ご自宅での療養生活を支える在宅医療には、訪問診療と訪問看護という二つの主要なサービスがあり、どちらも療養者やご家族にとって心強い存在ですが、役割やサービス内容には明確な違いがあります。
この記事では、訪問診療と訪問看護のそれぞれの特徴を、サービス内容、関わる職種、目的といった複数の観点から比較し、詳しく解説します。
ご自身の状況やご家族の希望に合ったサービスを正しく選択し、安心して在宅療養を送るための一助となれば幸いです。
訪問診療と訪問看護の基本的な違い
在宅での療養を支える二つの柱、訪問診療と訪問看護。名前が似ていますが、提供する主体や目的、法的根拠において根本的な違いがあります。
提供される場所と時間
訪問診療も訪問看護も、利用者の自宅や入居している施設がサービス提供の場所となり、通院が難しい方でも、住み慣れた環境で医療や看護を受けられるのが最大の利点です。
訪問診療は、医師が定期的かつ計画的に訪問するもので、月2回程度の訪問が一般的です。訪問日時は事前に調整し、決められた日時に医師が伺い、訪問看護は、看護師などが必要に応じて訪問します。
週に数回、あるいは毎日など、利用者の状態や計画に応じて訪問頻度が決まります。24時間対応体制を整えている事業所も多く、夜間や休日の緊急時にも対応できる点が特徴です。
主な目的と役割
訪問診療の主な目的は、医師による医学的な診断や治療、薬の処方、健康管理です。病状の管理や治療方針の決定といった、医師の専門的な判断が中心で、クリニックや病院の外来機能をご自宅に持ち込むようなイメージです。
対して訪問看護は、医師の指示に基づき、看護師が療養上の世話や必要な診療の補助を行うことが目的で、病状の観察、身体の清拭、褥瘡の処置、医療機器の管理といった、日々の生活を支える看護ケアが中心的な役割を担います。
訪問診療と訪問看護の役割比較
項目 | 訪問診療 | 訪問看護 |
---|---|---|
主な目的 | 診断・治療・処方 | 療養上の世話・診療の補助 |
中心的な役割 | 医学的判断と管理 | 生活支援と看護ケア |
サービスの視点 | 治療的 | 生活的・支援的 |
法律上の根拠と位置づけ
訪問診療は、医療法に基づく医療機関(病院や診療所)が提供する医療サービスです。医師法にも関連し、医師が責任において診療行為を行います。
訪問看護は、健康保険法や介護保険法に基づいて提供されるサービスで、訪問看護ステーションが提供主体となり、看護師や保健師、助産師などがサービスを提供します。
利用開始までの流れ
訪問診療を開始する場合、まずはかかりつけ医や現在入院中の病院の相談室、地域包括支援センターなどに相談し、その後、訪問診療を行っているクリニックと契約を結び、初回の診察を経て定期的な訪問計画を立てます。
訪問看護を利用する場合は、主治医からの訪問看護指示書が必要です。主治医やケアマネジャーに相談し、利用したい訪問看護ステーションを選定し、ステーションの担当者と面談し、契約後にサービスの利用が始まります。
どちらのサービスも、利用者の状態を正しく把握し、適切な計画を立てるための手順を踏むことが重要です。
サービス内容の具体的な比較
訪問診療と訪問看護では、提供されるサービス内容に違いがあり、医師が行う医療行為と、看護師が行うケアは、それぞれの専門性を反映したものです。
訪問診療で受けられる医療行為
訪問診療では、医師が利用者の自宅に赴き、診察や治療を行い、血圧や体温測定などの全身状態の確認、聴診や触診による診察、症状に応じた薬の処方や変更などです。また、採血や尿検査、心電図といった各種検査も自宅で実施できます。
さらに、点滴や注射、褥瘡などの創傷処置、中心静脈栄養や在宅酸素療法といった医療機器の管理も医師の重要な役割です。終末期の緩和ケアや看取りにも対応し、療養生活のあらゆる段階で医学的管理を行います。
訪問診療で可能な主な医療行為
分類 | 具体的な内容 | 目的 |
---|---|---|
診察・診断 | 問診、聴診、血圧測定など | 健康状態の把握と評価 |
治療・処方 | 薬の処方、点滴、創傷処置 | 症状の緩和と治療 |
検査 | 血液検査、尿検査、心電図 | 病状の客観的評価 |
訪問看護で提供されるケア
訪問看護師は、主治医が作成した訪問看護指示書に基づき、専門的なケアを提供し、内容は多岐にわたります。
