甲状腺髄様癌とは、甲状腺内に存在する「傍濾胞細胞(C細胞)」と呼ばれる細胞から発生する悪性腫瘍のことであり、他の甲状腺がんと比べて発生母地や性質が異なる特徴をもつ疾患です。
甲状腺にできる主な腫瘍の中でも発生頻度は比較的低い部類に入り、家族性と散発性に大きく区別されますが、早期に的確な対応を行わないと首のリンパ節や遠隔臓器に転移しやすい場合があります。
特にカルシトニンやCEA(がん胎児性抗原)などの腫瘍マーカーを上昇させることが多いため、検査を活用して早期発見や再発チェックに活かします。
甲状腺髄様癌の病型
甲状腺髄様癌は、甲状腺内でホルモン生成を担う濾胞細胞とは異なる傍濾胞細胞に由来し、カルシトニンを過剰に産生する特徴を持ちます。
甲状腺癌と一口にいっても、一般的に多い乳頭癌や濾胞癌とは発生母地や病態が異なるため、同じ甲状腺腫瘍でも性質や治療方針が変わってくる点が大きな特徴です。
散発性と家族性
甲状腺髄様癌は散発性が多い一方で、全体の約2~3割は家族性とされ、家族性甲状腺髄様癌の背景としては、RET遺伝子変異が関係することが多く、MEN2(多発性内分泌腺腫瘍症2型)の一環として発症する場合も含まれます。
家族性の場合は、兄弟姉妹や子どもが同じ遺伝子変異を持っている可能性があるため、遺伝カウンセリングが推奨されます。
散発性と家族性の特徴
分類 | 発生率 | 関連する遺伝的要素 | 合併症のリスク |
---|---|---|---|
散発性 | 約7割 | 特定の遺伝子変異は少ない | 家族性と比べて単独発症が多い |
家族性 | 約2~3割 | RET遺伝子変異が高頻度 | MEN2AやMEN2Bとの関連がある |
MEN2AとMEN2B
家族性甲状腺髄様癌は、MEN2A(甲状腺髄様癌、副甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫の合併)やMEN2B(甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、粘膜神経腫などの合併)として認められる場合があります。
これらの症候群では、甲状腺だけでなく副腎や副甲状腺など、体内のホルモン分泌に関わる組織全般に異常を生じる可能性が高いです。
病期分類
甲状腺髄様癌は、腫瘍の大きさやリンパ節転移、遠隔転移の有無によってTNM分類が行われ、ステージ(病期)が決まります。より早期に発見されるほどリンパ節転移や遠隔転移が少ないため、手術による根治を期待しやすいです。
進行した場合にはリンパ節への広範囲の転移や肺・肝臓・骨などへの遠隔転移が確認されることもあり、追加治療の検討が必要になります。
細胞学的特徴
髄様癌細胞はアミロイド沈着を伴うことが多く、病理検査で赤色に染色されるアミロイド沈着を確認することで診断がつくことがあります。
加えて、カルシトニンの産生による腫瘍マーカーの上昇やCEA値の上昇も、このがんの大きな指標となるのが特徴です。
病型による特徴
病型 | 主な特徴 | リスク要因 |
---|---|---|
散発性甲状腺髄様癌 | 単発で発生、周囲リンパ節転移が比較的多い場合もある | RET遺伝子変異は少なくても起こる |
家族性甲状腺髄様癌 | MEN2A、MEN2Bとして複数の内分泌腺異常を伴うことが多い | RET遺伝子変異の存在 |
MEN2A | 副甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫のリスクを含む | RET遺伝子変異の特定領域 |
MEN2B | 粘膜神経腫や体型の特徴(Marfanoid habitus)、褐色細胞腫なども | RET遺伝子の変異が強く関連 |
症状
甲状腺髄様癌は初期において明確な症状を呈さないことが珍しくなく、首にしこりを触れて検査を受けた結果、偶然発見されるケースもあります。
ただし、腫瘍が大きくなるに従って周囲組織への圧迫やホルモン分泌異常による症状が認められる場合があります。
