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アゼライン酸とは、ニキビや酒さなどに対して広く用いられる有効成分です。
抗炎症や抗菌作用があり、ニキビや酒さの炎症症状を改善します。アゼライン酸は天然由来の成分で、妊娠中の方でも安全に使用できる点が特徴です。
この記事ではアゼライン酸の具体的な使用方法や注意点などについて解説していきましょう。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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アゼライン酸の有効成分と効果、作用機序
有効成分
アゼライン酸は、炭素数9のジカルボン酸で小麦やライ麦などの穀物に含まれている成分です。
作用機序
アゼライン酸の作用機序
| 作用機序 | 説明 |
|---|---|
| 抗菌作用 | ニキビや酒さの原因となる菌の増殖を抑制 |
| 抗炎症作用 | 炎症性サイトカインの産生を抑制することで、皮膚の炎症を抑える |
| 皮脂分泌抑制作用 | 皮脂の分泌を抑制し、皮脂量を減らす |
| 角質調整作用 | 角質細胞の分化を促進し、角質層の正常化を図り、毛穴の詰まりを防ぐ |
| メラニンの生成抑制作用 | チロシナーゼの活性を阻害し、メラニンの生成を抑制 |
効果
アゼライン酸の効果
| 効果 | 説明 |
|---|---|
| ニキビの改善 | アゼライン酸は、炎症性ニキビと非炎症性ニキビの両方に効果があり、赤みや腫れ、膿疱の改善が期待 |
| 酒さの改善 | アゼライン酸は、酒さによる赤み、ほてり、ブツブツといった症状を改善 |
| 色素沈着の改善 | アゼライン酸は、ニキビなどによる炎症後色素沈着を改善する作用 |
アゼライン酸は、上記効果により
- 非炎症性/ 炎症性ニキビの改善
- 酒さ（特に丘疹膿疱型）の改善
- ニキビなどの炎症後色素沈着、肝斑など色素異常症の改善
に有効です。
また、アゼライン酸には皮脂分泌を抑える効果もあり、過剰な皮脂による毛穴の開大やテカリの改善も期待できます。
アゼライン酸の使用方法と注意点
アゼライン酸は1日2回、清潔な状態に皮膚に塗布します。
使用時の流れ
アゼライン酸の使用方法
| 手順 | 説明 |
|---|---|
| 1. 洗顔 | ぬるま湯で顔を洗い、肌を清潔にし、タオルで優しく拭き、肌を乾燥させる |
| 2. 保湿 | 化粧水や乳液などで適宜保湿 |
| 3. 薬剤の塗布 | 指先に適量のアゼライン酸クリームを取り、患部に薄く均一に塗布 |
| 4. 手洗い | 塗布後は手をよく洗い、薬剤が目や口に入らないように |
アゼライン酸を塗布する前に保湿を行い、保湿剤が完全に乾いた状態で塗布すると、刺激などの副作用を軽減できます。
ただし、ディフェリンゲルなど他の治療薬を塗布する際はどちらが先でも問題はありません。
注意点
アゼライン酸を使用する際の注意点は次のとおりです。
- 目や粘膜に触れないようにし、万が一触れた場合は、すぐに水で洗い流す。
- 使用開始時は、少量から始め、徐々に量を増やしていく。
- 皮膚に刺激感や乾燥、赤みなどの症状が現れたときは、医師に相談。
- 他の外用薬や化粧品と併用する際には、医師や薬剤師に確認。
適応対象となる患者さん
アゼライン酸が適応となる患者さん
- ニキビ（非炎症性・炎症性）
- 酒さ（丘疹膿疱型）
- 炎症後色素沈着・肝斑などの色素異常症
また、妊娠中の方や授乳中の方でもアゼライン酸は安全にお使いいただけます。
お子さま、ご高齢の方への使用
アゼライン酸は、ニキビや酒さの治療に用いられる外用薬ですが、お子さまやご高齢の方への使用については注意が必要です。
お子さまへの使用
アゼライン酸は12歳未満の小児には、安全性が確立されていません。医師の判断に基づいて処方された場合は、成人よりも少ない量で開始し、徐々に塗布する量を増やしていくことをおすすめします。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方は、若い方に比べて皮膚が薄く敏感なので、アゼライン酸の使用により、刺激や乾燥、かゆみなどの症状が現れやすい可能性があります。
症状が現れたときは、医師に相談してください。
アゼライン酸の治療期間
アゼライン酸を用いた治療期間は、患者さんの症状や重症度などによって異なります。
ニキビにおける治療期間
