特定施設入居者生活介護と訪問看護の併用ルール|算定の条件

特定施設入居者生活介護と訪問看護の併用ルール|算定の条件

特定施設入居者生活介護を受けている方が訪問看護を併用できるかどうかは、保険制度の種類によって大きく異なります。介護保険の枠組みでは原則として訪問看護を別途算定できませんが、医療保険に切り替えることで例外的に利用が認められるケースがあります。

厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方や、主治医から特別訪問看護指示書が交付された方は、特定施設に入居したままでも訪問看護ステーションからの看護を受けられます。

この記事では、併用が認められる条件や算定のルール、手続きの流れ、施設との連携方法まで解説します。ご家族やケアマネジャーの方にもぜひ参考にしてください。

目次

特定施設入居者生活介護と訪問看護は原則「併用できない」──その仕組みを押さえよう

結論から言えば、特定施設入居者生活介護を利用している方は、介護保険による訪問看護を同時に算定することが認められていません。特定施設入居者生活介護は「包括報酬」という仕組みを採用しており、施設が提供するサービスのなかに看護も含まれているためです。

包括報酬とは何か──施設が受け取る介護報酬の全体像

特定施設入居者生活介護では、入居者1人あたりの介護報酬が要介護度ごとに一定額で設定されています。報酬の中には、食事や排泄の介助だけでなく、施設看護師による健康管理や療養上の世話も含まれています。いわば、施設内で提供する看護は介護報酬に込みになっている状態です。

そのため、入居者が外部の訪問看護ステーションから介護保険のサービスを別途受けたとしても、報酬の二重算定になるため認められていません。施設に入居しているにもかかわらず訪問看護の介護保険請求を行った場合、あとから返戻(返金処理)を求められるリスクがあります。

包括報酬の対象となる特定施設には、介護付き有料老人ホーム、ケアハウス(軽費老人ホーム)、養護老人ホームなどが含まれます。施設の種類ごとに看護職員の配置基準は異なりますが、いずれも介護報酬のなかに看護サービスが組み込まれている点は共通です。

介護保険と医療保険、2つの保険制度が併用ルールを分ける鍵

訪問看護は介護保険だけでなく医療保険でも提供できるサービスです。介護保険のルールでは原則併用が認められていなくても、医療保険の適用条件を満たせば話は変わります。つまり、保険制度の違いを正しく理解することが、併用の可否を判断する出発点です。

「看護が足りない」と感じたときにまず確認すべきポイント

特定施設に入居中のご家族から「施設の看護だけでは不安だ」という声をいただくことがあります。施設によっては看護師の配置が日中のみで、夜間は介護職員だけという体制も珍しくありません。

そうした状況で訪問看護の利用を検討する場合、まず確認してほしいのは入居者の疾患や状態が医療保険の適用対象に当てはまるかどうかです。次の章で、具体的にどのような条件を満たせば併用が認められるかを解説します。

保険の種類訪問看護の併用備考
介護保険原則不可包括報酬に含まれるため
医療保険条件付きで可特定疾病・指示書等が必要

医療保険で訪問看護が認められる例外条件──特定疾病・特別指示書・精神科訪問看護

特定施設の入居者であっても、一定の医療上の条件を満たす場合には医療保険で訪問看護を受けることが可能です。例外として認められる代表的なルートは、厚生労働大臣が定める疾病等への該当、特別訪問看護指示書の交付、精神科訪問看護の適用の3つです。

厚生労働大臣が定める疾病等に該当するケース

末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患など、厚生労働大臣が別に定めた疾病等に該当する方は、介護保険の要介護認定を受けていても訪問看護は医療保険で算定します。

この場合、特定施設入居者生活介護の包括報酬とは別枠での請求が認められるため、併用が成立します。対象となる疾病のリストは厚生労働省の告示に記載されており、20疾病程度が指定されています。入居者の主治医に確認を取り、該当するかどうかを把握しておくことが大切です。

特別訪問看護指示書が交付された場合の取り扱い

入居者の病状が急性増悪した場合や、退院直後で頻回な観察が必要な場合には、主治医が「特別訪問看護指示書」を交付できます。この指示書が出されると、最長14日間にわたって医療保険による訪問看護を毎日受けることも可能になります。

急な体調の変化が起きやすい高齢の入居者にとって、この仕組みは心強い安全網です。施設の看護体制だけではカバーしきれない緊急的なケアニーズに対応できるため、ご家族にとっても安心材料になるでしょう。

