大垣中央病院リハビリテーション科 主任の前波です。最近の趣味はゴルフに行くことです。なかなかスコアがよくならないですが頑張って練習しています。(笑)
今回は毎年多くの方が発症する「熱中症」についてお話しします。
熱中症とは暑さが原因となって発症する「皮膚の障害などを除外した暑熱障害」の総称である(臨床スポーツ医学202312月より引用)とされています。
つまり高温・高湿度などの暑熱環境により生じる健康障害の総称であり、体温調節機能の破綻によって体内に熱が蓄積することで発症します。体温調節がうまく働かなくなると、脱水や循環障害だけでなく、重症化すると脳・肝臓・腎臓など全身の臓器に障害を及ぼすことがあります。
熱中症の疫学
熱中症は5月頃から発生し始め、7~8月にピークを迎えます。すべての年代で発症しますが、特に高齢者(65歳以上)と乳幼児は注意が必要です。また、熱中症による死亡者の多くは高齢者が占めています。
若年者では屋外やスポーツ活動中の発症が多い一方、高齢者では自宅(室内)での日常生活中に発症するケースが多いことが特徴です。
熱中症には原因・病態・重症度という3つの視点から分類されます。
①原因による分類(病因分類) 「なぜ熱中症になったか」
- 労作性熱中症・・・・運動や肉体労働によって大量の熱が産生されることで発症
- 非労作性熱中症・・・高温環境に長時間さらされることで発症
②病態による分類(古典的分類) 「どのような状態になっているか」
- 熱失神・・・・・一時的に脳への血流が減少して起こる立ち眩みや失神
- 熱痙攣・・・・・大量の発汗により塩分が不足し、筋肉が痙攣
- 熱疲労・・・・・脱水や循環不全が主体となり、頭痛、吐き気、倦怠感
- 熱射病・・・・・深部体温が著しく上昇し、意識障害や多臓器障害を伴う
③重症度による分類(日本救急医学会)
- Ⅰ度(軽症)・・・・めまい・立ちくらみ・筋肉の痙攣・大量の発汗
- Ⅱ度(中等症)・・・頭痛・吐き気・倦怠感・集中力低下(医療機関の受診が推奨される)
- Ⅲ度(重症)・・・・意識障害・痙攣・肝障害・腎障害・凝固異常(入院による治療が必要)
- Ⅳ度(最重症)・・・深部体温40℃以上・重度の意識障害
熱中症発症のメカニズム
熱中症は熱産生(体内で作られる熱)と熱放散(体外へ逃がす熱)のバランスが崩れることで発症します。
運動によって筋肉の活動が活発になり体内で熱が増える(熱産生↑)
↓
発汗・皮膚血流で熱を逃がす(熱放散)
↓
高温・高湿度・脱水などで熱が逃げずに体内に熱が蓄積し始める
↓
体温調節機能が破綻
↓
熱中症

表を参考に安全に運動をしてください。
疫学のところで高齢者は自宅(室内)で多いとされていましたが、運動している時ではなく日常生活の中で多く発症しています。
若年者ではスポーツや肉体労働などにより熱産生が増加することが主な原因です。一方、高齢者では発汗機能や皮膚血流の低下などにより熱放散が十分に行えず、体内に熱が蓄積することで発症します。
発汗低下(加齢・脱水)
皮膚血流低下
エアコン未使用
↓
熱放散が低下
↓
体内に熱が蓄積
↓
深部体温上昇
↓
熱中症
高齢者は暑さを感じにくく、喉の渇きも自覚しにくいため、エアコンの使用や定期的な水分摂取が重要です。また、「今日は元気がない」「歩く速度が遅い」「ぼーっとしている」といった変化が熱中症の初期症状であることもあります。
最後に
熱中症は適切な予防により防ぐことができる疾患です。理学療法士は、患者さん一人ひとりの身体機能や体調だけでなく、運動環境や暑熱環境にも配慮し、安全にリハビリテーションを行っています。
暑い季節は、「無理をしない」「暑さに慣れる(暑熱順化)」「こまめに水分・塩分を補給する」ことを心掛けましょう。
少しでも体調に異変を感じた場合は、早めに涼しい場所で休息し、症状が改善しない場合や意識がもうろうとする場合は、速やかに医療機関を受診してください。