病状やバイタルサインのチェックといった健康状態の観察はもちろん、身体を清潔に保つための清拭や入浴介助、食事や排泄の援助といった日常生活の支援も行い、また、医師の指示による医療的ケアも重要な業務です。
- 点滴やインスリン注射の実施
- 褥瘡の予防と処置
- カテーテル類の管理
- 在宅酸素療法や人工呼吸器の管理
加えて、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が在籍するステーションでは、自宅でのリハビリも受けられます。利用者本人だけでなく、介護方法の指導や精神的な支援を通じて、家族を支える役割も担います。
共通して提供される内容
訪問診療と訪問看護には、一部共通する内容もあり、利用者の健康状態の観察や評価は、医師も看護師も行います。ただし、視点や目的は異なります。
医師は診断や治療方針決定のために、看護師は日々の変化を捉え、異常の早期発見やケアに活かすために観察します。
また、褥瘡の処置なども両者が行うことがありますが、医師は処置の方針を決定し、看護師はその指示に沿って日々のケアを実践するという役割分担があります。
療養上の相談に応じ、利用者や家族の精神的な支えとなる点も、両者に共通する大切な役割です。
緊急時の対応の違い
在宅療養では、急な体調変化への備えが大事です。緊急時の対応において、訪問診療と訪問看護は連携して動き、多くの訪問診療クリニックや訪問看護ステーションは、24時間連絡が取れる体制を整えています。
体調が急変した際、利用者はまず契約しているクリニックやかかりつけの訪問看護ステーションに連絡し、連絡を受けた看護師が電話で状況を確認し、必要であれば緊急訪問を行います。
看護師の判断で医師の診察が必要とされた場合、看護師から主治医へ連絡し、医師が臨時で往診したり、入院の手配をしたりします。
このように、緊急時には看護師が最初の窓口となり、医師と連携して迅速に対応する体制が一般的です。
緊急連絡時の基本的な流れ
手順 | 担当者 | 主な対応 |
---|---|---|
1. 利用者・家族からの連絡 | 看護師 | 電話での状況聴取、助言 |
2. 必要に応じた緊急訪問 | 看護師 | 状態の評価、応急処置 |
3. 医師への報告・指示要請 | 看護師→医師 | 状況報告、今後の対応相談 |
4. 医師による対応 | 医師 | 臨時往診、入院調整など |
関わる職種の専門性と役割分担
在宅医療は、多様な専門職がチームとして関わることで成り立っています。
訪問診療では医師が、訪問看護では看護師が中心となりますが、それぞれが持つ専門性を最大限に発揮し、情報を共有しながら連携することが、質の高いケアの提供につながります。
訪問診療の中心となる医師
訪問診療における医師の役割は、在宅医療全体の責任者として医学的な判断を下すことです。定期的な訪問を通じて利用者の病状を継続的に把握し、治療方針を決定・修正します。
薬の処方、検査の実施、各種医療処置の判断など、すべての医療行為は医師の責任のもとで行われ、また、訪問看護師やケアマネジャー、薬剤師など、他の専門職に対して必要な指示を出すことも医師の重要な務めです。
訪問看護を担う看護師や療法士
訪問看護の中心を担うのは看護師で、医師の指示に基づき、日々の健康管理から医療的ケア、日常生活の援助まで幅広く担当します。
利用者に最も近い立場で接する時間が長いため、身体的な変化だけでなく、精神的な状態や生活環境の変化にもいち早く気づくことができます。
また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリテーションの専門家も訪問看護ステーションから訪問し、身体機能の維持・回復や日常生活動作の訓練、嚥下機能の評価なども大切な役割です。
訪問看護に関わる主な職種
職種 | 主な役割 | 専門分野 |
---|---|---|
看護師・保健師 | 全身状態の観察、医療的ケア | 看護全般、予防医療 |
理学療法士(PT) | 基本動作能力の回復・維持 | 運動療法、物理療法 |
作業療法士(OT) | 応用的動作能力の改善 | 日常生活活動訓練 |
言語聴覚士(ST) | コミュニケーション・嚥下機能の支援 | 発声・言語訓練、嚥下訓練 |
他職種との連携体制
在宅療養を支えるためには、医師や看護師だけでなく、さらに多くの専門職の協力が必要です。
介護保険サービス全体の計画を作成するケアマネジャー、薬の管理や服薬指導を行う薬剤師、食事の相談に応じる管理栄養士、福祉用具の選定を助ける福祉用具専門相談員などが関わります。
