透析患者とカルシウム製剤(沈降炭酸カルシウム等)|リン管理と骨代謝

透析患者とカルシウム製剤(沈降炭酸カルシウム等)|リン管理と骨代謝

透析治療を受けている方にとって、日々の食事やお薬の管理は、治療そのものと同じくらい大切です。特に、身体のミネラルバランスを保つことは、長期的な健康を維持する上で欠かせません。

この記事では、透析患者さんの健康管理の中でも特に重要なリンとカルシウムの管理、そして骨の健康(骨代謝)について、詳しく解説します。

目次

なぜ透析患者はリンとカルシウムの管理が重要なのか

透析治療を始めると、これまで腎臓が担っていた多くの役割を機械が代行しますが、すべての機能を完璧に代替できるわけではありません。その一つが、体内のミネラルバランスの調整です。

腎臓の働きとミネラルの関係

健康な腎臓は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排泄するだけでなく、体内のミネラルバランスを一定に保つという重要な役割を担っています。食事から摂取したリンやカルシウムは、腸で吸収された後、血液中を巡ります。

腎臓は、ミネラルが過剰になれば尿中に排泄し、不足すれば再吸収を促すことで、常に適切な濃度を維持しています。

しかし、腎機能が低下すると、この精密な調整機能がうまく働かなくなり、特にリンは、尿からの排泄が主な経路であるため、腎機能が落ちると体内に蓄積しやすいです。

腎臓の主な働き

働き内容機能低下による影響
老廃物の排泄血液中の不要物を尿として捨てる尿毒症
水分・電解質の調整体液量やミネラルバランスを保つむくみ、高血圧、高カリウム血症
ホルモンの産生血圧調整、造血、骨の健康に関わる貧血、骨代謝異常

透析治療だけでは取り除けないリン

透析治療は、血液中の老廃物や余分な水分を取り除くことで、腎臓の働きの一部を補い、溜まったリンもある程度は除去できます。

しかし、透析治療で除去できるリンの量には限界があり、一般的な週3回の血液透析では、食事から摂取されるリンのすべてを排出しきれないのが実情です。

このため、多くの場合、食事からのリン摂取を制限する食事療法と、リンの吸収を抑える薬の服用が必要になります。

リンとカルシウムのシーソーゲーム

私たちの体内で、リンとカルシウムは互いに密接な関係にあり、まるでシーソーのようなバランスを保っています。血液中のリン濃度が上がると、体はバランスを取ろうとしてカルシウム濃度を下げようとします。

逆に、カルシウム濃度が上がるとリン濃度が下がる傾向にあります。このバランスを調整しているのが、副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)や、腎臓で作られる活性型ビタミンDなどです。

腎機能が低下すると、これらの調整役も正常に機能しなくなり、シーソーゲームのバランスは大きく崩れてしまいます。

管理を怠ることで生じる健康問題

リンとカルシウムの管理が不十分な状態が続くと、様々な健康問題を引き起こします。代表的なものが、血管の石灰化と骨の病気です。

血液中のリンとカルシウムの濃度が高くなると、両者が結合して血管の壁や心臓の弁などに沈着し、石灰化を起こし、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高めます。

また、骨がもろくなり、骨折しやすくなることも大きな問題です。

高リン血症が起こす身体への影響

透析患者さんが直面する問題の一つに高リン血症があります。自覚症状が少ないまま静かに進行し、気づいた時には深刻な合併症を起こしていることも少なくありません。

高リン血症の基準値

透析患者さんの血清リン濃度の管理目標値は、日本の透析医学会のガイドラインで 3.5~6.0mg/dL と定められており、この範囲内にコントロールすることが、合併症予防の観点から非常に重要です。

リン・カルシウムの管理目標値(透析患者)

項目管理目標値単位
血清リン(P)3.5 – 6.0mg/dL
補正カルシウム(Ca)8.4 – 10.0mg/dL
Ca × P 積55未満(mg/dL)²

血管の石灰化という見えない脅威

高リン血症の最も恐ろしい合併症が、血管の石灰化です。血液中のリンとカルシウムの濃度が高くなると、リン酸カルシウムという物質が作られます。これは骨の成分と似た硬い物質で、本来骨にあるべきものが血管の壁に沈着してしまうのです。

血管が硬くもろくなることで動脈硬化が急速に進行し、心臓に血液を送る冠動脈が石灰化すれば狭心症や心筋梗塞、脳の血管なら脳梗塞、足の血管なら閉塞性動脈硬化症といった、重篤な病気につながります。

