訪問看護師による毎日のインスリン注射|依頼の可否と注意点

訪問看護師による毎日のインスリン注射|依頼の可否と注意点

糖尿病の治療において、毎日のインスリン注射は血糖値をコントロールし、合併症を防ぐために非常に重要です。

しかし、ご高齢で手元が確かでなかったり、視力の低下で注射器の目盛りが読み取りにくかったり、あるいは認知機能の変化で自己管理が難しくなったりと、ご自身やご家族だけで正確な注射を続けることに困難を感じるケースは少なくありません。

そのような時、在宅医療の専門家である訪問看護師に毎日のインスリン注射を依頼するという選択肢があります。

この記事では、訪問看護によるインスリン注射の基本的な考え方から、どのような条件で依頼できるのか、利点、利用する前に知っておくべき注意点まで、解説します。

目次

訪問看護による毎日のインスリン注射とは

訪問看護は、病気や障がいを抱えながらもご自宅での生活を望む方のために、看護師などの専門職が直接ご自宅を訪れて必要な医療ケアや療養上の支援を提供するサービスです。

多岐にわたる支援内容の中でも、インスリン注射は特に重要な医療処置の一つと位置づけられています。

訪問看護サービスの概要

訪問看護ステーションから派遣される看護師は、患者さんの自宅を計画的に訪問し、健康状態のチェック、医師の指示に基づく医療処置、日常生活を送る上での様々な支援を行います。

直接的な医療行為にとどまらず、血圧・体温・脈拍の測定、床ずれの予防や処置、体の清潔を保つための援助、食事や排泄に関する介助と助言、療養生活における不安や悩みに対する精神的なサポートまで、役割は非常に広範です。

主治医やケアマネージャー、薬剤師といった他の専門職と常に情報を共有し、連携しながら、チームとして在宅療養がより良いものになるよう支えます。

インスリン注射が訪問看護の対象になる理由

インスリン注射は、定められた単位数を、適切な部位へ、正しい手技で衛生的に注射することが求められる精密な医療行為です。

しかし、認知機能の低下によって注射の時間や打つべき単位数を忘れてしまったり、視力の衰えで目盛りが正確に読めなかったり、関節リウマチや脳梗塞後遺症などで手指の細かい動きが難しくなったり、自己注射が困難となる場合があります。

このような状況で、医療の専門家である看護師がご自宅まで訪問して注射を代行することで、治療の安全性と確実性を担保します。

治療が途絶えたり、不正確になったりすることは、血糖コントロールの悪化を招き、腎症や網膜症、神経障害といった深刻な合併症のリスクを高めるため、訪問看護の活用は在宅療養を継続する上で極めて重要な選択肢です。

訪問看護の対象となりやすい方の状態

状態具体的な内容訪問看護が提供する支援
視力の低下注射器の目盛りが読みにくい、インスリン製剤を取り違える看護師による正確な単位数の吸引と薬剤確認、確実な注射
手指の障がい震えで注射器が持てない、細かい操作が難しい安定した手技による苦痛の少ない安全な注射
認知機能の低下注射の時間や単位数を忘れる、二重に注射してしまう計画的な訪問による確実な実施と服薬管理

看護師が担う血糖管理の役割

訪問看護師の重要な役割は、インスリンを注射するという行為だけに留まりません。

毎回の訪問時に、血糖値の測定結果や血圧などのバイタルサインを確認し、患者さんの顔色、食欲、活気、睡眠状況、食事内容、活動量などを総合的にアセスメントします。

そして、低血糖(冷や汗、動悸、意識の混濁など)や高血糖(口渇、多飲、倦怠感など)の兆候がないか、注射部位に硬結(しこり)や発赤といった異常が発生していないかを専門的な視点で評価します。

日々の丁寧な観察により、ご本人やご家族では気づきにくい細かな体調変化を早期に捉え、速やかに主治医へ報告・相談することがです。

よりきめ細やかな治療方針の調整に繋がり、ご利用者様が安定した血糖値を維持しながら穏やかに生活できるよう、日々の健康管理を包括的に支援します。

訪問看護でインスリン注射を依頼できる条件

訪問看護サービスを利用してインスリン注射を依頼するためには、医療の安全と質を担保するためのいくつかの基本的な条件を満たす必要があります。ここでは、主な条件について具体的に説明します。

