悪性褐色細胞腫

悪性褐色細胞腫

悪性褐色細胞腫とは、褐色細胞腫と呼ばれる腫瘍が悪性化した状態で、比較的まれではありますが、体内の交感神経系に大きく関わる副腎髄質などに腫瘍が発生し、高血圧や発作的な動悸などの多様な症状を起こします。

この疾患は、内分泌系の腫瘍として知られ、腫瘍から分泌されるカテコールアミン類が過剰になり得るため、体内の循環器や代謝に深刻な影響を与える可能性があります。

早期発見と適切な治療が大切ですが、症状や病型の把握が難しい場合もあり、注意深い検査を要します。

目次

病型

褐色細胞腫は、主に副腎髄質に発生する腫瘍ですが、傍神経節にも発生することがあり、悪性の状態に至ると転移や局所浸潤を伴うことがあるため、他臓器への影響なども含め、より総合的な評価が求められます。

転移を伴うタイプと局所進行タイプ

悪性褐色細胞腫は、転移を伴うタイプと局所で進行するタイプに大きく分かれ、転移を伴うタイプは肝臓や骨、肺などに病巣が広がる可能性があるため、診断時点で全身的な評価が必要です。

局所進行タイプは、腫瘍が比較的限局しているものの、周囲組織への浸潤が認められる場合があります。治療方針を立てる際は、どの程度の広がりがあるかを詳細に把握することが重要です。

悪性度と侵襲度

分類特徴治療方針に対する考慮点
転移を伴うタイプ遠隔臓器(骨 肝臓 肺など)への転移を確認化学療法や放射線治療の併用検討が必要になるケース多
局所進行タイプ周囲臓器への浸潤がありつつ転移が少ない外科的切除中心の治療を検討しやすい

原発性と複数発生型

悪性褐色細胞腫の中には、単一の原発巣から悪性化していくケースと、複数の腫瘍が同時または時期をずらして発生するケースがあります。

複数の腫瘍が発生する場合は、遺伝性の要素が関係すると見られる場面もあり、家族性の症候群(多発性内分泌腫瘍症など)を併発していないか、慎重な検査が大切です。

発生部位による差異

褐色細胞腫といえば副腎髄質での発生が代表的ですが、まれに副腎外(傍神経節など)でも悪性化し、褐色細胞腫として診断されることがあります。

発生部位によって症状の出方や検査方法が若干変わる場合があり、血液中のカテコールアミンやその代謝物、あるいは遺伝子変異など多方面から評価することが必要です。

病期分類と臨床ステージ

悪性褐色細胞腫の病期は、腫瘍の大きさと転移の有無などで総合的に判断されることがありますが、一般的ながん疾患で用いるTNM分類のような厳密なステージ付けが必ずしも標準化されているわけではありません。

ただし、治療チームは腫瘍の局在と広がりを詳細に把握し、臨床的な観点からステージ相当の進行度を判断して治療戦略を立てます。

悪性褐色細胞腫の症状

悪性褐色細胞腫は、腫瘍がカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)を過剰に産生することにより、全身のさまざまな器官に影響を及ぼします。

高血圧と動悸

代表的な症状の1つが高血圧であり、しかも発作的に血圧が非常に高くなるケースが少なくありません。動悸や胸の苦しさ、突然の強い頭痛などを伴うこともあり、一見するとパニック発作や他の循環器疾患と間違われることがあります。

症状が続いたり再発を繰り返したりするときは、悪性褐色細胞腫を含めた内分泌系の異常を視野に入れることが必要です。

みられやすい循環器症状

症状特徴原因と考えられる機序
突然の高血圧普段の血圧より極端に上昇するカテコールアミンの大量放出により血管収縮が起こる
頻脈心拍数が急増するノルアドレナリンやアドレナリンの過剰分泌
胸の痛み狭心症のような発作的な痛みを感じる心筋に負荷がかかり冠動脈への血流量が変化する
発作的な動悸心臓がドキドキする感覚が急に起こる自律神経のバランスが乱れる可能性がある

