腰痛に使う薬は市販薬・処方薬ともに種類が豊富で、どれを選べばよいか迷う方は少なくないでしょう。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、湿布、筋弛緩薬、神経障害性疼痛治療薬など、それぞれに作用の仕組みと副作用が異なります。
自己判断で薬を選び続けると、効果が出ないだけでなく副作用リスクが高まる場合もあります。急性腰痛から慢性腰痛まで、痛みの種類と原因に応じた薬の選び方を、整形外科専門医が丁寧に解説します。
この記事の執筆者

臼井 大記(うすい だいき)
日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師
2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。
腰痛に効く薬は「痛みの種類」によって選ぶのが正しい
腰痛といっても、急性の炎症を伴うものと、神経が圧迫されて起きるものでは、効果的な薬の種類がまったく異なります。「腰が痛いから痛み止め」という選び方は、症状の種類によっては誤った選択になることも少なくありません。
急性腰痛(ぎっくり腰)と慢性腰痛では薬の選択肢がどう変わるか
急性腰痛とは、ぎっくり腰のように突然起こる腰の痛みで、多くの場合は筋肉・靭帯の損傷や炎症が原因です。この段階ではNSAIDsや湿布が有効で、痛みを早期に抑えながら動かし続けることが回復を早めます。
慢性腰痛は3か月以上続く腰の痛みを指し、筋肉の緊張、椎間板変性、心理的ストレスなど複数の要因が絡み合っています。NSAIDsは慢性腰痛にも有効ですが、長期連用による胃腸や腎臓への影響を考慮しながら使う必要があり、場合によっては抗うつ薬や神経障害性疼痛治療薬も選択肢に入ります。
慢性腰痛(腰痛症)の原因・診断・治療についてさらに詳しく解説しています。
炎症が原因の腰痛と神経が圧迫された腰痛は別物
腰の痛みには「炎症性」と「神経障害性(神経が傷んで起きる)」の2つの大きなタイプがあります。
炎症性腰痛にはNSAIDsや湿布など抗炎症作用をもつ薬が効果的です。一方、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症によって坐骨神経が圧迫され、足にしびれや灼熱感が出るタイプは「神経障害性疼痛」と呼ばれ、NSAIDsだけでは十分でないことがあります。
神経障害性疼痛には、プレガバリン(商品名:リリカ)やミロガバリンといった神経障害性疼痛治療薬、または三環系抗うつ薬などが処方されることがあります。これらはいずれも処方薬のため、整形外科での診断と処方が前提です。
腰痛のタイプ別・主な薬の分類
| 腰痛のタイプ | 主な原因 | 使われる薬 |
|---|---|---|
| 急性腰痛 | 筋肉・靭帯の炎症 | NSAIDs、筋弛緩薬(処方) |
| 慢性腰痛 | 椎間板変性・筋緊張・心理的要因 | NSAIDs、抗うつ薬(処方) |
| 神経障害性疼痛 | 神経圧迫・損傷 | プレガバリン・SNRI(処方) |
自己判断が危ない腰痛の「警戒すべき徴候」
腰痛のほとんどは良性の筋骨格系の問題ですが、なかには重篤な疾患が隠れているケースもあります。整形外科の現場では「レッドフラッグ(警告サイン)」と呼ばれる症状が出たときは、市販薬で様子を見ず早期に受診することが重要です。
安静にしても改善しない夜間痛、発熱を伴う腰痛、体重の著明な減少、脚のしびれや麻痺の進行、排尿・排便障害などは要注意のサインです。これらは骨折、感染、腫瘍などが原因の腰痛である可能性があり、薬だけで対処しようとすることは危険です。2週間以上改善がない場合も、一度専門医に相談することが大切です。
腰痛によく使われる市販薬の種類と、それぞれの効果の実態
薬局で手軽に購入できる腰痛の市販薬には、内服薬(飲み薬)と外用薬(湿布・塗り薬)の2種類があります。それぞれの成分と特性を把握して、症状に合った使い方をすることが、回復への合理的な近道です。
ロキソプロフェン・イブプロフェン—代表的な市販NSAIDsの実力
市販の内服薬として最もよく使われているのが、ロキソプロフェン(ロキソニンS)やイブプロフェン(バファリン系)などのNSAIDsです。どちらも炎症を引き起こすプロスタグランジンという物質の産生を抑えることで、痛みと炎症を緩和します。急性腰痛の発症直後から使うと、痛みを数時間以内に和らげる効果が期待できます。