医師からの指示書の必要性

訪問看護師がインスリン注射をはじめとする一切の医療行為を行うためには、法律上、必ず主治医が発行する「訪問看護指示書」が必要で、看護師が行うべき医療ケアの内容を指示する公的な書類です。

指示書には、対象となる方の病名、必要とする処置の内容、使用するインスリンの種類や単位数、注射のタイミング(例:朝食前30分)など、治療に関する詳細な情報が明記されています。

看護師は、この指示書に記載された内容を厳守してケアを提供する義務があり、自己の判断で指示内容を変更したり、指示にない医療行為を行ったりすることは決してありません。

訪問看護の利用を考える場合、全ての始まりは主治医に相談し、訪問看護による専門的な支援が必要であるという医学的な判断を得て、指示書を発行してもらうことです。

訪問看護指示書に含まれる主な情報

記載項目内容の例
ご利用者様の氏名・病名山田太郎様・2型糖尿病、高血圧症
指示内容インスリン注射(ランタスXR 10単位)、血糖測定、血圧測定
実施時間・回数毎朝食前 1日1回

対象となる方の体の状態

インスリン注射を訪問看護師に依頼できるのは、原則として、ご自身での安全かつ正確な注射が身体的、あるいは精神的な理由で困難な状態にある方です。

視力や手指の機能に障がいがある方、認知症の進行により自己管理能力が低下している方などが主な対象となります。

また、病状が不安定で専門家による密なモニタリングが必要な方や、入院先から退院した直後で、在宅での療養環境にまだ慣れておらず強い不安を感じる場合なども、訪問看護の利用が積極的に検討されます。

自己注射が物理的に可能な方であっても、他に訪問看護を必要とする医学的な理由(例えば、重度の床ずれの処置など)がある場合には、訪問の一環としてインスリン注射の管理や手技の確認を支援することもあります。

家族の同意と協力体制

在宅療養は、ご本人と医療専門職だけで成り立つものではなく、ご家族の深い理解と積極的な協力があって初めて安定したものとなります。

訪問看護を導入するにあたっては、提供されるサービスの内容、訪問する時間帯、費用、緊急時の連絡体制などについて、ご家族全員が十分に理解し、その導入に同意していることが極めて重要です。

また、看護師が訪問していない時間帯に、ご本人の体調に何らかの変化が生じた際の連絡方法や、誰がどのように対応するのかについて、事前に家族と訪問看護ステーションの間で具体的な話し合いの場を持ち、ルールを決めておくことも大切です。

家族が支援チームの一員として協力体制を築くことで、より安心して質の高いサービスを利用することが可能になります。

訪問看護師にインスリン注射を依頼する利点

毎日のインスリン注射という重要な医療行為を、専門家である訪問看護師に依頼することには、多くの利点があります。単にご本人やご家族の負担を物理的に減らすだけでなく、医療的な安全性の向上、心の安定にも関係します。

正確な手技による安心感

最大の利点は、医療の専門家である看護師が、医師の指示書に基づき、常に正確で衛生的な手技で注射を行うことです。

インスリンの単位数を1単位でも間違えたり、毎回同じ部位に注射を続けて皮膚が硬くなる(リポハイパートロフィー)とインスリンの吸収が不安定になったりするなど、不適切な手技は血糖値の乱高下や皮膚トラブルの直接的な原因となります。

看護師は、薬剤の取り違えがないか複数回確認し、清潔操作を厳守し、毎回注射部位を適切にずらすなどの専門的配慮をしながら、安全かつ確実に注射を実施します。

専門的なケアが存在することにより、ご本人もご家族も、治療が正しく行われているという揺るぎない安心感を得ることが可能です。

看護師による注射の主な確認項目

  • 医師の指示書との照合
  • インスリンの種類と使用期限
  • 正確な単位数の吸引
  • 注射部位の確認と消毒
  • 注射後の状態観察

毎日の体調変化への迅速な対応

看護師は原則として毎日決まった時間帯に訪問するため、患者さんの日常の様子を継続的に把握でき、わずかな体調の変化にも気づきやすいというのが大きな利点です。

食欲が少し落ちている、普段より口数が少ない、顔色が優れない、足に小さな傷ができているといった、ご本人やご家族が見過ごしてしまいがちな微細なサインを、専門家の視点で早期に捉えることができます。

