肘関節脱臼(elbow dislocation)とは、上腕骨と前腕骨(尺骨・橈骨)の関節面が正常な位置からずれてしまう外傷性の損傷を指します。
激しい痛みと著しい可動域制限が特徴的な症状として現れ、腫脹や変形を伴う人も多く、患部を動かすのが困難になります。関節を支える靭帯や筋肉、神経、血管といった周囲の組織も同時に損傷するケースがあり、長期的な機能障害につながる恐れがあるため注意が必要です。
医療機関での診断と初期対応が予後を左右する重要な要素となり、神経や血管の損傷が疑われるときは一刻も早い専門医による評価が必要です。
肘関節脱臼の病型
肘関節脱臼には、方向や重症度など、さまざまな分類方法があります。
脱臼する方向についての分類
上腕骨に対する肘頭の方向によって分類されます。
後外側、後内側、後方、前方、内側、および外側がありますが、後外側脱臼は最も一般的な脱臼パターンで、実際には脱臼の90%は後外側脱臼か後外側脱臼です。
脱臼の重症度についての分類
単純脱臼と複雑脱臼があります。単純脱臼では、骨折は伴わず靱帯損傷や関節包のみの損傷を伴います。50-60%の脱臼が単純脱臼です。
複雑脱臼では、周囲の骨の骨折(橈骨頭、鈎状突起、肘頭、上腕骨遠位端、上腕骨内側上顆、外側上顆)を伴います。Terrible triadと言われる外側側副靱帯断裂、橈骨頭骨折、鈎状突起骨折が合併すると予後が悪いとされています。
肘関節脱臼の症状
肘関節脱臼では、激しい疼痛、著明な腫脹、関節の変形、可動域制限といった特徴的な症状が現れ、一部の症例では周囲の軟部組織の損傷を伴います。
主要な臨床症状
症状 | 特徴 |
疼痛 | 持続性で強い |
---|---|
腫脹 | 進行性に増大 |
変形 | 明らかな外観変化 |
可動域制限 | 全方向性 |
肘関節脱臼における臨床症状は、受傷直後から明確な特徴を示します。なかでも初期症状は、診断の重要な手がかりです。
最も顕著な症状は肘関節周囲の激しい疼痛であり、この痛みは安静時でも持続するケースが多いです。疼痛の性質は鋭く突き刺すような感覚を伴い、患者の表情からも容易に判断できる程度のものです。
関節の著明な腫脹も特徴的な症状として認められ、受傷後数時間で進行する人もいます。関節包内の出血や滑膜の炎症反応によって引き起こされます。
腫脹の程度は時間経過とともに増強する傾向にあり、受傷後24時間以内がピークとなるケースが多いです。関節周囲の軟部組織全体に及び、時として前腕や上腕にまで波及します。
二次的な症状
肘関節脱臼に伴い、周囲の軟部組織にも影響が及ぶ点が重要です。神経血管系の症状は、早期発見と対応が必須となります。
神経症状として手指のしびれや感覚障害が出現する可能性があり、上腕骨の転位による正中神経や尺骨神経への圧迫が原因となって生じます。
血行障害が生じると、手指の蒼白化や冷感などの循環障害が認められます。これは上腕動脈への圧迫や伸展による血流障害が原因です。
皮膚の色調変化や温度変化は、血行障害の重要な指標となります。末梢の毛細血管再充満時間の延長は、循環障害の程度を判断する上で大切な所見です。
関節の状態変化
- 関節の明らかな変形
- 上腕と前腕の位置関係の異常
- 皮膚の張り具合の変化
- 関節周囲の膨隆
関節の変形は、正常な解剖学的位置関係が失われて生じます。肘関節を構成する三つの骨(上腕骨、橈骨、尺骨)の位置関係が崩れて起こります。
外観上の変化は、健側との比較で明らかとなるケースが多いです。後方脱臼の場合、肘頭の突出が顕著となり、上腕三頭筋腱の緊張が増加します。
関節周囲の皮膚には緊張の増加や皺の消失が認められますが、これは関節内の出血や浮腫による組織の膨張が原因です。
機能障害の様相
運動制限 | 障害の程度 |
屈曲 | 高度 |
---|---|
伸展 | 高度 |
回内 | 中等度 |
回外 | 中等度 |
