家族が日中仕事で家を空けている時間帯や、一人暮らしをされている方でも、訪問看護サービスは全く支障なく利用できます。
看護師が責任を持って鍵をお預かりし、不在時の入退室から医療処置まで完結させる体制が整っているからです。
この記事では具体的な鍵の管理方法や、独居ならではの活用法について、実例を交えて詳しく解説します。
家族の留守や一人暮らしでも訪問看護サービスを安心して継続できる理由
日中に家族が不在の家へ他人が入ることに不安を感じる方は少なくありませんが、訪問看護は独居世帯の増加に対応した万全の運用体制を確立しています。看護師は単なる医療提供者としてだけでなく、不在時の住まいを守るパートナーとしての役割も果たします。
不在時の入室手段として活用される鍵の預かりやキーボックスの仕組み
不在時の訪問で最も重要なポイントは、看護師がどのようにして安全に室内へ入るかという点です。多くの事業所では、家族や本人からスペアキーを直接お預かりする鍵預かり契約を結び、厳重な管理の下で運用しています。
管理方法は事業所によって異なりますが、社内の金庫で二重施錠して保管し、持ち出し記録を徹底するのが一般的です。鍵を預けることに抵抗がある場合は、玄関先に設置するキーボックスを活用し、訪問時のみ暗証番号で開閉する方法も選べます。
最近ではスマートフォンで解錠できるスマートロックを導入する世帯も増えており、入退室の履歴がリアルタイムで家族に通知される仕組みも普及しています。どのような方法であっても、防犯性を最優先に考えた最適な手段を提案いたします。
契約時には紛失時の対応や賠償責任についても書面で明確にするため、口約束ではない公的な安心感を得られます。不特定多数ではなく、資格を持った決まったスタッフが訪問することで、信頼関係に基づいたスムーズな入室が実現します。
看護師が不在時に実施する健康チェックと医療的ケアの範囲
家族がいない時間帯の訪問では、看護師は普段以上に細やかな観察眼を持ってケアにあたります。まずは入室直後の室温管理や本人の表情、意識レベルの確認から始まり、生活環境に異変がないかを素早く察知します。
具体的なケア内容は、バイタルサインの測定から床ずれの処置、カテーテルの管理、服薬の介助まで多岐にわたります。特に独居の場合は、本人だけでは気づきにくい小さな体調の変化を早期に発見することが、重症化を防ぐための要です。
| ケア項目 | 留守中の対応内容 | 安心のポイント |
|---|---|---|
| 全身の観察 | 皮膚の状態や浮腫、顔色の確認 | 家族が気づけない予兆を発見 |
| 服薬管理 | 飲み忘れ確認とセット作業 | 薬の誤使用や中断を防止 |
| 環境整備 | 室温調整や転倒要因の排除 | 室内事故の発生を未然に防ぐ |
訪問後の様子を共有する連絡ノートによる確実な情報伝達
家族が不在の間に何が行われたのかを知ることは、同居家族にとって大きな安心材料です。看護師は退室前に必ず連絡ノート(訪問看護記録書)を記入し、ケアの詳細や本人の様子、食事の摂取量などを丁寧に記します。
このノートは家族との大切な架け橋となり、帰宅した家族はノートを見るだけでその日の経過を完璧に把握できます。単に事実を記すだけでなく、本人がその時に話した言葉や、穏やかな表情を浮かべていたことなどもお伝えします。
デジタルツールを導入している事業所では、LINEや専用アプリを通じて、訪問終了後すぐにメッセージを送信する場合もあります。写真や動画を添えることで、離れた場所で働く家族も、あたかもその場にいたかのような安心感を得られます。
情報の共有は一方通行ではなく、家族からの要望や気になった点もノートを通じて看護師に伝えることが可能です。この継続的なやり取りが、顔を合わせる機会が少ない不在時の訪問においても、強固な信頼関係を育む土台となります。
日中の留守番時間を狙った訪問看護の活用で家族の介護負担を軽減する
仕事や外出を控える理由として、家族を一人にすることへの罪悪感や不安を挙げる方は非常に多いのが現状です。訪問看護を日中の空白時間に組み込むことで、プロの見守りが入り、家族が自分の時間を安心して確保できるようになります。