軽度〜中等度のニキビの場合、2週間程度から効果を認め始め、4〜8週で炎症の改善やニキビの数の減少を認めることが多いです。
酒さにおける治療期間
15〜20%の高濃度アゼライン酸を用いた酒さの治療期間は、軽度〜中等度の酒さでは8～12週間程度、重度の酒さでは12週間以上です。
アゼライン酸の副作用やデメリット
アゼライン酸には、いくつかの副作用やデメリットがあります。
主な副作用
アゼライン酸の主な副作用
| 副作用 | 説明 |
|---|---|
| 皮膚の刺激 | 使用部位に赤み、かゆみ、ヒリヒリ感、乾燥、はがれなどの刺激症状 |
| 接触皮膚炎 | まれに、アゼライン酸またはその他の成分に対するアレルギー反応として、接触皮膚炎が発生する可能性 |
デメリット
アゼライン酸の主なデメリット
- 効果の個人差：全ての人に同じように効果はなく、個人差がある。
- 長期的な使用の必要性：ニキビや酒さは慢性的な皮膚炎症疾患で、アゼライン酸の長期的な使用が必要となることも。
- 他の治療法との組み合わせ：重度のニキビや酒さでは、アゼライン酸単独では十分な効果が得られず、他の治療法との組み合わせが必要となる場合が。
- 保険適用外となるためコストが問題となる可能性。
アゼライン酸で効果がなかった場合
アゼライン酸は、ニキビや酒さの治療に広く用いられる有効成分ですが、十分な効果が得られないこともあります。ここでは、アゼライン酸で効果がなかった場合の対応について解説しましょう。
ニキビの場合
アゼライン酸はニキビに対して有効な成分であるものの、ガイドラインでは以下のような外用薬の方がより高い推奨度となっています。
| 治療薬 | 有効成分 | 作用機序 |
|---|---|---|
| ディフェリンゲル | アダパレン | 抗炎症作用、角質調整作用 |
| エピデュオゲル | アダパレン・過酸化ベンゾイル配合剤 | 抗炎症作用、角質調整作用、抗菌作用、ピーリング作用 |
| ベピオゲル・ローション | 過酸化ベンゾイル | 抗菌作用、ピーリング作用 |
| デュアック配合ゲル | 過酸化ベンゾイル・クリンダマイシン配合剤 | ピーリング作用、抗菌作用 |
これらの外用薬に加えて、炎症所見が強いときには抗菌内服薬が追加されることもあります。それでも十分な改善を認めない場合には、スピロノラクトンやイソトレチノインなどの保険適用外の薬を検討することもあります。
酒さの場合
アゼライン酸以外の酒さ治療外用薬
メトロニダゾール（ロゼックスゲル）外用：抗炎症作用、抗菌作用
イベルメクチン外用：抗寄生虫作用、抗炎症作用
このうち丘疹や膿疱の症状に対して比較的効果がはやい、と言われているのはイベルメクチンです。メトロニダゾール0.75%とアゼライン酸15%ではこれまでの報告ではその効果はほぼ同等。
アゼライン酸20%の場合はメトロニダゾール15%よりもより効果的だと言われていますが、アゼライン酸の方がより刺激を感じやすい傾向にあります。
副作用で使えないときはメトロニダゾールを最初に塗布し、症状の改善を認めた時点でアゼライン酸に切り替えることに。
また、丘疹膿疱型の酒さの場合、外用薬だけではなくテトラサイクリン系の抗菌薬（ミノマイシンやビブラマイシンなど）を併用することによって効果が高まります。
他の治療薬との併用禁忌
アゼライン酸は、併用禁忌となるような薬剤や成分はありません。
ただし、いくつかの薬剤や成分を同時併用することによって刺激や乾燥症状が増加する可能性があります。
刺激が増す可能性がある薬剤・成分
| 薬剤分類 | 具体的なもの |
|---|---|
| レチノイド | イソトレチノイン（内服）、トレチノイン、レチノール（化粧品）、ディフェリンゲル、エピデュオゲル |
| 過酸化ベンゾイル | デュアック配合ゲル、エピデュオゲル、ベピオゲル、ベピオローション |
| ベータヒドロキシ酸（BHA） | サリチル酸など |
| アルファヒドロキシ酸（AHA） | グリコール酸、乳酸など |
刺激を少なくするためには、同時併用ではなく朝と夜に分けて塗布したり、上記薬剤や成分を塗布後、肌が完全に乾いた状態でアゼライン酸を塗布するのがおすすめです。
保険適用と薬価について
アゼライン酸が20%と高濃度配合されている製品は、国内ではクリニック専売品のロート製薬のDRx AZAクリアのみです。
保険は適用されず、自費での取り扱いとなります。
DRx AZAクリアは1本(15g)で1,980円です。
参考文献
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