関節の可動域制限は屈曲・伸展だけでなく、回内・回外運動にも及び、関節の安定性が完全に失われている状態を示す所見です。
筋力低下や不随意な筋収縮による痛みも伴うケースがあります。これは防御性の筋収縮によるもので、関節の更なる損傷を防ぐための生体の防御反応と考えられます。
疼痛による防御性拘縮は、一部の人で関節可動域の評価を困難にします。ただ、この防御性拘縮自体が、関節の不安定性を示す重要な臨床所見となります。
関節包や靭帯の損傷は関節の不安定性をさらに増強させる要因で、内側側副靭帯の損傷は関節の動揺性を著しく増加させます。
肘関節脱臼の原因
肘関節脱臼は、転倒や衝突などによる強い外力が加わることで上腕骨と前腕骨の位置関係が著しく偏位する外傷であり、日常生活やスポーツ活動において予期せぬ状況で発生する例が多い外傷です。
解剖学的な背景
肘関節は上腕骨と尺骨、橈骨による複雑な構造体を形成していますので、関節の安定性を保つのが重要です。
関節を支える構造として、内側側副靭帯、外側側副靭帯、輪状靭帯などの軟部組織が存在し、協調して関節の安定性を維持しています。
また、関節包は全周性に関節を取り囲み、滑膜による潤滑機能と力学的な支持機能を担っていて、これらの構造が一体となって関節の正常な機能を維持しています。
関節安定性に関与する構造物 | 主な機能 |
内側側副靭帯 | 内反制動 |
---|---|
外側側副靭帯 | 外反制動 |
輪状靭帯 | 回旋制動 |
関節包 | 全方向性制動 |
手を伸ばした状態での転倒が、肘関節脱臼を引き起こす最も一般的な機序です。
肘関節後方脱臼では、脱臼を発生させる力には軸圧と外反ストレスがあります。地面をついた手を中心に外旋するため、肘関節は外反モーメントを受けて脱臼します。
肘関節前方脱臼の場合、そのメカニズムには通常、屈曲した肘関節の上に転倒し、尺骨近位部に前方向きの力がかかるのが関与しています。
肘関節脱臼の際には、肘関節の支持機構が外側から内側へと向かって生じ、これを「Horii Cycle」といいます。破壊の順序は、外側側副靱帯、関節包前方、関節包後方、内側側副靱帯の順番です。
直接的な外力による発生機序
転倒時に手をつくことで生じる介達外力は肘関節脱臼の代表的な原因となり、この状況では体重の数倍から数十倍の力が瞬間的に関節にかかります。体重による圧縮力と地面からの反作用力が複合的に作用し、関節の生理的可動域を超える力が加わって靭帯や関節包の破綻を起こします。
スポーツ活動中の接触や衝突による直達外力も肘関節脱臼を引き起こす不可欠な要因として認識されており、格闘技や接触性スポーツでは、相手との激しい接触により強大な外力が加わる場合があります。
さらに、この種の外傷では、脱臼が生じる瞬間に関節に加わる回旋力や剪断力が周囲の軟部組織に広範な損傷を引き起こすケースも少なくありません。
年齢層による発生要因の特徴
若年層での発生要因
- 格闘技や接触性スポーツでの受傷
- 自転車や原付バイクからの転落
- 高所からの転落
- スケートボードなど体幹の回旋を伴う競技での事故
- 球技スポーツでの接触プレー
若年層ではスポーツや転落などの状況で発生する例が多いです。
一方、中高年層では加齢に伴う骨密度低下や靭帯の脆弱化が背景因子となる場合が多く、若年層と比較して比較的軽微な外力でも脱臼が生じやすい傾向にあります。骨粗鬆症を合併している場合には特に骨折を伴う脱臼が発生しやすく、より複雑な病態を呈します。
年齢層別の主な受傷機転 | 特徴的な状況 |
10代〜20代 | スポーツ外傷 |
---|---|
30代〜40代 | 交通事故 |
50代以上 | 転倒 |
高齢者 | 軽微な外傷 |
関節の解剖学的脆弱性
肘関節は構造上、側方への安定性が比較的弱く外反ストレスに対して脆弱であり、この特徴が特定の方向への脱臼を起こしやすい要因となっています。
