ネリゾナ（ジフルコルトロン吉草酸エステル）｜ステロイド外用薬

ネリゾナ（ジフルコルトロン吉草酸エステル）は、アトピー性皮膚炎など皮膚に関するさまざまな疾患対して扱われるステロイド外用薬の一つです。

皮膚に生じたかゆみや腫れなどの炎症症状を抑える作用があります。

今回の記事では、ネリゾナについて詳しく解説していきましょう。

ネリゾナの有効成分と効果、作用機序

有効成分

ネリゾナの主要な有効成分は「ジフルコルトロン吉草酸エステル」です。これは、合成ステロイドの一種で、皮膚疾患の炎症や腫れをやわらげる効果が確認されています^１)。

日本ではジフルコルトロン吉草酸エステルがそれぞれ0.1%配合された軟膏、ユニバーサルクリーム、クリーム、ソリューションの4つの剤型があり、ユニバーサルクリームは軟膏とクリームの中間的な位置付けです。

ネリゾナの有効成分

成分表	濃度	効果の強さ
ジフルコルトロン吉草酸エステル	0.1%	very strong

ステロイドは強さにより5段階にランクが分かれています。ネリゾナはそのうち、上から2番目の「とても強い(very strong)」クラスです。

作用機序

ジフルコルトロン吉草酸エステルは、細胞の核内にあるステロイド受容体に結合することにより、炎症反応や免疫応答を調節します²⁾。

これにより、炎症を引き起こす物質の産生が抑制されたり、強い血管収縮作用をもたらすことで皮膚の赤み、腫れ、かゆみなどの症状を緩和。

効果

ネリゾナは皮膚の炎症や免疫応答の調節により、

• 炎症の軽減：皮膚の赤みや腫れ、熱感の改善。
• かゆみの緩和：掻痒感など不快感の改善。

といった効果をもたらし、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などの症状を緩和します³⁾。

参考文献 

1) Aayushi BM, et al. Topical steroids in dermatology: An overview. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2016;82(4):371-378.
2) Kragballe K. Topical corticosteroids: mechanisms of action. Acta Derm Venereol Suppl (Stockh). 1989;151:7-10; discussion 47-52. 
3) Leung DY, et al. Update on glucocorticoid action and resistance. J Allergy Clin Immunol. 2003;111(1):3-22; quiz 23.

ネリゾナの使用方法と注意点

ネリゾナの効果を最大限もたらすためには、適切に使用することが大切です。

使用方法

ネリゾナは、通常1日1～3回、患部に塗布⁴⁾。

剤型は4種類あり、軟膏、ユニバーサルクリーム、クリーム、ソリューションの順で伸びがよくなり、同時に保湿度が下がります⁵⁾。

医師の指示を超えての使用は推奨されておりません。適切な量を塗布しましょう。

使用量について

ステロイドの使用量は、通常「FTU（フィンガーチップユニット）」という単位がよく用いられます。1FTUとは軟膏を人差し指の第一関節から指先まで出した量（およそ0.5g）で、1FTUで手のひら2枚分の面積をカバー。

適切な量より少ないと十分に効果を得られない可能性があります。

注意点

ネリゾナを使用する際の注意点は以下となります。

ご不明な点や心配ごとのある場合は、医師や薬剤師に相談してください。

参考文献

4) 添付文書 医療用医薬品: ネリゾナ　6.用法及び用量
5) SK Rathi, et al. Rational and Ethical Use of Topical Corticosteroids Based on Safety and Efficacy. Indian J Dermatol. 2012;57(4):251–259.

適応対象となる患者さん

ネリゾナはさまざまな皮膚疾患に対して有効な薬ですが、すべての患者さんに適応されるわけではありません。ここではネリゾナの適応について解説していきます。

主な適応疾患

ネリゾナが適応される代表的な皮膚疾患の一部です⁶⁾。

疾患名	詳細説明
アトピー性皮膚炎	乾燥肌を特徴とする、慢性のかゆみを伴う炎症疾患
接触皮膚炎	特定の物質に接触することで起こる炎症炎
乾癬	赤く、鱗屑（りんせつ）を伴う皮膚の変化が特徴的な慢性炎症疾患
掌蹠膿疱症（しょうせきのうほうしょう）	手のひらや足の裏に小さい膿疱を認める慢性疾患
痒疹（ようしん）	強い痒みを伴う孤立した結節病変が多発する疾患

