野球肘について

こんにちは理学療法士の佐野といいます。

今年はメジャーリーグで日本人選手の活躍が目立っていました。中でもドジャースのワールドシリーズ優勝が大盛り上がりでしたね!

また、大谷選手がピッチャーで復帰され二刀流で活躍し怪我なくシーズンを終えることができ、来シーズン以降も大谷選手をはじめとする日本人選手の活躍を期待したいですね。

僕自身も高校まで野球をやっており、怪我をしてリハビリを行ったことがあります。そこで、今回は野球選手に多い「野球肘」というテーマでお話をさせていただこうと思います。

目次

野球肘とは?

 野球肘とは投球動作を繰り返すことで引き起こされる肘の障害です。また、野球肘とは一つの病名を指すのではなく、複数の病名の総称をいいます。

詳しい病名や病態については後ほど説明させていただきますが、その前に投球動作について少しお話をさせていただきます。

投球動作の分類について

少し専門的なお話になりますが、投球動作は以下のように分類することができます。

野球肘はその中でも↓で示しましたレイトコッキング期に最も発生しやすいとされています。

理由として、レイトコッキング期の後半に肩が最も後方に捻じれる時を最大外旋位(MER)といいますが、その直前で最も肘に外反ストレスが生じやすいとされ、内側には牽引ストレス、外側には圧迫ストレスがかかります。

投球動作の位相分類
(肘関節理学療法マネジメント,MEDICAL VIEW社,坂田淳)

野球肘の種類

野球肘の種類は主に肘の内側と外側の2か所に生じますが、成長期と成人期では障害に違いがあるため、年代ごとの疾患について説明していきます。

①肘内側の障害

・上腕骨内側上顆裂離(図1)

上腕骨内側上顆には内側側副靱帯が付着します。投球動作によって内側側副靭帯が伸張することで付着部の内側上顆が引っ張られはがれることで起こってしまいます。

通常、14歳から15歳で骨化が完了するため中学生ぐらいまでの成長期では骨化が完了する前の成長軟骨といわれる弱い状態の骨となっています。治療として、約1~2か月程度投球禁止をすることで回復が見込めます。

②肘外側の障害

・上腕骨離断性骨軟骨炎(図2)

外側の骨も内側の骨と同様に中学生ぐらいまでは骨化が完了していません。そのため、肘内側の障害と同様に投球動作の繰り返しで外側には圧迫・回旋・せん断(平行方向にずれる力)ストレスがかかることが原因の一つとして考えられています。

早期に発見できれば6ヵ月から12か月程度の投球禁止で回復が見込めますが、症状が進行すると「関節ねずみ」といわれる骨が分離した状態となり、疼痛を出すことや可動域制限の原因となることが考えられます。

(西中ら:CT所見による上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の不安定性分類の試み 
日本肘関節学会雑誌 22(2)2015)

成人期の障害

②内側側副靭帯損傷

成人期では骨化が完了し、高校生以降の成人期では肘の内側にある内側側副靭帯(図3)が損傷することで痛みを生じることが多いとされています。

損傷の程度が小さい場合は数か月の投球禁止とリハビリにより回復が期待できますが、損傷の程度が大きい場合には大谷投手やダルビッシュ投手も行ったトミージョン手術とよばれる靭帯の再建術を行うことがあります。

(肘関節理学療法マネジメント,MEDICAL VIEW社,坂田淳)

野球肘の原因

野球肘の原因としては

  • 筋力低下や可動域制限などの機能的要因
  • 不良な投球フォーム

の2つが考えられます。

まず、機能的な要因では肘の外反ストレスに対抗するためには手首から肘にかけての筋肉がしっかりと働く必要があります。また、体幹や肩甲骨、胸郭の柔軟性が必要なります。

不良な投球フォームとしてはいわゆる「肘下がり」や「体の開きが早い」といったものがあげられます。

「肘下がり」は両肩を結んだ線より肘の高さが低いことをいいます。「体の開きが早い」は非投球側の足が地面に接地した時に投球側の肘や肩が見える状態をいいます。

野球肘のリハビリ

次に、野球肘を予防するための運動を紹介します。

肘内側の筋肉のストレッチ

手首から肘にかけての筋力トレーニング

肩後面のストレッチ

肩甲骨や背骨の動きを改善するトレーニング

肩甲骨周りの筋力トレーニング

上記の運動は野球肘の方だけではなく、痛みや症状がない方が行うことで怪我の予防にもつながるためぜひ行っていただけるといいのではないかと思います。

今回、野球肘というテーマでお話をさせて頂きました。プロ野球選手でも投球動作を繰り返せば肘には負担がかかります。そのため、いかに負担の少ない投球フォームで投げられるか、筋力や柔軟性をつけ負担を減らすことが重要です。

早期発見が重要となりますので、すでに症状のある方や少しでも気になることがあれば当院へ一度相談して頂ければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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