精神科訪問看護の適用で対象となる方

認知症や統合失調症などの精神疾患を抱え、精神科の主治医から訪問看護指示書が交付された入居者は、精神科訪問看護の対象です。精神科訪問看護は医療保険での算定となるため、特定施設入居者生活介護との併用ができます。

ただし、精神科訪問看護を提供するには、訪問看護ステーション側に精神科訪問看護の届出と、一定の研修を修了した看護師の配置が求められます。すべてのステーションが対応できるわけではないため、事前の確認が欠かせません。

認知症の入居者が増加する特定施設では、精神科訪問看護のニーズが今後さらに高まると考えられています。施設看護師だけでは対応が難しい行動・心理症状(BPSD)への専門的なケアを訪問看護師が提供することで、入居者の生活の質を維持しやすくなります。

介護保険から医療保険に切り替わるタイミングを誤らないために

厚生労働大臣が定める疾病等の診断を受けた時点や、特別訪問看護指示書が交付された時点で保険の適用区分が切り替わります。この切り替えを正確に把握していないと、介護保険で請求してしまい返戻の対象になることがあります。

ケアマネジャーや訪問看護ステーションの管理者は、主治医との情報共有を密にし、切り替え日を記録に残す運用が求められます。入居者やご家族にも「保険が変わりますが自己負担割合に大きな変動はありません」と事前に説明しておくと、余計な不安を減らせるでしょう。

特定施設で訪問看護を受けるための手続きと流れ──主治医の指示書から契約まで

訪問看護の利用は、主治医の指示書取得から始まります。指示書の依頼、訪問看護ステーションの選定、施設との受け入れ調整、ケアプランへの反映という流れを事前に把握しておけば、初めてでも戸惑わずに準備を進められるでしょう。

主治医へ訪問看護指示書の発行を依頼する

訪問看護を開始するには、主治医が発行する「訪問看護指示書」が法律上必要です。指示書には、訪問看護の必要性、留意すべき病状や処置内容、指示の有効期間(通常は6か月以内)が記載されます。

主治医への依頼は、入居者本人やご家族だけでなく、施設のケアマネジャーや施設看護師を通じて行うこともできます。依頼時には、施設での生活状況や現在困っている症状を具体的に伝えると、主治医が判断しやすくなります。

訪問看護ステーションとの契約と施設との受け入れ調整

指示書の取得後は、対応可能な訪問看護ステーションを選び、契約手続きに進みます。選定のポイントは、特定施設への訪問実績があるかどうか、対応できる医療処置の範囲、緊急時の連絡体制の3点です。

施設によっては、外部の訪問看護師が施設内に入る際のルール(訪問時間帯や感染対策の手順など)を定めている場合があります。事前に施設管理者と話し合い、訪問時の動線や使用できる設備を確認しておくとスムーズに運用できるでしょう。

ケアプランへの反映と多職種での情報共有体制

訪問看護の開始が決まったら、ケアマネジャーがケアプランに訪問看護の内容・頻度・目標を反映させます。介護保険のケアプランに直接位置づけるのではなく、医療保険による訪問看護として記載する点に注意が必要です。

施設看護師・訪問看護師・ケアマネジャー・主治医の4者が情報を共有できる体制を整えましょう。訪問ごとの記録を施設側にも共有し、バイタルサインの変化や処置内容を一元的に把握できると、入居者の安全を高められます。

手続きの順序主な対応者
主治医へ指示書の依頼入居者・家族・ケアマネジャー
訪問看護ステーション選定ケアマネジャー・家族
施設側との受け入れ調整ステーション管理者・施設管理者
ケアプランへの反映ケアマネジャー
サービス開始・多職種連携訪問看護師・施設看護師・主治医

訪問看護の算定単位と加算──特定施設入居者が対象になる報酬のルール

医療保険で訪問看護を算定する場合、基本療養費のほかに複数の加算が設けられています。施設入居者であっても算定対象となる加算は多く、正しく活用すれば必要な看護を十分に受けられます。ただし、訪問回数の上限など施設入居者ならではの注意点もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

訪問看護基本療養費の算定区分と金額

医療保険による訪問看護では、「訪問看護基本療養費」が基本の報酬単位となります。看護師が訪問した場合と准看護師が訪問した場合、また理学療法士等が訪問した場合でそれぞれ金額が異なります。