循環器症状は、悪性褐色細胞腫でなくても起こり得るため、診断時には慎重な検査が大切です。

頭痛や発汗、神経症状

カテコールアミン過剰の影響は、循環器だけでなく神経系にも及び、頭痛や過度の発汗、手足の震えなどが典型的な症状の一つであり、ストレスや緊張と結びつけてしまい見過ごされることもあります。

長期にわたって続く片頭痛様の痛みや日中の激しい発汗が気になる方は、内分泌科を受診してください。

不安感や情緒不安定

自律神経への過度な刺激により、不安や情緒不安定といったメンタル面での症状が現れることがあり、これを単純に心因性のうつ病やパニック障害と判断してしまうと、悪性褐色細胞腫の潜在的なリスクを見逃す可能性があります。

神経症状と循環器症状が併発している場合には、ホルモン異常を考慮することが大切です。

代表的症状

  • 血圧の著しい変動(特に高血圧発作)
  • 動悸や不整脈の増加
  • 頭痛が頻発する
  • 大量発汗や手足の震え
  • 強い不安感や神経過敏

症状は比較的非特異的であるため、なかなか悪性褐色細胞腫という診断に結びつかないケースもあるようです。症状が長期化している場合や、短期間で複数の症状が出現している場合は、内分泌やホルモンの異常を疑うきっかけになります。

症状の強さと腫瘍サイズ

腫瘍の大きさが大きいほど症状が強いと単純に断定できるわけではありませんが、カテコールアミンの産生量が多ければ多いほど、血圧の変動や動悸などの症状も強いです。

また、悪性化の程度によっては転移先の臓器機能にも影響を及ぼし、呼吸困難や倦怠感などが加わることがあります。

悪性褐色細胞腫の原因

悪性褐色細胞腫は比較的まれな疾患であるため、その原因がすべて解明されているわけではありません。ただし、遺伝的要因や特定の遺伝子変異、環境的要因などが複合的に影響を与えていると考えられます。

遺伝的素因

多発性内分泌腫瘍症(MEN2)など、遺伝性の症候群に関連して褐色細胞腫が発症するケースが報告されています。

これらの症候群では甲状腺髄様がんなど、ほかの内分泌系の腫瘍を併発する可能性が高いと考えられ、複数の腺組織に腫瘍が生じやすい体質を持つことが原因の一つです。

悪性褐色細胞腫へ移行するリスクも否定できないため、家族歴や遺伝的素因の有無が注目されます。

遺伝的要因が関与する可能性のある症候群

症候群名特徴褐色細胞腫との関連性
多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)甲状腺髄様がんや副甲状腺腫瘍が併発する褐色細胞腫の発症率が一般より高い
フォンヒッペル・リンドウ病中枢神経系や網膜の血管腫など多彩な病変が生じる傍神経節腫瘍や褐色細胞腫を発症する場合がある
神経線維腫症1型カフェオレ斑や神経線維腫が特徴的褐色細胞腫を合併するリスクが存在する

環境要因とホルモンバランス

厳密に立証されたわけではないですが、生活習慣やストレス、その他のホルモン異常などが相互に関係し、褐色細胞腫の発生リスクを高めていると推測されています。

ただし、特定の環境要因のみで悪性褐色細胞腫が生じるわけではなく、あくまで遺伝的素因や体質が関係したうえで起こります。

細胞レベルでの分子機序

褐色細胞腫を形成する腫瘍細胞は、副腎髄質や傍神経節のクロム親和細胞由来とされ、その細胞が何らかの原因で増殖制御を失いカテコールアミンを過剰に分泌する状態です。

悪性の場合にはさらに遺伝子変異が蓄積し、周辺組織へ浸潤や転移を行う能力を獲得しているとみられます。具体的な変異として、RET遺伝子やVHL遺伝子などが関与するケースが指摘されており、検査によって判明する場合もあります。

悪性化に関与すると考えられる因子

  • 遺伝子変異(RET VHL SDHBなど)
  • 腫瘍細胞の増殖制御機構の破綻
  • 血管新生を促進するシグナルの活性化
  • 免疫系の監視機構のすり抜け