仕事や外出を諦めないための日中訪問スケジュール調整
家族の勤務体系や活動時間に合わせて、訪問の曜日や時間帯を柔軟に設定することが可能です。例えば、最も不安が募る昼食時の服薬時間に合わせて訪問し、誤嚥のリスクを抑えながら食事の様子を確認することも大切です。
決まった時間に専門家が来るという習慣は、本人の生活リズムを整える効果も期待でき、認知症の周辺症状の緩和にも寄与します。家族が安心して社会参加を続けることは、経済的な安定だけでなく、家庭全体の活力を生み出す源となります。
急な仕事の都合などで訪問日時を変更したい場合も、早めにご相談いただければ可能な限り調整を行います。一人で抱え込まず、チームで支える体制を整えることで、介護のためにキャリアや私生活を犠牲にする必要がなくなります。
ケアマネジャーと連携し、デイサービスのない日を訪問看護で埋めるなどのパズルのような調整も、得意分野です。家族のライフスタイルに合わせたオーダーメイドのケアプランを構築し、無理のない在宅療養を継続しましょう。
緊急時の連絡体制とバックアッププランの構築
訪問中に万が一の事態が発生した際、看護師が現場にいることほど心強いことはありません。主治医や救急隊と直ちに連絡を取り、医療のプロとして迅速な初期対応を行いながら、家族への状況報告を同時に並行させます。
不測の事態に備えて、事前の契約時に緊急連絡先の優先順位や、搬送先の希望などを詳細に確認しておきます。このバックアップ体制があるからこそ、家族は遠方への外出や、会議などの手を離せない仕事にも集中できるようになります。
一人で留守番をさせている時に事故が起きても、誰も気づかなければ手遅れになる恐れがありますが、訪問看護があればそのリスクは最小限になります。現場の状況を冷静に判断し、次に何をすべきかを看護師が指示することで、家族のパニックも防げます。
不在時の緊急対応は、事前のシミュレーションと情報共有がすべてです。本人の既往歴やアレルギー、現在の治療状況を完璧に把握しているため、救急搬送時にも適切な情報を医療機関に提供でき、治療の迅速化に貢献します。
家族が不在だからこそ見えてくる生活上の課題と改善案
家族がいる前では元気を取り繕う患者さんも、一人で過ごしている時には本当の辛さや不便さを漏らすことがあります。看護師が留守中に訪問することで、普段は見えにくい日常生活のリアルな課題を浮き彫りにすることが可能になります。
例えば、一人でトイレに行く際に転倒しそうになっていたり、冷蔵庫の奥に期限切れの食品が溜まっていたりといった些細な異変です。これらは在宅生活の危機を知らせるサインであり、早期に発見することで大きな事故を未然に防げます。
私たちは生活の場を観察する専門家として、手すりの増設や照明の改善、自助具の導入など、ご本人が一人でも安全に動けるための提案をします。家族の不在時こそが、自立度を正確に測定し、適切な支援プランを練るための貴重な機会です。
生活環境の改善は、ご本人の自信を取り戻すことにも繋がり、一人で留守番をすることへの不安を和らげる効果もあります。専門職の視点を取り入れることで、ただ耐えるだけの介護から、より安全で快適な暮らしへとアップデートしていけます。
- 独居者のための安否確認を兼ねたバイタルチェック
- 一人では難しいインスリン注射や点滴などの医療的介入
- 家族不在時の排泄ケアと皮膚トラブルの早期発見
- 服薬カレンダーのセットと確実な服用状況の確認
一人暮らしの高齢者が自宅で安全に過ごすための訪問看護導入のメリット
住み慣れた家で一人で暮らし続けたいという願いを叶えるためには、医療的なバックアップが欠かせません。訪問看護は、独居高齢者が直面する孤立のリスクを解消し、身体と心の両面から生活の質を維持するための重要なインフラとなります。
孤独死のリスクを遠ざける定期的な安否確認と体調管理
独居世帯にとって最も恐ろしいのは、体調を崩しても誰にも助けを呼べない状況です。訪問看護が週に数回でも入ることで、生存確認としての機能が果たされ、異常があれば直ちに対応が開始される体制が確立されます。