関節包や靭帯などの軟部組織は、急激な外力が加わった際に損傷を受けやすい解剖学的特徴を持っていて、外側側副靭帯複合体は外傷時に最初に損傷を受けやすい構造として知られています。
また、関節の安定性を保つ上で重要な役割を果たす骨性の支持機構も強い外力が加わって破綻し、不安定な状態を引き起こす原因です。
職業性要因
建設作業や高所作業に従事する労働者は、職業上の特性から肘関節脱臼のリスクが高まる傾向にあります。不安定な足場での作業や重量物の取り扱いが多い職種では、特に注意が必要です。
反復的な動作や持続的な負荷が加わる作業環境下では靭帯の疲労性の変化が起こり、軽微な外力でも脱臼が生じる可能性があり、この傾向は長期間の作業従事によってさらに増加します。
作業姿勢や作業方法によっては肘関節に過度なストレスがかかりやすい状況が生じて、脱臼の誘因となるときもあります。
肘関節脱臼の検査・チェック方法
肘関節脱臼の診断では、詳細な問診と徒手検査に加えて画像診断を組み合わせた総合的な評価を行います。
初期評価の基本的アプローチ
問診での確認事項 | 具体的な内容 |
受傷状況 | 転倒方向・外力 |
---|---|
受傷時の体位 | 肘関節の肢位 |
既往歴 | 過去の外傷歴 |
基礎疾患 | 骨粗鬆症など |
問診では受傷機転の詳細な聴取から始め、外力が加わった方向や強さ、受傷時の肢位などの情報収集が不可欠です。受傷時の状況についてはできるだけ具体的に聴取するのが望ましく、転倒の方向や手をついた際の肢位などは脱臼の方向性を推測する上で重要な手がかりとなります。
また、受傷直後の疼痛の性質や部位、関節可動域制限の程度なども診断のヒントとなり、痛みの性状や持続時間は合併損傷の有無を示唆する情報です。
受傷から診察までの経過時間やその間の症状の変化についても詳しく確認すると、より正確な病態評価が可能です。
神経血管系の評価
- 橈骨動脈の拍動確認
- 手指の運動機能チェック
- 感覚障害の有無確認
- 皮膚色調の観察
- 毛細血管再充満時間の測定
- 末梢の温度確認
神経学的所見の評価では、正中神経、橈骨神経、尺骨神経の支配領域における感覚・運動機能を丁寧に確認していきます。
手指の知覚障害や運動障害の有無は、神経損傷の程度を判断する上で大切な所見です。
評価方法
- 正中神経:指屈筋の機能を確認するか拳を作ってもらい評価
- 前骨間神経:長指屈筋の機能を評価するかOKサインを作ってもらって母指の屈曲を検査
- 橈骨神経:指伸筋の運動機能や手首を伸ばす力を評価し
- 後骨間神経:長指伸筋を支配しているため親指を立てるジェスチャーで評価
- 尺骨神経:手掌筋と背側骨間筋を支配しており、指を内転・外転させて評価
また、血行障害の有無は予後を左右する重要な因子となるため、末梢循環の評価は慎重な実施が必要です。さらに、コンパートメント症候群の発症リスクも考慮し、前腕部の緊満感や圧痛の有無についても注意深く観察します。
画像診断による評価
画像検査の種類 | 評価のポイント |
X線正面像 | 関節アライメント |
---|---|
X線側面像 | 脱臼の方向性 |
X線斜位像 | 骨折の有無 |
CT検査 | 骨性構造の評価 |
単純X線検査では、正面像、側面像、斜位像を撮影して関節の位置関係を詳細に観察するとともに、骨折合併の有無も確認します。側面像では、上腕骨滑車と尺骨の関節面の位置関係を評価すると後方脱臼や前方脱臼の鑑別が可能です。
また、正面像では内外側の関節裂隙の開大の有無を確認して、側副靭帯損傷の程度を推測できます。斜位撮影では、正面像や側面像では確認しづらい骨折線や骨片の存在を明らかにできます。
関節安定性の評価
徒手検査では、内反ストレステスト、外反ストレステストを慎重に実施し、靭帯損傷の程度を評価します。