訪問1回あたりの滞在時間は30分から90分が標準的で、週3日までが基本です。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方は週4日以上の訪問も認められており、状態に応じて柔軟な対応が可能となっています。

特別管理加算やターミナルケア加算など施設入居者も対象となる加算

気管カニューレの管理や人工呼吸器の使用など、特に手厚い管理が必要な入居者には「特別管理加算」を算定できます。月に1回の算定で、訪問看護ステーションの収入面でも重要な加算です。

入居者が終末期を迎えた場合には「ターミナルケア加算」の対象にもなり得ます。死亡日および死亡日前14日以内に2回以上のターミナルケアを実施し、かつターミナルケアの提供に関する記録がある場合に算定が認められる仕組みです。

算定回数の上限と複数回訪問の取り扱い

通常の疾患では週3日・1日1回の訪問が上限ですが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当すれば制限が緩和されます。さらに、特別訪問看護指示書が出ている期間中は毎日の訪問が可能です。

1日に複数回の訪問が必要な場合には「難病等複数回訪問加算」の算定も検討できます。同一日に2回以上訪問した際に加算が認められるため、状態が不安定な入居者への対応力が高まります。

  • 通常の疾患:週3日まで・1日1回が原則
  • 厚生労働大臣が定める疾病等:週4日以上・1日複数回も可
  • 特別訪問看護指示書の交付期間:最長14日間は毎日訪問可

特定施設の看護体制と訪問看護ステーションの連携で実現する手厚いケア

施設看護師と訪問看護師がそれぞれの得意分野を活かして役割を分担すれば、入居者が受けられるケアの質は大きく向上します。日常的な健康管理を施設看護師が担い、専門性の高い医療処置や緊急時対応を訪問看護師が受け持つ体制が、安定した療養生活の土台になります。

施設看護師が担う日常の健康管理の範囲

特定施設に配置された看護師は、入居者のバイタルサイン測定、服薬管理、軽度な処置などの日常的な健康管理を担当しています。体調の変化を最初にキャッチするのは、毎日顔を合わせる施設看護師であることがほとんどです。

一方で、施設看護師は複数の入居者を同時にケアしているため、特定の入居者に長時間付き添うことが難しいという側面もあります。高度な医療処置を要する方には、外部の専門的な訪問看護が補完的な機能を果たします。

訪問看護師による専門的な医療処置の提供

在宅酸素療法の管理、中心静脈栄養(IVH)の管理、褥瘡(じょくそう・床ずれ)の処置、がんの疼痛コントロールなど、高度な医療行為は訪問看護師の専門領域です。施設では対応しきれない医療ニーズを、訪問看護が補うことで入居者は施設での暮らしを続けることができます。

とりわけ、人工呼吸器を装着している入居者や、頻繁な吸引が必要な入居者には、訪問看護師の定期的な訪問が欠かせないでしょう。施設看護師と訪問看護師が協力して観察と処置を分担する体制ができれば、入居者にとって安定した療養環境が生まれます。

夜間や緊急時の対応──24時間対応体制加算の活用

多くの特定施設では、夜間帯は介護職員のみの配置となります。夜間に急変が起きた場合、施設職員だけでは医療的な対応が限られるかもしれません。

訪問看護ステーションのなかには「24時間対応体制加算」を届け出ている事業所があり、夜間や休日でも電話相談や緊急訪問に対応しています。入居者の急変時に訪問看護師が駆けつけ、医師への報告や応急処置を行う体制が整っていれば、安心して施設生活を送れるでしょう。

担当者主なケア内容
施設看護師バイタル測定、服薬管理、軽度な処置、健康観察
訪問看護師高度な医療処置、疼痛管理、ターミナルケア、緊急時対応

特定施設と訪問看護の併用で起きやすいトラブルと対処法

制度上は併用が認められていても、実務の場面では算定ミスや情報共有の不備といったトラブルが起こり得ます。代表的な問題点をあらかじめ把握し、施設・訪問看護ステーション・ご家族それぞれが備えておくことで、多くのリスクを未然に防ぐことが可能です。

算定ルールの誤解が原因で返戻になるパターン

もっとも多いトラブルは、本来は医療保険で請求すべき訪問看護を誤って介護保険で請求してしまうケースです。保険の切り替えタイミングを見逃すと、数か月分の請求がまとめて返戻となり、ステーションの経営に影響を及ぼすこともあります。

