シアバターは、アフリカに育つシアの木の種子から採れる植物性の油脂で、体温付近でとろけるやわらかなテクスチャーが特徴です。乾燥が気になる肌にうるおいのふたをする保湿ケア成分として、古くから親しまれてきました。
肌表面を保護して水分の蒸発をやわらげるエモリエントとしての働きが、シアバターの魅力といえるでしょう。精製と未精製の違いや、酸化・使用期限といった注意点を知っておくと、より安心して使えます。
この記事では、シアバターとは何かという基本から、期待できる効果、顔やハンドケアでの使い方、デメリットや注意点まで、皮膚科専門医監修のもとでわかりやすく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
シアバターとは ― シアの木の種子から採れる植物性油脂
シアバターは、西アフリカに自生するシアの木の種子に含まれる脂肪分を取り出した天然の油脂です。常温では固形ですが、肌にのせると体温でなめらかに溶け、うるおいの膜をつくります。
原料はシアの木の実、学名はVitellaria paradoxa
シアバターの原料は、アカテツ科の高木であるシアの木(学名Vitellaria paradoxa)の果実の中にある種子です。この種子の仁を砕いて加熱・圧搾し、油脂分を取り出したものがシアバターになります。
現地では何世紀にもわたり、肌や髪の手入れに使われてきた歴史があります。日本の化粧品では「シア脂」「シアバター」といった名称で全成分表示に記載されるのが一般的です。
主成分はステアリン酸とオレイン酸という2つの脂肪酸で、産地によって両者の比率が変わります。西アフリカ産はステアリン酸が多く固めに、東アフリカ産はオレイン酸が多くやわらかめになる傾向が報告されています。
体温でとろける融点とテクスチャーの秘密
シアバターの融点はおおよそ32〜45度前後とされ、ちょうど体温に近い温度帯で溶けはじめます。手のひらにとってしばらく温めると、固形からオイル状へとなめらかに変化するのはこのためです。
この「体温でとろける」性質が、肌なじみのよさと使い心地の軽さにつながっています。固形のまま保存でき、必要な分だけ溶かして使える点も扱いやすさの一つといえるでしょう。
精製シアバターと未精製シアバターは何が違う?
シアバターには、精製されたタイプと未精製(アンリファインド)のタイプがあります。未精製は原料に近い状態で、独特のナッツのような香りと淡いベージュ色を残しているのが特徴です。
未精製にはビタミンEなどの微量成分がより多く残る一方、香りや色が製品によって安定しにくい面があります。精製シアバターは脱色・脱臭の工程を経るため、色や香りが穏やかで使いやすく、テクスチャーも均一になりやすいとされています。
研究では、精製の工程を経るとトコフェロール(ビタミンE)やステロールといった抗酸化に関わる微量成分が減少することが示されています。どちらが優れているというより、香りの好みや使う部位に合わせて選ぶのが現実的です。
シアバターの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Vitellaria paradoxa |
| 科名 | アカテツ科 |
| 原産地 | 西アフリカ |
| 採取部位 | 種子(仁) |
| 主な脂肪酸 | ステアリン酸、オレイン酸 |
| おおよその融点 | 32〜45度前後 |
シアバターに期待できる肌への効果
シアバターに期待できる効果の中心は、肌表面をやわらかく保ち水分の蒸発をやわらげるエモリエント作用と保湿です。あわせて微量成分による抗酸化・抗炎症の働きも研究で報告されています。
水分の蒸発をやわらげるエモリエント作用
シアバターの最大の持ち味は、肌表面に油分の膜をつくって水分の蒸発を抑えるエモリエント作用です。角質のすき間を油分で満たし、肌をなめらかにととのえる働きと考えるとイメージしやすいでしょう。
乾燥した肌はうるおいが逃げやすい状態にあります。シアバターのような油脂でふたをすると、肌のうるおいをとどめやすくなり、かさつきやごわつきをやわらげる手助けになると考えられています。
湿疹のある肌を対象にした臨床研究では、シアバター抽出物を配合したクリームがエモリエントとして受け入れられ、かゆみや生活の質の面で好ましい変化がみられたと報告されています。バリアが乱れた肌を穏やかに保護する用途に向いた成分といえます。
乾燥からうるおいを守る保湿効果
エモリエント作用と重なりますが、シアバターには肌のうるおいを守る保湿効果が期待されています。皮膚のバリア機能が低下すると水分が逃げやすくなるため、油分でふたをする働きが役立ちます。