専門職が定期的にカンファレンスを開き、利用者の情報を共有し、それぞれの立場から意見を出し合うことで、一人ひとりの状況に合わせた最適な支援体制を構築します。
チーム医療におけるそれぞれの立場
在宅におけるチーム医療では、各職種が対等な立場で連携します。医師は医学的判断の最終責任者ですが、一方的に指示を出すだけではありません。
看護師からの日々の報告や、ケアマネジャーからの生活全体の情報、リハビリ専門職からの機能評価などを尊重し、治療方針に反映させます。
各専門職がそれぞれの視点からの情報を持ち寄り、利用者の目標達成に向けて協力し合う関係性が、質の高い在宅医療を実現する上で大切です。
対象となる方の状態と利用目的
訪問診療と訪問看護は、どちらも在宅での療養を希望する方が対象ですが、体の状態や、どのような支援を求めるかによって、どちらのサービスがより適しているかが異なります。両方を組み合わせて利用するケースも少なくありません。
訪問診療が向いている方の特徴
訪問診療は、病気や障害のために自力での通院が難しい方が主な対象で、定期的な医師の診察や医学的な管理が必要な状態の方が利用します。
- 脳梗塞後遺症や神経難病などで歩行が困難な方
- 寝たきりの状態の方
- 在宅酸素療法や人工呼吸器など、医療機器の管理が必要な方
- がんの終末期などで、ご自宅での緩和ケアを希望される方
このような方々は、継続的な医学管理が療養生活の基盤となるため、訪問診療の利用が特に重要となります。
訪問看護が適している方の状態
訪問看護は、病状は安定しているものの、日常生活において看護師による支援や医療的ケアが必要な方に適しています。退院直後でご自宅での生活に不安がある場合や、ご家族の介護負担を軽減したい場合にも活用されます。
血糖測定やインスリン注射が必要な糖尿病の方、褥瘡の処置が必要な方、入浴介助や排泄ケアに専門的な手助けが必要な方などです。認知症の症状があり、服薬管理や生活リズムの安定化に支援が必要な場合も、訪問看護が大きな助けとなります。
サービスの利用が推奨される状態の例
サービス | 対象となる方の状態例 | 主な利用目的 |
---|---|---|
訪問診療 | 通院困難、医療機器使用者、終末期 | 継続的な医学管理、治療 |
訪問看護 | 退院直後、医療的ケア、日常生活支援 | 状態安定化、生活の質の維持 |
両方のサービスを併用するケース
実際には、訪問診療と訪問看護を組み合わせて利用するケースが非常に多いです。
在宅で療養するがん患者さんの場合、訪問診療医が痛みや症状をコントロールするための処方を行い、訪問看護師が日々の状態観察や処方された薬の管理、精神的なケアを行います。
医師による医学的管理と、看護師による日常的なケアが連携することで、より手厚く、きめ細やかな支援が可能になり、両サービスを併用することで、利用者は24時間安心して自宅で過ごすことができます。
家族が求める支援内容による選択
サービスを選択する際には、療養者本人だけでなく、介護を担う家族がどのような支援を求めているかも重要な要素です。
医療的な判断に関する不安が大きい場合は訪問診療が、日々の介護方法や医療機器の操作に不安がある場合は訪問看護が、その不安を和らげる助けになります。
家族の介護負担を軽減するために、入浴介助や排泄ケアといった直接的な援助を求める場合は、訪問看護が中心で、家族の精神的なサポートも訪問看護の重要な役割の一つです。
利用料金と費用の考え方
訪問診療と訪問看護は、それぞれ異なる料金体系を持っていて、自己負担額は、利用する方の年齢や所得、加入している公的保険によって変動します。
訪問診療にかかる費用の内訳
訪問診療の費用は、主に医療保険が適用され、料金は診療報酬点数に基づいて計算され、一部(通常1〜3割)を自己負担として支払います。
費用の内訳は、基本となる在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料に加え、訪問の都度発生する往診料、行った検査や処置の費用、処方箋料などです。
定期訪問か緊急の往診かによっても料金は異なり、また、クリニックによっては交通費が別途実費で請求される場合があります。
訪問診療費用の主な構成要素
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