対策として有効なのは、主治医から指示書が発行された日付、保険区分の切り替え日、対象疾病名を一覧で管理し、毎月のレセプト点検時に照合する仕組みを作ることです。ケアマネジャーや施設事務担当者との定期的な情報交換も欠かせません。

施設スタッフと訪問看護師のあいだで情報が途切れるリスク

施設看護師が把握している入居者の状態と、訪問看護師が訪問時に観察した情報がうまく共有されないと、ケアの方針にずれが生じます。たとえば、施設側で投薬内容が変更されたことを訪問看護師が知らないまま処置を行えば、思わぬ事故につながりかねません。

対処法としては、共通の連絡ノートや電子カルテの共有、サービス担当者会議への訪問看護師の出席などが効果的です。定期的な顔合わせの機会を設けることで、文字だけでは伝わりにくいニュアンスも共有できます。

入居者やご家族が相談できる窓口を知っておくと安心

制度の仕組みが複雑なため、入居者やご家族が不安を感じることは少なくありません。訪問看護の費用や回数、今後の見通しについて疑問が生じたときは、まず担当のケアマネジャーに相談するのが第一歩です。

ケアマネジャーで解決できない制度上の疑問は、各市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに問い合わせることもできます。こうした相談先をあらかじめメモしておくと、いざというときに慌てずに済むでしょう。

  • 担当ケアマネジャー:ケアプラン・サービス内容の相談全般
  • 市区町村の介護保険課:保険制度や負担割合の問い合わせ
  • 地域包括支援センター:介護・医療・生活全般の総合相談

よくある質問

特定施設入居者生活介護と訪問看護は同時に利用できますか?

特定施設入居者生活介護の報酬に看護サービスが含まれているため、訪問看護を別途算定することはできません。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や、主治医から特別訪問看護指示書が交付された場合には、医療保険を通じて訪問看護を利用することが認められています。

つまり、保険制度の区分が切り替わることで併用が成立する仕組みです。ご自身やご家族の状態が対象に当てはまるかどうかは、まず主治医やケアマネジャーに相談してみてください。

訪問看護の費用は特定施設の月額利用料とは別に発生しますか?

医療保険で訪問看護を受ける場合、その費用は特定施設の利用料とは別に発生します。医療保険の自己負担割合(1割・2割・3割)に応じて、訪問1回ごとの費用を負担することになります。

高額療養費制度の対象にもなるため、月々の医療費が一定額を超えた分は払い戻しを受けられます。具体的な負担額は訪問の頻度や加算の有無によって変わりますので、訪問看護ステーションに見積もりを依頼するとよいでしょう。

特定施設に入居中の方が訪問看護を受けるために指示書はどこで取得しますか?

訪問看護指示書は、入居者の主治医(かかりつけ医)に依頼して発行してもらいます。施設に嘱託医がいる場合はその嘱託医に依頼するケースが多いですが、外部の病院やクリニックの主治医に依頼しても問題ありません。

依頼する際は、現在の症状や必要な処置内容、訪問看護で期待するケアの目標を整理して伝えると、主治医が指示書を作成しやすくなります。ケアマネジャーを通じて依頼する方法もありますので、遠慮なく相談してみてください。

訪問看護を受けられる回数に上限はありますか?

医療保険による訪問看護の場合、通常は週3日・1日1回が上限です。しかし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方は週4日以上の訪問が認められ、1日に複数回の訪問も可能になります。

さらに、主治医から特別訪問看護指示書が交付されている期間は、最長14日間にわたって毎日の訪問が認められます。急性増悪や退院直後など集中的なケアが必要な時期に活用される制度で、状態が安定すれば通常の訪問回数に戻ります。

特定施設から退去した後に訪問看護を継続するには何が必要ですか?

特定施設から退去して自宅に戻る場合、訪問看護は引き続き利用できます。退去後は介護保険による訪問看護も選択肢に加わるため、医療保険と介護保険のどちらで利用するかをケアマネジャーと相談して決めることになります。

退去前から訪問看護を利用していた方は、同じ訪問看護ステーションに継続を依頼できるのが一般的です。退去後の生活環境に合わせてケアプランを再作成し、新たな主治医の指示書が必要になる場合もありますので、退去が決まった段階で早めに準備を進めてください。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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