異常の兆候を発見した場合は、その場でアセスメントを行い、速やかに主治医に電話などで報告し、必要な指示を仰ぎます。

日々の健康状態を継続的に見守ることで、状態が悪化する前に対処することが可能となり、入院のリスクを減らすことにも繋がります。

看護師が観察する体調変化のポイント

観察項目具体的な内容対応
血糖関連症状冷や汗、動悸、意識レベルの低下、異常な喉の渇き血糖測定、補食、主治医への即時報告
全身状態顔色、食欲、活気、水分摂取量、睡眠状態状況に応じたケア、食事や水分摂取の工夫の助言
注射部位・皮膚発赤、腫れ、硬結(しこり)、内出血、傷や乾燥部位の変更、スキンケア、主治医への報告

家族の介護負担の軽減

ご家族が毎日のインスリン注射を担う場合、手技が正しいかという不安や、時間を間違えてはいけないという精神的なプレッシャーは、想像以上に大きいものです。

また、注射の時間に合わせて家族の誰かが常に在宅している必要があり、旅行や長時間の外出など、家族自身の生活にも大きな制約が生じることがあります。

訪問看護を利用することで、ご家族はインスリン注射という専門的な医療行為の責任から解放され、介護全体の負担が大幅に軽減されます。

時間的、精神的な余裕は、ご本人とゆっくり話したり、団らんを楽しんだりといった、家族としての温かい関係性を育むための大切な時間となり、在宅療養全体の質を向上させます。

精神的な安定の確保

毎日同じ看護師が定期的に訪問し、顔を合わせて会話をすることは、特に一人暮らしの方や日中を一人で過ごす時間が長い方にとって、精神的な支えとなります。

インスリン注射のことはもちろん、日々の生活の中での些細な不安や困りごと、嬉しかったことなどを気軽に話せる相手がいるということは、社会的な孤独感の解消に直接繋がります。

看護師との間に信頼関係が築かれることで、病気と共に生きていくことへの前向きな気持ちを保ちやすくなり、治療への意欲も自然と高まります。

インスリン自己注射と訪問看護の違い

インスリン治療において、ご自身で行う自己注射と、訪問看護師に依頼する方法は、どちらも有効な治療継続の手段ですが、その性質にはいくつかの重要な違いがあります。

どちらの方法がより適しているかは、ご本人の身体機能、認知機能、生活環境によって総合的に判断する必要があります。

手技の正確性と安定性

自己注射の場合、手技の正確性はご本人の疾患や治療に対する理解度、その時々の身体機能に大きく依存します。

体調が良い日は問題なくできても、少し疲れている日や気分が落ち込んでいる日には、手順を省略してしまったり、単位数を誤ったりするリスクが常に伴います。

訪問看護では、専門的な教育と訓練を受けた看護師が、毎回同じ手順と高い水準の注意力をもって注射を行います。この手技の安定性は、治療効果を最大限に引き出し、予期せぬ血糖変動を防ぐ上で非常に大きな利点です。

作用時間の異なる複数のインスリンを使用する複雑な治療法の場合や、病状に応じて単位数の微調整が頻繁に必要な場合には、看護師による厳格な管理がより安全で確実です。

手技の比較

項目自己注射訪問看護
実施者本人または家族看護師
正確性本人の能力やその日の体調に左右される可能性がある専門的な知識と技術により常に高いレベルで担保される
安定性日によって手技にばらつきが生じる可能性があるいつ訪問しても常に一定の質が保たれる