ただし、これらは胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの産生も抑えるため、空腹時に服用すると胃痛や胃潰瘍を起こしやすくなります。必ず食後または食事と一緒に服用し、胃腸が弱い方は特に注意が必要です。
アセトアミノフェン系市販薬が腰痛に向いているケース
アセトアミノフェン(タイレノールなど)は、解熱・鎮痛作用をもつ薬で、NSAIDsとは異なる仕組みで痛みを抑えます。抗炎症作用は弱いものの、胃への負担が少なく腎臓機能への影響も低い点が特徴です。胃腸が弱い方や高齢者、腎機能が低下気味の方には、NSAIDsより選びやすい場合があります。
ただし、コクランレビューの研究ではアセトアミノフェン単独では急性腰痛に対して有意な効果を示さなかったとする報告もあり、効果の個人差が大きい薬といえます。慢性腰痛に対しても同様の傾向があるため、飲んでも効果を感じにくい場合は早めに整形外科に相談してください。
市販の湿布・貼り薬で腰痛にどれだけ期待できるか
湿布(貼り薬)は、有効成分が皮膚から浸透して局所的に作用する外用薬です。市販の湿布に含まれる主な成分は、サリチル酸メチル(温感)、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナクなどです。貼り薬の利点は胃腸に負担をかけず、痛みのある部位に直接成分を届けられる点です。
ただし湿布の皮膚透過性には限界があり、深部の筋肉や椎間板まで十分量の薬効成分が届くかどうかは確証がありません。軽度の腰痛や予防的なケアには有用ですが、強い痛みや慢性化した腰痛には湿布のみで対処しようとするのは難しいといえます。
腰痛によく使われる市販薬の分類
- NSAIDs内服薬:ロキソプロフェン(ロキソニンS)、イブプロフェン(バファリンEX等)—急性腰痛の炎症・痛みを抑える
- アセトアミノフェン系:タイレノールAなど—胃への負担が少なく、胃腸が弱い方や高齢者に選びやすい
- NSAIDs外用薬(貼り薬):ロキソプロフェンテープ、フェルビナクゲル、ジクロフェナクゲルなど
- 温感・冷感湿布:カプサイシン系(温感)、メントール系(冷感)—炎症の段階に応じて使い分ける
処方薬しか対応できない腰痛がある—市販薬との決定的な違い
整形外科で処方される薬には、市販薬では手に入らない種類の有効成分が含まれています。神経障害性疼痛や急性の筋肉けいれんなど、市販薬では対応しきれない腰痛症状に対して、処方薬が果たす役割は大きいといえます。
坐骨神経痛・椎間板ヘルニアに使われる神経障害性疼痛治療薬
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症から生じる坐骨神経痛には、プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)といった神経障害性疼痛治療薬が処方されることがあります。これらは神経の過剰な興奮を抑えることで、しびれや灼熱感、電気が走るような痛みを和らげる薬です。
慢性腰痛に対しては、デュロキセチン(サインバルタ)などのSNRI系抗うつ薬が処方されることもあります。抗うつ薬と聞くと驚かれる方もいますが、慢性疼痛の脳内伝達経路に作用して痛みを緩和するという研究上の根拠があります。NSAIDsだけでは改善しない慢性腰痛では、担当医との相談のうえで選択される薬です。
急性腰痛の筋肉けいれんに使われる筋弛緩薬とは
ぎっくり腰など急性腰痛では、痛みに伴って腰の筋肉が反射的に収縮(スパズム)してしまいます。この状態を緩和するために、チザニジン(テルネリン)やエペリゾン(ミオナール)などの筋弛緩薬が処方されることがあります。コクランレビューでは、筋弛緩薬は急性腰痛の短期的な痛みの軽減においてプラセボより有効である可能性が示されています。
副作用として眠気やふらつきが出やすく、服用中は車の運転を避けることが必要です。特に高齢者では転倒リスクが高まるため、服用量の調整が重要です。
主な処方薬の種類と適した腰痛症状
| 薬の種類 | 代表的な成分名 | 主な適応症状 |
|---|---|---|
| 神経障害性疼痛治療薬 | プレガバリン、ミロガバリン | しびれ・灼熱感・坐骨神経痛 |
| 筋弛緩薬 | チザニジン、エペリゾン | 急性腰痛の筋肉けいれん |
| SNRI系抗うつ薬 | デュロキセチン | 慢性腰痛(とくに心理的要因がある場合) |
ステロイドや神経ブロックはどんな腰痛に使われるか