管理料 | 計画的な医学管理に対する基本料金 | 月ごとの定額料金 |
往診料 | 医師の訪問に対する料金 | 訪問ごとに発生 |
その他 | 検査、処置、薬剤などの費用 | 実施内容に応じて加算 |
訪問看護の料金体系
訪問看護の費用は、利用者が65歳以上か、特定の疾病があるかなどによって、介護保険と医療保険のどちらが適用されるかが決まります。
介護保険を利用する場合は、ケアプランに基づき、サービスの提供時間や内容に応じて単位数が定められていて、医療保険の場合は、訪問時間や提供するサービス内容に応じて料金が設定されています。
どちらの保険を利用する場合でも、緊急時訪問看護加算や24時間対応体制加算など、提供体制に応じた追加料金が設定されていることがあります。
自己負担額に影響する要素
自己負担額は、公的医療保険の自己負担割合(1割、2割、3割)によって決まり、また、医療費の自己負担には、高額療養費制度という上限額が設けられています。
ひと月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻される仕組みです。上限額は年齢や所得によって異なり、介護保険を利用する場合も同様に、所得に応じた負担の上限(高額介護サービス費)が定められています。
交通費やその他の実費
訪問診療や訪問看護では、保険適用の料金とは別に、事業所の運営方針によって交通費が実費として請求されることがあります。交通費の計算方法は事業所によって異なるため、契約前に確認しておくことが重要です。
また、衛生材料費(ガーゼや消毒液など)や、特別な処置に使用した材料費などが別途自己負担となる場合もあります。どのような費用が実費となるのか、事前に詳しい説明を受けておくと安心です。
サービスの選び方と相談先
在宅療養を始めたいと考えたとき、どこに、誰に相談すれば良いのか迷うかもしれません。サービスにつなげてくれる相談窓口はいくつかあるので、ご自身の状況に応じて、相談しやすい場所を選ぶことが大切です。
まず誰に相談すれば良いか
在宅療養を検討し始めたら、まずはかかりつけの医師に相談するのが一般的です。現在の病状や体の状態を最もよく理解しているため、訪問診療や訪問看護が必要かどうかを判断し、適切な医療機関や事業所を紹介してくれます。
もし入院中であれば、病院の地域医療連携室や医療ソーシャルワーカーが退院後の生活について相談に乗ってくれ、退院後の療養計画を一緒に立て、必要なサービスの手配を手伝ってくれます。
主な相談窓口とその特徴
相談先 | 特徴 | 相談に適した状況 |
---|---|---|
かかりつけ医 | 病状を最もよく理解している | 在宅療養を検討し始めた段階 |
病院の相談室 | 退院支援の専門家がいる | 入院中で退院後の生活に不安がある時 |
ケアマネジャー | 介護サービス全般に精通している | 要介護認定を受けている場合 |
地域包括支援センター | 地域の高齢者支援の拠点 | どこに相談して良いか分からない時 |
ケアマネジャーの役割
すでに要介護認定を受けている方の場合、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)が中心的な相談相手です。
ケアマネジャーは、介護サービス全般に関する専門家であり、利用者の心身の状態や生活環境、本人や家族の希望を考慮して、ケアプランを作成します。
訪問看護が必要と判断されれば、主治医と連携して訪問看護指示書の発行を依頼し、利用者に合った訪問看護ステーションの選定を手伝ってくれます。サービス開始後も、定期的に利用者の状況を確認し、必要に応じてプランの見直しを行います。
医療機関や地域包括支援センターへの相談
かかりつけ医がいない場合や、どこに相談して良いか分からない場合は、お住まいの市区町村に設置されている地域包括支援センターに相談するのが良いでしょう。
地域包括支援センターは、高齢者の保健、福祉、医療に関する総合的な相談窓口です。保健師や社会福祉士などの専門職が在籍しており、必要なサービスや制度について無料で相談に乗ってくれます。
状況を詳しく聞いた上で、適切な医療機関や介護サービス事業者につなげてくれます。
サービス事業者の選び方の要点
利用する訪問診療クリニックや訪問看護ステーションを選ぶ際には、いくつかの確認しておきたい点があります。
- 24時間365日の緊急時対応体制があるか