異常時の対応能力

インスリン治療には、低血糖や高血糖といった、時に迅速な対応を要する状態が起こる可能性があります。

自己注射の場合、異常を感じた際にはご自身やご家族がそのサインに気づき、緊急を要する状態かどうかを判断し、対処法(例えば低血糖時のブドウ糖摂取など)を行い、必要に応じて医療機関に連絡するという一連の行動が必要です。

訪問看護を利用している場合、看護師が訪問時に体調変化の兆候を早期に発見できる可能性が高まります。

看護師は、異常の兆候を認めた場合、その場で血糖測定などのアセスメントを行い、専門的な知識に基づいて迅速な初期対応を行うことができます。

異常時対応の主な流れ

  • 体調変化の覚知
  • 状態の評価(血糖測定など)
  • 初期対応(補食など)
  • 主治医への報告・指示確認
  • 救急要請の判断

総合的な健康管理の視点

自己注射は、インスリンを正しく注射するという特定の医療行為に焦点が当てられがちですが、訪問看護師はインスリン注射という行為を、患者さんの生活と健康全体の文脈の中で捉えます。

血圧の管理状況、糖尿病合併症で注意が必要な足の状態、処方されている薬剤の管理、食事療法や運動療法が無理なく実践できているかなど、総合的な視点から健康状態を継続的に管理し、療養生活をより良くするための助言を行います。

訪問看護における他職種との連携

在宅療養を成功させるためには、訪問看護師だけでなく、様々な専門職がそれぞれの専門性を発揮し、情報を共有しながら一つのチームとしてご利用者様を支えることが重要で、訪問看護師は、チームの中心的な役割を担います。

主治医との密な連携

訪問看護師は、在宅における主治医の「目」となり「耳」となります。

日々の訪問で得た患者さんのバイタルサイン、血糖値の推移、食事摂取量、心身の状態の変化といった詳細な情報を、定期的に、あるいは必要に応じて随時、主治医に報告します。

現場からの生の情報は、主治医が治療方針を決定したり、薬の量を調整したりする上で非常に貴重な判断材料です。

ケアマネージャーとの役割分担

ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護保険サービス全体の計画(ケアプラン)を作成する専門職です。

訪問看護師は、ご利用者様の医学的な状態や必要な医療ケアに関する専門的な情報を提供し、ケアマネージャーが適切なケアプランを作成できるよう支援します。

「最近、歩行が不安定になってきたため、転倒予防の観点からデイサービスの利用回数を増やしてはどうか」といった提案を行うこともあり、医療と介護がスムーズに連携するために、訪問看護師とケアマネージャーの協力は不可欠です。

他職種との連携内容

連携する職種主な連携内容目的
主治医日々の状態報告、治療方針の相談医学的管理の適正化
ケアマネージャー医療情報の提供、サービス担当者会議への参加適切なケアプランの作成
薬剤師・栄養士服薬状況の共有、食事内容の相談薬物療法の適正化、栄養状態の改善

薬剤師や栄養士との協力

糖尿病治療は、薬物療法と食事療法が両輪です。訪問看護師は、患者さんが処方通りに薬を飲めているか、副作用は出ていないかなどを確認し、情報をかかりつけの薬剤師と共有します。

必要であれば、薬剤師に在宅訪問を依頼し、より専門的な薬の管理を支援することもあります。

また、食事のことでお困りの際には、管理栄養士による栄養指導を受けられるよう調整するなど、他の専門職と積極的に協力し、ご利用者様の療養生活を多方面から支えます。

依頼する前に知っておきたい注意点

訪問看護は在宅療養における非常に心強いサービスですが、特性上、利用する上で事前に理解しておくべき点がいくつかあります。

訪問時間の制約と調整

訪問看護師は、一日に複数のご自宅を計画に沿って訪問するため、訪問時間については、「午前9時ちょうど」といったピンポイントの指定ではなく、「午前9時から10時の間」といった、ある程度の幅を持たせた時間帯での契約となるのが一般的です。

分単位での厳密な時間指定は、他のご利用者様の状況や交通事情にも左右されるため、難しい場合が多いことをご理解いただく必要があります。

ご自身の生活リズム(食事やデイサービスの送迎時間など)と、訪問看護の時間をどのように調整していくか、事前にケアマネージャーや訪問看護ステーションの担当者と十分に話し合い、無理のない計画を立てることが大切です。

