDDG: Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft. 2020 Dec;18(12):1417-24.

Li A, Wang N, Ge L, Xin H, Li W. Risk factors of recurrent erysipelas in adult Chinese patients: a prospective cohort study. BMC Infectious Diseases. 2021 Dec;21:1-7.

Sapuła M, Krankowska D, Wiercińska-Drapało A. In search of risk factors for recurrent erysipelas and cellulitis of the lower limb: a cross-sectional study of epidemiological characteristics of patients hospitalized due to skin and soft-tissue infections. Interdisciplinary perspectives on infectious diseases. 2020 May 7;2020.

Yildirim¹ DG, Seven MB, Gönen S, Söylemezoğlu O. Paediatric rheumatology Erysipelas-like erythema in children with familial Mediterranean fever. Clin Exp Rheumatol. 2020;38(127):S101-4.

Michael Y, Shaukat NM. Erysipelas. InStatPearls [Internet] 2023 Aug 7. StatPearls Publishing.

Mamo A, Szeto MD, Sivesind TE, Dellavalle RP. From the Cochrane Library: Interventions for the prevention of recurrent erysipelas and cellulitis. Journal of the American Academy of Dermatology. 2022 Nov 1.

Madeira ES, Figueredo LN, Pires BM, Souza SR, Souza PA. Potential factors associated with increased chance of erysipelas recurrence. Acta Paulista de Enfermagem. 2022 Mar 11;35:eAPE02822.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次