首のしこり
甲状腺領域に腫瘤ができるため、首の前側にしこりを感じることがあり、左右どちらかに偏ったしこりや、左右ともに腫れを感じるなど、個人差があります。
触って硬さを感じたり移動性を感じたりすることがあり、しこりは痛みを伴わない場合が多いです。
リンパ節腫脹
甲状腺髄様癌はリンパ節転移が比較的早期に生じ、首のリンパ節が腫れてくる場合があり、特に頸部リンパ節の腫脹として触知されることが多く、進行に伴い複数のリンパ節に転移が認められることもあります。
ホルモン異常による症状
傍濾胞細胞がカルシトニンを産生するため、過剰なカルシトニンが体内に放出されると、下痢や便通異常、まれに高カルシトニン血症による骨代謝異常が発生する可能性があります。
下痢が原因不明かつ長期的に続く場合、甲状腺髄様癌の可能性を念頭に置いて検査を受ける方もいます。
ホルモン異常の具体的影響
- 長期の下痢
- 骨量の変化や骨粗鬆症リスクの上昇
- 血中カルシウム濃度に影響が及ぶ場合がある
声の変化や呼吸困難
腫瘍が大きくなると気管や反回神経などを圧迫する恐れがあります。
声帯を支配する反回神経に障害が及べば声がかすれる変化(嗄声)が出ることがあり、気道を圧迫すれば呼吸が苦しくなることがありますが、これは比較的進行した状態であることが多いです。
全身症状
進行例では倦怠感や食欲不振、体重減少などの全身状態の低下がみられ、腫瘍が他の臓器へ転移すると、その臓器特有の症状が加わります。
症状の主な特徴
症状 | 関連原因 | 発生段階の目安 |
---|---|---|
首のしこり | 腫瘍そのものの増大 | 初期~中期 |
リンパ節の腫れ | リンパ節転移 | 進行度による |
下痢などの消化器症状 | カルシトニンの過剰分泌 | 中期以降 |
声のかすれ | 反回神経圧迫 | やや進行した段階 |
全身倦怠感 | 腫瘍の増大や転移による全身状態の悪化 | 中期~末期 |
甲状腺髄様癌の原因
甲状腺髄様癌の原因には、遺伝子変異の存在が大きく影響しており、家族性と散発性でやや様相が異なります。その他にも一般的に甲状腺に関連する発がんリスクとして、放射線被曝などが挙げられる場合もあります。
RET遺伝子変異
家族性の場合、RETと呼ばれる遺伝子に変異があり、これが甲状腺髄様癌の直接的原因として機能します。RET遺伝子は受容体型チロシンキナーゼのひとつであり、細胞増殖や分化に関わる重要なシグナル伝達路の一部です。
この遺伝子に変異が起こると細胞増殖シグナルが過剰に活性化し、髄様癌を含む腫瘍を生じやすくなります。
RET遺伝子変異の種類と特徴
項目 | 内容 |
---|---|
MEN2A関連変異 | 副甲状腺機能亢進症や褐色細胞腫を併発しやすいRET遺伝子の特定領域変異 |
MEN2B関連変異 | 粘膜神経腫などの特徴を持つ病型に関係するRET変異 |
散発性の変異 | 家族性ほどの高率ではないが、一部散発性症例でも検出される場合がある |
散発性の要因
散発性甲状腺髄様癌ではRET遺伝子変異がないケースもあり、詳細な発症メカニズムは明らかではありません。しかしながら、他の甲状腺がんと同様に放射線被曝や環境因子、偶発的な遺伝子変異の蓄積などが関連する可能性が示唆されています。
放射線被曝
小児期に頭頸部への放射線照射を受けた場合、甲状腺に生じる各種がんのリスクが高まるとされ、髄様癌にも一定の影響がある可能性があります。ただし、乳頭癌など他の甲状腺がんほど放射線被曝との関連は顕著ではないと報告されています。
その他の環境因子
甲状腺がん全般において、ヨウ素の摂取量や生活習慣がどれほど直接影響するかは明確ではなく、飲酒や喫煙などはあくまで全身の健康リスクを高める要因であり、甲状腺髄様癌との直接的な強い関連は確立されていません。
ただし、生活習慣の乱れや免疫バランスの崩れは間接的な発がんリスクを増す可能性もあります。
主な原因要素と関わりの深さ
