フラーレンは、ビタミンCの100倍以上ともいわれる強力な抗酸化力をもつスキンケア成分です。紫外線や加齢によって生まれる活性酸素から肌を守り、シワやくすみにアプローチすると注目されています。
一方で「本当に効果があるの?」「発がん性は大丈夫?」など、気になる点も少なくないでしょう。
この記事では、フラーレンの基本情報から期待できる効果、正しい使い方、注意点、似た成分との違いまで、皮膚科専門医監修のもとエビデンスを交えて解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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フラーレンとはどんな成分か
フラーレンは、炭素原子だけで構成されたサッカーボール型の球状分子です。化学の世界で大きな注目を集めた後、その強い抗酸化力に着目されてスキンケア分野にも応用されるようになりました。
60個の炭素が作るサッカーボール型分子
フラーレンとは、60個の炭素原子が五角形と六角形を組み合わせた球状構造をとる分子で、正式名称はバックミンスターフラーレン(C60)といいます。その形がサッカーボールに似ていることから「バッキーボール」とも呼ばれています。
ダイヤモンドやグラファイトと同じ炭素の同素体(同じ元素でありながら構造が異なる物質)に分類され、水にはほとんど溶けない性質をもちます。
化粧品に配合する際は、PVP(ポリビニルピロリドン)で包んだ水溶性タイプや、スクワランに溶かした油溶性タイプなど、さまざまな形態に加工して肌へなじむよう工夫されています。
フラーレンがノーベル賞を受賞した経緯
フラーレンは1985年に、イギリス・サセックス大学のハロルド・クロトーとアメリカ・ライス大学のロバート・カール、リチャード・スモーリーの共同研究チームによって発見されました。この発見に貢献した3氏は、1996年にノーベル化学賞を受賞しています。
受賞理由は、炭素の新たな同素体であるフラーレンを発見し、その構造を解明した功績にあります。
当初は物理学や材料科学の分野で研究が進みましたが、その後「ラジカルスポンジ」と呼ばれる強力な活性酸素除去能力が明らかになり、医学や美容の領域へと応用が広がりました。
フラーレンの基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | バックミンスターフラーレン(C60) |
| 分子構造 | 炭素60個の球状分子 |
| 発見年 | 1985年 |
| ノーベル賞 | 1996年 化学賞 |
| 化粧品成分表示名称 | フラーレン |
| 医薬部外品有効成分 | 認可されていない |
化粧品成分表示名称とフラーレンの種類
化粧品の全成分表示では「フラーレン」と記載されます。現時点では医薬部外品の有効成分としては認可されておらず、あくまで化粧品成分としての配合にとどまっています。
スキンケア製品に使われるフラーレンには、大きく分けて水溶性フラーレンと油溶性フラーレン(リポフラーレン)の2種類があります。水溶性タイプは化粧水や美容液に配合しやすいのが特長です。
油溶性タイプはクリームやオイル製品との相性がよいとされています。製品を選ぶ際には、テクスチャーや使いやすさに合わせて選択するのがよいかもしれません。
フラーレンが肌にもたらす抗酸化・美白・ハリへの効果
フラーレンに期待される効果は、主に「抗酸化」「シワ・ハリ改善」「美白」の3つです。いずれも活性酸素を除去する力が根幹にあり、紫外線や外的刺激から肌を守ることで複合的な美肌効果につながると考えられています。
活性酸素を吸い取る「ラジカルスポンジ」としての抗酸化作用
フラーレンの最大の特長は、その圧倒的な抗酸化力です。1991年にKrusicらが報告した研究では、C60分子1つに対して最大34個ものラジカル(活性酸素の一種)を吸着できることが示されました。
この性質から「ラジカルスポンジ(活性酸素の吸い取りスポンジ)」と呼ばれています。
しかも、この反応は触媒的に進むため、フラーレン自体が消費されにくいという特徴があります。ビタミンCやビタミンEが一度活性酸素と反応すると失活してしまうのに対し、フラーレンは繰り返し除去できるとされています。
そのため、長時間にわたって肌を守り続ける可能性が示唆されています。
シワやたるみに働きかけるハリへのアプローチ
紫外線によって発生した活性酸素は、真皮のコラーゲンやエラスチンを分解し、シワやたるみの原因となります。フラーレンはこの活性酸素を効率よく除去することで、コラーゲンの分解を防ぎ、肌のハリを保つ手助けをすると考えられています。
Katoらが23名の日本人女性を対象に行った二重盲検試験では、フラーレン配合クリームを8週間塗布した群で有意なシワ改善が確認されました。
さらにNganらの研究では、フラーレンを含むナノエマルションを28日間使用した結果、コラーゲンスコアが約33%上昇したとの報告もあります。
メラニン生成を抑える美白ケアへの期待
フラーレンには、紫外線によるメラニン生成を抑制する可能性も報告されています。
Xiaoらの研究では、水溶性フラーレンがUVA照射によるメラノサイト(色素細胞)のチロシナーゼ(メラニン合成酵素)発現を低下させ、メラニン生成を抑えたことが示されています。
Inuiらが行った10名の女性を対象とした試験では、1%フラーレンローションを8週間塗布したところ、目立つ毛穴が約17.6%減少しました。毛穴周辺の色素沈着にも改善がみられたとのことです。
フラーレンが紫外線で増えるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を抑制し、その結果メラニン合成が抑えられた可能性があると報告されています。
フラーレンに期待できる効果まとめ
| 効果 | はたらき | エビデンス |
|---|---|---|
| 抗酸化 | 活性酸素を繰り返し除去 | Krusic et al. 1991 |
| シワ・ハリ改善 | コラーゲン分解を抑制 | Kato et al. 2010 |
| 美白 | チロシナーゼ発現を低下 | Xiao et al. 2007 |
フラーレン化粧品をスキンケアに取り入れるコツ
フラーレンは美容液やクリームを中心にさまざまな化粧品に配合されており、朝夜を問わず取り入れやすい成分です。使い方のコツや相性の良い成分を知っておくことで、より効果的に活用できるでしょう。
どの化粧品に多く配合されている?