関節の不安定性評価では、前後方向の動揺性や、回旋方向の不安定性についても注意深く観察していきます。この際に健側との比較を行うと、さらに正確な評価が可能となりますが、患者の疼痛に十分配慮しながら進めていく必要があります。
整復後の安定性評価も重要で、前腕の回内外における安定性の確認は、輪状靭帯損傷の評価において有用な情報です。また、再脱臼のリスク評価という観点からも、各方向への安定性の慎重な確認が望ましいとされています。
合併損傷の調査
骨折や軟部組織損傷などの合併損傷の有無の確認は、治療方針を決定するための大切な要素です。
小児の場合には慎重な画像評価を行う必要があり、成長軟骨板損傷を見逃さないよう注意を払います。高齢者では骨粗鬆症による病的骨折も考慮に入れながら評価を進めていき、上腕骨遠位端や橈骨頭の骨折に注意します。
軟部組織の評価では、上腕二頭筋腱や上腕三頭筋腱の損傷の有無についても詳細に確認していきます。
経時的な評価の実施
急性期の評価に加えて経時的な再評価を行うと、病態の変化や回復過程を正しく把握できます。
神経症状や血行障害の有無については初期評価後も定期的な確認が必要なため、症状の進行や改善を注意深く観察します。また、腫脹の程度や疼痛の変化なども継続的に観察していくと、細かな病態の把握が可能です。
腫脹の増悪や疼痛の急激な変化は、コンパートメント症候群などの合併症発症を示唆する可能性があるため、慎重なモニタリングが求められます。
画像評価の補完検査
必要に応じてCT検査やMRI検査を追加します。CT検査では骨折の詳細な評価や小骨片の位置確認、関節面の状態など詳細な骨性構造の評価ができます。MRI検査では、靭帯損傷の範囲や程度、軟骨損傷の有無などを詳しく評価でき、特に慢性期の評価において有用な情報源です。
さらに、必要に応じて関節造影検査や超音波検査なども追加すると、より詳細な軟部組織の評価が可能となる場合があります。
肘関節脱臼の治療方法と治療薬、リハビリテーション
肘関節脱臼の治療は整復による関節位置の修正を第一段階とし、その後の固定療法と段階的なリハビリテーションを経て機能回復を目指します。
初期治療の基本
整復は熟練した医師が実施する必要がある重要な処置です。この手技では、解剖学的知識と豊富な経験に基づく判断が求められます。
整復操作では、上腕骨と前腕骨の正常な解剖学的位置関係の再現が目標です。この過程で、関節周囲の軟部組織への二次的な損傷を防ぐため、愛護的な操作を心がけます。整復時には、筋緊張を緩和するための鎮痛や鎮静処置を併用するときがあります。
整復後は直ちにX線撮影による位置関係の確認を行い、関節の適合性を評価します。必要に応じて、CTやMRIによる詳細な評価も実施します。
固定と安静
固定期間 | 固定方法 |
初期 | ギプス固定 |
---|---|
中期 | 装具固定 |
後期 | テーピング |
整復後の固定は、関節の安定性を確保するための大切な段階です。
固定肢位は、肘関節90度屈曲位が基本です。肢位によって関節の安定性が最も高まり、靭帯の修復も促進されます。
関節拘縮の予防と上肢全体の機能維持を図るため、固定期間中も手指や肩関節の可動域訓練は継続します。固定期間は、損傷の程度や靭帯修復の状態に応じて個別に設定しますが、2〜3週間の固定が一般的です。
段階的な運動療法
- 他動運動による関節可動域訓練
- 自動介助運動による筋力増強
- 徒手抵抗運動による筋力強化
- 日常生活動作訓練による機能回復
固定解除後の運動療法は、初期は他動運動を中心とし、痛みの程度を指標としながら運動範囲を拡大します。
関節可動域訓練では、まず屈曲・伸展運動から開始し、その後、回内・回外運動を追加します。運動時の疼痛は軽度にとどめ、無理な運動は避けます。筋力トレーニングでは、まず等尺性収縮から始めて徐々に求心性収縮、遠心性収縮へと進めます。
痛みのコントロール
