外傷とは、スポーツや日常生活、交通事故などで生じる急性の損傷を指し、骨折や脱臼、靭帯損傷、筋腱損傷などが含まれます。これらの外傷は、急激な痛みや腫れ、変形、運動制限などの症状を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
適切な初期対応と治療によって、多くの外傷は良好な機能回復が期待できます。しかし、不適切な対応や治療の遅れは、長期的な障害や慢性痛などの合併症を引き起こす可能性があります。
大垣駅より徒歩5分、大垣中央病院の整形外科では、様々な外傷に対して迅速かつ的確な診断と治療を提供しています。骨折や脱臼の整復から、必要に応じた手術療法、その後のリハビリテーションまで一貫した診療体制を整え、患者様の早期回復と社会復帰を支援しています。
こんな症状はご相談ください
以下のような症状でお悩みの方は、当院整形外科にご相談ください。
- 転倒や打撲後の強い痛みや腫れがある
- 関節の動きが制限されている
- 骨や関節に変形が見られる
- スポーツ中に「ポキッ」という音とともに痛みが生じた
- 腕や脚に力が入らない、動かせない
- 骨折や脱臼の疑いがある
- 交通事故やスポーツ外傷の後遺症がある
- 骨折後のリハビリテーションを希望している
- 長期間続く骨折部の痛みがある
- 骨折後に適切な治療を受けたかどうか不安がある
主な外傷
上肢の骨折
鎖骨骨折
肩と胸骨をつなぐ鎖骨の骨折です。転倒時に手や肘をついた際や、直接的な打撃によって生じます。骨折部の痛み、変形、肩の挙上困難などが症状として現れます。
治療
多くの場合、保存的治療(三角巾やクラビクルバンドによる固定)で治癒しますが、転位が大きい場合や特定のタイプの骨折では手術が必要となることがあります。
上腕骨近位端骨折
肩関節に近い上腕骨の骨折です。高齢者の転倒や若年者の高エネルギー外傷で生じます。肩の痛み、腫れ、挙上困難などが症状として現れます。
治療
骨折の型や転位の程度によって、保存的治療(三角巾等による固定)や手術療法(プレート固定、髄内釘固定、人工関節置換など)を選択します。
上腕骨骨幹部骨折
上腕の中央部の骨折です。直接的な外力や間接的な回旋力によって生じます。腕の変形、痛み、運動制限などが症状として現れます。
治療
保存的治療(ギプス固定やブレース)が可能な症例もありますが、転位の大きい骨折や開放骨折では手術(プレート固定、髄内釘固定など)が必要となります。
上腕骨顆上骨折
肘関節に近い上腕骨の骨折で、特に小児に多く見られます。転倒時に手をついて生じることが多いです。肘の痛み、腫れ、変形などが症状として現れます。
治療
骨折の転位の程度によって、保存的治療(ギプス固定)や手術療法(ピンニングなど)を選択します。神経や血管の損傷を伴うことがあるため、注意深い評価が必要です。
橈骨遠位端骨折
手首に近い橈骨の骨折で、転倒時に手をついて生じることが多いです。特に高齢者に多く見られます。手首の痛み、腫れ、変形などが症状として現れます。
治療
骨折の型や転位の程度によって、保存的治療(ギプス固定)や手術療法(プレート固定、創外固定など)を選択します。
舟状骨骨折
手首の舟状骨の骨折で、転倒時に手をついた際に生じることが多いです。手首の痛み、特に親指側(橈側)に痛みを生じます。
治療
血流の問題から治癒が遅れることがあり、適切な診断と治療が重要です。転位の少ない骨折ではギプス固定、転位のある骨折や治癒遅延例では手術(スクリュー固定など)を行います。
ベネット骨折
親指の付け根の骨(第一中手骨底)の骨折脱臼です。主に直接的な打撃や転倒によって生じます。親指の付け根の痛み、腫れ、運動制限などが症状として現れます。
治療
多くの場合、手術療法(ピンニング、プレート固定など)が必要となります。
下肢の骨折
骨盤骨折
骨盤を構成する骨の骨折で、高エネルギー外傷(交通事故など)や高齢者の転倒で生じます。骨盤部の痛み、歩行困難などが症状として現れます。
治療
安定型の骨折では保存的治療(免荷、安静)を行いますが、不安定型や脱臼を伴う骨折では手術(プレート固定、創外固定など)が必要となります。内臓損傷や大量出血を伴うことがあり、迅速な対応が求められます。
大腿骨頸部骨折
股関節に近い大腿骨頸部の骨折で、高齢者の転倒で多く生じます。股関節の痛み、脚の短縮、外旋変形、歩行不能などが症状として現れます。
治療
多くの場合、手術療法(人工骨頭置換術、人工股関節置換術、スクリュー固定など)が必要です。早期離床と早期リハビリテーションが重要となります。
大腿骨転子部骨折