看護師は訪問ごとに呼吸音や心音の聴診、脱水症状の有無などを医学的に評価し、病状の悪化を予測して先手を打ちます。一人では見落としがちな微熱や食欲不振なども、専門家が見れば重篤な疾患の前触れであることに気づける場合が多いです。
この定期的なチェックがあるからこそ、一人で暮らす不安は大幅に軽減され、精神的な安定が保たれます。また、地域の民生委員やケアマネジャーとも情報を共有し、地域全体で見守るネットワークの中心的な役割を私たちが担います。
安否確認は単なる動作の確認ではなく、ご本人の尊厳を守るための活動です。誰とも話さない日が続くことを防ぎ、社会との繋がりを感じてもらうことで、一人暮らしに伴ううつ傾向や認知機能の低下を予防することにも繋がります。
セルフケアが困難な場合の服薬支援と清潔保持の工夫
一人で生活していると、入浴や清拭などの清潔ケアがおろそかになりやすく、それが皮膚疾患や感染症の原因となります。訪問看護師は、ご本人の体力や住環境に合わせた最適な入浴介助を行い、心身ともにリフレッシュできる時間を提供します。
服薬に関しても、独居では管理が非常に難しくなります。薬の重複服用や飲み忘れは命に関わるため、薬剤師と連携して、一包化された薬を正しく服用できるように管理し、副作用の出現がないかも厳重に監視します。
特に複数の診療科にかかっている場合、処方される薬の種類が増え、本人が混乱してしまうケースが多く見られます。看護師が整理を行い、カレンダーにセットすることで、日々の服薬がストレスなく確実に行えるようサポートいたします。
清潔と服薬、この二つの基本をプロが支えることで、一人暮らしでも健康状態を高いレベルで維持できます。自分だけでは手が回らない部分を看護師が補うことで、住み慣れた家での暮らしを一日でも長く、快適に続けることが可能です。
生活環境のバリアフリー化と事故防止への専門的な助言
一人暮らしの家では、ちょっとした転倒が寝たきりの原因になりやすく、事故を未然に防ぐための環境整備が重要です。看護師は家の中の動線をチェックし、躓きやすいカーペットの端や、夜間の暗い廊下などの危険箇所を特定します。
単にバリアフリー化を勧めるだけでなく、本人の残存能力を活かせるような配置を提案します。どこに手すりがあれば自力で立ち上がれるか、椅子をどこに置けば途中で休憩できるかなど、生活のリズムに即した具体的な助言を行います。
火の不始末や戸締まりの確認も、訪問時の大切なチェック項目です。調理が危うくなってきた場合には、配食サービスの導入を提案したり、電子レンジだけで調理できるメニューを一緒に考えたりと、生活の知恵を共有することもあります。
安全な環境は、本人の活動範囲を広げることにも繋がります。安心して動ける家であれば、室内での歩行距離が伸び、筋力の維持やロコモティブシンドロームの予防にも貢献します。一人暮らしを支えるのは、こうした細かな配慮の積み重ねです。
| 確認段階 | 具体的な実施内容 | 担当者の役割 |
|---|---|---|
| 契約時 | 緊急連絡先と鍵の管理方法の決定 | ステーション管理者・家族 |
| 訪問時 | 入室時の声掛けと室温・異変確認 | 担当看護師 |
| 退出時 | 火元・施錠の最終確認と報告記載 | 担当看護師 |
他人が家に入る抵抗感を解消し信頼関係を築くためのステップ
留守中の家に他人が入る、あるいは一人でいる時に知らない人が来るというのは、最初は誰でも抵抗を感じるものです。看護師はその心理を十分に理解した上で、時間をかけてご本人の心の壁を溶かし、信頼できる家族のような存在を目指します。
初回訪問時の丁寧な対話による本人の不安の聞き取り
初めての訪問では、あえて医療処置を最小限にし、対話を優先することもあります。どのようなことに困っているのか、何をされるのが嫌なのかを、本人のペースで話してもらうことで、看護への拒絶反応を和らげるように努めます。
家族が同席できる時間帯に初回訪問をセッティングし、家族から看護師を紹介してもらうことも非常に有効です。家族が信頼している人だということが伝われば、本人の不安は大きく解消され、留守中の訪問を受け入れやすくなります。