要素 | 甲状腺髄様癌との関わり | 備考 |
---|---|---|
RET遺伝子変異 | 家族性髄様癌に強く関与 | MEN2AやMEN2Bとしての発症リスク |
散発性の偶発変異 | 原因不明だが遺伝子変異の蓄積が推定 | 甲状腺がんの中でも頻度が低め |
放射線被曝 | 髄様癌への影響はあまり顕著でない | 乳頭癌や濾胞癌には強い関連が指摘される |
環境因子・生活習慣 | 間接的な免疫影響や全身リスクの増大 | 直接的要因としては確立されていない |
検査・チェック方法
甲状腺髄様癌は他の甲状腺がんとは異なる性質をもち、カルシトニンやCEAなどの腫瘍マーカーが診断に役立つため、血液検査や超音波検査、CT、MRI、場合によっては遺伝子検査を含む多角的な検査が行われます。
早期に正確な診断をつけることで、効果的な治療方針を決定しやすくなります。
触診と超音波検査
甲状腺や頸部リンパ節に腫れがないかどうか、触診で確認した後、超音波検査(エコー)により腫瘤の大きさや内部の構造、血流量を調べます。
超音波検査は放射線被曝のない検査方法として、甲状腺領域の初期評価に非常に有用で、異常なエコー所見が確認された場合、細胞診や血液検査に進むことが多いです。
血液検査(カルシトニン・CEA)
甲状腺髄様癌に特徴的なのが、カルシトニンの値が高くなる点で、加えてCEAも上昇することが多く、これら2つのマーカーが同時に上昇している場合は、髄様癌を強く疑います。
治療後の経過観察においても、カルシトニンやCEAが再び上昇していないかどうかをチェックすることで再発の早期発見に有用です。
主な血液検査項目と特徴
項目 | 意義 | 正常値の範囲 |
---|---|---|
カルシトニン | 髄様癌の腫瘍マーカー、進行度と相関する場合も | 男女や施設で異なるが数pg/mL程度 |
CEA | 消化器がんでも上昇するが髄様癌でも高値になりやすい | 5ng/mL以下が目安 |
穿刺吸引細胞診
エコーで見つけた甲状腺結節に細い針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査です。
細胞レベルで悪性の所見があるかどうかを確認でき、髄様癌ではアミロイド沈着や特有の形態を示す細胞が見られることがあり、確定診断に大きく貢献します。
画像検査(CT、MRI、シンチグラフィー)
腫瘍の広がりやリンパ節転移、遠隔転移の有無を把握するためにCTやMRIが活用されます。また、骨転移を疑う場合は骨シンチグラフィー、肺転移を疑う場合は胸部CTなど、症状や疑われる転移部位に応じて検査を追加します。
代表的な検査の種類と目的
検査 | 主な目的 |
---|---|
超音波検査 | 甲状腺の結節やリンパ節の状態を評価 |
血液検査(カルシトニン、CEAなど) | 髄様癌疑いの腫瘍マーカー測定 |
穿刺吸引細胞診 | 細胞学的に髄様癌の特徴を確認 |
CT/MRI | 腫瘍の広がり、リンパ節や遠隔転移の評価 |
骨シンチグラフィー | 骨転移の有無をチェック |
遺伝子検査
家族性が疑われる場合や若年発症でMEN2AやMEN2Bを疑うケースでは、RET遺伝子変異の有無を調べるための遺伝子検査が実施されることがあります。
家族性の場合、他の家族にも同じ変異があるかどうかを調べることで、将来的な予防的甲状腺摘出術などの対策が検討されます。
甲状腺髄様癌の治療方法と治療薬について
甲状腺髄様癌の治療は、外科的手術が第一の選択肢となるケースが大半です。腫瘍の広がりやリンパ節転移の状況に応じて、甲状腺全摘やリンパ節郭清が行われます。
手術以外にも進行度に応じて放射線治療や分子標的薬を含む内科的治療が検討されることがあります。
外科的手術(甲状腺摘出術)
髄様癌の標準的な治療は、甲状腺全摘または準全摘に加えて、周辺リンパ節の郭清を行う方法が中心です。