大腿骨の転子部(大転子と小転子を含む領域)の骨折で、高齢者の転倒で多く生じます。股関節の痛み、歩行不能などが症状として現れます。
治療
多くの場合、手術療法(髄内釘固定、プレート固定など)が必要です。早期離床と早期リハビリテーションが重要となります。
大腿骨転子下骨折
大腿骨の転子下部分の骨折で、高エネルギー外傷や高齢者の転倒で生じます。大腿部の痛み、変形、歩行不能などが症状として現れます。
治療
多くの場合、手術療法(髄内釘固定など)が必要です。治癒に時間がかかることがあります。
大腿骨頭骨折
股関節の中にある大腿骨頭の骨折で、股関節脱臼に伴って生じることがあります。股関節の痛み、運動制限などが症状として現れます。
治療
骨折の型によって、保存的治療や手術療法(スクリュー固定、骨頭置換術など)を選択します。血流障害による骨壊死のリスクがあり、注意深い経過観察が必要です。
膝蓋骨骨折
膝のお皿(膝蓋骨)の骨折で、直接的な打撃や急激な大腿四頭筋の収縮によって生じます。膝の前面の痛み、腫れ、膝の伸展困難などが症状として現れます。
治療
転位の少ない骨折では保存的治療(ギプス固定)が可能ですが、転位のある骨折では手術(ワイヤリング、プレート固定など)が必要となります。
脛骨骨幹部骨折
すねの骨(脛骨)の中央部の骨折で、スポーツ外傷や交通事故などで生じます。下腿の痛み、腫れ、変形、歩行不能などが症状として現れます。
治療
骨折の型や転位の程度によって、保存的治療(ギプス固定)や手術療法(髄内釘固定、プレート固定など)を選択します。下腿急性区画症候群を併発することがあり、注意が必要です。
腓骨遠位端骨折
足首に近い腓骨の骨折で、足関節の捻挫に伴って生じることが多いです。足首の外側の痛み、腫れなどが症状として現れます。
治療
足関節の安定性に関わる骨折では手術(プレート固定など)が必要となりますが、安定性に影響しない骨折では保存的治療が可能です。
脛骨天蓋骨折(ピロン骨折)
足首に近い脛骨の関節面を含む骨折で、高所からの落下など軸圧がかかる外傷で生じます。足首の痛み、腫れ、変形などが症状として現れます。
治療
多くの場合、手術療法(プレート固定など)が必要です。関節面の正確な整復が重要となります。
踵骨骨折
かかとの骨(踵骨)の骨折で、高所からの落下など軸圧がかかる外傷で生じます。かかとの痛み、腫れ、変形、歩行困難などが症状として現れます。
治療
関節内骨折では手術(プレート固定など)が必要となることが多いですが、軟部組織の状態に注意が必要です。早期からのリハビリテーションが重要となります。
脱臼
肩関節脱臼
上腕骨頭が肩甲骨の関節窩から外れる状態で、転倒や外力によって生じます。肩の激痛、変形、運動制限などが症状として現れます。
治療
初回脱臼では整復後に一定期間の固定を行いますが、再発を繰り返す場合は手術(関節唇修復術など)を検討します。特に若年者では再発率が高いことが知られています。
肩鎖関節脱臼
肩鎖関節(鎖骨と肩甲骨の肩峰をつなぐ関節)の脱臼で、転倒や直接的な打撃で生じます。肩の上部の痛み、変形などが症状として現れます。
治療
脱臼の程度によって、保存的治療(三角巾による固定)や手術療法(靭帯再建術など)を選択します。
肘関節脱臼
上腕骨と前腕骨(橈骨・尺骨)の間の関節が脱臼する状態で、転倒時に手をついた際などに生じます。肘の激痛、変形、運動制限などが症状として現れます。
治療
整復後にギプス固定を行い、関節の安定性や合併損傷に応じて治療方針を決定します。
肘内障
小児に多い障害で、前腕を引っ張られた際に橈骨頭が亜脱臼します。いわゆる「引っかき損傷」です。肘の痛みと運動制限が特徴です。
治療
特殊な整復操作で容易に整復されますが、再発することがあります。
外傷性股関節脱臼
大腿骨頭が寛骨臼から外れる重篤な外傷で、交通事故などの高エネルギー外傷で生じます。股関節の激痛、脚の変形、運動不能などが症状として現れます。
治療
緊急で整復が必要であり、合併損傷(骨折、神経・血管損傷など)に注意が必要です。大腿骨頭壊死のリスクがあり、慎重な経過観察が必要です。
膝蓋骨脱臼
膝のお皿(膝蓋骨)が大腿骨の滑車から外側に脱臼する状態です。急な方向転換や打撃によって生じ、膝の激痛、変形、伸展不能などが症状として現れます。
治療
初回脱臼では保存的治療(ギプス固定、リハビリテーション)を行いますが、再発する場合は手術(内側膝蓋大腿靭帯再建術など)を検討します。手術例
膝関節脱臼
大腿骨と脛骨の間の関節が脱臼する重篤な外傷で、交通事故やスポーツ外傷など高エネルギー外傷で生じます。膝の激痛、変形、不安定性などが症状として現れます。
治療