骨の健康を損なう

血液中のリンが増えると、体はバランスを取るために骨からカルシウムを溶かし出して、血液中のカルシウム濃度を維持しようとします。この働きを促すのが、副甲状腺ホルモン(PTH)です。

高リン血症が続くとPTHが過剰に分泌される状態(二次性副甲状腺機能亢進症)になり、骨が常にもろくなり続けるという悪循環に陥り、骨が痛み、変形し、わずかな衝撃でも骨折しやすくなります。

かゆみや関節痛の原因にも

高リン血症は、全身の耐えがたいかゆみの原因になることがあります。透析治療を受けている多くの方がかゆみに悩まされており、生活の質を大きく低下させる一因です。

また、関節の周囲にリン酸カルシウムが沈着することで、激しい痛みを伴う関節炎を起こすこともあります。

高リン血症が関連する症状

分類主な症状・合併症
血管系動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞
骨格系骨の痛み、骨折、関節痛
皮膚など全身のかゆみ、いらいら感

リン管理の柱 沈降炭酸カルシウムの働き

食事療法だけではリンのコントロールが難しい場合、薬の力を借りることになります。中でも古くから使われているのが、沈降炭酸カルシウムに代表されるカルシウムを含んだリン吸着薬です。

リン吸着薬としての沈降炭酸カルシウム

沈降炭酸カルシウムはカルシウムの化合物で、主な目的は、食事に含まれるリンが腸から体内に吸収されるのをブロックすることです。

食事と一緒に服用すると、薬に含まれるカルシウムが消化管の中で食物中のリン酸と結合し、リン酸カルシウムという水に溶けにくい物質に変化します。

この状態になると、リンは腸の壁を通り抜けて血液中に入ることができなくなり、便と一緒に体外へ排泄されます。このようにして、体内に吸収されるリンの総量を減らし、高リン血症を防ぎます。

食事と一緒に服用する理由

薬が消化管内で食物と混ざり合い、効率よくリンと結合する必要があるため、食事の直前または直後に服用することが極めて重要です。

食後時間が経ってから服用しても、すでに食物の多くは腸を通過してしまっているため、薬はリンを捕まえることができず、効果が大幅に低下します。毎食忘れずに、正しいタイミングで服用する習慣をつけることが大切です。

カルシウム補充というもう一つの顔

沈降炭酸カルシウムはリンを吸着すると同時に、一部のカルシウムが体内に吸収されます。このため、リン吸着薬としての役割だけでなく、不足しがちなカルシウムを補充する役割も担っています。

透析患者さんは、食事制限などによりカルシウムが不足しやすいため、メリットとなる場合がありますが、カルシウムの摂りすぎにもつながる可能性があり、注意が必要です。

服用時に気をつけたいこと

沈降炭酸カルシウムを服用する上で、いくつか注意すべき点があり、最も多い副作用の一つが便秘です。薬の性質上便が硬くなりやすいため、水分を適切に摂取したり、必要に応じて下剤を使用したりするなどの対策が求められます。

また、胃の不快感や吐き気を感じることもあります。他の薬との飲み合わせによっては、互いの効果に影響を与える可能性もあるため、市販薬やサプリメントを含め、服用しているすべての薬を医師や薬剤師に伝えることが重要です。

カルシウム管理の重要性と高カルシウム血症のリスク

リンの管理のために沈降炭酸カルシウムなどのカルシウム製剤を使用すると、今度はカルシウムの管理という新たな課題が出てきます。リンとカルシウムはシーソーの関係にあるため、一方の管理だけでは不十分です。

透析患者のカルシウム基準値

透析患者さんの血清カルシウム濃度の管理目標値は、アルブミンの値で補正した補正カルシウム値で 8.4~10.0mg/dL とされています。この範囲を超えてカルシウム値が高い状態が続くと、高カルシウム血症と判断されます。

カルシウム製剤のリン吸着薬を服用している場合は、上限値を超えないように注意深いモニタリングが大切です。

高カルシウム血症のサイン

高カルシウム血症は、軽度のうちは自覚症状がほとんどありません。しかし、数値が高くなるにつれて、様々な症状が現れます。初期症状としては、脱力感、疲労感、食欲不振、吐き気、便秘、多尿などがみられます。

さらに進行すると、意識がもうろうとしたり、不整脈が出現したりと、危険な状態に陥ることもあります。症状は他の原因でも起こりうるため見過ごされがちですが、カルシウム製剤を服用している場合は注意が必要です。

