肩関節脱臼(shoulder dislocation)とは、肩関節を構成する上腕骨の頭部が、本来収まるべき肩甲骨の関節窩から外れてしまう外傷性の損傷です。
外傷の原因はスポーツでの接触プレーや転倒による強い衝撃が代表的で、発生直後から激しい痛みと著明な肩の変形、そして運動制限が現れます。10代後半から20代の若年層では、ラグビーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツ中に受傷するケースが多く見られます。
初回の脱臼後は、肩関節を支持する靭帯や関節包が損傷を受けることで、再脱臼を起こしやすい状態となります。医療機関では、詳細な問診と身体診察に加え、レントゲン検査やMRI検査などの画像診断により、損傷の程度を正確に評価していきます。
肩関節脱臼の病型
肩関節脱臼は関節脱臼の中でも最も多く50%以上を占めます。脱臼する方向によって前方脱臼と後方脱臼、下方脱臼に大別され、それぞれの解剖学的特徴により異なる病態を示します。
前方脱臼は全肩関節脱臼の95%以上を占める最も一般的な病型であり、上腕骨頭が関節窩の前方に逸脱する形で発生します。
後方脱臼は比較的稀な病型で、全体の2-4%程度の発生頻度となっており、上腕骨頭が関節窩の後方に逸脱することで特徴づけられます。
下方脱臼は最もまれなタイプで発生率は1%未満です。
前方脱臼の解剖学的特徴
解剖学的特徴 | 前方脱臼との関連性 |
関節窩形状 | 前方が浅い構造 |
---|---|
靭帯強度 | 前方が相対的に脆弱 |
筋肉配置 | 前方の支持性が低い |
前方脱臼における上腕骨頭の位置は、関節包前方の脆弱性と解剖学的な構造特性が密接に関連しています。関節窩の前方部分は後方と比較して浅い形状をしており、この構造的特徴が前方への脱臼を起こしやすい要因です。
損傷機序としては肩関節の外転、外旋、伸展した上肢への打撃が一般的です。他には、後方からの衝撃や伸ばした腕をついて発生するケースもあります。
前方脱臼の最大40%には神経損傷、関節唇、関節窩、上腕骨頭の骨折など関連損傷を認めます。
後方脱臼の特異性
後方脱臼は発生頻度が低いものの、見逃されやすい重要な病型として医療現場での認識が不可欠です。
後方脱臼の特徴として、関節窩後方の深い構造があるにもかかわらず、特定の状況下で発生する点が挙げられます。解剖学的には後方の関節包が比較的強固な構造を持っているため、通常の外力では後方脱臼は起こりにくいのが特徴です。
通常、前方からの肩への打撃と、内転した腕への軸荷重によって起こります。激しい筋収縮(発作、感電)によっても起きるときがあります。腕は内転、内旋した状態で保持され外旋できません。
下方脱臼の特徴
通常、過外転もしくは外転した腕に軸荷重がかかることによって生じます。
腕は、頭上にあるか後方に位置し、内転させることができません。神経損傷、腱板損傷、関節包の断裂を伴うことが多く、腋窩神経・動脈損傷の発生率は肩関節損傷の中で最も高いです。
病型による画像所見の違い
画像所見 | 前方脱臼 | 後方脱臼 |
正面像 | 骨頭内側偏位 | 骨頭の重なり |
---|---|---|
側面像 | 前方転位 | 後方転位 |
軸位像 | 前方偏位 | 後方偏位 |
前方脱臼と後方脱臼では、レントゲン写真上で特徴的な所見の違いが認められます。
解剖学的リスク因子
- 関節窩の形状異常
- 関節唇の状態
- 関節包の弾性
- 靭帯の緊張度
- 筋バランスの左右差
肩関節脱臼の病型に影響を与える解剖学的リスク因子として、関節窩の形状異常や関節唇の状態などが知られています。
肩関節脱臼の症状
肩関節脱臼による症状は、激しい痛みと可動域制限から神経症状まで、実に多岐にわたります。
急性期の症状
急性期症状 | 特徴的な所見 |
疼痛 | 持続的な激痛 |
---|---|
