主治医が発行する指示書があれば、看護師が自宅を訪問して点滴を実施できます。病院に足を運ぶ必要がないため、体力が低下している方や移動が難しい高齢者にとって大きなメリットがあります。
ただし、受けられる点滴の種類や頻度には条件があり、自宅での管理にはご家族の協力が求められる場面もあります。
この記事では、在宅での点滴を検討している方へ向けて、種類・費用・管理のポイント・注意すべきリスクまで、わかりやすくお伝えします。
訪問看護で点滴を受けるための条件と基本的な仕組み
訪問看護で点滴(輸液療法)を実施するためには、主治医が発行する「訪問看護指示書」および「在宅患者訪問点滴注射指示書」が必要です。点滴は医療行為であるため、指示書なしに看護師が自己判断で実施することは法律上認められていません。
医師の指示書がなければ点滴は始まらない
訪問看護で点滴を行う場合、主治医から「訪問看護指示書」に加えて「在宅患者訪問点滴注射指示書」が作成されます。指示書には、投与する薬剤の種類・投与量・投与速度・投与期間などが詳細に記載されます。
週4日以上の頻繁な訪問が必要な場合には「特別訪問看護指示書」が交付されることもあります。この指示書は最長14日間有効で、感染症の治療や状態が不安定な時期の集中的なケアに活用されます。
書類の手続きは訪問看護ステーションが主治医と連携しながらサポートしてくれるため、患者さん・ご家族が一から準備する必要はありません。まず「在宅で点滴を受けたい」という意向を主治医に伝えることが出発点です。
指示書の有効期間が切れると、いったん点滴を止めなければなりません。継続的に使用する場合は、更新のタイミングを訪問看護師とあらかじめ確認しておくと、途切れなくケアを受けることができます。
訪問看護ステーションと病院外来での点滴の違い
病院の外来で点滴を受けるには、受付・待機・処置・会計という一連の流れを経るため、体力の落ちた患者さんや移動に制限がある高齢者には大きな負担です。
訪問看護による在宅点滴では、患者さんが慣れた自宅の空間でリラックスして輸液を受けられます。住み慣れた環境で療養できることは、患者さんの精神的な安定にも好影響をもたらします。
一方で、自宅では医療設備が限られており、緊急時の対応スピードでは外来や入院に及ばない面もあります。どちらが適しているかは、病状・家族の介護力・居住環境などを総合的に見て主治医が判断します。
また、すべての訪問看護ステーションが点滴に対応しているわけではないため、契約前に必ず対応可否を確認することが大切です。
訪問看護師が点滴で担える処置の範囲
訪問看護師は、医師の指示のもとで点滴針の穿刺・薬剤のセット・投与中の患者観察・抜針という一連の処置を担います。中心静脈カテーテル(CVポートを含む)を通じた高カロリー輸液の管理も、指示があれば対応可能です。
ただし、訪問看護師が独自の判断で薬剤の種類や投与量を変更することはできません。状態変化があった場合は主治医に連絡を取り、新たな指示を受けたうえで対応します。これは患者さんの安全を守るための医療制度上の仕組みです。
訪問看護師が行える行為の範囲は、保健師助産師看護師法によって定められています。注射・点滴・検温・血圧測定・傷の処置など、日々の療養生活のサポートから医療的処置まで、一人の看護師が柔軟に対応できることが訪問看護の強みです。
自宅で受けられる点滴の種類と、それぞれの目的
在宅で実施できる点滴にはいくつかあり、患者さんの病状・治療目的・体の状態によって使い分けられます。最終的に輸液の種類を決めるのは主治医ですが、どのような選択肢があるかを知っておくと、主治医との話し合いがよりスムーズです。
水分・電解質の補給を目的とした輸液
最もよく使われるのが、脱水や電解質異常(血液中のナトリウム・カリウムなどのバランスの乱れ)を補正するための輸液です。食欲の低下・嘔吐・下痢が続いて口から水分を十分に摂れない場合、発熱による消耗が激しい場合などに用いられます。