フラーレンが配合される化粧品は多岐にわたりますが、とりわけ美容液(セラム)に多く見られます。高濃度で配合しやすく、洗い流さずに肌に留まるためです。
そのほか、化粧水、クリーム、日焼け止め、パック、オールインワンゲルなどにも配合されています。水溶性フラーレンは化粧水やジェル系アイテムに、油溶性フラーレン(リポフラーレン)はクリームやオイル系アイテムに使われる傾向があります。
朝と夜、効果的な使い方のコツ
フラーレンは紫外線で劣化しにくい成分とされているため、朝のスキンケアでも安心して使えます。朝に使う場合は、日焼け止めの前に美容液として塗布すると、紫外線による活性酸素ダメージに対する防御が期待できます。
夜に使う場合は、日中に受けた紫外線ダメージのケアに役立つでしょう。使う順番は一般的なスキンケアと同様で、化粧水→フラーレン美容液→乳液・クリームの順が基本です。特別なテクニックは必要なく、適量を手のひらで顔全体にやさしくなじませてください。
- 朝のケアでは日焼け止めの前にフラーレン美容液を塗布する
- 夜は化粧水の後、乳液やクリームの前に使う
- 1回あたりの使用量は製品の推奨量に従う
- 肌全体に均一になじませ、気になる部分には重ねづけする
相性の良い成分と注意が必要な組み合わせ
フラーレンは比較的ほかの成分との相性が良く、多くのスキンケア成分と組み合わせて使えます。とくにビタミンC誘導体との併用は、抗酸化作用を相乗的に高める可能性があるといわれています。

レチノール(ビタミンA誘導体)やナイアシンアミドとの組み合わせも問題ないとされており、エイジングケアを意識したルーティンに取り入れやすいでしょう。


現時点で、フラーレンとの併用を明確に避けるべき成分は報告されていません。ただし、高濃度のピーリング成分(グリコール酸、サリチル酸など)と同時に使う場合は注意が必要です。
バリア機能が低下した肌に刺激を与える場合もあるため、使用のタイミングをずらすとよいかもしれません。
フラーレン化粧品で気をつけたいポイント
フラーレンは全体として安全性が高く、肌への刺激が少ない成分と評価されています。とはいえ、どんなスキンケア成分でも注意点は存在しますので、使い始める前に確認しておきましょう。
副作用や肌への刺激が少ない成分
複数の臨床試験において、フラーレン配合化粧品による重篤な副作用は報告されていません。Katoらの8週間にわたる二重盲検試験でも、フラーレン配合クリームの使用で深刻な有害事象は確認されませんでした。
Mousaviらのレビュー論文でも、フラーレンは皮膚への刺激が少なく、外用製品として安全に使用できる成分であると結論づけられています。ただし、個人差がありますので、初めて使う場合は目立たない部分でパッチテストを行うのが安心でしょう。
使用を控えたほうがよいケース
フラーレン自体は低刺激ですが、化粧品には他の成分も含まれているため、製品全体が肌に合うとは限りません。もし赤み、かゆみ、ヒリヒリ感などが出た場合は使用を中止し、皮膚科を受診してください。
妊娠中・授乳中の方については、フラーレン配合化粧品の外用で問題が生じたという報告は見当たりませんが、心配な場合はかかりつけの医師にご相談ください。また、傷や湿疹のある部位への使用は避けてください。
化粧品とクリニック処方の違い
フラーレンは現在のところ医療用医薬品として処方されるケースはほとんどなく、主に化粧品成分として利用されています。
一部の美容皮膚科ではフラーレンを含む院内調製品やケミカルピーリングとの併用を行うこともあるようですが、これらは保険診療の範囲外です。
市販の化粧品とクリニック専売品では配合濃度が異なる場合があります。一般の化粧品でもフラーレンの配合量が多い製品にはRSマーク(Radical Spongeマーク)が付いていることがあり、選択の目安になるかもしれません。
化粧品とクリニック専売品の比較
| 項目 | 市販化粧品 | クリニック専売品 |
|---|---|---|
| 入手方法 | ドラッグストア・通販 | 美容皮膚科で購入 |
| 配合濃度 | 非公開が多い | やや高濃度の傾向 |
| 価格帯 | 幅広い | 比較的高め |
フラーレンと似た抗酸化成分を見比べる
抗酸化を目的としたスキンケア成分はフラーレン以外にも多く存在します。それぞれの特長を把握して、自分の肌悩みに合った成分を選ぶことが大切です。
ビタミンC誘導体との違い
ビタミンC誘導体はスキンケアにおける抗酸化成分の代表格で、美白効果やコラーゲン合成促進など多彩な効果が報告されています。
フラーレンとの大きな違いは、ビタミンCは一度活性酸素と反応すると失活するのに対し、フラーレンは繰り返し活性酸素を除去できる点です。
一方で、ビタミンC誘導体には豊富なエビデンスの蓄積があり、医薬部外品の有効成分としても認可されているものがあります。
フラーレンと併用することで抗酸化力が相乗的に高まる可能性も指摘されており、どちらか一方を選ぶのではなく組み合わせて使うのも一つの方法です。
アスタキサンチンとの違い
アスタキサンチンはエビやサケに含まれる赤い色素(カロテノイド)で、一重項酸素の消去能力がビタミンEの約1000倍ともいわれる抗酸化成分です。
フラーレンが幅広い種類の活性酸素に対応するのに対し、アスタキサンチンは一重項酸素に特化した強みをもっています。