腫脹 | 著明な腫れ |
変形 | 肩の形状変化 |
運動制限 | 可動域減少 |
受傷直後から現れる急性期の症状は、非常に苦痛を伴うものです。激しい痛みは上腕全体に広がり、腕を動かすことがほとんどできなくなります。
肩関節周囲の靭帯や筋肉が急激に引き伸ばされ、持続的な疼痛を感じます。
形態的な特徴
肩の形に現れる明らかな変化も、肩関節が脱臼して起こる症状の一つです。通常見られる肩の丸みが消失し、代わりに肩峰の下に窪みが生じます。
変形は上腕骨頭が正常な位置から外れて起こり、多くの場合、反対側の健常な肩と比較すると容易に確認できます。また、腫れや内出血といった症状も、時間の経過とともに顕著になってきます。
機能障害の具体的な様相
- 腕を前方や側方に挙げられない
- 肘を体から離す動作が著しく制限される
- 腕を内外に回転させるのが困難
- 肩甲骨の動きが制限される
- 上腕の筋力が著しく低下する
肩関節の脱臼により、機能障害も現れます。
神経・血管系への影響
合併症状 | 具体的な症状 |
神経障害 | しびれ、脱力 |
---|---|
血行障害 | 冷感、蒼白化 |
感覚異常 | 痛覚鈍麻 |
筋力低下 | 把持力減少 |
脱臼により周辺の神経や血管が圧迫されると、様々な神経症状や循環障害が発生するときがあります。
また、上腕の神経叢が影響を受けると、手先までしびれや痛みが放散するケースもあります。
経時的な症状の変化
急性期を過ぎると、激しい痛みは徐々に和らいでいきますが、不安定感や違和感は残存する人が多いです。関節周囲の筋肉は防御性の緊張を続け、これにより慢性的な痛みや違和感が持続する場合があります。
症状は損傷の程度や部位によって異なる経過をたどりますが、筋力の回復には一定の時間を要し、初回の脱臼では特に慎重な経過観察が必要です。
肩関節脱臼の原因
肩関節脱臼は、外傷性と非外傷性の二つに大別され、関節の構造的特徴と外力の作用方向が組み合わさって発生する整形外科疾患です。
外傷性脱臼の基本メカニズム
外力の種類 | 発生状況 |
直接的外力 | 転倒時の衝撃 |
---|---|
間接的外力 | 投球動作時の捻り |
牽引力 | 引っ張られる動作 |
外傷性の肩関節脱臼は、突発的な外力が関節に加わって発生します。
スポーツ活動や転倒などで腕を伸ばした状態での衝撃が、肩関節に過度な負荷をかけるのが原因です。
年齢層による原因の特徴
若年層では激しいスポーツ活動中の受傷が多く、特にコンタクトスポーツでの発生頻度が高いのが特徴的です。中高年層では、比較的軽微な外傷でも脱臼を起こすときがあり、加齢に伴う関節の構造的変化が重要な要因となっています。
高齢者層では、転倒などの日常生活における事故が主な原因となるケースが多く、骨粗鬆症との関連も指摘されています。
解剖学的要因と関節の不安定性
構造的特徴 | 不安定性への影響 |
関節窩の大きさ | 浅い構造による脱臼リスク |
---|---|
靭帯の強度 | 伸展性による支持力低下 |
筋力バランス | 不均衡による不安定性 |
肩関節は人体の中で最も可動域が大きい関節であり、浅い関節窩による不安定性を生じやすい構造となっています。
職業・スポーツ別の発生リスク
- ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツ
- バレーボールやテニスなどのオーバーヘッド動作の多いスポーツ
- 重量物を扱う建設作業
- 高所での作業が多い職種
- 救助活動や消防活動
Contactスポーツやオーバーヘッド動作の多いスポーツ、重量物を扱う建設作業や高所での作業が多い職種などは、肩関節脱臼の発生リスクが特に高いです。
非外傷性脱臼の発生機序
非外傷性の肩関節脱臼は、関節の先天的な緩みや後天的な組織の脆弱化が原因となって発生します。