炎症が強い急性腰痛や、坐骨神経痛が重篤な場合には、神経ブロック(硬膜外注射・神経根ブロック)が検討されることがあります。抗炎症薬や局所麻酔薬を神経の近くに直接注射するこの方法は、即効性の疼痛緩和が期待できます。
経口ステロイドについては、コクランレビューによると非特異的な腰痛には有効でないとされており、適応は限られています。神経ブロックは整形外科またはペインクリニックで行われる専門的な治療です。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が腰痛に効く仕組みと胃腸リスク
腰痛の薬として最も広く使われているNSAIDsは、炎症を抑えることで痛みを和らげる薬です。その一方で胃腸・腎臓・心臓への副作用リスクもあり、正しい服用方法を把握しておくことが長期的な健康を守ることにつながります。
COX-1とCOX-2の違いとNSAIDsが炎症を抑える仕組み
NSAIDsは、体内でCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を阻害することで、炎症物質プロスタグランジンの産生を妨げます。COX-1は胃粘膜を保護し血小板機能を維持する働きを担っています。COX-2は主に炎症部位で発現し、痛みや炎症を引き起こします。
従来の非選択的NSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)はCOX-1とCOX-2の両方を阻害するため、胃粘膜保護機能を損ない、胃腸障害を起こしやすい面があります。選択的COX-2阻害薬(セレコキシブなど)は胃腸への影響が比較的少ないとされますが、心血管リスクには注意が必要です。
NSAIDsの胃腸・腎臓・心臓への副作用リスクを正確に把握する
NSAIDsの主な副作用としては、胃潰瘍・消化管出血(特に高齢者で多い)、腎臓への血流低下による腎機能障害、そして長期使用による心血管リスクの上昇(高血圧、心筋梗塞リスク増加)が挙げられます。空腹時の服用、高齢、胃潰瘍の既往、利尿薬との併用などはリスクを高める要因です。
胃への負担を減らすため、NSAIDsとともにPPI(プロトンポンプ阻害薬)が処方されることもあります。高血圧・腎臓病・心疾患をお持ちの方は、NSAIDsを使用する前に必ず主治医か薬剤師に相談してください。
NSAIDsを安全に使うための服用量・期間のルール
市販のNSAIDsは原則として短期間(1〜2週間以内)の使用を目的としています。症状が改善しない場合や繰り返す場合は、自己判断での連続使用を続けず、整形外科に相談することが重要です。処方されたNSAIDsについても、医師の指示に従った量と期間を守ることが大切です。
痛みが続くからといって自己判断で用量を増やすのは危険で、より強い副作用につながる可能性があります。
NSAIDsを安全に使うためのポイント
- 必ず食後または食事中に服用する(胃への負担軽減)
- 用法・用量を守り、自己判断で増量しない
- 原則1〜2週間を超えた連続服用を避け、改善しない場合は受診する
- 胃腸が弱い方・高齢者・腎臓病・高血圧の方は事前に医師・薬剤師に相談する
- 他の薬との併用時は必ず薬剤師に飲み合わせを確認する
湿布と内服薬では腰痛への効果にどんな差があるか
腰痛に湿布と内服薬のどちらを使えばよいかは、痛みの強さや範囲、原因の深さによって異なります。それぞれの利点と限界を正しく理解することで、より適切な選択ができるようになります。
局所型NSAIDs(貼り薬・塗り薬)の有効成分と浸透の限界
ジクロフェナクやロキソプロフェンを含む貼り薬・塗り薬(局所型NSAIDs)は、炎症部位に成分を直接届けられるという点で、胃腸への全身的な影響を最小限に抑えながら鎮痛効果を発揮できます。コクランレビューでは、局所型NSAIDsは急性の筋骨格系疼痛に対してプラセボより有効であることが示されています。
ただし、皮膚から深部の椎間板や脊髄神経には外用薬の成分が十分な濃度で届きにくいという限界があります。表面に近い筋肉や靭帯の炎症には有効ですが、深部の神経由来の痛みには内服薬のほうが効果を期待しやすいといえます。
温感湿布と冷感湿布はどう使い分けるか
市販の湿布には、患部を冷やして炎症を抑える「冷感タイプ」と、温めて血行を促進する「温感タイプ」があります。急性期(受傷直後〜48〜72時間)は炎症が強いため、冷感タイプが一般的です。慢性腰痛や筋肉のこわばりには、温感タイプで血流を改善するほうが症状の緩和につながることが多いです。