ネリゾナは、主にアトピー性皮膚炎などの湿疹・皮膚炎、乾癬、掌蹠膿疱症などの患者さんに適応となります。

ネリゾナはvery strongクラスのステロイド外用薬として分類され、比較的症状の重い湿疹の症状緩和に有効という報告が⁷⁾。

湿疹の急性増悪時などでstrong以下のステロイド外用薬やタクロリムス軟膏といった非ステロイド外用薬での治療が十分な効果を示さない場合に、very strongのネリゾナにランクアップするケースもあります。

注意点

ネリゾナの使用に関しては、以下のような事項に注意してください。

ネリゾナの突然の使用中止により、抑制されていた症状が再燃する可能性があります。適応や使用に関して疑問がある場合は主治医に相談してください。

参考文献

6) 添付文書 医療用医薬品: ネリゾナ　4.効能または効果
7) SJ Lax, et al. Strategies for using topical corticosteroids in children and adults with eczema. Cochrane Database Syst Rev. 2022; 2022(3): CD013356.

お子さま、ご高齢の方への使用

ネリゾナは、お子さまやご高齢の方に関して、使用に際する注意点がいくつかあります。

お子さまへの使用

小児の皮膚は大人と比べて薄く、敏感です。そのためステロイド外用薬の吸収が増加する可能性があります⁸⁾。特に顔や陰部などは吸収率が高いためネリゾナの使用に制限が。

ネリゾナをお子さまに使用する際は、医師の指示に従い、必要最小限の量を決められた期間に使用することが推奨されます。

小児のネリゾナ使用時の注意点

項目	詳細
用量	小児の場合限局的な使い方が多く、使用量は大人よりも少ないことが多い
使用部位	顔や腋窩、陰部などは特に薬の吸収が高く、避けるよう指示される
使用頻度	1日1回から数日に1回と、使用頻度が限られることも

ご高齢の方への使用

ご高齢の方は、皮膚の老化から皮膚が薄くなったり乾燥しやすくなるため、ステロイド外用薬の反応が変わることがあります⁹⁾。特に顔面など皮膚の薄い部位に対する使用には注意が必要です。

ご高齢のネリゾナ使用時の注意点

項目	詳細
用量	皮膚の薄さや体の機能に応じて、用量を調整することが推奨
使用部位	薄くなった皮膚や乾燥しやすい部位は特に注意が必要
使用頻度	副作用のリスクを考慮し、必要最低限の使用が推奨

ネリゾナは、適切な使用により、多くの皮膚の症状や疾患の治療に有効ですが、お子さまやご高齢の方においては、特に注意深く使用することが求められます。疑問や不安がある場合は、主治医に相談してください。

参考文献 

8) Eichenfield LF, et al. Guidance of care for the management of atopic dermatitis. Part 2: Management and Treatment of Atopic Dermatitis with Topical Therapies. J Am Acad Dermatol. 2014;71(1):116-132. 
9) Farage MA, et al. Clinical implications of aging skin: cutaneous disorders in the elderly. Am J Clin Dermatol. 2009;10(2):73-86. 

ネリゾナの治療期間

ネリゾナは多くの疾患に有効ですが、治療期間は患者さんの体質や症状の重さに応じて異なります。長期の使用は副作用が出やすいので注意が必要です¹⁰⁾。

使用については必要最小限にとどめ、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症疾患の場合は症状の改善を認めたら非ステロイド外用薬に変更するなど考慮します。

参考文献

10) Coondoo A, et al. Side-effects of topical steroids: A long overdue revisit. Indian Dermatol Online J. 2014;5:416-425.

ネリゾナの副作用や注意点

主な副作用

ネリゾナの使用により、一部の患者さんに以下のような副作用が現れることが報告されています^11)〜13)。

副作用	説明
皮膚の菲薄化	長期使用によって皮膚が薄くなり、特に顔や首などに認めやすい
毛細血管拡張	顔を中心に細かい血管が浮き出てくるのを長期使用によって認める
ステロイドざ瘡	ぶつぶつとした丘疹を認める
皮膚感染症	カンジダ、伝染性膿痂疹、毛嚢炎などの皮膚感染症が起こりやすい
アレルギー反応	赤み、かゆみ、腫れなどのアレルギー性接触皮膚炎を認めることが
全身性副作用	ホルモンの異常や高血圧、糖尿病などを引き起こすことがまれに
眼症状	まれに、緑内障や白内障などの副作用を特に眼周りの塗布で認める