ご本人の人生の歴史を尊重し、趣味や大切にしている習慣についてもお聞きします。ただの患者としてではなく、一人の人間として向き合う姿勢が伝わった時、初めて心の扉が開かれ、深い信頼に基づいたケアが可能になります。
不安が強い場合には、訪問頻度や時間を段階的に増やしていくスモールステップの導入も検討します。ご本人が自分の生活の主導権を握っていると感じられるよう配慮しつつ、寄り添う姿勢を貫くことで、徐々に抵抗感は消えていきます。
プライバシーの保護と家財道具の取り扱いに関するルールの徹底
不在時の入室において、プライバシーへの配慮は最も厳格に守られるべきルールです。看護師はケアに必要な場所以外には決して立ち入らず、引き出しやクローゼットなどを勝手に開けることも絶対にありません。これはプロとしての鉄則です。
水道やトイレの使用に関しても、事前に家族と取り決めを行い、使用した後は入室前よりも綺麗な状態にして退室することを心がけています。家財道具や貴重品の取り扱いについても、事業所全体で高い倫理観を持って指導を行っています。
生活の場を借りているという感謝の気持ちを忘れず、些細な変化にも気づけるよう配慮します。例えば、ご本人が大切にしている写真の位置を動かさない、花瓶の水が少なければ足しておくといった、生活への敬意を払った行動を積み重ねます。
万が一、備品を破損してしまった場合の報告ルートも確立されており、誠実な対応を約束します。こうしたプロとしてのマナーを徹底することが、他人が入ることの心理的なハードルを下げ、安心感のある在宅環境を育むことに繋がります。
担当看護師の固定化による安心感と継続的なコミュニケーション
毎回違う看護師が来ると、その都度一から説明が必要になり、ご本人の精神的な負担が増大します。可能な限り同じ看護師が訪問を継続する担当制を採用することで、性格や細かな好みを把握した上でのケアを提供できるようになります。
顔馴染みのスタッフであれば、留守中の入室であっても本人は安心して迎え入れることができます。前回の会話の続きをしたり、体調の微妙な変化にいち早く気づいたりと、固定の担当だからこそできる細やかなコミュニケーションが強みです。
体調が悪い時には、言葉にしなくても顔つきだけで状況を察することができるようになるのも、継続的な関わりがあればこそです。この阿吽の呼吸が生まれることで、本人は孤独感から解放され、自宅での生活に自信を持つようになります。
もちろん、担当者が休みの際や緊急時の代行体制も整えていますが、基本的な情報の引き継ぎは完璧に行います。誰が来ても同じ質のケアを受けられる安心感と、特定の誰かが自分を見てくれているという幸福感の両方を提供いたします。
- 入室・退室時の挨拶をはっきりと大きな声で行う
- ケアを始める前に必ず次の動作を説明する
- ご本人の趣味や昔の話に耳を傾け共感を示す
- 家族への連絡帳にポジティブな変化を積極的に記す
不在時の入退室でトラブルを未然に防ぐ防犯対策と鍵管理のルール
留守中の訪問を安全に行うためには、防犯面での完璧な対策が不可欠です。単に鍵を開けて入るだけでなく、訪問の最初から最後まで、犯罪や事故を寄せ付けないための厳格なセキュリティプロトコルに従って行動しています。
スマートロックやキーボックスを活用したデジタル管理の導入
物理的な鍵の紛失リスクを最小化するために、最新のデジタルツールの導入を推奨しています。例えばスマートロックであれば、特定の看護師にのみ一時的な解錠権限を付与でき、いつ誰が解錠し、施錠したかがログとして正確に残ります。
これにより、家族は外出先からでも訪問状況をスマホで確認でき、不透明な入退室が発生する余地を排除できます。また、キーボックスを使用する場合でも、暗証番号を定期的に変更するなどの運用ルールを徹底し、安全性を高めています。
鍵を事業所で保管する場合は、IDカードによる入退出管理がなされた保管庫で管理するのが標準です。誰がどの鍵を何時に持ち出し、何時に返却したかがデジタルで記録されるため、内部不正や管理ミスを構造的に防ぐ仕組みが整っています。