疼痛管理には消炎鎮痛薬を使用しますが、運動療法の進行に合わせて投与量や種類を調整していきます。経口薬と外用薬を組み合わせると、さらに効果的な除痛効果を得られます。運動療法前後での使用が推奨されます。
物理療法も補助的に用いて、疼痛軽減と組織の修復促進を図ります。具体的には、温熱療法や超音波療法などの状態に応じた選択が必要です。
薬の副作用や治療のデメリット
肘関節脱臼に対する各種治療法には、関節の拘縮や不安定性、神経血管障害など、様々な副作用やリスクが存在し、その管理には細心の注意が必要です。
保存療法における問題点
固定期間と副作用 | リスクの内容 |
2週間以内 | 不安定性残存 |
---|---|
3週間以上 | 拘縮進行 |
4週間以上 | 筋萎縮進行 |
6週間以上 | 骨萎縮出現 |
固定期間が長引くと一部の人で関節拘縮や筋力低下などの問題が生じる一方で、固定期間が短すぎると関節の不安定性が残存する場合があり、バランスの調整が重要です。
手術のリスク
- 創部感染
- 神経麻痺
- 血腫形成
- 異所性骨化
- 金属アレルギー
- 再脱臼
- 遷延性疼痛
術後の感染症や創部の治癒遅延など、手術に特有の合併症が発生する人もいます。手術操作による神経損傷や血管損傷のリスクも存在し、上腕動脈や正中神経周囲の操作には慎重な対応が不可欠です。
また、手術部位の瘢痕形成や癒着による関節可動域制限も、術後のデメリットです。
関節内血腫による問題
血腫による影響 | 続発症状 |
急性期 | 腫脹悪化 |
---|---|
亜急性期 | 線維化 |
慢性期 | 拘縮 |
晩期 | 骨化 |
関節内に形成された血腫は、器質化や線維化を引き起こす原因となります。
靭帯修復・再建術後の課題
靭帯修復術や再建術では、使用した移植腱の採取部における機能障害や疼痛が残存するときがあります。
また、固定材料として用いるアンカーやスクリューによる違和感や稀にインプラントの緩みが生じます。
リハビリテーション期間中の問題
リハビリテーションは比較的副作用やリスクの少ない治療です。ただ、過度な運動負荷は、関節の不安定性を助長したり疼痛を遷延化させたりする要因となります。
また、運動量が不足すると、関節拘縮や筋力低下が進行するといった相反する問題が存在します。
長期的な副作用
慢性的な関節の不安定性は、変形性関節症の発症を早める危険性があります。
また、再脱臼を繰り返すことで、関節軟骨の損傷や靭帯の脆弱化が進行するケースがあります。若年者における再発性脱臼は、将来的な関節機能への深刻な影響が懸念されます。
保険適用と治療費
肘関節脱臼の治療には健康保険が適用され、医療費の自己負担は年齢や所得に応じて3割から1割です。
基本的な医療費の内訳
診療項目 | 自己負担額(3割負担の場合) |
整復処置 | 4,500〜6,000円 |
MRI検査 | 9,000〜12,000円 |
ギプス固定 | 3,000〜4,500円 |
健康保険を使用した場合の医療費は、外来診療での支払いが中心となります。
入院が必要なときの費用
入院内容 | 自己負担額(3割負担の場合) |
入院費(1日) | 5,000円〜7,000円 |
手術料 | 45,000円〜90,000円 |
麻酔料 | 15,000円〜30,000円 |
手術を要する複雑な症例では入院治療が必要となります。
ハビリテーション費用
- 理学療法(1回):2,000〜3,000円
- 作業療法(1回):2,000〜3,000円
- 運動器リハビリ(1回):1,500〜2,500円
- 装具作製:15,000〜25,000円
一般的なリハビリテーション期間は4〜8週間程度で、週2〜3回の頻度で通院するケースが多いです。
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