使用される輸液は生理食塩液・リンゲル液・ブドウ糖液など、比較的シンプルな組成のものが中心です。高齢者が夏の時期に食欲不振で水分が摂れなくなり、入院を避けるために在宅での補液を活用するケースは、在宅医療の現場でも見られます。
状態が安定すれば点滴なしの生活に戻れることも多く、短期集中型の活用が一般的です。こうした補液目的の在宅点滴は、患者さんの入院を回避する手段として重要な役割を果たしています。
栄養補給のための中心静脈栄養と末梢静脈栄養
口から食事が長期間難しい状態が続く場合、栄養を補給することを主な目的とした輸液が選択され、投与ルートによって2種類に分かれます。
末梢静脈栄養は腕などの細い血管(末梢静脈)から糖分・アミノ酸・脂肪乳剤などを投与する方法で、比較的短期間の栄養補給に用いられます。
中心静脈栄養(TPN)は鎖骨下や頸部などの太い血管(中心静脈)に専用カテーテルを留置して高カロリーな輸液を投与する方法です。経口摂取が不可能な状態でも必要な栄養素を補えるため、長期的な在宅管理が必要な患者さんに適しています。
CVポートと呼ばれる皮下埋め込み型のポートを使うケースも多く、訪問看護師が定期的にルートの管理を行います。
| 点滴の種類 | 主な目的 | 使用の場面 |
|---|---|---|
| 電解質輸液 | 脱水・電解質の補正 | 食欲不振・嘔吐・下痢・発熱が続く場合 |
| 末梢静脈栄養 | 短期的な栄養補給 | 食事量が一時的に低下している場合 |
| 中心静脈栄養(TPN) | 長期的な高カロリー補給 | 経口摂取がほぼ不可能な場合 |
| 抗生剤投与 | 感染症の治療 | 蜂窩織炎・誤嚥性肺炎の在宅治療 |
| 鎮痛・緩和薬 | 疼痛・症状コントロール | がん終末期・在宅緩和ケア |
| 利尿薬・強心薬 | 心不全の症状管理 | 浮腫・呼吸苦がある場合 |
抗生剤・鎮痛薬などの薬剤の在宅投与
感染症の治療のために抗生剤を点滴で投与するケースも、在宅で実施されることがあります。蜂窩織炎や誤嚥性肺炎の軽症例では、在宅医療の整備が進んだことで、自宅での抗生剤投与が現実的な選択肢になってきました。
また、がんによる慢性的な痛みの緩和を目的として、オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)を持続皮下注射または持続静脈注射で投与する方法も、在宅緩和ケアの中で広く活用されています。
痛みのコントロールは在宅生活の質に直結するため、訪問看護師と主治医が密に連携しながら薬剤の調整を行います。
在宅点滴を始める前に整えておきたい自宅の環境と準備
在宅で点滴を受けるには、療養環境を事前に整えておくことが安全な実施の前提になりますが、病院とは異なり、自宅には医療設備が備わっていません。だからこそ、準備の段階でしっかり確認しておくべきポイントがあります。
点滴を行うスペースと患者さんの体位を確保する
点滴中は原則として安静を保つ必要があります。ベッドや布団上で仰向けあるいは上体を少し起こした体位(半座位)が保てるスペースを確保しましょう。
点滴バッグを吊るすための点滴スタンドが必要になるケースが多いですが、訪問看護ステーションまたは医療機器のレンタル業者から用意してもらえる場合がほとんどで、事前に確認しておくと手続きがスムーズです。
点滴中は腕が固定されるため、トイレへの移動が難しくなることがあるので、ポータブルトイレの設置や尿器の使用など、排泄ケアの段取りも事前に看護師と相談しておきましょう。
薬剤・消耗品の保管と医療廃棄物の処分
輸液製剤や使用する消耗品(輸液セット・アルコール綿・医療用テープなど)は、自宅で保管する必要があります。冷蔵保存が必要な薬剤については、食品と混在しないよう冷蔵庫に専用スペースを確保してください。
室温保存でよい製剤も、直射日光・高温多湿を避けた清潔な場所に置くことが基本です。また、使用期限の管理も忘れずに行いましょう。