高カルシウム血症の主な症状

分類症状の例
消化器系食欲不振、吐き気、嘔吐、便秘
精神・神経系脱力感、疲労感、いらいら、意識障害
循環器系不整脈、高血圧

異所性石灰化のリスク増大

高カルシウム血症が続くと、高リン血症と同様に、異所性石灰化のリスクが著しく高まります。血液中のカルシウムとリンの濃度が両方とも高い状態は、リン酸カルシウムが作られやすい最悪の環境です。

血清カルシウム値と血清リン値を掛け合わせた「カルシウム・リン積」という指標も重要視され、値が55を超えないように管理することが推奨されています。

カルシウム製剤以外のカルシウム源

カルシウムの管理を考える上では、リン吸着薬として服用するカルシウム製剤だけでなく、食事やその他の供給源も考慮に入れる必要があります。

  • 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
  • 小魚
  • 大豆製品
  • 緑黄色野菜

これらの食品はカルシウムを多く含みますが、同時にリンも多く含む場合があるため、摂取には注意が必要です。また、透析液に含まれるカルシウム濃度も、体内のカルシウムバランスに影響を与えます。

さらに、骨の健康のために処方される活性型ビタミンD製剤は、腸からのカルシウム吸収を促進するため、高カルシウム血症の原因となることがあります。

骨代謝の異常(CKD-MBD)を理解する

透析患者さんのリンとカルシウムの管理は、単に血液中の数値を目標範囲に収めることだけが目的ではありません。その先にある、骨の健康を守るという大きな目標につながっています。

腎機能の低下に伴って起こるミネラル代謝の異常と、それに伴う骨の病気、そして血管の石灰化を包括的に捉えた概念がCKD-MBDです。

CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)とは

CKD-MBDは、Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorderの略で、日本語では「慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常」と訳されます。これは、単なる骨の病気ではなく、以下の3つの要素から構成される全身性の疾患です。

  1. リン、カルシウム、副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンDなどの代謝異常
  2. 骨の量や質の変化(骨がもろくなる、骨が作られすぎるなど)
  3. 血管や心臓弁など、骨以外の組織の石灰化

3つは互いに密接に関連し合っており、三位一体で管理していく必要があります。

CKD-MBDの主な構成要素

構成要素具体的な内容主な指標
ミネラル代謝異常リン、カルシウム、PTHのバランスが崩れる血清P、Ca、intact-PTH値
骨の異常骨回転の異常(高回転骨、低回転骨)骨密度、骨代謝マーカー
異所性石灰化血管や軟部組織が硬くなるレントゲン、CT検査

副甲状腺ホルモン(PTH)の役割と暴走

CKD-MBDの中心的な役割を果たすのが、首の甲状腺の裏側にある米粒ほどの小さな臓器、副甲状腺から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)で、主な働きは、血液中のカルシウム濃度を一定に保つことです。

血中カルシウムが低下するとPTHが分泌され、骨を溶かしてカルシウムを血液中に放出したり、腎臓でのカルシウム再吸収を促し、腎機能が低下すると、リンの排泄が滞り高リン血症になります。

また、腎臓での活性型ビタミンD産生が低下し、腸からのカルシウム吸収が減ります。この二つの要因(高リン血症と低カルシウム血症)は、どちらも副甲状腺を強力に刺激し、PTHの分泌を過剰に促します。

長く続くと、副甲状腺自体が腫れて大きくなり、血液中のカルシウム値に関係なく、自律的にPTHを分泌し続けるようになり、二次性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる状態です。

骨がもろくなる線維性骨炎

過剰に分泌されたPTHは、骨に作用して骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させ、骨の吸収をどんどん進めます。骨が溶け出すスピードが、新しい骨を作るスピードを上回ってしまうため、骨はスカスカでもろい状態になります。

これを線維性骨炎と呼び、CKD-MBDにおける代表的な骨の病変です。線維性骨炎になると、骨の痛みを感じたり、わずかな力で骨折したりするリスクが高まります。

骨折リスクと生命予後への影響

CKD-MBDによって骨がもろくなると、日常生活における骨折のリスクが著しく増加し、特に大腿骨近位部(足の付け根)の骨折や脊椎の圧迫骨折は、寝たきりの原因となり、生活の質を大きく損ないます。