血管・神経損傷を伴うことが多く、緊急対応が必要です。多くの場合、靭帯再建術などの手術が必要となります。
足関節脱臼
距骨と脛骨・腓骨の間の関節が脱臼する外傷で、足関節の捻挫の重症型とも言えます。足首の激痛、変形、運動不能などが症状として現れます。
治療
多くの場合、骨折を伴い(脱臼骨折)、手術療法(プレート固定など)が必要となります。
月状骨脱臼
手首の月状骨が脱臼する比較的まれな外傷です。手首の痛み、腫れ、運動制限などが症状として現れます。
治療
早期発見・早期治療が重要で、整復後にギプス固定を行います。合併症として無腐性壊死のリスクがあります。
その他の外傷性疾患
下腿急性区画症候群
下腿のコンパートメント(筋区画)内の圧力が上昇し、筋肉や神経の血流が障害される緊急性の高い状態です。脛骨骨折などの外傷後や、過度の運動後などに発生します。下腿の強い痛み、腫脹、感覚異常、運動障害などが症状として現れます。
治療
緊急の減張切開(筋膜切開術)が必要となる場合があり、放置すると筋肉の壊死や永続的な神経障害を引き起こす可能性があります。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)
外傷や手術の後などに、原因となった損傷の程度に不釣り合いな痛みや症状が持続する症候群です。罹患した部位の強い痛み、腫れ、皮膚の変化、発汗異常などが症状として現れます。
治療
早期診断と多面的な治療(薬物療法、理学療法、神経ブロックなど)が重要です。慢性化すると治療が困難になることがあります。
診断・検査
当院では、外傷の正確な診断のために、以下のような検査を行っています。
問診・診察
受傷機転や症状の経過を丁寧に聞き取り、適切な診察を行います。
レントゲン検査
骨折や脱臼の有無と状態を評価します。
CT検査
複雑な骨折や脱臼の詳細な評価を行います。
MRI検査
軟部組織損傷(靭帯、腱、筋肉など)の評価を行います。
超音波検査
腱や靭帯の損傷をリアルタイムで評価します。
血液検査
全身状態や炎症の程度を評価します。
神経・血管評価
外傷に伴う神経や血管の損傷を評価します。
治療方法
初期対応
外傷直後の適切な対応は、その後の回復に大きく影響します。
- Rest(安静):損傷部位を動かさないようにします。
- Ice(冷却):腫れや痛みを軽減するために冷却します。
- Compression(圧迫):腫れを抑えるために適度に圧迫します。
- Elevation(挙上):損傷部位を心臓より高い位置に挙上し、腫れを軽減します。
骨折や脱臼が疑われる場合は、専門的な処置を受けるまで仮固定を行います。
外傷後は速やかに医療機関を受診することが重要です。
保存療法
骨折や脱臼の種類、部位、程度によっては、手術せずに治療することが可能です。
転位した骨折や脱臼を適切な位置に戻します。
- ギプス固定:石膏やグラスファイバー製のギプスで固定します。
- ブレース・装具:取り外し可能な装具で固定します。
- 三角巾:上肢の骨折や脱臼に対して使用します。
下肢の骨折では、一定期間の免荷(体重をかけない)や部分荷重が必要となります。
痛みや炎症を抑えるための薬剤を使用します。
骨癒合の状態に応じて、関節可動域訓練や筋力強化訓練を行います。
手術療法
骨折や脱臼の種類、部位、程度によっては、手術が必要となることがあります。
- 観血的整復固定術:皮膚を切開して骨折部を直視下に整復し、プレートやスクリューなどで固定します。
- 髄内釘固定術:骨の髄腔内に金属の棒(髄内釘)を挿入して固定します。
- 創外固定術:骨折部の外側から金属のピンやワイヤーで固定します。開放骨折や軟部組織損傷が重度の場合に用いられます。
- 関節鏡視下手術:関節鏡を用いて低侵襲に関節内の修復や固定を行います。
- 人工関節置換術:重度の骨折や高齢者の一部の骨折に対して、人工関節に置き換える手術を行います。
当院では、患者様の年齢、活動性、骨折・脱臼の種類と程度などを総合的に考慮し、最適な治療法を選択しています。また、可能な限り低侵襲な手術を心がけ、早期の回復と社会復帰を支援しています。
リハビリテーション
外傷後のリハビリテーションは、機能回復と社会復帰に不可欠です。
急性期リハビリテーション
浮腫の軽減、関節拘縮の予防などを目的とします。
回復期リハビリテーション
関節可動域の改善、筋力強化などを行います。
維持期リハビリテーション
日常生活動作の獲得、職業・スポーツ復帰に向けたトレーニングを行います。
当院では、医師、理学療法士、作業療法士などが連携し、患者様の状態に合わせた最適なリハビリテーションプログラムを提供しています。