使用済みの注射針や輸液バッグは、医療廃棄物として処分する必要があります。看護師が回収に対応するケースと、廃棄ボックスをレンタルして自宅で一時保管するケースがあるため、どのような方法になるかを契約時に確認してください。
| 準備項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 療養スペース | ベッドまたは布団で安静が保てる場所の確保 |
| 点滴スタンド | ステーションまたはレンタル業者から手配 |
| 薬剤保管場所 | 冷蔵が必要かを確認し、食品と分けて保管 |
| 医療廃棄物の処分方法 | 看護師回収か廃棄ボックスかを契約時に確認 |
| 緊急連絡先の掲示 | ステーション・主治医・救急番号を見える場所に貼付 |
| 排泄ケアの段取り | 点滴中のトイレ対応を事前に決めておく |
家族が事前に知っておくべき観察ポイント
自宅での点滴は、看護師が常に傍にいるわけではありません。看護師が帰宅した後の時間帯に家族がどう対応できるかが、安全な在宅点滴の継続に大きく関わります。
最低限、刺入部の腫れ・赤み、患者さんの体調変化(顔色・表情・呼吸の様子など)を観察できるよう、家族全員で事前に説明を受けておきましょう。
「何かあったらどこに連絡するか」「どんな症状が出たら緊急か」を家族全員が把握していると、いざというときに慌てずに動けます。訪問看護師に依頼すれば、家族向けの説明の場を設けてもらえることが多いため、積極的に活用してください。
特に独居の方や、日中に家族がいない状況で在宅点滴を行う場合は、緊急時の連絡手段を事前に複数確保しておくことが重要です。見守りセンサーや緊急通報装置の設置を福祉サービスと組み合わせることで、安全確保につながります。
訪問看護での在宅点滴に伴うリスクと合併症を正しく把握しよう
点滴は安全に行われる医療行為ですが、感染・血管外漏出・水分過多といった合併症が起きることがあり、自宅という環境では発見が遅れるリスクもあります。それぞれの症状と対処法を知っておくことが、予防の第一歩です。
刺入部の感染(静脈炎)を早期に見つけるポイント
点滴針を刺している部位は、細菌が体内に入りやすい経路です。刺入部の周囲に赤み・腫れ・熱感・押したときの痛みが出てきた場合、静脈炎または感染が起きている可能性があります。症状が軽いうちに報告することで、早期に対処できます。
中心静脈カテーテルを使用している場合は、感染が全身に広がるカテーテル関連血流感染症(CRBSI)のリスクがあります。発熱・強い悪寒・血圧の急低下などが見られた場合は、速やかに看護師または主治医に連絡してください。
血管外漏出が起きたときの見分け方と対処の手順
点滴中に針がずれて血管の外に出てしまうと、薬液が周囲の組織に漏れ出します。刺入部の周囲が腫れてくる、冷たく感じる、痛みや違和感がある、点滴の滴下が極端に遅くなるといった変化が見られたら、血管外漏出を疑いましょう。
発見したらまずクレンメ(輸液チューブの流量調節クリップ)を閉じて点滴を止めてください。刺入部を心臓よりやや高い位置に保ちながら、訪問看護師に連絡します。
自己判断で針を動かしたり刺し直したりすることは避けてください。特に抗がん剤のような組織障害性の強い薬剤が漏出した場合、組織への障害が深刻になるため、一刻も早い専門家の対応が必要です。
- 刺入部の赤み・腫れ・熱感・痛み→静脈炎・感染の可能性
- 刺入部周囲の腫れや冷感・点滴速度の急激な低下→血管外漏出の可能性
- 急な息苦しさ・横になると増す咳・下肢のむくみの急激な悪化→水分過多の可能性
- 発熱・強い悪寒・血圧の急低下→カテーテル感染の可能性
- 全身のかゆみ・じんましん・呼吸困難→薬剤アレルギー(アナフィラキシー)の可能性
水分過多(フルードオーバーロード)を防ぐための知識