上記の副作用は一般的なものであり、これら以外にもさまざまな副作用が起こることがあります。異常を感じた場合はすぐに医師や薬剤師に相談してください。

注意点

ネリゾナを使用する際には、以下の点に注意してください。

参考文献 

11) Hengge UR, et al. Adverse effects of topical glucocorticosteroids. J Am Acad Dermatol. 2006;54(1):1-15. 
12) Niculet E, et al. Glucocorticoid-Induced Skin Atrophy: The Old and the New. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020;13:1041-1050.
13) Beck KM, Set al. Ocular co-morbidities of atopic dermatitis. Part II: Ocular disease secondary to treatments. Am J Clin Dermatol. 2019; 20: 807-815.

ネリゾナで効果がなかった場合の対応

ステロイド外用薬のネリゾナは多くの皮膚疾患の治療に効果的ですが、全ての患者さんにおいて同様の効果が得られるわけではありません。

効果が不十分な場合や、副作用を懸念される場合の対応について説明しましょう。

ネリゾナの適応ではない疾患の可能性

白癬などの皮膚感染症である場合、ステロイドの外用によって症状が悪化することがあり、そのような場合はもう一度診察し、診断を再考します。

強力なステロイド外用薬への切り替え

ネリゾナよりも強力なステロイド外用薬への切り替えも一つの選択肢で、

・クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)

・ジフロラゾン酢酸エステル(ダイアコート)

などがあります¹⁴⁾。

ただし、これらの薬も副作用のリスクが伴うため、医師の指示のもとで適切に使用してください。

代替治療を試す

アトピー性皮膚炎や乾癬などの疾患では紫外線療法や内服薬などが効果的なことがあります。外用薬だけで効果がみられなかった場合、内服薬や注射薬が考慮されることも。

副作用などによってネリゾナが使用できなかった際は、他の強さのステロイド外用薬や非ステロイド外用薬へ変更することを考えます。

以下の非ステロイドの抗炎症薬は、いずれもアトピー性皮膚炎で保険適用です¹⁵⁾。

・タクロリムス軟膏（プロトピック軟膏）

・デルゴチニブ軟膏（コレクチム軟膏) 

・ジファミラスト軟膏（モイゼルト軟膏)

これらの治療薬はステロイド薬とは作用機序が違うため、毛細血管拡張などのステロイドによる副作用はありませんが、ステロイドとは異なる副作用が出現する可能性があります。

必ず専門医の診察を受け、指示された通りに使用してください。

参考文献 

14) 佐伯秀久ら.日本皮膚科学会ガイドライン;アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021
15) Ruzicka T, et al. A short-term trial of tacrolimus ointment for atopic dermatitis. European Tacrolimus Multicenter Atopic Dermatitis Study Group. N Engl J Med. 1997;337(12):816-21. 

他の治療薬との併用禁忌

ネリゾナに対して併用禁忌となる薬剤は現在のところありません。しかし、他のステロイド薬との併用は副作用のリスクを上げる可能性があり推奨されません。

使用する際は必ず他のステロイド外用薬の有無を医師に伝え、適切な指示を受けてください。

また、アトピー性皮膚炎や乾癬などの疾患ではステロイド外用薬以外の内服薬や紫外線療法などを併用することによって、ステロイド外用薬の使用量を減らすことができます。

保険適用について

アトピー性皮膚炎や乾癬などネリゾナが保険適用となる疾患はたくさんあります。具体的な適応疾患については添付文書をご覧ください。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057682#par-4

薬価は、ネリゾナの軟膏、ユニバーサルクリーム、クリームはいずれも19.3円/g、ソリューションも19.3円/mlです。

タイプ	薬価に基づく薬の価格
軟膏	5g/本:96.5円(3割負担で約30円)　10g/本:193円(3割負担で57.9円)　30g/本:579円(3割負担で173.7円)
ユニバーサルクリーム	5g/本:96.5円(3割負担で約30円)　10g/本:193円(3割負担で57.9円)　30g/本:579円(3割負担で173.7円)
クリーム	5g/本:96.5円(3割負担で約30円)　10g/本:579円(3割負担で173.7円)
ソリューション	10ml/本:579円(3割負担で173.7円)

保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要です。

この他、初診料あるいは再診療、処置代などがかかります。詳しくはお問い合わせください。