まれな症例の背景

悪性褐色細胞腫そのものがレアであることから、発症機序や原因に関しては未解明の部分が残されています。

若年層での発症や、妊娠中に悪性化が進むケースなど、極めて珍しい症例も報告されるため、個々の患者さんの背景をしっかりと考慮して診断を行い、結果に基づいた治療選択が必要です。

悪性褐色細胞腫の検査・チェック方法

悪性褐色細胞腫は、症状が多面的であることや、発作が一時的に終わることもあるため、診断が難しい場合が多く、ホルモン検査や画像検査など、複数のアプローチを組み合わせながら精密なチェックが行われます。

カテコールアミン測定

血液や尿中のカテコールアミン(ノルアドレナリン アドレナリン ドーパミン)および代謝産物であるメタネフリン、ノルメタネフリンなどの値を測定することで、褐色細胞腫の存在を示唆できる場合があります。

特に血漿フリー・メタネフリン検査は高感度であるとされ、疑わしい症状がある場合に有用です。

カテコールアミン系検査

検査名測定対象主な意義
血漿フリー・メタネフリン検査メタネフリン ノルメタネフリン感度が高く褐色細胞腫スクリーニングに役立つ
尿中カテコールアミン検査24時間尿中のアドレナリン類日内変動を考慮した総量評価が可能
血漿カテコールアミン測定アドレナリン ノルアドレナリンなど一時的な発作期での値上昇を捉える

画像検査(CT MRI PETなど)

腫瘍の存在を直接的に確かめるには、CTやMRIによる画像検査が用いられ、悪性褐色細胞腫が疑われる場合には、転移の有無を確認するためにPET検査を併用することも少なくありません。

副腎や傍神経節周辺に腫瘍があるかどうか、サイズや形態、周辺臓器への浸潤状況などを入念にチェックします。

用いられる画像検査

  • CT:腫瘍の形態や内部構造を詳細に確認
  • MRI:軟部組織のコントラストがわかりやすい
  • メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)シンチグラフィ:カテコールアミン産生細胞を捉えやすい
  • PET:転移や複数病巣の検索に役立ちやすい

それぞれ特徴が異なるため、状況に応じて複数の画像検査が組み合わされることが多いです。

遺伝子検査

遺伝性疾患の疑いがある場合、あるいは家族歴が確認される場合には、遺伝子検査が行われることもあります。

多発性内分泌腫瘍症やフォンヒッペル・リンドウ病などに関連する遺伝子変異を調べることで、リスク評価や後の治療計画に役立てる可能性があります。

治療方法と治療薬について

悪性褐色細胞腫は、良性の褐色細胞腫と比べて転移や再発リスクが高く、治療方法も多角的に検討され、外科的切除、薬物治療(化学療法や分子標的薬など)、放射線治療などが組み合わされます。

外科的切除

悪性褐色細胞腫においても、切除可能な範囲に腫瘍がとどまっている場合は、手術が治療の中心で、腫瘍を取り除くことで、カテコールアミンの過剰分泌を抑制しやすくなるため、症状の改善や再発予防に役立ちます。

ただし、悪性度が高い場合には術後に再発や転移が見つかるケースもあり、術後のモニタリングが欠かせません。

外科的切除のメリットと注意点

メリット注意点
腫瘍を根本的に除去できる可能性がある術中に急激な血圧上昇を招くリスクがある
カテコールアミン過剰分泌の症状が緩和腫瘍が大きい場合、他臓器への影響を考慮が必要
組織病理診断が確定しやすい完全切除できない場合は再発率が高まる
転移が少ない場合は高い治療効果が期待周辺組織の損傷に留意して術式を選択する必要がある

手術前には血圧管理のための薬剤調整が行われ、術中や術後も専門的な管理体制が重要です。

薬物治療(化学療法 分子標的薬)

悪性褐色細胞腫が転移を伴う場合や、切除が困難な場合には、化学療法や分子標的薬が考慮されます。

標準的な褐色細胞腫に対する化学療法として、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジンなどを組み合わせるCVD療法などが用いられるケースがあり、腫瘍の増殖を一定程度抑制する効果が報告されています。