アナログな手法であっても、鍵にはステーション名や住所を記載せず、暗号化された番号札のみを付けることで、万が一の紛失時にも住所が特定されないよう配慮しています。技術と運用の両面から、大切な鍵を責任を持って守り抜きます。
契約書に明記される免責事項と損害賠償保険の備え
プロのサービスとして、万が一のトラブルへの法的・経済的な備えも万全です。契約時には、鍵の預かりに関する重要事項説明を行い、万が一の紛失や事故が発生した際の補償範囲や、緊急時の立ち入り権限について明確に合意を得ます。
訪問看護ステーションは多額の損害賠償保険に加入しており、訪問中に過失によって家具を壊したり、ご本人に怪我をさせたりした場合には、保険による補償がなされます。
| 対策区分 | 具体的な内容 | 得られる安心感 |
|---|---|---|
| 鍵の保管 | ステーション内金庫での二重施錠管理 | 紛失や複製による不正利用の防止 |
| 入退室管理 | 社内システムへのリアルタイム打刻記録 | 不透明な滞在の排除と確実な勤務証明 |
| 安全点検 | 退出前の火元・水回り・戸締まり確認 | 火災や浸水、防犯上の二次被害防止 |
退出時の火の元チェックと窓の施錠確認をルーチン化する
医療的なケアが終わった後の最後の仕事は、住まいの安全確認です。看護師は必ず退出前にキッチン、浴室、リビングを巡回し、ガスの元栓が閉まっているか、水道が止まっているか、電気器具に異常がないかを自分の目で確かめます。
特に認知症がある方の場合は、知らぬ間に窓を開けていたり、不要な電気製品を動かしていたりすることがあります。看護師はチェックリストを用い、すべての窓が施錠されているか、玄関の鍵が確実にかかっているかを指差し確認して退室します。
退出した直後、ステーションへ「無事終了し施錠を確認した」旨を報告することも徹底しています。このルーチンがあることで、家族が帰宅した時に家が荒らされていたり、事故が起きていたりするリスクを徹底的に排除することが可能です。
認知症がある一人暮らしの方へ訪問看護ができる生活支援
認知症の方が一人で留守番をしたり、独居を継続したりすることは、社会的な支援があれば十分に可能です。訪問看護は、認知症による判断力の低下を専門的な知識で補い、ご本人が自分らしく自宅で過ごせるよう、生活のペースメーカーとしての役割を果たします。
服薬ミスの防止と曜日別お薬カレンダーによる確認作業
認知症の方にとって、薬の管理は最も困難でリスクの高い作業です。飲んだことを忘れて何度も飲んでしまったり、逆に何日も飲み忘れたりすることで、病状や精神状態が不安定になるという悪循環を、訪問看護が断ち切ります。
看護師は訪問時に必ず薬箱やカレンダーを点検し、適切に服用されているかを確認します。残薬の計算から逆算して、不在時の服薬状況を正確に把握し、ミスがあれば主治医に報告して処方方法の簡略化などを提案することもあります。
飲み忘れを防ぐために、あえて訪問時に目の前で飲んでいただくこともあります。また、薬袋に大きく「朝」「夕」と記したり、色が違うシールを貼ったりして視覚的に訴えるなど、本人の能力に合わせた工夫を凝らして自立を促します。
適切な服薬が継続されると、認知症の周辺症状が落ち着き、一人暮らしの安全性が飛躍的に高まります。薬の管理をプロに任せることは、本人の命を守るだけでなく、遠くで心配する家族の心の平穏を取り戻すことにも直結するのです。
不穏な状態を和らげる傾聴とタクティールケアの実施
夕方になると不安が強まり、外に出ようとしたり、誰かを大声で呼んだりする「夕暮れ症候群」は認知症によく見られる症状です。家族がいない時間にこのような状態になると危険で、看護師がその時間に寄り添うことで不安を鎮めることができます。
否定的な言葉を使わず、ご本人の話に深く耳を傾ける「傾聴」を大切にしています。自分の気持ちが受け入れられたと感じるだけで、不穏な状態は驚くほど落ち着くものです。これは医療職ならではの高度な対人技術です。