関節包や靭帯の緩みが存在する際には、日常的な動作でも容易に脱臼を起こすケースがあります。遺伝的な要因として、結合組織の異常を伴う疾患では関節の不安定性が増大し、脱臼のリスクが上昇します。
環境因子の影響
気温や湿度などの環境要因も、間接的に肩関節脱臼の発生に関与する可能性があります。
寒冷環境下では筋肉や靭帯の柔軟性が低下し、突発的な動作時に関節の保護機能が十分に働かない場合があります。また、過度な疲労状態や睡眠不足などのコンディション不良も、筋力低下を介して脱臼のリスクを高める要因です。
活動環境の整備や準備運動の実施は、脱臼予防において不可欠な要素です。
再発性脱臼の原因
初回の脱臼後は、関節周囲の組織損傷により構造的な脆弱性が残存する例があります。
この組織の脆弱性は、その後の日常生活やスポーツ活動において再脱臼の原因となる可能性が高まります。年齢や活動内容に応じた対策を講じると、再発リスクを軽減できます。
肩関節脱臼の検査・チェック方法
肩関節脱臼の正確な診断には、詳細な問診から始まり、入念な身体診察、そして画像検査による客観的な評価まで、段階的なアプローチが必要です。
問診で確認する重要事項
- いつ、どのような状況で起きたか
- どの方向に力が加わったか
- これまでに脱臼した経験はあるか
- 普段から肩に違和感はあったか
- 受傷後どのような経過をたどったか
- しびれや感覚の変化はないか
最初に、詳しい状況を聞き取ります。受傷時の状況や体の向き、どのような力が加わったのかといった具体的な情報は診断の手がかりとなり、過去に同様の経験があるかどうかも診断において大切な情報です。
可動域の減少に伴う痛みや、関節が外れているような感覚を訴える人が特に多いです。
視診のポイント
視診項目 | 確認ポイント | 典型的な所見 |
全体観察 | 左右差 | 肩の形状変化 |
---|---|---|
局所観察 | 腫脹 | 軟部組織の腫れ |
皮膚状態 | 色調変化 | 内出血斑 |
変形確認 | 陥凹 | 肩峰下の窪み |
視診では、両肩を比較しながら肩の形の変化や左右差を確認します。通常、肩関節脱臼では肩峰の下に特徴的な陥凹がみられ、上腕骨頭の位置異常による変形が観察されます。
皮膚の状態も注意深く観察し、腫れや内出血の有無、程度を評価します。
後方脱臼は腕が内旋、内転しているため、特に見逃しやすいので注意が必要です。脱臼肢位が肩や腕をかばうようにしか見えないため後方脱臼を見逃しやすくなります。痩せている人の場合、後方で上腕骨頭を触知できます。
触診による詳細な評価
触診項目 | 評価内容 | 注意点 |
圧痛検査 | 痛みの部位 | 強制は回避 |
---|---|---|
骨性指標 | 位置関係 | 慎重に確認 |
軟部組織 | 緊張度 | 左右差確認 |
神経血管 | 循環状態 | 末梢まで確認 |
触診では、肩関節周囲の状態を系統的に確認していきます。圧痛の位置や程度、腫脹の範囲、骨の位置関係などを丁寧に評価します。
上腕骨頭の位置や可動性、周囲組織の状態を特に注意深く確認することが可能性の評価に役立ちます。
画像検査による客観的評価
レントゲン検査は、脱臼の方向や程度を判断する上で重要です。複数の方向から撮影を行うと、立体的な評価が可能です。
必要に応じてCT検査やMRI検査を追加し、より詳細な評価を行います。検査結果は、今後の経過観察においても参考となる基準となります。
肩関節脱臼の治療方法と治療薬、リハビリテーション
肩関節脱臼の治療は、整復による関節位置の修正から始まり、投薬による疼痛管理を経て、段階的なリハビリテーションへと進む体系的なアプローチが必要です。
整復による初期治療
整復操作は医療従事者が慎重に実施し、関節周囲の筋肉の緊張を緩和しながら上腕骨頭を関節窩内に戻します。
多くの場合、鎮静をかけたり神経ブロックや関節内局所麻酔などで鎮痛をしながら行われます。