リンパ節転移が認められる場合、広範囲にリンパ節を切除することで再発リスクを下げることを目指します。また、家族性の場合は、早期に予防的に甲状腺を摘出する選択肢が示唆されることがあります。
手術の種類と範囲
- 甲状腺全摘:甲状腺を全て摘出する
- 甲状腺準全摘:片葉を残す場合などがまれにある
- リンパ節郭清:頸部中央や外側のリンパ節を状況に応じて切除
分子標的薬
甲状腺髄様癌はRET遺伝子変異が関わることから、特定の分子標的薬が開発されていて、バンデタニブやカボザンチニブなどが代表的で、進行性で手術が難しい症例や再発・転移を認めた場合に使用される可能性があります。
これらは腫瘍の増殖シグナルを抑える効果が期待できる一方、副作用として下痢、皮膚トラブル、肝機能障害などが起こる場合があるため、注意深い経過観察が欠かせません。
化学療法
髄様癌に対しては、一般的ながんで使われる化学療法剤が必ずしも高い効果を示すわけではありませんが、進行例や再発例で他の選択肢が限られる場合に、化学療法を考慮します。
効果は限定的とされることが多く、分子標的薬との併用や臨床試験などを通じて治療戦略を組み立てる場合もあります。
放射線治療
髄様癌には放射線治療の効果が乳頭癌などに比べて低い傾向があるとされ、積極的に単独で行われることは少ないです。局所制御のために手術後に補助的に行う例や、病変が取り切れない場合に局所症状の緩和を目的に検討される場合があります。
治療薬
薬剤名 | 概要 | 対象となる状態 |
---|---|---|
バンデタニブ | RETチロシンキナーゼ阻害薬としての分子標的薬 | 進行性の甲状腺髄様癌、再発例 |
カボザンチニブ | マルチキナーゼ阻害薬、RETを含む複数のシグナルに作用 | 手術不能・転移性髄様癌など |
一般的化学療法剤 | シスプラチンなど | 総合的評価で他に選択肢が乏しい場合 |
甲状腺髄様癌の治療期間
甲状腺髄様癌の治療期間は、病期や進行度、術後の状態、再発リスクなどによって大きく異なります。基本的には手術を行った後、定期的にフォローアップを続け、カルシトニンやCEAの値をモニタリングする流れです。
手術から術後の経過
初期の段階で発見された場合、甲状腺全摘とリンパ節郭清を行い、術後の入院は1~2週間程度になるケースが多いです。術後経過が安定すれば退院が可能ですが、首の傷の回復や合併症管理、甲状腺ホルモン補充の調整などが必要になります。
代表的な術後経過の流れ
- 術後数日~1週間:創部管理や合併症の監視、甲状腺ホルモン補充開始
- 術後2週間程度:退院可能なことが多い
- 退院後:外来フォローでカルシトニン、CEA、甲状腺ホルモン値の定期チェック
分子標的薬の投薬期間
進行例や再発例で分子標的薬を用いる場合、目立った腫瘍増大がコントロールされる間は継続することが多いため、長期投与となるケースが少なくありません。
効果や副作用のバランスを見ながら投薬期間を調整しますが、場合によっては半年以上から年単位での使用を行うことも想定されます。
術後の定期検査期間
甲状腺髄様癌は再発時にカルシトニンやCEAが上昇しやすいため、術後もこれらマーカーの測定を定期的に行いながら、画像検査でリンパ節や遠隔転移の有無を確認していきます。
フォローアップの間隔は最初の数年は3~6か月に1回程度、それ以降は年1回程度など、リスク評価に基づき設定することが大切です。
術後フォローアップの頻度と期間
時期 | フォロー内容 |
---|---|
術後1年目 | 3~6か月に1回程度の外来受診、腫瘍マーカー測定や超音波検査 |
術後2~5年 | 半年~年1回程度のフォロー、必要に応じCTなど詳細検査 |
術後5年以降 | 年1回程度のフォローが多く、状況によっては2年に1回など |
副作用や治療のデメリットについて
甲状腺髄様癌の治療において、主に使われる分子標的薬や化学療法、手術そのものに伴うデメリットを理解し、副作用の管理や合併症の予防をしっかり行うことが必要です。
分子標的薬の副作用