アトピー性皮膚炎に対する外用保湿剤を検討した総説でも、皮膚を保護しうるおいを保つ保湿剤はスキンケアの土台として位置づけられています。シアバターはその選択肢の一つとして活用されてきました。
ただし、セラミドやヒアルロン酸のように角質層へ水分を抱え込むタイプの成分とは働き方が異なります。シアバターは「水分を与える」より「与えたうるおいを逃がさない」役割で捉えると、ケアの組み立てがしやすいでしょう。
微量成分による抗酸化・抗炎症の働き
シアバターの油脂以外の微量成分には、トコフェロール(ビタミンE)やトリテルペン類が含まれます。これらが抗酸化や穏やかな抗炎症の働きに関わると研究で報告されています。
シア脂に含まれるルペオールなどのトリテルペン類には、炎症に関わる物質の産生を抑える方向の作用が実験レベルで示されています。ただしこれは基礎研究の段階が中心で、肌トラブルを治療する目的の成分ではありません。
シアバターの主な働きと関連成分
| 期待される働き | 関わる成分 | 作用の特徴 |
|---|---|---|
| エモリエント | ステアリン酸、オレイン酸 | 肌表面を保護し水分蒸発をやわらげる |
| 保湿 | 油脂全体 | うるおいのふたとしてバリアを補助 |
| 抗酸化・抗炎症 | トコフェロール、トリテルペン | 穏やかな補助的作用として報告 |
シアバターの使い方とスキンケアへの取り入れ方
シアバターは顔からハンド、リップまで幅広く使える万能さが魅力です。使い方のコツは、少量を手のひらで溶かし、スキンケアの最後にうるおいのふたとして重ねることです。
クリームやバームなどどんなアイテムに入っている?
シアバターは単体の固形バームとして売られるほか、フェイスクリームやボディクリーム、ハンドクリーム、リップバームなど多くの製品に配合されています。とくに乾燥対策をうたうこっくりした質感のアイテムで見かけることが多いでしょう。
全成分表示では「シア脂」「シアバター」などと記載されます。配合量や精製の度合いは製品ごとに異なるため、使用感や香りの好みで選ぶとよいでしょう。
顔・ハンド・リップへの塗り方のコツ
顔に使う場合は、化粧水や乳液でうるおいを補ったあと、仕上げにごく少量をなじませるのが基本です。油分が多いため、つけすぎるとべたつきや毛穴づまりの原因になりかねません。パール粒ほどの量から試すと安心でしょう。
ハンドケアでは、手を洗ったあとの乾いたタイミングでなじませると、水仕事で失われた油分を補えます。リップには、体温で溶かしたシアバターを薄く重ねると、乾燥した唇のケアに向いています。
なお髪の毛先の保護に使う方もいますが、本来はスキンケア用途が中心です。髪に使う場合もごく少量にとどめ、肌と同じくつけすぎに注意するとよいでしょう。
部位別の使い方の目安
| 部位 | 使い方の目安 | ワンポイント |
|---|---|---|
| 顔 | スキンケアの最後にパール粒ほどを薄く | べたつきを避けつけすぎに注意 |
| ハンド | 手を洗った乾いたタイミングでなじませる | 水仕事で失われた油分を補う |
| リップ | 体温で溶かして薄く重ねる | 乾燥した唇のケアに向く |
相性のよい成分と気をつけたい組み合わせ
シアバターは、水分を抱えるタイプの保湿成分と組み合わせると、うるおいを与えてからふたをする流れが自然につくれます。セラミドやヒアルロン酸で角質層をうるおしたあとにシアバターを重ねる使い方は理にかなっています。


一方で、レチノールやピーリング作用のある成分を使ったあとの肌は敏感になりやすいものです。シアバターは刺激の少ない成分ですが、油分が多いぶん、使う順番や量を調整して肌の様子を見ながら取り入れると安心です。
シアバターを使う際の注意点とデメリット
シアバターは穏やかな成分ですが、油分が多いことによるデメリットや、酸化・使用期限、まれなアレルギーには注意が必要です。特徴を理解して上手に付き合うことが、トラブルを避けるうえで大切といえます。
油分が多くニキビや肌に合わない場合も
シアバターは油脂が主体のため、皮脂が多い肌やニキビができやすい肌では、つけすぎると毛穴づまりの一因になることがあります。「肌に悪い」と感じる背景には、量や肌質とのミスマッチが隠れている場合が少なくありません。
脂性肌やニキビが気になる方は、顔全体ではなく乾燥する部分にだけ薄く使う、あるいは軽い質感の保湿剤を選ぶといった工夫が向いています。使ってみて肌の調子が乱れる場合は、無理に続けないことも大切でしょう。