化学療法で用いられる主な薬剤

  • シクロホスファミド:DNA合成を阻害し腫瘍細胞増殖を抑える
  • ビンクリスチン:微小管形成を阻害し細胞分裂を抑制する
  • ダカルバジン:アルキル化作用によって腫瘍細胞を傷害する

さらに、近年は分子標的薬や免疫療法の研究も進み、悪性褐色細胞腫に応用される例も見られます。VEGF(血管内皮増殖因子)やmTOR経路をターゲットにした薬剤の開発が進められており、将来的に選択肢が増えるかもしれません。

放射線治療やMIBG治療

放射線治療は、切除困難な腫瘍や転移病巣に対して局所的に行われる場合があり、骨転移の痛みの緩和や病巣の縮小を目的として用いられることがあります。

また、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)と呼ばれる放射性同位元素標識化合物を投与するMIBG治療(放射性治療)も、悪性褐色細胞腫への応用が検討されており、腫瘍細胞に選択的に集積させて放射線で攻撃する仕組みです。

血圧管理と支持療法

悪性褐色細胞腫の治療においては、カテコールアミン過剰分泌による血圧変動をコントロールすることが重要です。

α遮断薬やβ遮断薬などの降圧薬を用いて、術前術後の血行動態を安定化させたり、化学療法中の副作用軽減を図ったりすることが行われます。

治療を進める上で重要な支持療法

  • α遮断薬やβ遮断薬による血圧コントロール
  • ステロイドの適宜使用(炎症抑制やアレルギー対策など)
  • 不足栄養補給や鉄分補給による体力維持
  • 心理的サポートやリハビリテーション

治療計画は、悪性度や転移状況、患者さんの全身状態などを総合的に評価して決定されます。

悪性褐色細胞腫の治療期間

悪性褐色細胞腫の治療期間は、病期や転移の有無、治療の反応度など多くの要因によって異なります。

外科的切除が可能な場合は術後の経過観察期間を含めてある程度の目処が立ちやすいですが、再発や転移が見つかった場合には、継続的に治療を要するケースが少なくありません。

手術が中心となる場合の期間

局所進行の悪性褐色細胞腫で、腫瘍切除が可能と判断された場合は、術前の血圧管理や術後のリハビリ期間を合わせておおむね数週間から数か月程度の入院や通院を要します。

腫瘍が完全に切除でき、術後の再発リスクが低いと判断されれば、その後は定期的な画像検査やホルモン検査を行いながら経過観察を続ける形です。

手術中心治療の大まかなスケジュール

期間主な内容
術前2~3週間血圧コントロール α遮断薬やβ遮断薬の調整 術前検査
手術当日~術後数日腫瘍切除 手術後の集中管理(血圧 心拍数など)
術後1週間~2週間傷の回復状態の確認 周辺臓器への影響チェック 退院または外来移行
術後3か月~半年後画像検査やカテコールアミン検査で再発の有無を評価

化学療法や放射性治療を併用する場合

転移がある場合や切除が困難な場合は、化学療法や放射線治療などを組み合わせることになり、治療期間は半年から1年以上に及ぶことがあります。

治療の効果判定や副作用対策を進めつつ、必要に応じてレジメン(治療スケジュール)を変更することもあるため、患者さんと医療スタッフとの密な連携が不可欠です。

長期治療における注意点

  • 治療スケジュールをしっかり把握し、無理のない生活リズムを作る
  • 副作用や体調の変化をこまめに報告して調整を図る
  • 定期検査を怠らず、再発や進行を早期に見つける
  • 精神的ケアや家族との協力体制を大切にする

再発が認められた場合には、追加治療や新たな薬剤の検討が必要となり、治療期間が延びる可能性があるので、長期的視点を持った計画がポイントです。

長期経過観察とフォローアップ

悪性褐色細胞腫は、治療後数年たってから再発が発覚することもあるため、長期的なフォローアップが必要で、血圧やカテコールアミン値の検査を定期的に実施し、わずかな異常でも見逃さない体制が重要です。