強い腫れや熱感がある急性炎症では冷却を徹底し、症状が落ち着いてきたら温熱療法に移行するのが標準的な流れです。自身の感覚として「温めると楽」「冷やすと楽」という体感も参考にしながら選んでください。
外用薬と内服薬の比較
| 比較項目 | 外用薬(湿布・塗り薬) | 内服薬 |
|---|---|---|
| 胃腸への負担 | 少ない | あり(NSAIDsの場合) |
| 深部への到達性 | 限定的 | 全身に行き届く |
| 神経由来の痛みへの対応 | 低い | 高い |
| 適した腰痛 | 表層の炎症・軽度の痛み | 強い痛み・広範囲の痛み |
内服薬と湿布の同時使用で起きる過量投与リスク
「処方されたロキソプロフェン内服薬と、市販のロキソプロフェン湿布を同時に使っている」というケースが整形外科の外来では珍しくありません。同一成分のNSAIDsを内服と外用で同時使用すると、意図せず過剰摂取になる可能性があります。腎機能への負担が増したり、血圧が上昇したりするリスクも否定できません。
処方薬を使用している期間は市販薬(同成分)の使用を控え、必ず担当医師か薬剤師に相談してから外用薬を組み合わせることが安全です。
腰痛の薬で起きやすい副作用と危険な飲み合わせ
腰痛の薬は適切に使えば有効ですが、他の薬との組み合わせによっては予期しない副作用が生じることがあります。市販薬・処方薬を問わず、飲み合わせの注意点を事前に把握しておくことが安全な治療の前提です。
高齢者・基礎疾患がある人は薬選びに特別な注意が必要
70歳以上の高齢者では、腎機能や肝機能が低下していることが多く、NSAIDsの代謝・排出に時間がかかり副作用が出やすい状態です。高血圧・糖尿病・心不全・腎臓病などの基礎疾患がある方は、NSAIDsが病状を悪化させる可能性があります。筋弛緩薬は眠気を起こしやすく、高齢者の転倒リスクを高めます。
基礎疾患をお持ちの方は、市販薬を購入する際も薬剤師への相談を習慣にしてください。「市販薬だから大丈夫」という考えは、特にこうした方には当てはまらない場合があります。
市販薬と処方薬の重複による思わぬトラブル
複数の医療機関から同種の薬を処方されている場合や、処方薬と同成分の市販薬を追加服用している場合は、意図せず「多重投薬」になることがあります。特に血液をサラサラにする抗凝固薬(ワーファリンなど)との組み合わせでは、NSAIDsが出血リスクを高める可能性があります。
お薬手帳を活用し、腰痛以外の治療薬も含めてかかりつけ医や薬剤師と共有することで、飲み合わせトラブルの多くは防げます。
痛み止めの長期乱用で起きる「薬物乱用頭痛」の問題
腰痛で鎮痛薬を月に10日以上、3か月以上使い続けると、薬の効果が切れたときに痛みが増悪する「薬物乱用頭痛(薬剤過剰使用頭痛)」と類似した状態になることがあります。鎮痛薬を使えば使うほど痛みに敏感になるという悪循環が生じる可能性があります。
痛みが引かないからといって鎮痛薬を増量・頻用するのではなく、根本的な腰痛の原因を整形外科で評価してもらうことが先決です。薬で痛みを抑えながら、リハビリや生活習慣の見直しを並行することが長期的な回復につながります。
腰痛の薬と注意すべき飲み合わせ
| NSAIDsと注意が必要な薬・状況 | 主なリスク |
|---|---|
| 抗凝固薬(ワーファリン等) | 出血リスクの増加 |
| 利尿薬・ACE阻害薬・ARB | 腎機能低下・血圧コントロール不良 |
| 他のNSAIDs・市販の痛み止め | 過剰摂取・副作用の増強 |
| 空腹時服用 | 胃潰瘍・消化管出血のリスク増加 |
薬だけでは治らない腰痛—整形外科を受診すべき警告サイン
市販薬で対処できる腰痛には明確な限界があります。特定の症状が現れたときや薬を使っても改善しない場合は、整形外科で正確な診断を受けることが重要です。見逃してはならない警告サインを知っておくことで、重篤な疾患の早期発見にもつながります。
2週間以上続く腰痛は自己治療の限界を超えている
急性腰痛の多くは4〜6週間以内に自然回復しますが、2週間たっても痛みが改善しない場合は、椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・骨粗鬆症性骨折など器質的な疾患が隠れている可能性があります。市販薬で症状を抑えながら様子を見続けることは、発見を遅らせるリスクがあります。
「最初の数日より痛みが増してきた」「安静にしていても痛みが持続する」「夜間に強い痛みで目が覚める」といった経過をたどる場合は、早めの受診を検討してください。