訪問時間に関する確認事項

確認点内容
訪問時間帯午前・午後など、生活リズムに合わせた大まかな時間枠
滞在時間1回の訪問で提供されるケアに必要な標準的な時間(例:30分)
時間変更の可否通院や急な用事が入った場合の訪問時間の調整方法

緊急時の連絡方法の確認

多くの訪問看護ステーションは、患者さんやご家族が24時間いつでも安心して過ごせるよう、緊急時対応の体制を整えています。

しかし、連絡方法や対応の流れについては、事業所によって異なるため、契約時に必ず詳細を確認しておくことが必要です。

看護師が訪問していない夜間や休日に体調が急変した場合、「どこに電話すればよいのか」「電話でどのような対応をしてもらえるのか」「必要に応じて緊急訪問はしてもらえるのか」を明確にしておくことで、いざという時に慌てず冷静に行動できます。

緊急連絡先の電話番号を電話機の近くの見やすい場所に貼っておくなど、ご家族を含めた関係者全員がすぐに分かるように準備しておくことが重要です。

看護師との情報共有の重要性

質の高いケアを継続的に受けるためには、医療専門職からの一方的なサービス提供だけでなく、患者さんやご家族から看護師へ、日々の小さな変化でも積極的に情報を伝えていただくことが非常に大事です。

「いつもより食事が半分しか摂れなかった」「日中にうとうとしている時間が長かった」といったご家族が気づいた情報は、看護師がご利用者様の健康状態を正しく評価する上で、バイタルサインの数値と同じくらい貴重な手がかりとなります。

家族と訪問看護ステーションの間で「連絡ノート」などを活用し、日々の様子を書き留めてお互いに確認できるようにするなど、円滑に情報共有できる仕組みを作ることが、より良い在宅療養の実現に繋がります。

情報共有が有効な場面

  • 食事や水分摂取量の変化
  • 日中の活動量の変化
  • 排泄状況の変化
  • 普段と違う言動
  • 痛みや気分の訴え

訪問看護師によるインスリン注射に関するよくある質問

ここでは、インスリン注射を訪問看護に依頼することを検討している方からよく寄せられる質問と回答をまとめました。

毎日同じ時間に来てもらえますか?

ご本人の治療計画や生活リズムを最優先し、可能な限り毎日同じ時間帯に訪問できるよう努めます。ただし、他の患者さんの緊急対応や交通事情などにより、やむを得ず時間が多少前後する可能性があることはご了承ください。

初回契約時に、訪問時間の目安や調整方法について詳しくご相談させていただき、双方で納得のいく計画を立てていきます。

インスリンの種類が変わった場合も対応できますか?

主治医からインスリンの種類や単位数の変更指示があった場合は、内容が記載された新しい訪問看護指示書を発行してもらうことが必要です。

看護師は最新の指示書に基づき、薬剤の取り違えや単位数の間違いがないよう、複数回確認を行いながら細心の注意を払って対応します。

変更直後は、低血糖などの副作用や血糖値の変動が起こりやすいため、より慎重に状態を観察します。

注射以外の健康相談も可能ですか?

訪問看護師の役割は、インスリン注射という特定の医療行為だけでなく、患者さんの療養生活全般を専門的な視点から支援することです。

食事や運動のこと、他のお薬の管理、皮膚のトラブル、便秘の悩み、夜眠れないといった精神的な不安など、健康に関するどのようなことでもお気軽にご相談ください。

専門的な知識をもとに助言し、必要であれば主治医や他の専門職と連携して問題解決をサポートします。

自分で用意するものはありますか?

インスリン製剤や注射針、血糖測定器のチップや穿刺針、アルコール綿といった医療材料は、主治医から処方されたものをご自身でご用意いただく必要があります。

訪問看護師は、それらの在庫が少なくなってきた際に、次の受診時に処方してもらうようお声がけするなど、物品管理の支援も行います。

以上

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参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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