心臓や腎臓の機能が低下している患者さんは、輸液によって体内の水分量が急に増えると心臓への負担が増し、肺に水がたまる肺水腫を起こすリスクがあり、特に高齢者・慢性心不全・慢性腎臓病を持つ方は注意が必要です。
輸液の速度や総量は主治医が状態に応じて厳密に設定しているので、自己判断で速度を速めることは絶対に避けてください。息苦しさが急に強くなった、横になると咳が出る、足のむくみが急激に悪化したといった症状は水分過多のサインです。
症状に気づいたら、すぐに訪問看護師または主治医に連絡してください。水分過多を防ぐために、日頃から体重を記録しておく習慣も有効です。
急に体重が増えた(例えば1〜2日で1kg以上の増加)場合は、水分が体内に過剰にたまっているサインである可能性があります。毎日同じ時間・同じ条件で体重を量り、変化があれば看護師に報告しましょう。
ご家族が在宅点滴の管理を長く安心して続けるためのポイント
訪問看護師が常に傍にいない時間帯も、家族が適切に観察と対応ができれば、在宅での点滴は安全に続けていけます。専門的な技術は求められません。日々の観察習慣と「迷ったらすぐ連絡」という心構えが、安全な在宅管理の土台になります。
毎日確認したい刺入部・速度・体調の3点セット
点滴中に家族が毎日確認してほしいのは主に3点です。まず刺入部の皮膚状態(赤みや腫れ・にじみがないか)、次に点滴バッグの残量と滴下速度、そして患者さん自身の体調変化(顔色・表情・呼吸の様子など)です。
「おかしいかもしれない」という感覚が少しでもあれば、すぐに訪問看護師に電話してください。「大したことではないかもしれない」と思って連絡を控える必要はまったくありません。小さな変化の早期連絡が、大きなトラブルを未然に防ぎます。
| 確認項目 | 正常な状態 | 異変時の対応 |
|---|---|---|
| 刺入部の皮膚 | 赤み・腫れ・にじみがなく清潔 | 変化があれば速やかに看護師へ連絡 |
| 点滴の滴下速度 | 指示通りの速さで落ちている | 極端な変化は触らず看護師へ連絡 |
| バッグの残量 | 予定通りのペースで消費されている | 空になりそうなら事前に連絡 |
| チューブの状態 | ねじれや屈曲がない | 軽くほぐして改善しない場合は連絡 |
| 患者の体調 | 顔色良く呼吸が安定している | 息苦しさ・顔色不良は緊急連絡 |
記録をつける習慣が在宅医療の質を高める
日々の観察内容を簡単にメモしておく習慣が、訪問看護師や主治医への情報共有の質を高めます。記録の内容は体温・血圧・食事量・排泄の状況・点滴に関して気になったことが中心で構いません。
「いつ・何を・どのように観察したか」が残っていると、主治医が状態変化を把握しやすいです。特に認知症や意思疎通が難しい患者さんの場合、家族が記録した日々の変化が医療判断の重要な情報源になります。
精神的な負担を一人で抱え込まない工夫
在宅での点滴管理を続けていると、ご家族も「ちゃんとできているだろうか」「何かあったらどうしよう」という緊張感を抱えることがあります。これは多くのご家族が経験することで、決して珍しいことではありません。
訪問看護師は医療の専門家である前に、患者さんとご家族の生活全体を支えるパートナーです。困ったことや不安に感じることは、遠慮せずに相談してください。一人で抱え込まないことが、長く安心して在宅療養を続ける秘訣です。
高齢者・末期がん患者への在宅点滴で知っておきたいリスクと配慮
高齢者や終末期にある患者さんへの在宅点滴は、一般的なケースと異なる特有の判断が求められます。体の変化や治療目的が特殊であるため、リスクとメリットの両方を正しく理解したうえで選択することが重要です。
高齢者の血管の変化と穿刺の難しさ
加齢とともに血管は細くなり、弾力も失われます。皮膚のたるみから血管が見えにくくなるため、点滴針を刺す穿刺の難度が上がることがよくあります。1回で穿刺に成功しないこともあり、繰り返しの穿刺は患者さんへの負担です。