- 事業所が自宅から近いか(対応エリア内か)
- リハビリなど、希望する専門職が在籍しているか
- スタッフの経験や事業所の専門分野
複数の事業所の情報を集め、実際に担当者と話をして、相性や雰囲気を確かめることも大切です。最終的には、利用者本人や家族が安心して任せられると感じる事業者を選ぶことが、満足のいく在宅療養につながります。
訪問診療と訪問看護の連携による利点
訪問診療と訪問看護は、それぞれが独立したサービスですが、両者が密に連携することによって、価値はさらに高まります。切れ目のない支援体制は、在宅で療養する利用者と、支える家族に大きな安心感をもたらします。
情報を共有する重要性
医師と看護師がそれぞれの専門的な視点から得た情報を共有することは、質の高いケアを提供する上で欠かせません。
看護師は日々の訪問を通じて利用者の細かな体調の変化や生活の様子、精神状態を把握し、情報を正確に医師に伝えることで、医師はより的確な診断や治療方針の決定ができます。
さらに、医師からの病状の見通しや治療方針の変更点を看護師が共有することで、日々のケアに一貫性が生まれ、利用者の不安を軽減できます。情報共有は、電話や連絡ノート、定期的なカンファレンスなど、様々な方法で行われます。
症状の変化に迅速に対応できる体制
在宅療養では、いつ症状が変化するか予測が難しい場合があります。訪問看護師が日々の観察で異常の兆候を早期に発見し、速やかに訪問診療医に報告・相談する体制が整っていると、重症化を防ぐことにつながります。
微熱や食欲不振といった些細な変化でも、看護師がその背景にある問題をアセスメントし、医師に伝えることで、早期の対応が可能になり、迅速な対応力こそが、連携体制の最大の利点の一つです、
利用者と家族の安心感の向上
医師と看護師が常に連携しているという事実は、利用者と家族にとって大きな安心材料です。何かあったときには、いつも見てくれている看護師さんに連絡すれば、医師にもきちんと伝えてくれるという信頼関係が生まれます。
医療と看護の両面から専門家に見守られているという感覚は、在宅療養を続ける上での精神的な支えとなり、利用者は住み慣れた自宅で穏やかに過ごすことができ、家族の介護負担感も軽減されます。
訪問診療と訪問看護に関するよくある質問
- どちらか一方だけを利用することはできますか?
-
利用者の状態によって、訪問診療のみ、あるいは訪問看護のみを利用する方もいらっしゃいます。
病状が安定しており、医師の定期的な診察は必要ないものの、入浴介助や服薬管理の支援が必要な場合は、訪問看護のみを利用することがあります。
また、ご家族の介護力が高く日常的なケアは問題ないものの、通院が困難で定期的な診察と処方が必要な場合は、訪問診療のみを利用することもあります。
どちらのサービスが必要かは、主治医やケアマネジャーと相談して判断します。
- 途中でサービスを切り替えることは可能ですか?
-
療養者の状態の変化に応じて、サービスの利用形態を変更することは可能です。
最初は訪問看護のみを利用していた方が、病状が変化して医師による医学的管理の必要性が高まった場合に、訪問診療を追加で開始するケースはよくあります。また、その逆のケースもあります。
サービスの切り替えや追加を検討する際は、主治医、ケアマネジャー、利用しているサービスの担当者とよく話し合い、移行することが大切です。
- 家族が不在でもサービスは受けられますか?
-
お一人暮らしの方や、日中ご家族が不在の場合でも、訪問診療や訪問看護のサービスを受けることはできます。サービス提供時には、ご本人の同意があれば、ご家族がいなくても医師や看護師が自宅に入り、診察やケアを行います。
訪問後には、電話や連絡ノートを通じて、ご家族にその日のご様子や行ったケアの内容を報告することも可能です。
- どのような人がサービスを利用していますか?
-
高齢の方が多いですが、小児や難病を抱える若い世代の方も対象です。疾患としては、脳血管疾患後遺症、心不全や呼吸器疾患などの慢性疾患、末期がん、神経難病、認知症など多岐にわたります。
医療機器(在宅酸素、人工呼吸器、胃ろうなど)を使用しながら生活されている方も多くいらっしゃいます。共通しているのは、住み慣れた場所で自分らしく過ごしたいという思いです。
以上
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