さらに、CKD-MBDは単に骨だけの問題にとどまりません。血管の石灰化は心血管系の病気を引き起こし、生命予後にも直接的な影響を与えます。

リン吸着薬の選択と治療の考え方

高リン血症の治療にはリン吸着薬が欠かせませんが、選択肢は沈降炭酸カルシウムだけではありません。近年、様々な新しい薬が登場し、患者さん一人ひとりの状態に合わせた、よりきめ細かな治療が可能になっています。

沈降炭酸カルシウム以外の選択肢

リン吸着薬は、主成分によって大きく二つのグループに分けられます。一つは沈降炭酸カルシウムや酢酸カルシウムといったカルシウム含有リン吸着薬、もう一つは、カルシウムを含まない非カルシウム含有リン吸着薬です。

高カルシウム血症のリスクがある場合や、血管の石灰化が進行している場合には、後者の非カルシウム含有リン吸着薬が選択されることが多くなります。

主なリン吸着薬の種類と特徴

種類代表的な薬剤名(一般名)特徴
カルシウム含有沈降炭酸カルシウム安価。カルシウム補充効果。高Ca血症のリスク。
非カルシウム含有セベラマー塩酸塩カルシウムを含まない。脂質や尿酸を低下させる効果も。
ビキサロマーカルシウムを含まない。消化器症状が比較的少ない。

非カルシウム含有リン吸着薬の特徴

セベラマー塩酸塩やビキサロマーといった非カルシウム含有リン吸着薬の最大の利点は、体内にカルシウムを持ち込まないため、高カルシウム血症のリスクを避けられる点です。

特に、すでにカルシウム値が高い患者さんや、活性型ビタミンD製剤を使用していてカルシウムが上がりやすい患者さんにとって、重要な選択肢となります。ただし、薬のサイズが大きかったり、費用が比較的高かったりといった側面もあります。

鉄含有リン吸着薬の登場

比較的新しい選択肢として、鉄を主成分とするリン吸着薬(クエン酸第二鉄水和物など)も使われるようになっています。

この薬は、リンを吸着する効果に加えて、鉄分が体内に吸収されるため、透析患者さんに多い合併症である腎性貧血の改善にも貢献する可能性があります。

鉄剤の注射量を減らせるなど、一つの薬で二つの効果が期待できる点が特徴です。

医師と相談しながら治療方針を決める

どのリン吸着薬を選択するかは、患者さん一人ひとりの血液検査データ(リン、カルシウム、PTHの値)、血管の石灰化の程度、合併症の有無、ライフスタイルなどを総合的に判断して決定します。

ある薬が優れているということではなく、それぞれの薬の長所と短所を理解した上で、その時の患者さんの状態に最も合った薬を選ぶことが重要です。治療方針については、必ず医師とよく相談し、納得した上で治療を進めてください。

日常生活でできるリンとカルシウムの管理

薬による治療はリン・カルシウム管理の重要な柱ですが、それだけで十分ではありません。日々の生活の中での工夫、特に食事療法と確実な服薬が、治療効果を大きく左右します。

食事療法が基本

リン管理の基本は、食事からのリン摂取量をコントロールすることです。どんなに強力なリン吸着薬を服用しても、食事から大量のリンを摂取してしまっては、効果は追いつきません。

リンはたんぱく質に多く含まれるため、良質なたんぱく質を必要量確保しつつリンの摂取を抑えるという、バランスの取れた食事が求められます。

リン含有量の多い食品を知る

リンには、肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質に含まれる有機リンと、加工食品やインスタント食品に添加物として使われる無機リンがあります。特に注意が必要なのは、吸収率がほぼ100%と非常に高い無機リンです。

食品の原材料表示を確認し、リン酸塩などの表示があるものは避けましょう。

リンを多く含む食品の例

分類注意したい食品ポイント
有機リン乳製品、レバー、魚卵、しらす干したんぱく質源として重要だが、過剰摂取に注意。
無機リン加工肉、インスタント麺、清涼飲料水吸収率が非常に高い。食品添加物として含まれる。

定期的な血液検査の重要性

リンとカルシウム、そしてPTHの値は、食事や薬、体調によって常に変動します。現在の治療法が適切であるか、管理がうまくいっているかを確認するために、定期的な血液検査は欠かせません。

検査結果は、治療方針を見直すための重要な情報源です。

よくある質問

最後に、リン吸着薬やカルシウム管理に関して、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめました。

薬を飲み忘れたらどうすればよいですか

リン吸着薬は、食事と一緒でなければ効果がありません。食事の途中で飲み忘れに気づいた場合は、すぐに服用してください。

食後かなり時間が経ってしまった場合は、その回の服用はあきらめて、次の食事の際に忘れずに服用しましょう。忘れたからといって、次の食事で2回分をまとめて飲むと、高カルシウム血症などの副作用のリスクが高まります。