どうしても末梢静脈の確保が難しい場合には、CVポートへの切り替えや、皮膚の下に輸液を投与する皮下注射を選択することもあります。穿刺が容易で感染リスクも比較的低く、高齢者の終末期における補液方法として活用が広がっています。
また、加齢に伴う心機能・腎機能の低下により、同じ量の輸液でも若い患者さんより過負荷になりやすい傾向があります。高齢者への輸液は、少量からゆっくり入れることが基本です。
終末期における輸液の判断は慎重に行う
人生の最終段階(終末期)において、点滴を続けることが患者さんの苦痛を和らげるとは限りません。過剰な輸液は体のむくみ(浮腫)を引き起こしたり、気道の分泌物が増えて苦しくなったりするリスクがあります。
「口から飲めないなら点滴を」という判断が、本人の苦痛を増やす結果になるケースもあることを知っておいてください。
本人が意思を表明できるうちに、終末期の医療・ケアについて本人・家族・医師・看護師が話し合うACP(アドバンス・ケア・プランニング)を進めておくことが大切です。
「点滴を続けるかどうか」という判断も、本人の意向を中心に据えた話し合いの中で決めていくことが、本人らしい最期につながります。
終末期に「もう点滴は必要ない」という判断がなされることは、決して諦めを意味するものではありません。本人の苦痛を最小限にして、残された時間を穏やかに過ごすための積極的な選択です。
認知症の方の点滴管理で特に気をつけること
認知症のある患者さんは、違和感を覚えた際に点滴針を自分で抜いてしまう(自己抜去)リスクがあります。完全に防ぐことは難しいため、訪問看護師は体位の工夫・固定方法の調整・輸液時間の短縮などで対応します。
また、痛みや体の異変を言葉で訴えることが難しいため、家族がより丁寧な観察を行うことが必要です。表情の変化・落ち着きのなさ・刺入部を気にする行動などを、異変のサインとして意識しましょう。
| 対象 | 特有のリスク | 主な対処法 |
|---|---|---|
| 高齢者全般 | 血管が細くもろい・心腎機能の低下 | 低速輸液・皮下輸液も検討 |
| 末期がん患者 | 過剰輸液で浮腫や喀痰増加のリスク | 緩和ケア方針に沿った少量輸液 |
| 認知症の方 | 針の自己抜去・痛みを訴えられない | 固定の工夫・短時間輸液・見守り強化 |
| 慢性心不全の方 | 水分過多で肺水腫のリスク | 輸液量・速度の厳格な管理 |
訪問看護での在宅点滴にかかる費用の目安と利用の流れ
在宅で点滴を受ける際の費用は、訪問看護の基本料金・点滴関連の加算・薬剤費などから構成されます。費用の全体像を把握しておくことで、在宅療養の計画を現実的に立てやすくなります。
在宅点滴にかかる費用の構成
訪問看護の利用料は、医療保険か介護保険のどちらを使うかによって計算方法が異なり、医療保険の場合は費用の1〜3割の自己負担が基本で、介護保険の場合は要介護度や利用限度額によって変わります。
点滴を実施する場合は、基本的な訪問看護費に加えて「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」「点滴注射指示加算」といった加算が算定されるケースがあります。
薬剤費(輸液製剤の費用)は処方を出した医療機関を通じて請求されます。輸液の種類・量・使用期間によって変わるため、主治医に概算を確認しておきましょう。訪問看護ステーションによっては交通費が別途かかる場合もあります。
| 費用の種類 | 内容 |
|---|---|
| 訪問看護基本療養費 | 医療保険における基本料(訪問1回あたり) |
| 点滴関連の加算 | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料など |
| 薬剤費 | 輸液製剤・消耗品(種類・量によって大きく異なる) |
| 交通費 | ステーションによっては別途請求 |