酸化と使用期限に気をつける
シアバターには酸化しやすい不飽和脂肪酸が含まれるため、時間が経つと品質が変わり、においや使い心地が損なわれることがあります。研究でも、精製の度合いによって酸化に関わる指標や抗酸化成分の量が変わることが示されています。
開封後は高温多湿や直射日光を避け、涼しい場所で保管しましょう。使用期限や開封後の使用目安が記載されている場合はそれに従い、においや色が明らかに変わったものは使わないのが安全です。
アレルギーが心配な方はパッチテストを
シアの木はナッツの一種ですが、研究では精製されたシアバターにアレルギーの原因となる可溶性タンパクがほとんど含まれないと報告されており、ナッツアレルギーの方でも反応が起きにくいと考えられています。
とはいえ、シアバターによる接触アレルギーの症例報告もあり、反応がゼロとはいえません。初めて使う際は腕の内側などに少量を塗り、24〜48時間ほど肌の変化をみるパッチテストを行うと安心です。赤みやかゆみが出たら使用を中止してください。
化粧品と医療用の製品は目的が異なる
化粧品に使われるシアバターは、あくまで肌をととのえ乾燥を防ぐ目的の成分です。皮膚の病気を治療する薬とは目的も位置づけも異なります。
かゆみや炎症が強い、なかなか改善しないといった症状がある場合は、シアバターでのケアに頼りきらず、医療機関で相談することが大切です。自己判断で対処せず、専門家の診察を受けましょう。
- 油分が多いためニキビが気になる肌はつけすぎに注意する
- 酸化を防ぐため涼しい場所で保管し使用期限を守る
- 初めて使うときはパッチテストで肌の反応を確かめる
- 症状が強い・長引く場合は自己判断せず皮膚科を受診する
シアバターと似た保湿オイル・バターとの違い
シアバターは、ワセリンやホホバオイル、ココアバターなど他の保湿成分と混同されがちです。いずれも油分でうるおいを守る点は共通しますが、由来や質感、なじみ方に違いがあります。
ワセリンとの違いは由来と使い心地
ワセリンは石油を精製してつくられる鉱物油由来の保護剤で、肌表面にとどまってしっかりとふたをします。シアバターは植物性の油脂で、体温でとろけて肌になじむぶん、軽やかな使い心地に感じられることが多いでしょう。
保護力の高さで選ぶならワセリン、なじみのよさや植物由来を重視するならシアバターと、目的で使い分けるのが現実的です。
ホホバオイルやココアバターとの使い分け
ホホバオイルは液状で軽く、さらりとした使用感が持ち味です。シアバターは固形でこっくりしているため、乾燥が強い部位の集中ケアに向いています。

ココアバターもカカオ豆由来の固形油脂で、シアバターと似た用途で使われます。融点や香り、テクスチャーの好みで選ぶとよいでしょう。混同しやすい成分ほど、全成分表示で名称を確認する習慣が役立ちます。
シアバターと似た保湿成分の比較
| 成分名 | 由来 | 特徴 |
|---|---|---|
| シアバター | シアの木の種子 | 体温でとろける固形油脂、なじみがよい |
| ワセリン | 石油(鉱物油) | 肌表面で高い保護力を発揮 |
| ホホバオイル | ホホバの種子 | 液状で軽くさらりとした使用感 |
迷ったら肌質と部位で選ぶ
どの保湿成分が合うかは、肌質と使う部位によって変わります。乾燥が強い肘やかかと、手先にはシアバターのようなこっくりした固形油脂が向いています。
顔や皮脂の多い部位には軽い質感のものを選ぶなど、部位ごとに使い分けると失敗が減ります。名前の似た成分に惑わされず、由来や表示名称を確認して選ぶことが、自分に合ったケアへの近道です。
まとめ
シアバターは、シアの木の種子から採れる植物性の油脂で、肌表面を保護してうるおいを守るエモリエント・保湿ケア成分です。特徴と注意点を押さえれば、乾燥ケアに無理なく取り入れられます。
- シアバターはシアの木(Vitellaria paradoxa)の種子由来で、ステアリン酸とオレイン酸が主成分
- 体温でとろける融点をもち、精製と未精製で香りや微量成分の残り方が異なる
- エモリエント作用と保湿でうるおいのふたとして働き、抗酸化・抗炎症は補助的に報告される
- 油分が多くニキビや酸化に注意が必要で、まれなアレルギーに備えてパッチテストが安心
- 気になる肌トラブルがある場合は自己判断せず、皮膚科を受診してください
よくある質問
参考文献