また、優しく手足に触れるタクティールケアを導入し、安心ホルモンと呼ばれるオキシトシンの分泌を促すことで、言葉以上の深い安らぎを提供します。人の手の温もりは、独居の孤独感を癒やし、本人の攻撃性や焦燥感を和らげる強力な薬です。
家族がいないからこそ、心の拠り所が必要で、看護師との穏やかな時間は、ご本人の情緒を安定させ、夜間の良眠にも繋がります。一日の終わりに「また明日ね」と声をかける人がいることが、一人暮らしを続ける大きな希望となります。
栄養不足や脱水を防ぐ冷蔵庫チェックと食事の促し
独居の認知症の方は、食事の用意を忘れたり、喉の渇きを感じにくくなったりすることで、低栄養や脱水症状を招きやすいです。看護師は訪問時に冷蔵庫の中をさりげなく確認し、腐敗した食べ物の破棄や、水分の補充を行います。
「お茶を飲みましょう」と誘い、一緒に水分を摂ることで、楽しみながら脱水予防を行います。また、食事が摂れていない場合は、ヘルパーさんや配食サービスと連携し、本人が食べやすい形態や味付けになっているかを確認し、改善策を練ります。
体重の変化や皮膚の乾燥状態を医学的に観察することで、栄養失調の兆候を早期に捉えます。一人ではどうしても栄養バランスが偏りがちですが、専門職が介入することで、身体の基礎を作る栄養状態を改善し、活動的な生活を支えます。
食べることは生きることそのものです。認知症があっても美味しく食事が摂れるよう、口腔ケアも併せて行い、誤嚥性肺炎のリスクも同時に管理します。生活の質を根本から支えるこうした地道な支援が、一人暮らしの継続を可能にします。
- 否定せず、ご本人の世界観に合わせた丁寧なコミュニケーション
- いつも同じ場所に大切なものを置くなどの環境整備アドバイス
- 幻覚や妄想などの症状に対する医学的な観察と主治医への報告
- 家族に対する介護のコツの伝達と精神的なカウンセリング
Q&A
- 家族が仕事で日中不在なのですが、訪問看護師の方は何時間くらい滞在してくれるのですか?
-
訪問看護の滞在時間は、ケアの内容やケアプランによって異なりますが、一般的には30分から1時間程度です。
日中の薬の管理や体調チェックを目的とする場合は30分、入浴介助やリハビリを兼ねる場合は60分といった調整がなされます。
家族が不在の数時間をずっと見守るわけではありませんが、要所にプロの目が入ることで、留守中の安全性が格段に高まります。
- 一人暮らしで鍵を預けるのが少し心配なのですが、訪問看護における鍵の管理方法はどのようになっていますか?
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訪問看護ステーションでは、預かった鍵を社内の専用金庫にて厳重に保管し、持ち出し記録を徹底しています。
また、最近では玄関に設置する暗証番号式のキーボックスを利用したり、スマートロックを導入したりするケースも増えています。
契約の際、紛失時の補償内容についても書面で交わしますので、ステーションの管理体制を確認した上で最適な方法を相談してみてください。
- 家族が留守の間に本人が急変した場合、訪問看護師の方はどのような対応をしてくれるのでしょうか?
-
訪問看護師が訪問中に急変を発見した場合、直ちにかかりつけ医へ連絡し、指示に基づいた応急処置を行います。
必要があれば救急車を要請し、救急隊員への引き継ぎも行います。
同時にあらかじめ登録されているご家族の緊急連絡先へ電話を入れ、現状と搬送先などを報告します。家族が不在であっても、医療の専門家が付き添い、命を守る最善の行動を代行します。
- 日中一人で過ごす家族が、訪問看護師さんの入室を嫌がってしまうのではないかと心配なのですが?
-
他人が家に入ることに抵抗を感じるのは自然な心理です。
訪問看護ステーションでは、最初は短い時間の訪問から始めたり、本人の趣味の話をすることから始めたりと、少しずつ心を開いてもらうためのステップを大切にします。
家族が同席できる初回訪問時に、本人にとって看護師が頼りになる味方であることを伝え、良好な関係を築くための橋渡しをすることが大切です。
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