治療期間を終えて一段落した後も、数年単位での外来受診を継続することが勧められています。

副作用や治療のデメリットについて

悪性褐色細胞腫の治療にはさまざまな薬剤が用いられますが、それぞれに副作用やデメリットがあり、治療効果とのバランスを考慮しながら、副作用対策を行いつつ治療を継続する姿勢が必要です。

化学療法薬による副作用

CVD療法などの化学療法薬は、腫瘍細胞を攻撃する一方で、骨髄抑制や吐き気・嘔吐、脱毛などの副作用を伴うことが多いです。

悪性褐色細胞腫はカテコールアミン過剰分泌による血圧変動が起こりやすいため、化学療法薬による自律神経系への影響や疲労感がさらに増す可能性があります。

血球減少時には感染症リスクが高まるため、こまめな血液検査と体調管理が欠かせません。

化学療法薬の副作用

薬剤名主な副作用対策の例
シクロホスファミド骨髄抑制 膀胱炎 脱毛など十分な水分摂取と利尿促進 副作用対策薬の併用
ビンクリスチン末梢神経障害 便秘 脱毛など腸管機能改善薬の使用 しびれ予防の指導
ダカルバジン悪心嘔吐 骨髄抑制 倦怠感制吐剤の事前投与 血球数低下への注意

副作用は個人差がありますが、治療中は定期的な診察と早期発見・早期対応が大切です。

血圧管理薬や支持療法薬の影響

悪性褐色細胞腫の治療では、血圧を下げるためのα遮断薬やβ遮断薬を使用する場合がありますが、倦怠感やめまい、心拍数低下などの副作用が出現することがあります。

特にβ遮断薬を急に増量すると血圧が不安定になるため、医師の指示のもとで段階的に調整することが大切です。

血圧管理薬の副作用に注意すべき症状

  • 立ちくらみや眩暈
  • 全身のだるさ、疲労感
  • ゆっくりした心拍数や息切れ
  • レイノー症状(手足の血流が悪くなる)

日常生活に支障が出るほどの症状が続く場合は、主治医に相談して薬剤の変更や用量調整を行います。

放射線治療やMIBG治療の副作用

放射線治療では、照射部位の皮膚炎や疲労感、場合によっては周辺臓器の機能低下などがリスクです。

MIBG治療の場合は放射性同位元素を体内に投与するため、甲状腺など他の組織への影響や、一時的な骨髄抑制が起こることも報告されています。

悪性褐色細胞腫の保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

外科的切除の費用

悪性褐色細胞腫の腫瘍切除術を行う場合、手術費用や入院費などの合計は、保険適用後で20万円~40万円程度です。

腫瘍の大きさや部位、術式の複雑さにより上下し、術前術後の検査費や薬剤費を含めるともう少し高額になるケースもあります。

項目保険適用後の一般的な費用
手術料約15万円~25万円程度
入院費1日あたり数千円~数万円
検査費(術前術後)数千円~数万円程度
薬剤費(術後管理含)数千円~1万円程度

化学療法の費用

CVD療法を複数サイクル行う場合、1サイクルあたりの薬剤費や点滴管理費、検査費などが合算され、保険適用後でも1サイクル数万円〜10万円前後です。

入院か外来かでも異なるため、事前にスケジュールと概算費用を把握しておきましょう。

化学療法で考えられる追加費用

  • 抗がん剤の点滴関連費用
  • 制吐剤やその他の支持療法薬
  • 定期的な血液検査や画像検査
  • 病状によって必要な入院費

放射線治療やMIBG治療の費用

放射線治療は1回あたりの照射で数千円から1万円程度かかり、総治療回数が10回~30回に及ぶと総額が数万円~数十万円となることが多いです。

MIBG治療は使用される放射性医薬品が高額である場合があり、保険適用後も1回の治療で数十万円程度の費用がかかるケースがあります。

検査費や再診費用

治療が一段落してからも定期的な検査が必要になる悪性褐色細胞腫では、血液検査や画像検査などが数千円~1万円程度、外来受診に関しても1回数千円程度が目安です。

検査種別保険適用後の概算費用
血液検査(カテコールアミンなど)数千円程度
CT/MRI検査1回あたり数千円~1万円程度
PET検査2万円~3万円前後

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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