整復方法にはさまざまなものがあり、どの整復法が最も良いかは医師間でも一致していませんが、どの方法も高い成功率があるため複数の整復法に精通しておくのが大事です。
Scapular manipulation
- 立位もしくは腹臥位
- 患者の背後に立ち、肩峰を下に押し込みながら、肩甲骨の先端を内側に押す
- 助手は片手で患者の手首をつかみ、もう片方の手で肘を屈曲させ、肘を押し下げて牽引する
- 明らかな「カクン」という音はないケースが多い
- 関連する骨折のリスクが少ない整復法
外旋法
- 一人でできる方法
- 患者を仰臥位にし、肘を90度に屈曲させ、片手で肘を持ち、もう片方の手で手首を持つ
- ゆっくりと腕を横に倒し、前腕を外旋させていく
- 痛みで一時停止し、筋肉を弛緩させながら実施する
- 5~10分かけて腕を外旋させ、整復する
- 通常、腕を70~110度外旋させると整復される
カニンガムテクニック
- 患者は着席し、検査者は患者の前に座る
- 患者は同側の手を検査者の肩の上に置く
- 医師は片方の腕を患者の肘のしわに当て、もう片方の手で患者の上腕二頭筋、三角筋、僧帽筋をマッサージする
- リラックスしてもらい、肩甲骨を寄せて背筋を伸ばすように指示する
ミルヒテクニック
- 外旋法がうまくいかないときにミルヒテクニックを追加する
- 患者は仰臥位で、指を肩にかけ、親指を腋窩に入れて安定させる
- 上腕骨頭を直接圧迫すると同時に外旋を維持しながら、腕を外旋させ、患者の頭上で外転させる
スティムソン テクニック
- 助手不要、意識下鎮静不要
- 患者はうつ伏せになり、患側の腕を5ポンド(2.3kg)から15ポンド(6.8kg)の体重をかけてベッドの側面にぶら下げる
- 通常30分以内に整復される
牽引 カウンタートラクション
- 腋窩の下にシートを巻き、一人の助手が手首または肘を連続的に牽引する
- もう一人が反対側からシートでカウンタートラクションを行う
スパソ法
- 患者を仰臥位にし、検査者が手首または前腕遠位部をつかむ
- 緩やかな垂直牽引と外旋で垂直に持ち上げる
ファレス法
- 患者は仰臥位で上肢を横にする
- 検査者が患者の手首を持ち、腕を軽く引っ張り牽引する
- 腕を前方、後方へ小刻みに動かしながら腕を外転させる(約10cm)
- 肩が外転90度までで整復されない場合は、外反を加える
フルクラムテクニック
- 患者は仰臥位または座位で、丸めたタオルまたはシーツを腋窩に置く
- 上腕骨遠位端を内転させ、同時に上腕骨頭に後外側の力を加える
- 大きな力が必要であり、合併症が増加する可能性がある
疼痛緩和と消炎処置
投薬の種類 | 効果 |
消炎鎮痛薬 | 痛みと腫れの軽減 |
---|---|
筋弛緩薬 | 筋緊張の緩和 |
外用薬 | 局所の消炎作用 |
整復後の急性期には、疼痛コントロールと炎症の抑制が重要です。
固定期間中の管理
初期の固定期間中は、肩関節の安静を保ちながら周囲組織の修復促進が不可欠です。固定具による肩関節の保護は、組織の修復過程において理想的な環境を整えます。
固定期間は一般的に2~3週間ですが、年齢や活動性に応じて個別に調整します。
リハビリテーションプログラムの段階
- 関節可動域訓練による拘縮予防
- 等尺性筋力トレーニングによる筋力維持
- 自動介助運動による関節機能の改善
- 抵抗運動による筋力強化
- 協調性訓練による運動制御の向上
急性期を過ぎたら、段階的にリハビリテーションを進めていきます。
段階的な運動療法
初期段階では、肩甲骨周囲の筋力トレーニングから開始し、徐々に運動範囲を拡大していきます。中期では、関節の安定性を高めるための筋力強化運動を実施し、動的な安定性の向上を目指します。
後期には、より実践的な動作訓練を取り入れ、日常生活やスポーツ活動への復帰を見据えた準備を行います。
関節安定化訓練
肩関節周囲の筋群を強化して、関節の力学的な安定性を向上させます。