Akihisa, T., Kojima, N., Katoh, N., Ichimura, Y., Suzuki, H., Fukatsu, M., Maranz, S., & Masters, E. T. (2010). Triterpene alcohol and fatty acid composition of shea nuts from seven African countries. Journal of Oleo Science, 59(7), 351–360. https://doi.org/10.5650/jos.59.351
Akihisa, T., Kojima, N., Kikuchi, T., Yasukawa, K., Tokuda, H., Masters, E. T., Manosroi, A., & Manosroi, J. (2010). Anti-inflammatory and chemopreventive effects of triterpene cinnamates and acetates from shea fat. Journal of Oleo Science, 59(6), 273–280. https://doi.org/10.5650/jos.59.273
Hon, K. L., Tsang, Y. C., Pong, N. H., Lee, V. W. Y., Luk, N. M., Chow, C. M., & Leung, T. F. (2015). Patient acceptability, efficacy, and skin biophysiology of a cream and cleanser containing lipid complex with shea butter extract versus a ceramide product for eczema. Hong Kong Medical Journal, 21(5), 417–425. https://doi.org/10.12809/hkmj144472
Micali, G., Paternò, V., Cannarella, R., Dinotta, F., & Lacarrubba, F. (2018). Evidence-based treatment of atopic dermatitis with topical moisturizers. Giornale Italiano di Dermatologia e Venereologia, 153(3), 396–402. https://doi.org/10.23736/S0392-0488.18.05898-4
Chawla, K. K., Bencharitiwong, R., Ayuso, R., Grishina, G., & Nowak-Węgrzyn, A. (2011). Shea butter contains no IgE-binding soluble proteins. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 127(3), 680–682. https://doi.org/10.1016/j.jaci.2010.10.022
Castelain, F., Aubin, F., & Pelletier, F. (2024). Contact allergy to Butyrospermum parkii butter in a patient with cheilitis. Contact Dermatitis, 90(3), 323–324. https://doi.org/10.1111/cod.14478
Abdel-Razek, A. G., Abo-Elwafa, G. A., Al-Amrousi, E. F., Badr, A. N., Hassanein, M. M. M., Qian, Y., Siger, A., Grygier, A., Radziejewska-Kubzdela, E., & Rudzińska, M. (2023). Effect of refining and fractionation processes on minor components, fatty acids, antioxidant and antimicrobial activities of shea butter. Foods, 12(8), 1626. https://doi.org/10.3390/foods12081626