コエンザイムQ10との違い
コエンザイムQ10(CoQ10)は、体内のミトコンドリアに存在する補酵素で、細胞のエネルギー産生を助けるとともに抗酸化力ももっています。
加齢とともに体内での産生量が減少するため、化粧品やサプリメントとして補う方法が広く普及しています。
フラーレンとの最大の違いは、CoQ10が生体内の酵素反応に関与するのに対し、フラーレンは純粋に活性酸素の「物理的な吸着除去」を行う点でしょう。
どちらも肌のエイジングケアに寄与すると考えられていますが、アプローチが異なるため併用による効果も期待されています。
主な抗酸化成分との比較
| 成分名 | 特長 | フラーレンとの違い |
|---|---|---|
| ビタミンC誘導体 | 美白+コラーゲン合成 | 反応後に失活する |
| アスタキサンチン | 一重項酸素に強い | 対象の活性酸素が異なる |
| コエンザイムQ10 | 細胞のエネルギー産生 | 抗酸化持続力が異なる |
まとめ
フラーレンは、ノーベル賞を受賞した炭素分子であり、「ラジカルスポンジ」と呼ばれる強力な抗酸化力で肌を守るスキンケア成分です。エビデンスに裏づけられた効果と安全性をもち、日々のスキンケアに無理なく取り入れられます。
- フラーレンはC60と呼ばれるサッカーボール型の炭素分子で、繰り返し活性酸素を除去する「ラジカルスポンジ」として知られている
- シワやたるみの原因となるコラーゲン分解を防ぎ、肌のハリを保つ効果が臨床試験で報告されている
- メラニン生成を抑制し、毛穴の目立ちや色素沈着にアプローチする美白効果も期待されている
- 肌への刺激が少なく、ビタミンC誘導体やレチノールなど他の成分との併用も可能
- 気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください
よくある質問
参考文献
Kato, S., Taira, H., Aoshima, H., Saitoh, Y., & Miwa, N. (2010). Clinical evaluation of fullerene-C60 dissolved in squalane for anti-wrinkle cosmetics. Journal of Nanoscience and Nanotechnology, 10(10), 6769–6774. https://doi.org/10.1166/jnn.2010.3053
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Mousavi, S. Z., Nafisi, S., & Maibach, H. I. (2017). Fullerene nanoparticle in dermatological and cosmetic applications. Nanomedicine: Nanotechnology, Biology and Medicine, 13(3), 1071–1087. https://doi.org/10.1016/j.nano.2016.10.002
Inui, S., Mori, A., Ito, M., Hyodo, S., & Itami, S. (2014). Reduction of conspicuous facial pores by topical fullerene: Possible role in the suppression of PGE2 production in the skin. Journal of Nanobiotechnology, 12, 6. https://doi.org/10.1186/1477-3155-12-6
Xiao, L., Matsubayashi, K., & Miwa, N. (2007). Inhibitory effect of the water-soluble polymer-wrapped derivative of fullerene on UVA-induced melanogenesis via downregulation of tyrosinase expression in human melanocytes and skin tissues. Archives of Dermatological Research, 299(5–6), 245–257. https://doi.org/10.1007/s00403-007-0740-2
Ngan, C. L., Basri, M., Tripathy, M., Abedi Karjiban, R., & Abdul-Malek, E. (2015). Skin intervention of fullerene-integrated nanoemulsion in structural and collagen regeneration against skin aging. European Journal of Pharmaceutical Sciences, 70, 22–28. https://doi.org/10.1016/j.ejps.2015.01.006