ローテーターカフ筋群の強化は、上腕骨頭の求心性を高め、再脱臼の防止に寄与します。肩甲骨の安定性を高めて、上肢全体の協調的な動きを回復させます。
スポーツ復帰に向けた準備
競技特性に応じた専門的なトレーニングを導入し、段階的に運動強度を上げていきます。
投球動作やコンタクトプレーなどの高負荷がかかる動作は慎重に実施し、競技レベルや目標に合わせて、運動プログラムを調整していきます。
筋力や関節の安定性が十分に回復したことを確認してから、実践的な動きへと移行します。
薬の副作用や治療のデメリット
肩関節脱臼の治療では様々な副作用やリスクが存在し、手術・非手術のいずれの方法を選択しても、完全な回復までには慎重な経過観察が必要となります。
整復時に注意すべきリスク
- 骨折や軟部組織損傷の発生
- 神経障害による感覚異常
- 血管損傷による循環障害
- 疼痛の急激な増強
- 周辺組織への二次的な損傷
脱臼した関節を元の位置に戻す整復操作では、細心の注意を払いながら実施します。整復の過程で予期せぬ合併症が発生する可能性があるため、慎重に作業を進めていきます。
保存療法における問題点
短期的影響 | 発生頻度 | 特徴 |
関節拘縮 | 中程度 | 徐々に進行 |
---|---|---|
筋萎縮 | 高頻度 | 早期に出現 |
疼痛遷延 | 低頻度 | 長期化も |
可動域制限 | 高頻度 | 回復に時間 |
非手術での治療を選択した際には、固定期間中の筋力低下や関節の硬さが問題となるケースがあります。
手術に伴う潜在的リスク
術後合併症 | 特徴 | 対応方針 |
深部感染 | 重症化の懸念 | 早期発見 |
---|---|---|
創傷治癒遅延 | 長期化傾向 | 継続観察 |
神経麻痺 | 一時的症状 | 経過確認 |
関節拘縮 | 進行性 | 早期介入 |
手術療法を選択した際には、一般的な手術リスクに加え、肩関節特有の合併症について十分な説明が必要です。
感染症や創部の治癒遅延、神経損傷など、様々な合併症のリスクがあります。
再脱臼のリスク
初回の脱臼後は、関節を支持する組織の損傷により、再び脱臼しやすい状態となります。
若年者や活動性の高い方では、特に再脱臼のリスクが高くなる傾向にあります。
長期的な影響と注意点
治療後も完全な回復には個人差があり、中には違和感が残存する場合もあります。
スポーツ復帰や重労働には慎重な判断が必要となり、段階的な活動再開が望ましいです。関節の安定性が完全に回復するまでは、過度な負担を避けるのが推奨されます。
保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
肩関節脱臼の基本的な外来診療費は、合計で数千円程度です。
診療内容 | 3割負担額 |
レントゲン撮影 | 1,500円~ |
---|---|
MRI検査 | 4,500円~ |
整復処置 | 3,000円~ |
入院時の費用の内訳
- 入院基本料
- 投薬・注射料
- 処置料金
- 各種検査費用
- リハビリテーション料
入院期間は3~7日間が一般的で、費用の内訳には投薬・注射料や各種検査費用なども含まれます。
リハビリテーション費用
リハビリ内容 | 1回あたりの3割負担額 |
運動療法 | 850円~ |
---|---|
物理療法 | 500円~ |
肩関節脱臼の一般的な外来診療では、整復処置とレントゲン検査を含め、1回の受診で5,000円から1万円程度の自己負担額となるケースが多いです。
手術が必要となった際には、術式により10万円から15万円程度の患者負担額が発生します。
リハビリテーションは1回あたり1,000円前後の負担で、通常4~8週間程度の継続が効果的です。
以上
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