RETチロシンキナーゼ阻害薬などの分子標的薬は、下痢、皮膚障害(発疹や手足症候群など)、高血圧、肝機能異常などが代表的な副作用です。投薬中は定期的に血液検査や画像評価を行い、副作用が強い場合は休薬や減量を検討します。
分子標的薬の代表的副作用
- 皮膚障害(発疹、紅斑など)
- 消化器症状(下痢、嘔気)
- 高血圧
- 肝障害(AST、ALT上昇)
- 甲状腺機能異常の増悪など
手術に伴うリスク
甲状腺全摘手術では、声帯を支配する反回神経や副甲状腺が近接しているため、術後に声がかすれたり、副甲状腺の機能低下による低カルシウム血症が起きたりする可能性があります。
これらは熟練した外科医による丁寧な操作で回避または最小限に抑えられる場合もありますが、まったくリスクがゼロになるわけではありません。
化学療法の副作用
化学療法が必要となる進行例や再発例では、一般的ながん治療薬による副作用として脱毛や吐き気、骨髄抑制による白血球減少(感染リスク増)などが想定されます。
分子標的薬と化学療法を併用する場合には、複数の副作用が重なることもあるため、主治医や看護師と綿密に相談しながら進めることが大切です。
合併症と生活の質
副甲状腺が傷ついた場合にはカルシウム代謝異常が起こり、手足のしびれやけいれん症状が出る可能性があり、長期的には甲状腺ホルモンが十分に分泌されないため、ホルモン補充が生涯にわたって必要になるケースもあります。
こうした点を理解したうえで、日常生活を整え、定期的にフォローアップを受けることが望ましいです。
治療によるデメリット
デメリット | 内容 |
---|---|
分子標的薬の副作用 | 皮膚障害、高血圧、下痢、肝機能障害など |
手術リスク | 声帯麻痺、副甲状腺機能低下、創部感染など |
化学療法の副作用 | 脱毛、悪心、骨髄抑制など |
長期管理の必要性 | 術後ホルモン補充、定期的な再発チェックが欠かせない |
甲状腺髄様癌の保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
手術費用
甲状腺全摘やリンパ節郭清にかかる費用は、病院の規模や入院期間などで異なりますが、保険適用後でも数万円から数十万円程度かかります。
個室などを選ぶかどうかでも差が出るため、手術前におおまかな見積もりを主治医や医療機関に相談すると安心です。
分子標的薬の費用
分子標的薬(バンデタニブ、カボザンチニブなど)は1か月あたりの薬剤費が高くなる傾向があり、保険適用後でも数万円から10万円以上かかるケースもあります。
進行度が高い状態で長期投与が必要になると、経済的負担が大きくなるため、医療機関の相談窓口や社会福祉制度を利用することを検討してください。
分子標的薬の保険適用後費用
薬剤名 | 1か月あたりの自己負担目安 | 備考 |
---|---|---|
バンデタニブ | 数万円~10万円程度の幅 | 用量や各施設の薬価で変動 |
カボザンチニブ | 同程度~やや高額になる場合がある | 副作用モニタリングも欠かせない |
検査費用
血液検査(カルシトニン、CEA)、超音波検査、CT、MRIなども保険診療の範囲内です。1回の検査で数千円から1万円程度かかることが多く、術後のフォローアップで半年に1回や年1回のペースで複数回行う場合、その都度費用が発生します。
入院費
手術が必要な場合や高用量の薬物治療を入院で行う場合、1日あたり数千円から数万円の入院費が追加でかかり、大部屋か個室かなど、病室の選択によっても費用が変動します。
保険適用後費用の目安
項目 | 目安の自己負担 |
---|---|
甲状腺全摘手術+入院 | 10万~30万円程度(病院規模や入院日数次第) |
分子標的薬(1か月分) | 数万円~10万円程度 |
定期検査(血液、画像など) | 数千円~1万円前後/回 |
以上
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