カルシウム製剤で便秘になりますか

沈降炭酸カルシウムなどのカルシウム製剤は、副作用として便秘を起こしやすいことが知られています。これは、薬が腸内の水分を吸収して便を硬くするためです。

対策としては、意識して水分を多めに摂ること、食物繊維の多い食品を摂ること(ただしカリウム制限に注意)、適度な運動をすることなどが挙げられます。

サプリメントを飲んでも大丈夫ですか

自己判断でサプリメントを摂取することは推奨できません。特に、カルシウムやビタミンDのサプリメントは、高カルシウム血症を起こす原因となります。

また、マグネシウムを含むサプリメントも、透析患者さんでは高マグネシウム血症を起こす危険があります。健康食品やサプリメントの中には、リンやカリウムを多く含むものもあります。

どうしても使用したいサプリメントがある場合は、必ず事前に主治医や薬剤師、管理栄養士に相談し、成分を確認してもらってください。

自己判断で薬の量を調整してもよいですか

リン吸着薬の量は、定期的な血液検査の結果に基づいて、医師が専門的な判断のもとで調整しています。

今日の食事はリンが少なかったから薬を減らそう、といった自己判断での調整は、長期的なコントロールを乱す原因にです。

また、副作用がつらいからといって勝手に薬をやめてしまうと、高リン血症が進行し、より深刻な合併症につながる恐れがあります。

以上

参考文献

Slatopolsky E, Weerts C, Lopez-Hilker S, Norwood K, Zink M, Windus D, Delmez J. Calcium carbonate as a phosphate binder in patients with chronic renal failure undergoing dialysis. New England Journal of Medicine. 1986 Jul 17;315(3):157-61.

Cupisti A, Gallieni M, Rizzo MA, Caria S, Meola M, Bolasco P. Phosphate control in dialysis. International journal of nephrology and renovascular disease. 2013 Oct 4:193-205.

Tzanakis IP, Papadaki AN, Wei M, Kagia S, Spadidakis VV, Kallivretakis NE, Oreopoulos DG. Magnesium carbonate for phosphate control in patients on hemodialysis. A randomized controlled trial. International urology and nephrology. 2008 Mar;40(1):193-201.

D’Haese PC, Spasovski GB, Sikole A, Hutchison A, Freemont TJ, Sulkova S, Swanepoel C, Pejanovic S, Djukanovic L, Balducci A, Coen G. A multicenter study on the effects of lanthanum carbonate (Fosrenol™) and calcium carbonate on renal bone disease in dialysis patients. Kidney International. 2003 Jun 1;63:S73-8.

Pflanz S, Henderson IS, McElduff N, Jones MC. Calcium acetate versus calcium carbonate as phosphate-binding agents in chronic haemodialysis. Nephrology Dialysis Transplantation. 1994 Jan 1;9(8):1121-4.

Almirall J, Veciana L, Llibre J. Calcium acetate versus calcium carbonate for the control of serum phosphorus in hemodialysis patients. American journal of nephrology. 1994 Oct 28;14(3):192-6.

Messa P, Cerutti R, Brezzi B, Alfieri C, Cozzolino M. Calcium and phosphate control by dialysis treatments. Blood purification. 2009 Mar 18;27(4):360-8.

Di Iorio B, Molony D, Bell C, Cucciniello E, Bellizzi V, Russo D, Bellasi A, INDEPENDENT Study Investigators. Sevelamer versus calcium carbonate in incident hemodialysis patients: results of an open-label 24-month randomized clinical trial. American Journal of Kidney Diseases. 2013 Oct 1;62(4):771-8.

Malberti F, Surian M, Poggio F, Minoia C, Salvadeo A. Efficacy and safety of long-term treatment with calcium carbonate as a phosphate binder. American Journal of Kidney Diseases. 1988 Dec 1;12(6):487-91.

de Francisco AL, Leidig M, Covic AC, Ketteler M, Benedyk-Lorens E, Mircescu GM, Scholz C, Ponce P, Passlick-Deetjen J. Evaluation of calcium acetate/magnesium carbonate as a phosphate binder compared with sevelamer hydrochloride in haemodialysis patients: a controlled randomized study (CALMAG study) assessing efficacy and tolerability. Nephrology Dialysis Transplantation. 2010 Nov 1;25(11):3707-17.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次