| 医療廃棄物処理費 | 廃棄ボックスのレンタルが必要な場合に発生 |
在宅点滴を利用するまでの手順
まず主治医に「自宅で点滴を受けたい」と相談します。主治医が医学的に必要と判断すれば、訪問看護指示書と在宅患者訪問点滴注射指示書が作成されます。
次に訪問看護ステーションと利用契約を結び、初回の訪問でアセスメント(患者さんの状態評価)が実施され、その後、看護師が薬剤・物品を準備して実際の点滴が開始されます。
すでに訪問看護を利用している場合は、主治医に追加の指示書を依頼するだけで比較的スムーズに始められることが多いです。
新たにステーションを探す場合は、地域の医療・介護連携室やケアマネージャーに相談すると、信頼できる事業所を紹介してもらえます。
訪問看護ステーションを選ぶときのチェックポイント
点滴対応の訪問看護ステーションを選ぶ際は、24時間対応の有無・点滴処置や中心静脈カテーテル管理の実績・担当看護師の経験年数・主治医のクリニックとの連携体制を確認しましょう。
特にTPNやCVポート管理など専門性の高い処置が必要な場合は、そうした処置に習熟した看護師がいるかを具体的に聞いてみることが安心につながります。
ステーションの規模や対応エリアも確認事項のひとつです。規模が大きいほど複数スタッフで対応できる体制が整っている場合が多いですが、少人数でも丁寧なケアを提供する小規模ステーションも多くあります。
医師との連携体制は、特に在宅医(訪問診療医)がいる場合に大切なポイントになります。訪問看護師と訪問診療医がすでに顔なじみの関係で連携しているステーションは、急変時の対応もスムーズです。
よくある質問
- 訪問看護での点滴は、週に何回まで受けられますか?
-
医療保険の訪問看護は週3回が原則ですが、主治医が医療上の必要性を認めて特別訪問看護指示書を発行した場合、最長14日間は毎日の訪問も可能です。
介護保険を利用している場合はケアプランや要介護度の設定によって変わるため、ケアマネージャーを通じた調整が必要になります。
点滴の内容によっては、訪問回数が少なくても安全に管理できるよう、在宅輸液ポンプを活用して一定時間かけてゆっくりと輸液する方法が取られることもあります。
- 訪問看護の点滴中に針が抜けてしまった場合、どう対処すればよいですか?
-
点滴中に針が抜けてしまったら、まず輸液チューブのクレンメ(流量調節クリップ)を閉じて点滴を止めてください。刺入部からわずかに出血している場合は、清潔なガーゼやタオルで軽く押さえます。
その後、落ち着いて訪問看護ステーションに連絡し、指示を仰いでください。自己判断で針を刺し直したりチューブを操作したりすることは、感染や血管損傷のリスクがあるため避けましょう。
- 在宅での点滴を受けている間、入浴やシャワーはできますか?
-
点滴針が留置されている間の入浴・シャワーは、基本的に制限されます。刺入部が濡れると感染のリスクが高まり、針の固定がはずれる危険もあるためで、湯船への入浴は点滴留置中は行わないことが原則です。
清潔を保つためには、刺入部を防水フィルムでしっかり覆ったうえでのシャワーや、蒸しタオルで全身を拭く清拭を代替として行う方法がとられます。
- 訪問看護の点滴を受けるには、どのような病状や状態であることが条件になりますか?
-
訪問看護での点滴は、主治医が医学的に必要と判断した方が対象です。脱水・栄養不足・感染症の治療・疼痛緩和など、点滴による治療が医学的に有効と認められる状態であれば対象となります。
高齢で通院が困難な方、がんの緩和ケアを受けている方、術後の回復中で自宅療養している方など、幅広い状況で活用されています。
ご自身やご家族が対象になるかどうかわからない場合は、まず主治医に相談することが最初の一歩です。訪問看護師や地域の医療連携室も、相談に乗ってくれます。
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