整形外科を受診すべき腰痛の警告サイン
| 症状・状況 | 考えられる原因 | 対応 |
|---|---|---|
| 2週間以上改善しない | 器質的疾患の可能性 | 早めに受診 |
| 夜間痛・安静時にも続く痛み | 腫瘍・感染の疑い | すぐに受診 |
| 発熱を伴う腰痛 | 脊椎感染・化膿性脊椎炎 | すぐに受診 |
| 脚のしびれ・麻痺の進行 | 神経圧迫の悪化 | 早めに受診 |
| 排尿・排便障害 | 馬尾症候群 | 緊急受診 |
脚のしびれ・排尿排便障害は今すぐ受診すべき緊急サイン
腰痛に脚のしびれや麻痺、排尿・排便困難(またはコントロール不能)が伴うときは、馬尾症候群(馬尾神経の圧迫)の可能性があります。これは整形外科的な緊急状態であり、手術が必要になることもあります。発症から治療開始までの時間が、神経の回復に大きく影響します。
「市販薬で様子を見よう」と判断せず、これらの症状が出たらその日のうちに整形外科または救急外来を受診してください。
薬物療法と組み合わせて効果を上げる運動療法とリハビリ
整形外科の腰痛治療は薬だけではありません。NSAIDsや筋弛緩薬で急性期の痛みを抑えながら、理学療法士が行うリハビリテーション(ストレッチ、コアトレーニング)を並行することで、再発予防と機能回復の両面に効果が得られます。
慢性腰痛では心理的な要因(不安・抑うつ)が痛みを増幅させることが分かっており、運動療法との組み合わせが有効とされています。薬はあくまで痛みを緩和して動きやすくするための補助手段であり、積極的な運動と生活習慣の改善が長期的な回復の土台となります。
よくある質問
- 腰痛の市販薬を毎日飲み続けても問題ないですか?
-
腰痛の市販NSAIDsは、急性期の短期使用を想定して作られています。原則として1〜2週間を超えた連続服用は推奨されません。
長期にわたり毎日服用すると、胃潰瘍・腎機能低下・心血管リスクの上昇につながる可能性があります。2週間を超えても症状が改善しない場合は、整形外科を受診して根本的な原因を調べることが大切です。
- ロキソプロフェンとイブプロフェンで腰痛への効果に違いはありますか?
-
どちらも非選択的NSAIDsとして、炎症を抑えて腰痛を和らげる作用は基本的に同様です。成人の標準用量では、ロキソプロフェンのほうが1回の鎮痛効果が速く出るとされており、国内の整形外科での処方頻度も高い薬です。
イブプロフェンは海外でより広く使われており、どちらが優れているかは一概にいえません。効果を感じにくい場合は、薬剤師か整形外科医に相談して別の成分や用量を検討してもらうとよいでしょう。
- 腰痛に湿布と内服薬はどちらを先に試せばよいですか?
-
軽度の急性腰痛であれば、胃腸への負担が少ない湿布から試すことが合理的です。特にロキソプロフェンやジクロフェナク含有の湿布は、局所的な炎症に有効性が認められています。
ただし、痛みが強くて動けない状態や、脚のしびれを伴う場合は内服薬や整形外科での診断を優先してください。湿布と内服薬を同じNSAIDs成分で同時使用すると過剰摂取のリスクがあるため、使用前に薬剤師への確認が必要です。
- 腰痛の処方薬だけが持つ作用と、薬局では買えない薬の種類とは何ですか?
-
市販薬はNSAIDsやアセトアミノフェン中心ですが、処方薬にはプレガバリン・ミロガバリンといった神経障害性疼痛治療薬、チザニジン・エペリゾンなどの筋弛緩薬、デュロキセチンなどのSNRIなど、薬局では購入できない種類が多数あります。
坐骨神経痛のしびれや灼熱感、筋肉のけいれん、慢性腰痛の精神的な側面など、市販薬では対応できない症状に対処できるのが処方薬の特徴です。症状が市販薬で改善しない場合は、整形外科を受診することで適切な薬が選択されます。
- 腰痛の痛み止めを飲んでも効かない場合、どうすればよいですか?
-
市販の痛み止めで改善しない腰痛は、薬の種類や用量が症状に合っていないか、神経障害性疼痛・心理的要因・器質的疾患など薬が効きにくい原因がある可能性があります。
まず整形外科でX線やMRIなどの画像検査を含む診察を受け、正確な診断を得ることが重要です。診断に基づいて処方薬に変更したり、リハビリを組み合わせたりすることで、単純な鎮痛薬だけでは得られなかった改善が期待できます。市販薬を増量したり種類を追加したりすることは副作用のリスクが増すだけで、根本的な解決にはなりません。
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